(第51章)目に見えない存在がいる。

(第51章)目に見えない存在がいる。

 

エア・マドセンは個人的に気なる新聞の続きを読んでいた。

『謎の異生物は数体出現したと同時に現れた

唯一神の天使マンセマットは宝石店の客を集めて神を教えを説いている

最中に謎の異生物はこのマンセマットを外敵と認識した。

結果、マンセマットと異形の怪物達は激しく争い。

そして謎の異生物が大天使マンセマットを殺す姿が店内の監視カメラが捉えていた。

更に謎の異生物は邪魔な大天使マンセマットを殺害後。

ジュエリーフロアーにて1200名近い若い女性に一斉に襲い掛かった。

しかしすぐにSWATとBSAAが即時、フロアーの封鎖を成した事で

他のフロアーの被害は及ばなかった。また謎の異生物は1200名近い

若い女性に襲い掛かった後に自ら身を隠して行った。」とあった。

しかしエアは長い間、無言で虚ろな目で新聞を見ていた。

僕はどうすれば!どうすれば!うーん!うーん!どうして?どうして?

ママは魔女王ホラー・ルシファーに魂と肉体を。どうして捧げたの?

一体?どうして?そんな事もうとっくに分かり切っている筈なのに!!

それからエアは机に新聞を置いた。

彼は急に頭が痛くなり、両手で頭を抱えた。

彼は全身を激しく震わせて身体を丸くした。エアはハアーと溜息を付いた。

不意にピーッ!ピーツ!と言う音が天井から鳴った。

エアは一体?何なんだ??と思いつつも顔を上げた。

間も無くして天井のスピーカーからAI(人工知能)アポロの音声が聞こえた。

「あーあー現在!目に見えない存在の侵入を探知する

新たな警報システムの動作テスト中。

しかし今回は運よくエア・マドセンの自室に人間が持つ

通常量の生体マグネタイド(生体磁気)を確認しました。

しかも部屋内にもう一つの通常量以上の量の

生体マグネタイド(生体磁気)を確認しました。エア・マドセンさん!

恐らくそこに目に見えない存在がいる可能性が高いです。

確認出来る感情に敵意はない模様!良く周りを見てみて下さい!」

「生体マグネタイド?生体磁気??確かこのBOW(生物兵器)及びウィルス

兵器開発中央実験室とは別の未知の生物や物質や資源やエネルギーの研究開発する

ところで今、秘密組織ファミリーと協力してやっているとか?そんなところだっけな?

その生体マグネタイド(生体磁気)は人間の感情から発生していて悪魔かなんかが

実体化するのに必要なエネルギー源とかって噂される。あれかなぁ?」

エアは注意深く周囲の自分の部屋を見渡した。

しかし誰もいないし、誰の声も聞こえなかった。ここにいるのは。

エア・マドセンただ独りだけだった。誰もいる筈が無いんだ!

この部屋には。僕の・・・・僕の・・・・ママも・・・・来る筈が・・・・。

そう!来る筈が無いんだ!ママは魂も肉体も死んだ!!

僕の恋人のストークスと守る為に自ら魔女王ホラー・ルシファーに命を捧げ!

「エア・・・・エア・・・・・」と小さくどこかで誰かが呼びかける声がした。

それはとても小さく囁くような声だった。

「誰?誰?まさか?ママなの?ママ?」とエアは小さく呟いた。

そしてまた周囲を見た。しかし誰もいない。やはり。エアは独りで自分の部屋にいた。

きっと空耳だ。魂は存在せず、幽霊になれない以上はきっと空耳だろう。

しかし小さくでは無く今度はとてもはっきりと聞こえた。

「エア!エア!エア!エア・マドセン!我が息子よ!」と。

この瞬間、エアは絶対に空耳じゃないと思った。

そのはっきりとした人間の声は幼い頃からずっとずっと聞き続けていたもの。

間違い無い!アンヘラ!ママの声だ!!間違いないぞ!確かにこれは!!

「ママ!ママ!どこ?何処にいるの?いるのなら返事して!

返事して!姿を現して!人の形でなくても構わない!

いいから!早く!早く!ここに来て!お願い!お願いだ!

おね・・・がい!おね・・・がいだよ!僕はママに会いたい!

やがて部屋の中が金色に輝いた。エアは必死に願った。

エアは眩しくて思わず両手で顔を覆った。

しばらくして金色の光はふっと消えた。

エアはおずおずと顔から両手を話した。

彼は茶色の瞳を見開き、驚いた表情をした。

目の前には地母神イナンナとして復活した

エアの母親のアンヘラ・マドセンの姿があった。

エアは目の前に現れた地母神イナンナの姿を母親のアンヘラ・マドセンを認知した。

彼女を本物の母親だと心から信じた。

やがて地母神イナンナとして復活したエアの母親の

アンヘラ・マドセンは静かに口を開き、優しくこう言った。

エア。ごめんなさい。貴方に辛い思いをさせて。

私はあのマッド達や保安部隊の方達や貴方とストークスの幸せを願う人達と

一時的に力を取り戻した現人神(アラヒトガミ)の東風谷早苗

イナンナの力を借りて魔女王ホラー・ルシファーに魂を喰われて

肉体も乗っ取られて永遠にこちら側(バイオ)の世界から永遠に消え去ってしまった。

でも彼らはこちら側(バイオ)の世界に残っていた私の残留思念を集めて

この目に見えない自然の存在としてこの世界に留まる事が出来ました。

見えているのも。」

「目に見えない自然の存在って?今!目に見えているんじゃん!

僕とまた一緒に目に見える存在としていてくれるんでしょ?

つまり!生き返ったって事でしょ?現実に存在している!」

しかし地母神イナンナとして復活したアンヘラは首を左右に振った。

「違います!私は生き返ってなんていません!私は死んでいます!

魔女王ホラー・ルシファーの手で。

死んだ人間は通常生き返る事なんて決してあり得ません!

いや!本来はあってはならない事です!

私はこちら側(バイオ)の世界の自然神として存在しています!

ただそれだけです。私は残念ながら非現実の場所にいます。

良いですか?エア!非現実な世界に頼り過ぎては駄目です!

貴方には目の前にいる恋人のストークスや

仲間達、現実にいる人間達に目を向けてしっかり向き合いなさい。

そうしなければストークスは幸せになんか出来ませんよ!

のめり込むのは駄目です!これは現実と非現実が交わる事は

本来はあってはならない事です。しっかり限度を知り!

現実との線引きをしっかりとする事!いいですね?エア!」

「・・・・・・・・・・」

エアは不満そうな表情でしばらく黙っていた。

すると地母神イナンナの姿をした母親のアンヘラ・マドセンはこう言った。

「ですが我は私を自然神として復活させた貴方の仲間のマッドや

他の隊員達や不特定多数の人々と生前の私の夫のブレス保安部長。

ダニア博士、エイダ・ウォン、リー・マーラ。

これだけ多くの人達が貴方元日世界で困難と闘い、恋人ストークスが

幸せになる事を望んでいます。確かにここは生き地獄かもしれません。

ですが、そんな場所にも幸せを願う花が咲く事があるんです。

私も自分の息子の幸せを切に願っている。もう貴方は立派な自立した大人。

これからこの先、貴方は現実世界で母親や父親に頼りすがり過ぎる事無く。

自らの意志で生きて行かなければなりません。

しかし困った時や迷った時は現実の仲間達をしっかりと頼りなさい。

仲間に裏切られても憎しみや怒りを持ってはいけません。

裏切った仲間が悪でも自らの人生を破滅させるような事は決してしないで欲しい。

でも怒りも憎しみも笑いも嫉妬も人の感情。貴方はそれをコントロールする術を

これからの人生でしっかりと身に付けなさい。ですが。」

そう言うと地母神イナンナとして復活したアンヘラ・マドセンは一瞬だけ沈黙した。

しかしすぐに静かに口を開いた。

「ですが私は『天の女主人』であり、天空の神であります。

そして目に見えない存在としてですがこちら側(バイオ)の世界の

自然の一部としてエア!貴方とストークスの幸せを行く末を見守っているわ。

私は自然に起こる火、氷、風、雷として時に貴方とストークスを

救う事もあれば障害になる事もあるでしょう。

ですが人間である貴方は自らの意志と他者の力によってこれらの障害を

乗り越えなければ自らの人生をより善いものには出来ません。自立しないと」

しばらくエアは顔を伏せて黙って聞いていた。

続けて地母神イナンナとして復活したアンヘラ・マドセンはまた口を開いた。

「勿論!我が息子のエアと恋人のストークス。

今、現在、苦しんでいる子供達を導く為に尽力するつもりだ。

それが今の我に与えられた存在理由であり、存在価値なのだ。

つまり。私がこの世界に存在して生きる理由。」

 

(第52章に続く)