(第53章)ダークヒロイン

(第53章)ダークヒロイン

 

ここ最近、起こった悪魔が犯人と思われる幾つもの事件が金髪の若い女性の

司会者がホワイトボードに各事件の概要をまとめて解説をしていた。

1つ目の事件は『ジョーカー惨殺事件』。この事件は2021年に発生した事件で。

悪質アイドルグループのジョーカーが太陽神ケッアルカトルと名乗る悪魔によって

惨殺された事件。メンバーのほとんどは死亡してしまったようである。

もう2つの事件は『魔獣新生多神連合全米世界テレビ同時ジャック事件』。

この事件は魔獣新生多神連合と名乗る悪魔の組織が全てのアメリカや

世界中のテレビの電波をジャックしてテレビ画面を通していわゆる

反キリストと唯一神を倒すと宣伝したあのパフォーマンス広告。

また世間の金持ちで噂される悪魔が集まって人間達と社交ダンスをする

場所が存在するらしい。しかも悪魔も人間も仮面を被っているらしい。

更にジョーカーの生き残りの惨殺事件。また今年に入ってからは謎の殺し屋

アメリカ版必殺仕事人)によるイスラム系テロリスト暗殺事件の頻発。

その謎の殺し屋は口笛であの日本の時代劇の『必殺仕事人のテーマ曲』

を口ずさんでいると言う。しばらくして番組に出演したコメンテーター達の

議論が始まった。「でも自爆テロを起こす前に倒しているのならー」

「つまりアメリカ版必殺仕事人は弱い市民の味方って事?」

「目撃者の証言によれば金髪の赤い服の女の子だそうです」

「と言うとダークヒロインね!マーベルやダークホースが直ぐに食いつきそうね!」

「彼女はどらかと言うとバッドマンよりもジョーカーに近いですね。」

「でもピエロのメイクはしていないですよ!!」

「あくまでも必殺仕事人ですから!」

「彼女は悪か正義かどっちでしょう??」

「難しい問題ですね。皆さんも承知していると思いますがね。

ここ最近、善も悪も正義も多様化してきている。」

「つまり今までの善悪二次論は時代遅れだと?」

「いやいや、そこまで言っていませんが。

善意のある者が悪だと言って切り捨てて倒す。

もうそんな単純な話で現実の物事計れなくなってきている。

つまり勧善懲悪もすでに構造上の限界を迎えてきていると言う事です。」

「また他にもニューヨーク各地で悪魔の目撃証言が多数、

ニューヨーク市警に通報されているようで。

目撃した悪魔は大体は伝承通りの姿をしているそうですよ」

エアはテレビ画面を見ながらフーンと鼻を鳴らしてワイドショー番組を見ていた。

間も無くしてワイドショー番組はCMが入った。

エアはしばらくずっとテレビ画面のCMを見ていた。

テレビCMの後、テレビのワイドショー番組が再開した。

そして司会者やコメンテーターの話題は魔獣新生多神連合が一柱であり、

リーダーである魔王ホラー・ベルゼビュートがどこから来たのか?

について熱心に議論を交わしていた。

しかしエアは彼らの議論から出た推測は憶測はどれも全て外れていた。

何故なら僕はダニア博士から魔王ホラー・ベルゼビュートの正体が

ただの悪魔ではなく魔獣ホラーである。彼らは太古の昔から人々を喰らい続けた存在。

そして魔王ホラー・ベルゼビュートはダニア博士から全て真相を聞いた。

これはHCF上層部もセヴァストポリ研究所のほとんどの研究員、職員、スタッフ。

産業スパイのリーさんやエイダさんの他のスパイも僕達保安部隊全員も

父親のブレス保安部長も母親のアンヘラ博士もほとんどの人が知っている。

ただし信じていない人達も少数ながらいるようだが。でも大半の人々は信じていた。

今まで御月製薬でも魔獣ホラーを利用した

BOW(生物兵器)の開発を進めていたと言う信じられない真実も

明らかになっており、また多くのHCFやBSAA内でもそれは受け入れられている。ただブルーアンブレラ社内では信じない者はかなり多いと

エイダから聞いた。しかしBSAAからブルーアンブレラ社にいる

クリス・レッドフィールドやBSAA所属の

ジル・バレンタイン、パーカー・ルチアー二。

クエント・ケッチャム。テラセイブのクリスの妹のクレア・レッドフィールド

やバリー・バートンの娘のモイラ・バートンも魔獣ホラー達に遭遇して

闘い勝利を果たしたと言う話を信じたブルーアンブレラ社の社員や

兵士達は信じなかった者達に比べるとその人数は

信じなかった者の数をかなり上回っているようである。

そしてブルーアンブレラ社も独自に魔獣ホラーや悪魔や異教の神々の

出現の対処法や対抗策を現在、考えているらしい。

他にも独自の動きは他の組織に広がりつつあるようだ。

レオン・S・ケネディが所属しているアメリカ合衆国

エージェントOSD組織や一部の会社の傭兵部隊やそれを

管理する組織にも同様の動きが一斉に始まりつつあるのは

確かだと言う情報を広範囲に集めていたエイダ・ウォン

HCF上層部にそう報告したらしい。もっとも僕達はこのHCFの

セヴァストポリ研究所内を守る為に作られた保安部隊なのだから。

それ以上の詳しい情報は流石にリーさんもエイダさんも絶対に教えてはくれまい。

つまり僕達は何も知らないのだ。その時、ふと脳裏にストークスの笑顔が浮かんだ。

あっ!そう言えば!ストークス!今!自室でどうしているんだろう?

既に冷凍冬眠処置を終えて。いや。多分。まだ覚醒処理室できっと温かい食べ物と

飲み物も飲んで。きっと元気な筈さ!少なくとも僕よりかはね。

うーん!行くのはまた今度にしよう。急に会いに行ってもきっと

トークスのSPや研究員やスタッフ達に止められそうだし。

自分の精神状態(今は良くなったけど)が良くないだろうから。

ちゃんと精神科医の報告とダニア博士とAI(人工知能)アポロの

判断をしっかりと聞いてからにしよう。

それまで寂しけれど。辛抱強く待つさ。でも。

確か明日がストークスが。いや違った。3日後だった。

なーんだ。まだ3日後なら多分、大丈夫だな。

何?勘違いしているんだろう?だって?彼女と一生会えなくなる筈がないじゃないか?

短い間なんだ。でも。やっぱり。エアは肩を落とし、視線をベッドに向けた。

彼は思わずぽつりと寂しそうにつぶやいた。

しばらく会えないこの時間がとてもむず痒い。エアはそう思っていたのであった。

 

HCFセヴァストポリ研究所のBOW(生物兵器)及びウィルス兵器開発中央実験室

の片隅にあるダニア博士の自室では先程、彼を診察した精神科医

現在のエア・マドセンの精神状態と彼から聞いた出来事の全てを報告した。

またその彼とエアの話を裏付けるようにAI(人工知能)アポロは

エア・マドセンの自室にエアの他に通常量の倍の生体マグネタイド(生体磁気)が

検出された事とモニター画面に映像を出し、地母神イナンナとして復活した

母親のエア・マドセンと息子のエアの言葉を交し合う姿が捉えられていた。

ダニア博士は心が躍った。

「わお!凄い!まさか目に見えない存在として??」

「恐らく復活したものと思われます。原因は不明です。」

「いいのよ!原因は不明で。

何か理由や理屈を強引に探るのは野暮な事よ。だからいいの」

「原因不明でいいと?」

キョトンとしたようにAI(人工知能)アポロはダニア博士にそう返した。

「うん!うん!それでいいのよ!アポロ!」

「私には理解しかねます!何故?原因をあえて探らないのか」

「人間にはね。目に見えない感情の力があるのよ。」

ダニア博士は悪戯っぽくウィンクした後、そう答えた。

「そうよ。特には人間は他人を願う幸せの力ってたくさん集まると凄い力になるのよ。

だからあんな奇跡が起こったの!」

「奇跡とは唯一神やキリストが起こす者では?」

AI(人工知能)アポロがそう質問するとダニア博士は首を左右に振った。

「いいえ。違うわ。奇跡は神や大天使が起こすものじゃないわ。

人間自身の沢山の想いと感情が起こすものなのよ。

唯一神や天使共に奇跡なんか絶対に起こせやしないわ。」

ダニア博士はキッパリと自信を持って否定した。

「キリストは?」

「人間にならなくなったらもう奇跡は起こせないわ。

だって神で生き返ったら人間ではないもの」

ダニア博士はふとアンヘラ博士を思い出し、寂しそうにこう言った。

しかしすぐに明るくなりAI(人工知能)アポロにこう言った。

「それで奇跡の元になる人間の強い感情と脳波で発生する悪魔や

天使や神々(もしかしたら?魔獣ホラーも)実体化するのに必要な

生体マグネタイド(生体磁気)の研究は進んでいるのかしら?

AI(人工知能)アポロはこう答えた。

「はい!現在!秘密組織ファミリーから送られたある日本人女性。

ラベルには『SRの女の子』と書かれた生体マグネタイド(生体磁気)

のサンプルを元に未知の物質や資源エネルギーを研究する

『HCF特殊生物生体物質研究実験室』で様々な実験と研究が飛躍的に進んでいます。

もしかしたら?奇跡のみならず天使や悪魔、唯一神

異教の神々の存在が科学的に証明出来るかも知れません。」

 

(第54章に続く)