(第41章)進化体

(第41章)進化体

 

無線のスピーカーを通してグーフィ博士は話を続けた。

「実際!この太陽の聖環が右掌に現れた若い女性達は

全員、共通して本能的または原始的や野生に近い行動を取るようになるようだ。

つまり!彼女達の肉体や精神は目に見える物質世界と

目に見えない異世界と密接に繋がってしまうようだ。

つまり彼女達はリビドー・ストランディング(性の座礁

に迷い込まずとも日常的に異世界と異生物が見えるようになる。

やがて彼女達はリビドー・ストランディング(性の座礁)かあるいは

異世界の表世界か裏世界に徐々に取り込まれて行ってしまう。

そうなると失踪となり、僕達の力じゃどうしようも無くなる。

しかも彼女は必ず全員『絶滅と進化』の夢を見る。

いわゆる終末の黙示録のようなものだ。

それを見続けて初めて世界の環境が変わってしまう事を知る。

すると自然に体内の遺伝子のエンハンサーが霊的な力で調整される。

するとさっき行った本能的、原始的、野性的に近い本能を取り始める。

つまり食欲が増して良く食べるようになる。

しかも太らなくなる。

更に異世界やリビドー・ストランディング(性の座礁)の中に自ら連れて

行かれるようにドンドン自ら望んで入って行くようになる。

更に自分の個体の種を進化させる為に異生物と迷わず交わり

SHB(サイレントヒルベイビー)を妊娠させようとする。

彼女達は気にしない。自らの種を進化させて生き残ろうとしか考えていないからな。

勿論ある意味合意の上さ。話が出来なくても本人は望んでいる。

そんな状態なんだ。でも一部の女性達、シェリル刑事やアイリーン・ガルビンさんの

ように愛する夫や彼氏のいる現世の世界で暮らしたいと強く望み続けて原始的な本能に

抵抗し続ける女性達も多数いるようです。異世界やリビドー・ストランディング

(性の座礁)に飲み込まれない様に異生物との関りを拒んで正気を保っている

彼女達は今でも日々日常の中で本能と太陽の聖環の力と戦っているようです。」

「つまり太陽の聖環の力に当てられても理性を保っているか?

そして進化した人間と動物が暮らす楽園が創造されると?」

「ああ、とにかくその状態をどうにかしないと」

「分かっているよ!そろそろ出発するよ!」

「おお!そうか!あともうひとつ!これから行くであろうモーテル!

あそこは観測結果からして。あのモーテルの内部ではいわゆる

リビドー・ストランディング(性の座礁)で確認されるリビドー・ミストが

高濃度で検出されているんだ。しかも街の各地に拡散していたものが一か所で

融合してより巨大なリビドー・ストランディング(性の座礁)となっているようだ。

しかも何故か異世界神の力の源の魔人フランドールの魔力と

賢者の石の力もより強まっている。

それに惹かれて大量のクリーチャー達が集まりつつあります。

しかもアルミケラ病院の異世界や倉庫の異世界のようにここにも沢山

の太陽の聖環を持つ若い女性達がいるようです。気おつけて下さい。

そこはかなり危険地帯なのかも知れません。」

「分かった。とにかく行って警戒しつつも先へ進むよ」

そしてようやくグーフィとの会話を終えて無線を切った。

エアと鳴葉とエイダと共に先へ進み出た。

「大丈夫かしら?不安なんだけど・・・・」

不安な表情の鳴葉にエイダは優しくこう話した。

「大丈夫よ!私達は一応、戦闘のプロよ!

何かあったら私達が異形の怪物を倒してあげる!!

エイダは鳴葉にぱちっとウィンクをした。

鳴葉はちょっと恥ずかしそうに顔を赤らめた。

エイダとエアはまた鳴葉を守るように先へ進んだ。

3人は『RIVERSID DER』の道路のT字路の

上の方へと歩き、とにかくまっすぐ歩き続けた。

そして『MOTEL』と書かれた木の看板のある建物が見えた。

そして建物の奥の黒い柵と緑の芝生の丘の間の長四角の空間には

出入り用の開く為の長四角の柵があった。

ガチャーッ!キーツ!と音を立ててモーテルの中へ入った。

エアとエイダはモーテルの中へ入ると

ドラム缶や赤い箱が壁に掛けてあったのが見えた。

近くに門があった。しかし肝心の門は銀の南京錠がしてあった。

ガチャッ!キーッ!と音を立ててエアは開けようとしたが厳重に閉ざされていた。

なので開けるのは無理そうだった。しかしそこで初めてエアとエイダが

ホワイトフランドールの姿が消えていた事に気付いた。

「あれ?あれ?ホワイトフランドール??」

エアは戸惑い、音も無く彼女が消えていた事に驚いていた。

つられてエイダも鳴葉も慌てて彼女を

探そうとモーテルの入り口付近の周囲を見渡した。

彼女の姿はまるで陽炎のように消え去っていた。

エイダは何かに気付いたようにさっき厳重に閉ざされていた門の彼方に

大きな異世界に通じる時空の歪みが認識できるのに気付いていた。

「あれ!みて!」と。エアと鳴葉が見ると確かに時空の歪みを認識出来た。

3人は行こうとしても目の前の厳重に閉じられた門のせいで近付く事が出来なかった。

やがてその時空の歪みにホワイトフランドールが入って行くのが見えた。

エアは直ぐに大声で呼びかけた。しかしすぐに時空の歪みの中に入ってしまい。

彼の声が届く事は無かった。間も無くして時空の歪みはあっさりと消え去った。

エアは悔しそうに声を上げたがエイダが慰めた。

それから残されたエア、エイダ、鳴葉は彼女が時空の歪みから

無事戻って来る事を信じて先へ前へ進むことにした。

3人は短い木の板を昇り、ブレーカー近くに木の扉があった。

エア、鳴葉、エイダはモーテルの入り口の中へ入って行った。

 

ホワイトフランドールが入って行った時空の歪みの先ー。

彼女はこの空間があのブラックフランドールが療養所の広場で創造した

空間とはまた違う空間を創造した事は確かなようだ。

しかもリビドー・ストランディング(性の座礁)とも『静かなる丘』の

異世界の表とも裏とも違う第3の異世界と呼ぶべきものかしら?

ホワイトフランドールは周囲を警戒した。

その第3の異世界は白い霧に包まれた街の表世界とも赤い血と錆に

覆われた裏世界とも全く異なっていた。

そこは真っ暗で何も見えなかった。

左掌に真っ赤な炎をどうにか発生させて周囲を照らした。

そして調べてみると隣り合うハチの巣空洞間の壁を突き崩して作られたらしい。

壁はデコボコだらけ、高い天井にはぎっしりと鍾乳石が生えていた。

ところが硬い岩の床は実に異常な範囲に渡って滑らかに仕上げられ、

岩の破片はおろか塵ひとつ見当たらない。

そしてこの事はまるでこの通路だけ除いてこの洞窟から

伸びている側廊の全てに当て嵌るのだ。

あまりにも風変わりなこの状況にホワイトフランドールはただただ当惑した。

そして洞窟全体におどろおどろしい不可思議なものを感じた。

しかもホワイトフランドールはゆっくりと四角い空間を見つけて近付いた。

それは窮極の空間だった。そして空間の中に一人の少女が囚われていた。

誰だろうとホワイトフランドールが接近した。

彼女は驚き、ゆっくりと口を開け、真っ赤な瞳を大きく見開いた。

彼女は少女の名前を叫んだ。

博麗霊夢!!嘘でしょ?どうして?なんでここに??」

ホワイトフランドールは窮極の空間に接近した。

しかしすぐにホワイトフランドールと博麗霊夢の間に

割って入るようにブラックフランドールが現れた。

続けてホワイトフランドールの前でウフフッ!と笑った。

「あーあーあーあー可哀そうな女の子!!

この子はこちら側(バイオ)の世界の

創造神の白痴の魔王ホラー・アザトホースに会ったの。」

「なんですって??霊夢!本当なの!ねえ!霊夢!!」

ホワイトフランドールは叫んだ。しかし霊夢は両手で耳を塞いだ。

どうやら彼女の声と言葉と意味が認識で出来ないようだった。

彼女は極限の恐怖で甲高い声で長々と絶叫を上げ続けた。

「この子の精神は崩壊寸前!!所詮博麗霊夢と言えどもただの人間。

あの白痴の魔王の前では『LOSER(敗者)』でしかないのよ。」

ブラックフランドールは霊夢の右腕に刻まれている青い文字をチラッと見た。

ホワイトフランドールにも見えていた。

「敗者!!だってね!キャハハハハハッ!」

ブラックフランドールは急に不安定で狂ったように長々と笑い出した。

ホワイトフランドールは出し抜けにブラックフランドールに凄まじい怒りを覚えた。

「やめなさい!自分の分霊で分身だろうが彼女を馬鹿にする奴は!!」

「絶対に許さない??ウフフフッ!ウフフフッ!」

しばらくの間、ブラックフランドールは笑いを堪えていた。

そしてまた落ち着くと今度は真剣な表情でホワイトフランドールにこう話しをした。

「彼女を助けたかったらさ!貴方こんな酷い仕打ちを罪人の人間にやらせて!

狂ったように笑って!!他人を殺して永遠に苦しめるのと。あとはー。

他人を平然と苦しめて傷付けて殺す私自身と融合して赤い魂になるのよ!

そして元の魂に戻って!赤き血を熱き聖なる血を彼女に与えるのよ!」

「ダメよ!私の賢者の石は危険過ぎる!何よりも彼女に血を与えたら・・・・。

私と同じ力が彼女の細胞に宿る。ましてや暴走しないように力を封印するなんて!!」

「でーもそうしないと彼女の精神は死んじゃうよ!」

ブラックフランドールはニコニコ笑った。

そして彼女はホワイトフランドールの目と鼻の先まで一気に近づいた。

ホワイトフランドールは慌てて後退した。

「そんな事をすれば!神は復活する!!リスクが大き過ぎる!!」

「それでもやらないとー!!彼女は助からないよー!!」

ブラックフランドールは意地悪な口調でこう返した。

「彼女はどうなるの?まさか?このまま永遠に発狂し続けるの?」

「彼女は正気を完全に失って血の契約に従って白痴の魔王の

常に飢え乾いている無聊を慰める為に自らの母乳と

膣内分泌液を永遠に吸い取られ続けるの。霊力も何もかもね!!」

「嘘でしょ・・・・じゃ彼女を助けるには?」

「貴方は私!私は貴方!だから最初から分かっている筈よ!」

ホワイトフランドールは彼女がアザトホースの無聊を慰める

お供え物として捧げられて永遠に性的快楽に溺れ続ける彼女の姿を想像してしまった。

彼女は名状し難い恐怖と彼女の為に激しく心を痛ませた。

ホワイトフランドールは博麗霊夢を助けて幻想郷に戻す為に決断した。

彼女はブラックフランドールに真剣な表情で接近した。

「私達はひとつになる。神の復活は私達で何とかする」

「そうこなくっちゃ!さあー手遅れになって後悔しちゃわない内にね」

「でも!これは私達の秘密よ。誰にも教えない。」

ホワイトフランドールとブラックフランドールはお互いの両手を合わせた。

やがて真っ赤な炎が2人の全身を包んだ。

そして分離した悪のフランと善のフランは融合して一つとなった。

フランは元の魂に戻った事を確認すると正気を完全に失いかけている

博麗霊夢に生きる希望と力を与える為に自らの賢者の石の力を分け与えた。

同時に右腕の『LOSER(敗者)』の青い文字も消え去った。

そして彼女を幻想郷に送り届けた。

赤き魂のレッドフランドールは自分が

彼女・博麗霊夢に施した外なる神(アウターゴッド)

の新たな血族に迎える為の禁じられた儀式を行った。

彼女は一枚の木の板に自ら傷付けた

血で旧魔界文字を描いた。

更に彼女は大声で呪文を唱えた。

クーリトル!クーリトル!クーリトル!リトル!トル!リトル!トル!アザトホース!

アウダス!ゴッドス!ドラッグズ!ドラグウール!グルド!イア!イア!

やがて白い肌を晒した全裸の博麗霊夢の全身を真っ赤な血文字の旧魔界語の

呪文がスルスルと全身に楔のように巻き付き、全身を超高熱で皮膚を焼いた。

彼女は全身の火傷の激痛でまるで焼き印のようにはっきりと残ったのを

見ながら甲高い声で狂ったように何度も何度も声が枯果てるまで絶叫し続けた。

間も無くして彼女の全身の細胞に賢者の石が寄生した。

赤き魂のフランドールは彼女に施した儀式が正しいやり方で本当に

彼女の生命と今後の人生を救ったのだろうか?

と彼女は何度も自問自答し続けた。

 

(第42章に続く)