(第12章)コンピューターサーバー

(第12章)コンピューターサーバー

 

「あなた最低な男ね!」とエイダは両腕を組んで軽蔑するような眼差しで宮田を見た。

「きっと!この『静かなる丘』の力に引き寄せられたんだろうな。

あんたは罪を背負った。だからこの街に呼び寄せられたんだ。」

「はあ?何言ってんの?街が俺とアミコを呼んだ??おいおい!そんな与太話なんか!

誰が信んじっかよ!馬鹿か?頭がいかれてんのか?俺はなんも悪くないんだよ!!」

「どうかな?僕もきっとさっき見た前世の記憶。闇によってここへ来たんだ。」

「前世?前世?はい!出ました!オカルト話!!馬鹿な話だ!!」

「どうやら彼の言う事はあながち嘘じゃないみたいよ。」

エアと宮田の会話にエイダが割って入った。

「嘘だね!この世に怖いものなんかねえ!!俺は宮田様だ!」

エアは(どこまでも高慢な奴め!)と心の中で怒鳴った。

宮田は「とっ!とにかくだっ!俺は悪くない!悪くないからな!!」

そう叫んでエアを指さすと彼は『STAFF LOUNGE』から出ようとした。

しかし戸口で立ち止まり、振り向いた。

「ただ。この町はなんかイカれてる。悪い予感がする。それは認めよう。

何せあの先の部屋の『CONFERENCEROOM』

で凄い変な造形物を見ちまった!」

「凄い変な造形物?それはなんだ?」

「なんと言うか黒光りする液体の中にパソコンのあれみてえのが。

なんだか分かんなくて気味が悪い!

アミコを見つけたらとっととこの街をおさらばする!

あとはあんた達がなんとかしな!俺はもうこれ以上の事に足は踏み込まん!!

ほとぼりが冷めるまで隠れるつもりだったが。

ほとぼりが冷めるまで隠れる場所は別の場所にする!!」

そう言いたいだけ宮田は言うとまるで逃げるようにドアを開けて、

部屋の外へ素早く出て行った。エイダとエアはその先の

『CONFERENCE ROOM』の木製の扉を見ると近づいて行った。

「ああ、この扉の先に強い気配を感じる」とエア。

「気お付けて!異世界だから何があるか分からないわ!」

「分かっているさ!」と答えるとエアはドアノブに鍵をかけた。

それからゆっくりとギギギと音を立ててゆっくりと開けた。

部屋の中は真っ暗で何も見えなかった。

エイダとエアはそれぞれ、懐中電灯を付けて辺りを照らした。

何も見えなかった。少なくとも宮田が言ったあの気味悪いものは。

しかしやがて部屋の中が青く発光した。

余りの突然に光で2人は目がくらんで両手で顔を覆った。

しばらく瞼の上で青い光がずっと輝き続けていた。

まさか?UFO?そんな訳ないな。

しばらくして瞼をゆっくりと開けた。

そこは『CONFERENCE ROOM』の筈だった。

その部屋は間違いなく異空間となっていた。

そこは本来の四角い部屋では無く円形で異常に広くなっていた。

しかもその中央には円形の巨大なプールになっていた。

更に内部の水は真っ赤な血液だった。

プールの中央には巨大な鉄の球体とぐるぐる回転する輪があった。

「ここは?一体?何なんだ?こいつは一体??何かの機械??」

エアが呆然と見ていると巨大な鉄の球体と

グルグルと回転する輪は次第に上昇して行った。

更に真っ赤な血液がまるで吸い上げられるようにプールから現れた黒光りする液体の

ファントム(幻影)が吸い取り飲み尽くした。やがて黒光りする液体の

ファントム(幻影)はやがて個体となり巨大な鉄の球体と回転する輪を取り込んだ。

そして完全に飲み込んだ。同時に全身が青く発光した。

すると身体がまるで長四角の銀色の巨大なコンピューターサーバの

ようなものが幾つも形成されて行った。どうやら大事な情報。

しかも膨大な情報が内蔵されているのだろう。

エイダとエアの侵入を感知すると直ぐにそれらを

自ら黒光りした肉体に深く沈みこませた。

宮田はこの一連の動きを目撃したのだろうと2人はすぐに想像出来た。

恐らくこのコンピューターサーバを利用して僕や『静かなる丘』に迷い込んだ人達の

思考や記憶(エアの前世に記憶も含む)行動パターンを

読み取って記憶しているのだろう。

つまりファントム(幻影)が人間を学習している。まるでジェームズ・キャメロン監督映画の『ターミネーター』に登場するスカイネットみたいだな。と思った。

そう考えている間にもファントム(幻影)の頭脳に当たる

器官のような黒光りする肉体は巨大な球体に変形した。

そしてあっちこっちから赤い瞳を持つ眼球を生み出した。

赤い眼球はエイダとエアをじっと見つめ続けた。

しかもそれは何故かでかい顔に見えて余計不気味だった。

お前は(メトロイドマザーブレインかよ!!)

とエアは心の中でさりげなく突っ込んだ。

やがて再び頭脳に当たる器官を持つ肉体ファントム(幻影)は巨大な球体を

青く発光させた。エアとエイダはまた目がくらんで両手で顔を覆った。

瞼の上で青い光がずっと輝き続けていた。

しばらくして2人はまたそっと瞼を開けた。

すると目の前にいた頭脳の当たる器官のような黒光りするファントム(幻影)の

球体の肉体と円形で異常な空間は跡形も無く消失していた。

気が付くとそこには恐らく元の四角い部屋の『CONFERENCE ROOM』

に戻っていた。周囲の部屋は改めて見ようとエアは周囲を見渡した。

その時、また目の前がモノクロとなり幻聴が聞こえ始めた。

(おそらくストークスが言っていた白い仮面を被った黒いマントの怪人さんだろう)

謎の少年とストークスが会話していた。

「私に飲ませたあの黒い液体。あれはなーに?」

「フフフッ!私の肉体の中にある設計図の一部さ」

「つまりDNA?遺伝子?どっちなの?」

「両方さ!後は恋人のエア・マドセンの賢者の石と設計図が」

「そんなのあたしの胎内に取り込んでどうするの?教えて?」

「特別なベイビー!楽園を招く『進化種』を産む事!」

「どうしてそんなものを?『進化種』ってなーに??」

「正確には『進化体』かな?新しい人間の事だよ。

この世界にはもっと優秀な『進化体』が必要なんだ。」

やがて脳裏にざーざーざーピーピーとノイズが走り、幻聴は消えた。

「なんだ?『進化種?』『進化体』???どういう意味だ???」

エイダはすぐにエアの腕に機械を付けて何かを調べ始めた。

やがて機械はエアの血液を分析してデータを合わせた。

結果、彼には人体に害の無い量のホワイトクロジェアの種の幻覚の成分が検出された。

「やっぱり!」とエイダ。

「ホワイトクロジェアって。確か多年草の一種ですよね?」

「ええ、古来この幻覚作用を利用して宗教儀式に使われていたわ。

でも今じゃ!麻薬のPTVの原料にもなっているのよ。」

だから現在は麻薬取締法で許可無しの栽培も密輸も全て禁止しているわ。

貴方とストークスの場合は恐らく宗教儀式で使用された可能性が高いわ!」

「じゃ!さっきのはストークスと僕は宗教儀式を???」

「多分、ネイティブアメリカンが本来やっていたやつをね」

エアはまた部屋の周囲を見渡した。

部屋の中には大きな四角い机が中央に置かれていた。

また部屋の角には木製の棚が置いてあった。

木製の棚からエイダは『病院の鍵』を拾った。

エアは大きな四角い木製の机からスライド式のUSB2・0メモリーを見つけた。

エアはパソコンの代わりに自分の端末機に接続して、データをすぐに解析した。

すると膨大な大容量のデータが画面に表示された。

エアはすぐにその大容量のデータをHCFセヴァストポリ研究所の仲間の

保安部隊隊員の一番のメカギーク(機械オタク)のグーフィと言う

同い年の改造パソコンに送信した。

彼にその大容量のデータの分析を頼んだ。するとグーフィは快く引き受けてくれた。

「OK!分析したら!結果を分かりやすく報告するよ!」

「分かった頼む!グーフィ!」と言うとエアは端末機の無線を切った。

「さあー用が済んだら行きましょう!」

エイダに言われ、エアは『CONFERENCE ROOM』から出た。

そして『STAFF LOUNGE』を出た。

2人は廊下を歩きながら『KITCHEN』や『DIRECTOR,SOFFICE

のドアを探った。しかしどれも障害物があってドアを開ける事が出来なくなってたり。

何がか突っかかっていてドアを開ける事が出来なかったりして入れなかった。

また病院地下の鍵をエイダが鍵穴を入れて回した。

するとカチャっとドアが開いた。

2人は無言で慎重に両手にハンドガンを構えて降りた。

病院地下は真っ暗だったので白いライトで周囲を照らした。

2人は暗い廊下を両手でハンドガンを構えて慎重に進んだ。

暗い廊下はどこまでも暗く良く見えなかった。

それから2つ程の青い色の扉があった。

エイダとエアは手当たり次第、その3つの青色の扉の先の部屋を調べた。

しかしどちらも壊れて開かなかった。

 

 

(第13章に続く)