(第26章)復讐者

(第26章)復讐者

 

エアが拾ったポケットラジオの電源を付けるとノイズ音が大きく鳴り始めた。

そしてエアはポケットラジオのノイズ音が大きく鳴っている方を見た。

すると白い霧の中からクリーパー、ワンバック

ツーバックとベビーバックの10体余りのクリーチャーが現れた。

幸いにもまだこちらに気付いていないらしくバラバラに歩き回っていた。

エアは彼らに気付かれない様にホワイトフランドールと共に先へ進もうと

道路を歩き始めた。すると目の前に突然、リビドー・ストランディング(性の座礁

が出現した。そしてリビドー・ストランディング(性の座礁)は

たちまちエアとホワイトフランドールの全身を覆い尽くした。

2人が瞼を開けるとトンネルの異空間に変わっていた。

そこはプレステーション5専用ソフトの『ガメラ・邪神イリス再誕』の京都の

とある洞窟が『静かなる丘・サイレントヒル』の力によって具現化されていた。

その洞窟はゲームの設定通り、超古代文明アトランティス

人々が自ら創造した生体兵器。

(つまりBOW)としてイリスを研究開発した儀式用の部屋だった。

BOWとはバイオ・オーガニック・ウェポンの略で

正確には『有機生命体兵器』である。

更に壁には恐らくこのギャオスかあるいはイリスを創造したとされるアトランティスのテロリスト組織が残したとされる経典の文字がアトランティス語で刻まれていた。

アトランティス大陸と全ての大陸はギャオスと

イリスの手で大いなる深淵の扉が開き。

光無き魔の混沌が訪れ、たくさんの文明は暗黒の血の池に沈むだろう。

そして陽のイリスと陰のイリスの二柱は弱肉強食の理の巫女と

転生の理の巫女の力によって2神柱のイリスは世界の受胎の儀式を始める。

イリスと巫女の新たなる世界の創世されん。

そしてイリスと巫女とギャオスは再び眠りにつくだろう。」とあった。

「これはゲーム版ガメラの設定だな。」

「きっと『オペラ座の怪人』も無類の特撮好きね。」

「彼は僕と同じ好きなものがあるな。似た者同士かな?」

「そうね。貴方も特撮好きだものね。仮面ライダークウガとかアギトとか」

ホワイトフランドールの言葉に両頬を赤くして照れ隠しをした。

「これは??彼のメッセージ??ゲームの世界を具現化させた理由か」

「もしかしたら?確か『映画版のガメラ3』では本作の主人公の比良坂綾奈は

ガメラに両親を殺されたから彼女はガメラを憎悪して

イリスと共にガメラに復讐しようとしている設定だった。」

エアは改めて研究所の壁に刻まれたオペラ座の怪人本人のメッセージを見た。

「もしかして?これは宮田家族の殺害予告か?」とつぶやいた。

それはガメラ3邪神覚醒の映画の有名なキャッチコピーをもじっていた。

「僕は宮田フーズと従業員と社長の家族を許さない」と。

また別のアトラスのゲームのメガテンⅢの高尾裕子の台詞も刻まれていた。

『この世界はまた生まれる為に死んで行かなければならない』と。

「そういえばこのゲームはアトラスのゲームだからやっぱり

ガメラ・邪神イリス再誕』と『真・女神転生Ⅲ』も設定と何となく似ているよな。

実際、SNSのハッシュタグに『ガメテン』と『真・ガメラ転生』が

出てネットで話題になったからな。」

「彼は貴方と恋人を調べている内に自分と同じ趣味を持っている事に

気付いた。だからこんなメッセージを残したのよ。」

「とすると彼は『宮田フーズ』に復讐すると?この『静かなる丘』の力で?

宮田家族と従業員を憎んでいるならマズいな。」

エアは他にも誰かが落としたメモを見つけたのでそれも拾った。

メモの持ち主は『リヴィアのゲラルド』と言うらしい。詳しくメモを読んだ。

「今日、私の親友の吟遊詩人のダンディリオンとトリス・メリーゴールドと

ヴェンガーバーグのイェネファーの女魔術師達に強引に招かれて私は苦手な

魔法のゲート(門)の発明家の実演ショーをやらされる羽目となった。

勿論、私はは断ろうとしたがヴェンガーバーグのイェネファーに

『そろそろ自分の苦手は克服すべき』だと言われて。

トリスやダンディリオン。挙句に私の娘のシリにまで言われてしまい。

渋々、私は偉大なる魔術発明家の男の最新の一般人や貴族でも魔術の技術も

必要とせずボタン一つで手軽に遠くへ移動できる画期的な人工的な魔法の門(ゲート)

を通る事になった。成功すればトゥサンから二ルフガードまで一瞬で移動が可能で。

気軽に危険な目に遭う事無く旅行やウィッチャーの仕事や物資の搬入が可能だと言う。

しかし悲劇は起こった。私と面白がって参加した軍医のシャニーは魔法の門(ゲート)

を通った途端に原因不明の強力な魔力のエネルギーが魔法の門(ゲート)

に直撃してしまい。魔法の門(ゲート)は誤作動を起こした。

そして魔力の強い干渉波によって完全にイカれた魔法の門(ゲート)は

二ルフガードではなく別の異世界アメリカ合衆国に不時着してしまった。

そこはとにかく私達とは文化も人間も全く違っていた。

だから魔法の門(ゲート)はロクな目に遭わない。

ただ魔法の門(ゲート)ですら誤作動させる程の魔力は念の為にウィッチャーの

仕事として調べる必要があるようだ。さてと私とシャニーはまずは宿を確保しないと。

はあーやれやれだ。シャニーまで途方に暮れている。

全く!!あの発明家め!!いや。怒っても仕方がないな。」

「強力な魔力?もしかしたら・・・・・」

「あのアキュラスって言う男の子が魔人フランドールにした

神降ろしの儀式で放出された魔力か?」

「もしかしたらそうかも知れない。放出された魔力が。

『静かなる丘』の力で拡散して。」

そう言うとエアとホワイトフランドールは深刻な表情を浮かべた。

どうやら彼女の表情から察するに思った以上に深刻な状況のようだ。

 

一方。エアやエイダ、ホワイトフランドールとブラックフランドールは別に

『静かなる丘』に入って行動していた冴島鋼牙とシェリル刑事は。

『TOSOUTH PARK』の通りから『静かなる丘』へ入った。

そしてしばらく歩いているとあっと言う間に街は白い霧に覆われて行った。

すると鋼牙の指に嵌められた髑髏の指輪の魔導輪ザルバが

カチカチと金属音を立ててしゃべり始めた。

「気おつけろ!鋼牙!もうすでに魔力を帯びた霧が街中を覆っている!

しかも白い霧には魔人フランドールの魔力を強く感じる!

やはり彼女は例のカルトの儀式に巻き込まれたのだろう!

いつ!彼女の心の闇が生み出した怪物が出てもおかしくないぜ!

まて!鋼牙!また別の。何だ?魔力?人の気配?」

「どうした?まさか?シェリル刑事の事か?」と鋼牙はザルバに質問していた。

実はこの街が白い霧に包まれてから僅か1分後。

鋼牙の急に真横に立っていた筈のシェリル刑事は白い霧に紛れて

姿を消し、影も形も無かった。つまり失踪したのである。

鋼牙は仕方が無くシェリル刑事を探しつつも独りで『静かなる丘』を調査していた。

鋼牙は『モーテル』を通り抜けて『RIVERSIDE DR』を歩いていた。

それからモーテルのある角を曲がり、とある倉庫の前で足を止めた。

魔導輪ザルバはカチカチとこう言った。

「おいおい!どうやら魔人フランドール以外の魔力の持ち主が

ここに潜んでいるらしいな。シャッターは開けっ放しだぜ!」

鋼牙が見ると確かに倉庫のシャッターは開けっ放しだった。

「どうやら!あのリビドー・ストランディング(性の座礁)から感じた

強い魔力とよく似ているな。調べた方が良さそうだぜ!」

「そうだな!」と答えると鋼牙は倉庫の中に足を踏み入れた。

するとガシャアン!とシャッターが落ちて、入り口は閉じた。

鋼牙は反射的に振り向き、やれやれと首を左右に振った。

そこは何処の街にも良くある広い倉庫だった。

広い倉庫には色々な雑貨や物や品物、生活用品、古びたVHSビデオテープ。

パソコン、スマートフォン、電化製品が棚の上に並べられていた。

しかしすぐその静かな見慣れた景色は一変した。

またもや何処からかあの刑務所で聞いたサイレンの音が響いた。

ウウウウウウウウウーウウウウウーツ!ウウーウウウーウーウーツ!

ウウウウウウウウーウウウウウーツ!ウウウウウーウウウウッ!

長々と続くサイレンの後にパリパリと音を立てて壁や天井の灰色のタイルや

鉄板が次々と剥がれ落ち、見る見る内に真っ赤な錆と血に覆われて行った。

それから周囲にあった雑貨物や電化製品、生活用品、古びたVHSビデオテープ。

パソコン、スマートフォンが置かれている棚も全て消え失せて行った。

周囲は長四角形の何もない空間になった。するとザルバは鋼牙にこう説明した。

「ここは外の人間。あるいは他の怪物達が足を踏み入れると強制的に

裏世界化してしまうようだ。まるで何かを守っているような・・・・」

「棚にあった沢山の物達かも知れん!」と鋼牙は答えた。

さらに鋼牙は床を見た時、思わずギョッとした。

「ザルバ!これは?床の下に人間が沢山いるぞ!」

そう、表世界から裏世界へ変わった直後、床には真っ赤なガラスが一面に

敷き詰められており、その下の地下の広い空間には鋼牙が目視で

数えて数人はある程度は把握した。

結果、囚われている人数は約20987万人以上は確実にいた。

 

(第27章に続く)