(第43章)レッドフランドール

(第43章)レッドフランドール

 

ホワイトフランドールに続いて鳴葉がいなくなったのに

気付いたのはそれから約3分後の出来事だった。

2人は慌てふためいてホワイトフランドールに続いて鳴葉を探した。

またどこかの時空の歪みから別の異世界に迷い込んだのだろうか?2人は心配した。

その時、先程、厳重に南京錠の付いた柵の隣の小さな柵の壊れた鍵が粉々になった。

やがてキーツと音を立ててゆっくりと柵が開いた。

エアはその時、確かにフランのものと思われる賢者の石の力を感じた。

続けて陽炎のように頭部に大きな赤いリボンを付けた巫女らしき女の子が

元気そうに大自然のどこかに帰って行く姿が見えた。

その表情は本当に明日ある希望に満ち溢れていた。

そしてその満ち溢れていた。そしてその巫女の女の子から確かに賢者の石を感じた。

これは魔人フランドールのものだ!全細胞に寄生しているんだ!!とエアは思った。

それから頭部に赤いリボンを付けた巫女の姿は大自然のどこかの映像と

共に閉じるようにスーツと消えて行った。

やがて開きっぱなしの柵から真っ赤に輝くフランドールが出て来た。

エアは直ぐに彼女を助ける為にホワイトフランドールと

ブラックフランドールがひとつになったんだと悟った。

エイダは訳が分からずポカンとしていた。

エアはエイダに『ブラックフランドールとホワイトフランドール

は融合して元の魂の姿に戻ったんだ』とだけしっかり説明した。

レッドフランドールは自らを

『これが本来の姿。善と悪の心を持つ赤き魂』と名乗った。

続けてレッドフランドールはこう話した。

「この先を見て。どうやら例のトルコ陸軍がいたみたいよ」

しばらくして今度はドオオオン!と言う大きな音がした。

エイダとエア、レッドフランドールは慌てて門の先へと向かった。

その先は部屋のある広い広場だった。更に広い廊下にはトルコ陸軍特殊部隊によって

モーテルに集まってきたあの反メディア団体ケリヴァーの狂信者となった

異形の人型の怪物の死体が2000体余り残っていた。

彼らはマシンガンやアサルトライフルでハンドガンによって射殺され、

殲滅されていた。ほとんどは全身ハチの巣にされていた。

またスナイパー(狙撃手)に額を撃ち抜かれて即死したり、

サバイバルナイフで首筋を切られて血溜まりの中に打ち捨てられていた。

所詮、神の力で異形の怪物になって怪力を手に入れたとしても相手は戦闘プロ集団。

お粗末な素人に勝てる筈が無かったのである。

既にトルコ陸軍特殊部隊によって一掃された反メディア団体ケリヴァーの

狂信者となったであろう異形の人型の怪物の多数の死体の代わりに

ストレイトジャケットフランやクリーパー、ツーバック、

ワンバックがうろついていた。既にトルコ陸軍は撤退して大量のクリーチャー達が

トルコ陸軍の輸送機アトラスA400Mに乗せられて長旅を楽しんでいるに違いない。

その時、突然地面の一部が真っ黒に染まった。

やがてバシャアン!と水の音を立てて再びあのアノマロカリス型ファントム(幻影)

が現れた。エイダは素早く両手でマシンガンを構えた。

エアはアノマロカリス型のファントム(幻影)を鋭い眼光で睨みつけた。

更に黒い地面から白い仮面を被った黒いマント男がまたスーツと現れた。

エイダの小声を聞き、エアはあえて未来新聞のことは全く触れない事にした。

「目的は宮田フーズの復讐だろ?」

するとオペラ座の怪人はニコニコと笑顔になった。

そして両腕を左右に広げて大声でこう言った。

「そう!その通りだよ!エア・マドセン!君はやはり僕の理解者だ!

『CIELOAE』のリビドー・ストランディング(性の座礁)内の

トンネルの異空間あのガメラ3のメッセージに気付いてくれた!!

エア・マドセン!凄く嬉しいよ!」

「それはどうも!」とエアはそっけなく返した。

するとオペラ座の怪人は「おいおい」と首を左右に振った。

「つれないなーエア!エア・マドセーン!僕は宮田フーズの悪徳社長も

僕達家族すら見捨てた会社の人々をこいつに生意気な若い女も男も

体液を吸い尽くさせてミイラ化させて唯一気に入った

若い女は全部僕のものにするんだ!!もはやこの世界も人間社会も

人類も進化の可能性を拒んでいるんだ!結局!出来損ないの生物!

僕が手を下さなくても!必ず人類が絶滅するんだ!!気もの中の男の子がね!」

オペラ座の怪人はレッドフランドールのお腹を指さした。

するとレッドフランドールは両手で下腹部を抑えた。

オペラ座の怪人はレッドフランドールの前にしゃがみこんだ。

彼はレッドフランドールの目と鼻の先まで顔を近づけた。

それから人差し指を上げて「チッチッチッ!」と指を左右に振った。

「ダメダメダメダメ!この人類を絶滅させて世界を壊す存在とは言え

子供は宝だよ!フランドールさん!」

レッドフランドールは「くっ!」と声を上げた。

オペラ座の怪人は再び立ち上がった。

「こうして僕達は絶滅と言う役割を果たす。

こうして僕達は進化と言う道に続く扉が開かれる事になるんだ!

やがてフランドールさんから産まれた神は人類の一部と動物を進化させるんだ!」

レッドフランドールは楽しそうに話すオペラ座の怪人にこう言った。

「でも心の奥底では貴方は人類の一部も動物も滅んで欲しくないと思っているわ。

だって貴方には善の心がある。分離しているけど根っ子は同じなのよ。

貴方はサトル・ユウマなの」

するとオペラ座の怪人は激しく動揺した。

更にレッドフランドールは話を続けた。

「だから。本当は貴方は宮田フーズに対して憎悪を怒りの念を抱いているけど。

復讐を成功させる結末以外を望んでいる」

「ふーんだ。君に僕の気持ちの何が分かるんだい??」

オペラ座の怪人の声は震えていた。彼女に心を見透かされて激しく動揺し続けていた。

やがて彼は平常を装いながらこう答えた。

「とにかくだな。僕は宮田フーズに復讐する!!必ずだ!!

そしてすでに絶滅と進化にリミットが始まっている。

一度動いた時計の針はもう止まらないんだ。

早まっている絶滅と進化は駄目なんだ!止められやしないんだ!

そして!このモーテルは神の復活を待つ者達がいる。

ここは頭のおかしな連中から逃げて来た立場の弱い女性達がいる。

エーア!エーア!君ならひとつひとつの部屋の中から聞こえる女と怪物が交わり。

次の世代の進化を促す存在のSHB(サイレントヒルベイビー)が

お腹に宿って行くイメージが見れる筈だ!!

ここは人類の一部の者達のノアの方舟のようなものだ。

アルミケラ病院のところのシェルターと同じでね。

いずれは世界中の動物達もここに集まって来る。進化の為にね。

人間の社会なんてもう関係ないんだよ!フフッ!ここは生き残る為の場所!」

オペラ座の怪人は笑った。

「それじゃ!話はここまで!!そんなに神の復活祖阻止したければいいよ。

でも完全に復活して本来の姿を取り戻した神にどこまで対抗出来るかな??

まあー神の粒子の前には人間の力なんて無力さ!!

絶滅はどうやっても!頑張っても!決して避けられないからね!

またいずれ縁があったら会おう!!エア・マドセン!聖母フランドールちゃん!

じゃ!さらばだ!永遠にね!!フフフッ!!」

オペラ座の怪人アノマロカリス型ファントム(幻影)の額と同化すると

そのまま一気に天高く黒光りする液体の柱になった。

エアとエイダ、レッドフランドールはそれを黙ってそれを見送った。

やがて天空に黒光りする液体の柱が空中で真っ黒な繭のような形となった。

そして真っ黒な繭はどこかへ飛び去って行った。

勿論、場所は宮田フーズ本社のあるニューヨーク市であろう。

それから床には黒光りする液体は消失して綺麗なままになっていた。

オペラ座の怪人が立っていた場所に手記が落ちていた。

エイダは屈んで拾い上げて、エアとレッドフランドールと一緒に読んだ。

「今日もユーチューバーとしていつものメンバーで心霊スポットへ向かった。

メンバーはとある大人の事情で休止中のぺけたんを除いてリーダーのシルク。

他メンバーはンダホ、マサイ、モトキ、ザカオの5人。

場所は『静かなる丘』。英語ではサイレントヒルです。

そこで異形の怪物は見なかったけれど。

またマサイとザカオとこの手記を書いている僕(モトキ)が金髪の

全身血塗れの赤い服の看護婦の幽霊を見ちゃった。

あとカメラやスマホには『帰れ!ここへ来るな!呪い殺す!』と聞こえて。」

「そのあとは本当なら今年一番の心霊スポットの『アルミケラ病院』と

『リバーサイドモーテル』の500号室の

首吊り男性の幽霊の場に行く予定だったんだ。

そして最初に『アルミケラ病院』を探検したんだけど。

やっぱりあの血塗れの看護婦の幽霊が行く先で現れて、消えたりして。

ザカオは手首を掴まれたり、マサイは足首を掴まれたりして。

マジでビビっちゃって。あとはどこだったかな?」

 

(第44章に続く)