(第64章)ミカエル

(第64章)ミカエル

 

「エイダさん!どうして僕を探して?」

「貴方の父親のブレス保安部長から依頼されたのよ!

急に貴方が父親の傍から消えちゃったから驚いたのよ。

ついでに凄く心配していたわ。もちろん恋人も仲間も

全員、貴方の行方をとても心配していたのよ!」

「そう、ですか。すいません。心配を掛けてしまって」

エアは申し訳なく思いエイダにも頭を下げた。

しばらくしてジルは静かにこう言った。

「どうやら貴方に投与した賢者に意志の力を抑える薬は

完全に効果は無くなったようね。」

ジルはエアに向かって話を続けた。

「ざっと3時間かけて貴方の賢者の石はその薬の効果に対抗する術を身に付けた。

もう2度とその薬の効果は通用しないわね。いわゆる薬剤耐性菌ってやつよ」

「どうしてそんなの事が分かるんですか?」

エアの質問にジルはフフフフッと悪戯に笑いながらこう答えた。

「私には分かるのよ。オリジナルの私の賢者の石と

貴方の賢者の石は似た者同士だから。

直ぐに戻るわ。そうね。本来の力を取り戻すまであと一分後かしらね。」

ジルはエアに向かって瞼を動かしてパチッとウィンクした。

間も無くしてエアは急に全身が暑くなるのを感じた。

やがてエアはふあったび胸元まで伸びた真っ赤に輝くサラサラのポニーテールの髪。

キリッとした太く長い真っ赤に輝く眉毛。高い鼻。真っ赤に輝く瞳。

両頬には真っ赤に輝く天秤の模様が現れた。

背中から再び真っ赤に輝く無数の剣が集合して

出来た鳥の羽根を2対バサッと生やした。

それからまた真っ赤に輝く無数の剣が集合して出来た

2対の鳥の羽根をバサッとまた背中に収容した。

そして元のエアの姿に戻った。

両頬から真っ赤に輝く天秤模様も消え、

真っ赤に輝くサラサラの髪は美しい金髪に戻った。

キリッとした細長い真っ赤な眉毛も金色の眉毛に戻った。

真っ赤に輝く瞳も茶色の瞳に戻った。

最初は「うわっ!暑い!」と思ったが変身と共に元に戻ると

その暑さはまるで海の波のように打ち寄せては引いて行った。

彼は全身にじわりと汗をかいていたがそれもまた乾いて消えた。

エアは勿論、既に攻撃の意志は無かったのでもう変身しなかった。

するとジルは改めてさっきの賢者の石の力で変身した彼の姿を見た時こう言った。

「天秤の模様に鉄の剣の翼。まるで大天使ミカエルね

もしかして?それをイメージしたの?」

「えっ?いや!えーと実は母から良く秋のミカエル祭に連れて行って貰って。

色々な昔話、ミカエルの戦いの伝説を聞いて。まるでバットマンやスーパーマン

日本のウルトラマン仮面ライダーみたいに正義のヒーロでカッコいいなと思って。」

エア・マドセンはまるで少年時代に戻ったように熱心にジルに話をしていた。

「結構好きな天使なんです。幼い頃から彼みたいな正義の

ヒーロになりたいな。とか思っていたんですよ。」

「うーん、貴方が生み出した本来の唯一神とは異なる理由から誕生したミカエルで。

キリスト教イスラム教の大天使ミカエルとは違う存在として生まれたのかもね。」

ジルは意味深な言葉をエアに言った。

エアはそれを聞いて余り良く理解出来なかったのか首を傾げた。

間も無くしてエアは急に公園の木の陰に人影が立っていた。

しかも良く見ると人間では無い何者かだった。

頭部は三角形で黄金の仮面を被っていた。

しかも顔を覆っているので素顔が見えず医名性があった。

頭部は三角形で黄金の仮面を被っていた人型の存在の特徴は以下の通りである。

両頬に当たる左右の半三角形の部分には天秤の模様があった。

全身は真っ赤に輝く装飾品の付いた円形の鎧。

胸部は分厚い真っ赤な鎧に覆われていた。

両腕も分厚い真っ赤な鎧に覆われていた。

両手には短い10対の爪が生えていた。

両脚はオレンジ色に輝く分厚い鎧に覆われていた。

両脚には三角形の装飾品の付いた靴を履いていた。

更に背中から真っ赤に輝く巨大な無数の剣が集合して出来た鳥の翼が4対生えていた。

それは魔女王ホラー・ルシファーにも。あのネットで噂になった

処刑人レッドピラミッドシングを彷彿とさせる威圧的で奇妙な姿をしていた。

その黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)はエアに何をする訳でも無く。

しゃべらず声も発せずただただ不気味に佇んでいた。

その時、背後で急に人に話しかけられた。

「こんばんわ!エア・マドセン!」と。

エアとエイダは大慌てで公園の入り口の方に視線を向けた。

公園の入り口の門には20代のフランス人の女性が立っていた。

不意にエアはあの黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)

が立っていた方へ視線を向けた。

しかしさっき目を離している間に既に影も形も消え失せてしまった。

エアはまた20代の女性を見た。その姿はー。

かつて4年前にHCFセヴァストポリ研究所で戦った

10歳未満の姿をしたあの女の子の面影によく似てた。しかし別人かも?

サラサラとした茶髪のポニーテールの髪型。

やや太いキリッとした長い茶色の眉毛。丸っこい高い鼻。

ぱっちりとした茶色の瞳。ふっくらとした両頬の丸顔。

ピンク色の唇。右側のみ伸びた茶色の細長い前髪。

女性の体格を隠す様に分厚い茶色のトレンチコートを着ていた。

「はーい!久しぶりね!4年ぶりかしら?おっと!この姿じゃ!」

「ちょっと分からないかな?ヒントはフランスよ!私の正体は誰でしょう??」

そのフランス人の20代の女性はくすくすと笑って見せた。

そして美しい茶色の瞳でエアを見た。エアは最初は誰なのか分からなかった。

「もっ!もしかして?魔人フランドール?でも確か10歳未満の・・・・」

「最近、ニューヨークでも目立った活動していたから

本来の10歳未満の少女の姿じゃ目立ってしょうがないから。

賢者の石と自分の魔力を使って成人女性に化けているのよ。

一種のカメレオンの保護色と虫の擬態のようにね。

こうしないと変に人間達が沢山集まって来ちゃうから。

ついでにこの姿ならニューヨーク市内のカクテルバーで赤ワインも飲めるし。

人間の法律では20歳以上はOKでしょ?」

魔人フランドールはにっこりと笑った。

しかもエアはドキッ!と心臓が高鳴る程、愛らしかった。

思わずエアも顔と両耳を真っ赤にした。

直後にエアの脳裏に一瞬だが奇妙な映像が映った。

それは成人女性の姿に化けた魔人フランドールの腹部の女性の子宮の映像だった。

しかも彼女の子宮は普通の人間の成人女性と同じ正常な子宮だった。

更に子宮頸部内にはまるで氷結状態の固形物が入っていた。

彼はなんと何となくそれが何か察した。間違い誰かの精液だ。

さらに内部の生命の源の精子が急激に冷やされて。休眠状態だった。

誰のものかは分からなかった。いや。不意にまるで今しがた昨日の事のように。

氷結状態の固形物の精液と生命の源の精子が誰のものかはっきりと思い出した。

それはセイラムの魔女狩りのあった時代に出会ったフランス人の少年

アキラと言う人物のものだ。いや。そもそもアキラと言う人物は誰?

誰なんだ?誰なのか?もっと思い出そうとしたが。まったく思い出せない。

なんでなんだ?その人物は何者なんだ??良く分からない。誰なんだ?

ふとエアは顔と両耳を真っ赤にして混乱した表情をしているのを

エイダとジルに見られた事で更に恥ずかしくなった。

「そうそう。他にも仲間の魔人ホラーの6体も目に見えない霊体の姿になって

ニューヨーク市内、主にチェルシー地区の各地のどこかに潜んでいるわよ。

出会う確率は大体。そうね。1/256かしら?夜道でばったり会うかも」

するとジルは「いやー」と苦笑いを浮かべた。

「あいつらには流石に夜道でばったり会いたくないわね。」

やがて魔人フランドールもくすくす笑ってこう言った。

「確かに!あいつら夜道で一般人が出食わしたら。

大絶叫かその場で失神か失禁しちゃうかもね。」

それからひとしきり笑うと魔人フランドールはこう名乗った。

「そうね!今日は誰も見ていないようだからいいけど。

人前では人間の名前で呼んで。

勿論、アリスとトリニティにも教えてあげるかしら?ジル、エイダ、エア!」

「え!ええ!いいわよ!」とジル。

「うん!わっ!分かったぞ!」上ずいた声でエア。

最後にエイダは人間の名前を尋ねた。

すると魔人フランドールは人間の名前を答えた。

 

(第65章に続く)