(第33章)パペットエイダモス

 

(第33章)パペットエイダモス

 

エア、鳴葉、ホワイトフランドールは突然現れたアキュラスを

見るなり、アキュラスに強い敵意を持ち、鋭い視線を向け続けた。

更にバアン!と大きな音と共にアルミケラ病院に出現したブラックフランドールが

黒い霧と共に姿を現した。やがてブラックフランドールはエア、鳴葉。

そしてホワイトフランドール楽しそうに鼻歌を歌いながら赤い瞳で見た。

彼女はにっこりと笑って見せた。それから小さな身体をクルリと回転させた。

続けて右腕を上げて高らかに大声を上げてこう言った。

「さあ!ショータイムよ!」

そう言うとブラックフランドールはあっという間に闇の中に消えた。


【東方PV】Who Killed U.N.Owen【LizTriangle】

「まて!」大声をエアが上げた直後、バサッバサッ!と闇から大きな羽音が聞こえた。

最初は遠くから聞えて来た。しかし次第に大きな羽音は近づいて来た。

やがてフッ!と巨大な昆虫が姿を現した。エアは「エイダさん!」と声を上げた。

しかしエイダは意識が無いのか全く反応しなかった。

背中には昆虫の正体の巨大な蛾の成虫が張り付いていた。

どうやら寄生しているらしい。鳴葉も顔を青くして両手で思わず口を塞ぎ、

背筋をブルブル震わせた。しかもエアがパッと初めて見る限り、巨大な蛾の成虫は

エイダの背中の上部にしっかりと張り付いていて銃やナイフ等による

物理的な引き離しは不可能だと思った。

しかも何よりも下手に引き離したらエイダ・ウォンに実害を負わせる危険があった。

大量出血して死亡してしまったら大事にもなりかねない。

巨大な蛾は2対の真っ白な毛に覆われた触角。

三角形の真っ白な頭部。真っ白な丸々と太った上半身の胸部に下半身に当たる

下腹部はエイダの白い肌の両脚の真下に向かって伸びていた。

腹部の先端に鋭い針があった。更に2対の赤と白の混じった巨大な

三角形の羽根が生えていた。そして脚は存在せずに胸部がもはや宿主となった

エイダの背中の皮膚と完全に融合している事が横に回って見たエアの茶色の瞳の

目視で分かった。正面に回り、エアは寄生されているエイダの顔を見た。

彼女は生きていた。しかし茶色の瞳を虚ろにして口も僅かに開けて

苦しそうにヒューヒューと呼吸していて、とても苦しそうな表情をしていた。

とにかく呼吸がおかしかった。このままだと死んでしまうかも知れない。

「クソっ!」とエアは両手にマシンガンを構えた。

しかし引き金は指が震えて引けなかった。

このまま撃てば宿主のエイダに弾が当たって致命傷を負ってしまう。

エアは止む負えずマシンガンを下へ降ろした。

しかしその直後、パペットエイダモスはエアに急接近した。

続けてエイダ本人を人形のように操り、右手と左手でエアの

両頬にバシッ!バシッ!と張り手を炸裂させた。

エアは両頬の激痛で力が抜けて、マシンガンを床に落とした。

更にパペットエイダモスは右腕と左腕で器用にエアの喉笛に向かって

高速で叩きつけて来た。エアは宙へ飛んで仰向けに倒された。

エアはどうにかして立ち上がるが。更にパペットエイダモスは宿主のエイダを操って

両脚を前後にブンブン振り、エアの下腹部を赤いハイヒールの爪先で蹴飛ばした。

エアは体をくの字に曲げた。そしてまた吹っ飛ばされて仰向けに倒れた。

エアは反撃の為にマシンガンを両手で構えた。

しかしエイダ本体に弾が当たる危険性があった。

故に寄生している巨大蛾の成虫を倒しても道連れに

エイダを殺してしまう危険性があった。

その為、エアは攻撃で出来なかった。

パペットエイダモスはそれをいい事に宿主のエイダ本体を操ってエアの

顔面にパンチを食らわせた後、エイダの片手に持っていたマシンガンで

攻撃する為に右腕をまっすぐに伸ばした。

そして引き金を引いてマシンガンで攻撃して来た。

パパパパパパパパと言う連続音と共に無数の弾丸がエアに向かって放たれた。

エアは鳴葉に弾丸が当たらない様にうまくマシンガンの弾の軌道を大きく

左右に逸らす様に走り続けて回避し続けた。そしてマシンガンの弾丸を

撃ち尽くすとあっさりとマシンガンをぽいっと捨てた。

それを見ていた鳴葉が自衛の為に落ちていたマシンガンを取ろうと走り出した。

「おい!何を考えているんだ!」とエアは慌ててあとへ続き彼女を止めようとした。

鳴葉は床に落ちていたマシンガンを拾った。そして肉屋で見つけたマシンガンの弾丸を

空のマシンガンの中にリロード(装填)した。そして立ち上がった。

しかしその瞬間、パペットエイダモスは大量の毒液を鳴葉に向かって放った。

エアが鳴葉の身体を両腕で掴み、後退した。幸いにも毒液はビシャッと床に落下した。

「全く!無茶をするな!死ぬ気か?」とエアは一喝した。

「ごっ!御免なさい!ぐっ!うっ!」と鳴葉が謝罪した直後に

パペットエイダモスの下腹部の先端から伸びた

毒針が鳴葉の背中に深々と突き刺さった。

やがて鳴葉の顔はみるみる血の気が失せて青くなった。

更に額から大量の汗を流した。

彼女の両茶色の瞳は虚ろになった。更に激しく咳き込んだ。

そしてあっと言う間にバタリと床に倒れてしまい全身が麻痺して

指一本も動かせなくなっていた。呼吸も次第に荒くなって行った。

「鳴葉さん!鳴葉さん!くそっ!毒か?マズイ!」エアは心から大きく焦っていた。

ああ畜生!このままじゃ!このままじゃ全滅だ!!どうすればいい?

とにかく何とかしないと!エイダさんと鳴葉さんを助けないと!!

落ち着け!落ち着け!考えろ!考えろ!どうすりゃいい?何か方法は?

あのエイダさんに寄生している巨大蛾をうまく引き離せば!!

パペットエイダモスは今度はエアに向かって下腹部の先端から

伸びた毒針を刺そうと近付いた。しかし素早くエアは右側に向かって走り、回避した。

また大量に撒き散らされた毒液も右側に向かって走り、回避した。

このままじゃ!みんな!やられる!!

するとホワイトフランドールがエアに向かって大声を上げた。

彼女は何かを言っていた。しかしパペットエイダモスのまるで超音波の

ような甲高い鳴き声にかき消されて何も聞こえなくなった。

きゃああああああああああああああっ!!きゃああああああああああああああっ!!

しかしエアは全細胞の賢者の石の力を活性化させて更に聴力を限界にまで高めた。

やがて徐々にツマミを大きくするようにホワイトフランドールの声が聞こえ始めた。

最初は小さかったが徐々にはっきりと声がどんどん聞こえて来た。

そしてようやくはっきりと「エア!アグラオフォティス!魔除けよ!」

と聞こえて来た。

エアはあの暗号数字のメモを解いた時に『静かなる丘』の入り口でフランの車で

手に入れたあの銀色のペンダントの中に入っていた赤いカプセルを思い出した。

しかしあれは「万が一の為に残す」と言うフランのメモを

思い出してしまい使えずにいた。

しかし直ぐに一緒に手に入れた赤い液体の入った霧吹き機を思い出した。

エアは直ぐに懐から赤い液体に満たされた霧吹き機を取り出した。

そしてパペットエイダモスは下腹部の毒針と毒液でエアを更に追い詰めようと

一気にエアに急接近した。エアはタイミング良く霧吹き機を両手でしっかりと構えた。

彼は無我夢中で霧吹き機のポンプのレバーを指で何度も高速で動かした。

同時に大量の赤い液体は空気中へ一気に霧となって一直線に

パペットエイダモスに向かって直撃した。

エアは霧吹き機から赤い液体を周囲に放ちながら

パペットエイダモスの周囲を走り回った。

しばらくしてパペットエイダモスは激しく苦しみ出した。勿論、エイダもである。

パペットエイダモスは赤い霧を浴びて激しく苦しみ始めた。

エアは霧吹き機の中の赤い液体をパペットエイダモスに放ち浴びせ続けた。

エアはパペットエイダモスが近付き、攻撃する度に回避しながら

霧吹きの赤い液体で攻撃し続けた。そしてパペットエイダモスは攻撃に集中出来ず

激しく苦しみ続けた。やがてパペットエイダモスは悪魔に対する魔よけの効果で

蛾本体は激しく苦しみ続けた挙句にとうとうエイダ・ウォンの背中の上部に

張り付いていた蛾の寄生体部分がビリッと音を立てて剥がれ落ちた。

エイダはそのままうつぶせに倒れた。こうしてとうとうエイダは寄生状態から脱した。

よしっ!よしっ!これで奴に!!エアは大喜びして攻撃しようと思った。

蛾本体は甲高い悲鳴を上げ続けていた。

どうやら蛾本体は宿主のエイダを失った事で動きが大分鈍くなってきた。

更に羽音もエイダに寄生している時は力強く羽ばたいていた。

しかし今は宿主のエイダを失い、弱々しく羽ばたいていた。

どうやらかなり弱体化したようだ。

そしてエアは今までのお返しと言わんばかりに両手でショットガンを構えた。

続けて蛾本体になっても毒液や毒針で攻撃しようとエアに一気に素早く近づいて来た。

しかしエアはあわてず騒がずショットガンの銃口を蛾本体に向けた。

そして何度も何度も引き金を引き続けた。

ズドオオン!ズドオオン!ズドオン!とショットガンの弾丸が何度も何度も直撃した。

その度にビチャッ!ビチャッ!と真っ赤な血が周囲に飛び散った。

エアは容赦なくショットガンで攻撃し続けた。

するとあっさり蛾本体は力尽きた。

どうやら宿主がいなければ自らの生命を維持できないようだ。

巨大な蛾の本体はグルグルと回転した。

続けてゆっくりと仰向けにひっくり返って倒れた。

そしてヒューッと空を切る音と共に一直線に道路に向かって落下して行った。

 

(第34章に続く)