(第25章)いつまで?いつまで?いつまで?いつまで?いつまで?いつまで?

(第25章)いつまで?いつまで?いつまで?いつまで?いつまで?いつまで?

 

エアとホワイトフランドールが肉屋に向かって『CIELO ARE』

の通りを歩き始めてから間も無くして白い霧の中から新しいクリーチャーが現れた。

そのクリーチャーは体毛が一切無いピンク色の肌をした鋭い牙のある

大型クリーチャーが3匹いた。そして大型犬クリーチャーの『グローナス』は

大きく次々とエアの顔面近くまでジャンプして飛び掛かった。

しかしエアは直ぐにホワイトフランドールを背中に隠した。

同時にハンドガンの引き金を引いた。

銃口から放たれた弾丸はグローナスの額、腹部、胸部を次々と撃ち抜いた。

3匹のグローナスはそのまま道路の上に次々と横倒しとなった。

そして横倒しになった3匹のグローナスは血溜まりを残してすぐに動かなくなった。

ホワイトフランドールは「はあ」と声を上げた。

エアは別方向から現れたグローナス3体をハンドガンで倒した後に

エアはホワイトフランドールを見た。

ホワイトフランドールが「危ない!」と大声を上げた。

エアが振り向いた瞬間、4体目のグローナスがエアの右肩を噛み千切った。

エアの噛み千切られた右肩からは赤い血が噴き出した。

しかしすぐにエアはハンドガンでグローナスをあっと言う間に倒した。

エアは救急キッドで怪我の治療と狂犬病の注射を打った。

ホワイトフランドールによるとあのグローナスはかつて魔人フランドール

だった頃に苦手だった大型犬のイメージが具現化したもののようだ。

幼い頃(今でも幼いが)とにかく苦手だったらしい。

また5体目がいたがエアとホワイトフランドールは素早く飛び跳ねながら

噛みついてくるグローナスの攻撃と追跡をうまく左右に避けて先へ進んだ。

エアはグローナスの攻撃を回避しながら

ホワイトフランドールに気になる事を聞いてみた。

「それでサトル・ユウマの異世界には他にもどんな特徴があるんだ?」と。

ホワイトフランドールは答えた。

「それが良く分からないの。私の異世界じゃないから・・・・。

根本的に別の異世界の生物だと思う。つまり別の種族」

「成程、でも両者は敵対している訳ではなさそうだな。

元々サトルの・ユウマの異世界の種族が『静かなる丘』の街にいて

後で魔人フランドールからフランの異世界が現れた訳か・・・」

するとまた白い霧の中から今度4足歩行のサル型クリーチャーが現れた。

ホワイトフランドールはグローナスよりも更に怯えた。

しかもそのサル型のクリーチャーは複数街を徘徊していた。

サル型クリーチャーはエアに接近すると全身からオレンジ色の炎を放った。

エアはまともに炎を食らい両腕を上げて後退して怯んだ。

その隙をついてサル型クリーチャー(ロンパファイヤー)はエアを両手で

仰向けに押し倒して口から触手を垂らした。続けてエアの体に噛みついた。

バリバリと衣服が破られかけ、肉を噛み千切られそうになった。

しかしエアはロンパファイヤーの右頬を左拳で殴りつけて吹っ飛ばした。

素早く起き上がった。続けてロンパファイヤーに向かって跳ね回って移動する

狙い難さも苦も無く何発も銃弾を撃ち込み、倒した。

他にも複数いたがエアは逃げ回り、大回りと走りながら

距離を取ってハンドガンを撃ち込み、全滅させた。

エアは怯えるホワイトフランドールに「もう!大丈夫だ!」と声を掛けた。

ホワイトフランドールはパチパチと炎を上げたまま、

血溜まりの中で動かないロンパファイヤーを見てこう説明した。

ホワイトフランドールは憤りを覚えつつもエアに説明をしていた。

「こいつらは昔の記憶のトラウマから産まれたの。ええ!間違いないわ!

私の恋人で前世のアキラを傷付けて『魔女の夫』蔑んで火刑にした

大人達の恐怖心が具現化したものよ!だから貴方を真っ先に襲ったの!」

「成程!通りで全身が良く燃えている訳か!!」

エアは苦虫を噛み締めた表情の後、前世での記憶が蘇ったのか頭に痛みを感じた。

そしてエアは無性に腹が立ち、ロンパファイヤーの身体を

何発か力を込めて蹴飛ばした。更に踏みつけた。

これでエアは少しばかり気持ちが楽になった。

しかし残念ながら他にもロンパファイヤーはいるらしい。

でもエアはこれ以上関わりたくなかったのでホワイトフランドールと共に先へ進んだ。

後ろからロンパファイヤー3体が跳ね回りながら追って来た。

しかしエアもホワイトフランドールも完全に無視した。

『CIELO ARE』通りを歩いていると

近くにレンガの壁近くにある二又に分かれた

木の右側の枝の上にはプラーンプラーンと左右に揺れて力無く両腕と

両脚をダラリと下へ伸ばし、首を右側に力無く曲げて口から涎を垂らし、

茶色の瞳をぱっちりと開けたまま息絶えていた。

その首吊り自殺体は男性だった。

そしてもう一本の木の枝には同じような女性の首吊り自殺体が吊るされていた。

どうやら自ら自殺してしまったようだが?一体?何故だ?精神的に追い詰められて?

緑の芝生には自殺した男女のメモがそれぞれあった。

「私は大きな間違いを犯してしまった!私は反メディア団体ケリヴァーのメンバー!

ああ、私はなんて罪深いのだ!!若村はとんだペテン師だ!

私は親としてやってはいけない事をしてしまった!

息子のゲームを取り上げて捨てたのだ!息子は泣き叫び『返して!』と叫び続けた。

私はそれを頭ごなしに怒鳴りつけて黙らせた!私は気が狂いそうだ!

あの息子の悲しみと怒りを具現化させた怪物が俺の頭に向かって叫び続ける!

すまない息子よ!許してくれ!私は罪の重さに耐えられ・・・・・」

どうやらその男性は自分がした罪の重さに耐えかねて自ら死を選んだようだ。

ホワイトフランドールとエアはもう一枚の女性自殺者に遺書を重苦しい表情で読んだ。

「私の何が間違っていたのよ!ああ若村様!!

私は母親として何が間違っていたの???

いつもおかしなでかい口から。いつまでも。いつまでも。いつまでも。

いつまでも娘が『ゲームを返して!』と叫び続けている!

耳を塞いでも目を逸らしても!あの怪物の声も姿も消えない!

夢なの?しつこい!しつこい!やめて!やめて!私は正しい判断をしただけなのに!!

どうして叫び続けるの???もう!嫌!耐えられない!ああ!神よ!神よ!

私をこの地獄の苦しみから救って下さい!!私は何も悪い事をしていないのです!

私の魂をどうか!楽園へ!アーメン!!」

「臆病者だな!目の前の自分のした事から逃げた!」

エアはまた腹立ちまぎれに吐き捨てるようにそう言った。

ホワイトフランドールは重々しい表情でずっと黙っていた。

そして青い瞳で木の枝にロープをくくりつけて首を吊って自殺した

2人の男女をじっと見た。更にエアは2つの木の回りの芝には恐らく彼らを

悩ませている怪物に殺されたと思われる男女の死体がバラバラに転がっていた。

しかも全身を切り刻まれた男の死体や鼻や口を塞がれて窒息死した女の死体も転がっていた。さっきまで白い霧のせいで見えていなかったので

急に見えて2人は驚いて後退した。

さらに天空から甲高い声でひたすら壊れた機械のようにやかまし

叫び続ける声が聞こえ始めた。エアとホワイトフランドールは天空を見上げた。

天空には異形の怪物がいた。とりあえず一体だけのようだった。

その異形の怪物の姿は極端に小さい頭部を持ち、目や鼻は持たず

縦に裂けたぽっかり空いた丸い口を持つ。

また背中からは真っ黒なカラスに似た羽根を生やしていた。

そして屋外の霧の中の空中を自由自在に飛び回り、甲高い声でひたすら

壊れた機械のように叫び続けた。この異形の怪物の名前は『イツマデン』である。

「いつまで!俺からゲームやテレビを奪い続けるんだ!!

いつまで!俺からゲームやテレビを奪い続けるんだ!!!

いつまで!俺からゲームやテレビを奪い続けるんだ!!

いつまで!俺からゲームやテレビを奪い続けるんだ!!」と。

それからイツマデンはエアを見つけるとヒューと空を切り、急降下した。

続けて両腕を伸ばして8対の鋭利な長い爪で切りつけた。

エアは左肩と右頬の皮膚をピッと切り裂いた。

右頬の傷口から赤い血が滲み、流れた。

左肩から血が噴き出した。エアは素早く後退した。

更に空を飛び続ける人型クリーチャーのイツマデンは顔全体を覆い尽くすような

大きな口でエアの顔面を飲み込み、鼻と口を塞いで窒息死させようとしてきた。

エアは素早くサッ!と走って回避した。

続けて振り向きざまに真横からハンドガンからショットガンに持ち変えた。

更にショットガンの引き金を引いた。

そして真横からイツマデンの身体を吹き飛ばした。

更にもう一発撃った。

イツマデンは「キーツ!」と高い声を上げて道路に墜落した。

そしてイツマデンは血溜まりの中で息絶えた。

ホワイトフランドールのによるとイツマデンは反メディア団体ケリヴァーの

メンバーの両親、先生等の大人達によって大切なゲームを捨てられたり。

テレビを捨てられたり。隠されたり、目の前でゲームを

踏みつけられたりして完全に粉々になるまで壊された子供の怒りと無念が

『静かなる丘』の力で具現化したもののようだ。

からしつこく大人達にしゃべり続けて精神的に追い詰めていたのであろう。

だから彼らの叫びによって罪悪感に駆られて異形にならなかった正常な人間の

反メディア団体ケリヴァーが精神的に追い詰められて何人かが自殺するか

彼らに殺されたようだ。「自業自得だな。全く何を考えているんだか・・・・」

エアは呆れ果てた口調でやれやれと首を左右に振った。

その時、道路にポケットラジオが落ちているのに気付いた。

エアが拾ったポケットラジオの電源を付けた。

 

(第26章に続く)