(第49章)鳴葉。悪夢の殺人鬼との決着。

(第49章)鳴葉。悪夢の殺人鬼との決着。

 

鳴葉が放ったマシンガンの弾丸はブッチャーの胸部と腹部を撃ち抜いた。

そして赤い血が噴き出した。鳴葉は半分の三角形マスクの半分の女性の顔を見た。

半分の女性の顔は鳴葉そっくりの顔だった。

でも今は違う!!もう殺人鬼じゃないッ!!

鳴葉はリロードした後にマシンガンの引き金を引き続けた。

だがそのせいでブッチャーはマシンガンの攻撃を受けつつも前進した。

油断していた鳴葉はブッチャーが目の前まで接近したのに気付かなかった。

ブッチャーは素早く右腕を伸ばすと鳴葉の首をがっしりと掴んだ。

そして物凄い力で彼女の華奢な身体を天高く持ち上げた。

続けてブッチャーはもう片方に持っている肉切り包丁を真上に振り上げた。

鳴葉は力任せに固く握りしめた拳で肘を曲げて真横から三角形のマスクに殴りつけた。

ブッチャーは僅かに首を曲げて怯んだ。しかしなおも手に持っている肉切り包丁を

真上に振り上げてきたので鳴葉は右脚を真上に振り上げて右足の爪先で

ブッチャーの胸部を蹴飛ばした。ようやくブッチャーは鳴葉を手から離した。

床に着地した直後、鳴葉は両手にマシンガンを構え直した。

そして迷わず引き金を引き、ブッチャーの身体を18発以上の

マシンガンの弾丸でどんどん撃ち抜いて行った。

ブッチャーはまた鳴葉の首に向かって手を伸ばして来た。

しかし鳴葉は速足で後退しながら弾切れを起こさない内に次の弾丸を

リロードした後、また引き金を引き続けた。

ブッチャーの身体はマシンガンの弾丸に貫かれてハチの巣状態になっていた。

その証拠にブッチャーの白いエプロンは真っ赤な自らに血で染まっていた。

また白いエプロンを伝って汚れたタイルを自らの血で染めた。

それでもブッチャーは巨大な肉切り包丁を汚れたタイルの床に擦らせながら

どんどん鳴葉に接近し、手に持っている肉切り包丁を振り上げ、振り下ろして来た。

しかし巨大な肉切り包丁の刃も先端もギリギリ鳴葉には届かなかった。

鳴葉は一時、ブッチャーに背を向けて走った。

そしてある程度の距離を保つと鳴葉はマシンガンの引き金を引き続けた。

ブッチャーが倒れて動かなくなるまでずっとずっと。

やがてブッチャーの動きが次第に鈍くなってきた。

更に鳴葉はマシンガンの引き金を引き続けた。

とうとうブッチャーは全身血塗れになった。

ブッチャーの足元は大きく左右にふらついてバランスを崩しそうになった。

それでもなお肉切り包丁を振り上げた。だがそこで手が止まった。

しかし鳴葉の止まっている隙を付いてブッチャーは肉切り包丁を振り下ろしてきた。

彼女は慌てて後退した。続けてブッチャーは肉切り包丁を

水平に振ったり、真上から真下に振り回して暴れ続けた。

鳴葉は後退しつつも焦らずうまく焦らして油断を誘い、マシンガンで攻撃し続けた。

ブッチャーはとうとう真っ赤なエプロンと

全身血みどろのままその場に急に立ち止まった。

それから鳴葉は油断せずにマシンガンの銃口をブッチャーから決して離さなかった。

やがてブッチャーはドスン!と巨大な肉切り包丁の持ち手を汚れたタイルに付けた。

ブッチャーは獣の咆哮を上げた。

その後、鳴葉より一回り大きな女性の身体を前斜めに傾けた。

同時に巨大な肉切り包丁の先端と全体をグサリと音を立てて

胸部の中央の心臓に突き刺した。

やがて肉切り包丁はブッチャーの背中を一気に刺し貫いた。

ブッチャーは断末魔の叫び声を上げて両腕を左右に広げた。

まるで鳥の羽根のように。そしてブッチャーは息絶えてそのまま動かなくなった。

鳴葉は警戒してマシンガンを両手で構えつつも接近した。

彼女はマシンガンの銃口でツンツンとブッチャーを小突いた。

どうやらもうブッチャーは動かないようだった。

こうして彼女は自分の大罪を認め、殺人鬼の人格に自らの意志で打ち勝った。

その事によってトラウマと長い間、ニューヨーク市内の精神病院に通い続け

仕事場に他の人々には見えない存在として自分の目の前に現れ続けた

ブッチャーは今はもう動かない。

これで今まで苦しめられていた罪悪感から解放されたんだ。

その時、鳴葉はブッチャーが何か持っているのに気付いた。

彼女はブッチャーの手から無理矢理取った。それは長四角の鉄板だった。

鉄板の中央には『虐待』と言う文字が深く刻まれていた。

そしてキッチンの外で待っていたエアとエイダとレッドフランドールに合流した。

そして3人に『虐待』と言う文字が深く刻まれた鉄板を見せた。

するとエアは今まで手に入れた鉄板を取り出して両手に並べて見た。

『父親』『母親』『虐待』の3つの鉄板が何を指すのだろうか?

まだ良く分からなかった。ついでに鳴葉は自分の殺人鬼の人格のブッチャーが

どうなったのかをエイダとエアに見せるべくキッチンに連れて来た。

鳴葉に敗れ去ったブッチャーは巨大な肉切り包丁で自分の心臓と背中を突き刺して

両腕を広げたままオブジェクトとなり、ピクリとも動かなかった。

正に直立不動である。それをエアとエイダはまじまじと近付いてみた。

どうやら自殺したようだ。正確には自らの絶滅かあるいは死滅を選んだか?

いずれにしろ完全なブッチャーは完全に死んでいた。

その先に茶色の鉄の扉があったので4人は先へ進んだ。

そこはモーテルの食堂だった。モーテルの食堂は広い四角の部屋で

入り口の隅には赤い帯びに三日月模様の付いたドリンクを入れて客が

自由に飲めるドリンクバーの機械が置いてあった。

その自由に飲めるドリンクバーの機械の傍には飲み切れなかったドリンクを

捨てたり、コップの中身を洗う蛇口が付いていた。机の上には茶色の瓶の

健康ドリンクが一本置いてあった。鳴葉はそれをこっそりと拾った。

また年代物の多分、もう飲めないであろう酒やジュースが並んでいる木の棚があった。

更に倒れた青いテーブルと赤いソファーが前後に置いてあった。

またその奥の部屋の隅にジュークボックスが設置してあった。

しかも曲はどれも知らなかった。

更に赤いソファーと食事用の白い机があった。そして調味料が置かれていた。

また奥の窓の方にも2対の赤いソファーと食事用の机があった。

机には食べ終えた白い皿と汚れたナイフとフォークがあった。

しかも白い皿にはステーキがあったのか?中身は茶色のソースと肉片があった。

更に大きな白い皿は綺麗で使っていないように見えた。

スプーンは綺麗なままだが明らかに何かを飲んだ形跡があった。

しかし何を飲んでいたのか?分からなかった。

エアは微かに何かを感じた。途端に少し青くなり。

やっぱり彼女は・・・。と思った。

また白い皿の横には1本の赤ワインのボトルがあった。

勿論、ボトルもワイングラスも空で僅かだが赤ワインの香りが残っていた。

そう良く発酵した赤ワイン用の葡萄だ。

間違いないこの香りはルゲシ・ド・ミズーキだ。

これは・・・・・レックス・ネモネシスの血液が入っていないようだ。

当然か?あれは『森の王』の直訳で古代イタリアの女神ディアナのものだ。

西洋妖怪にとってはフグの毒のテトロドドキシンと同じだ。

だけど。この感じは賢者の石。きっと毒も平気なのかも知れない。

しかしまたエアは視界がカラーではなくモノクロになった。

ガルヴァスター・スカーレットと仲間、配下悪魔達と吸血鬼達の会話が聞こえて来た。

「ルシゲード・ミズキ。なかなかの味だ。良いぞ!

さっき食べた牛肉のステーキと人間の魂の天然スープ!どれも美味だったぞ!!」

「ご報告があります。ガルヴァスター伯爵夫人殿。」

「よろしい!続けよ!魔獣新生多神連合から来た殺し屋は?」

「しかしあの道化師の魔獣ホラーを殺し屋と呼んで良いのでしょうか?」

「だが現に反メディア団体ケリヴァーの幹部達はあの彼らにレイプと暴行を受けた

被害者の生霊達がいるモーテルの『STAFF ACCOMODATION』の中で

道化師の魔獣ホラー・アスモディは全員を私の望むがままに殺したのでしょ?」

「はい!ガルヴァスター伯爵夫人の望むがままの死に様で。」

「詳しく話しなさい。生霊の話は丁度飽きて来た頃よ。」

「仰せのままに。その反メディア団体ケリヴァーの幹部達はアスモディ様の

赤く輝く鼻を見た途端に術に掛けられました。彼らは愚かにも術の力で

己の醜い心を増幅させられてお互い醜い人間の姿を保ち、やがて異形の怪物となり。

全員が心の中に隠れていた本性をお互い暴き合い、凶暴化し、鋭い爪と牙や

殴り合い、蹴り合い、首の締め合い、殺し合ったようです。」

「どのようにだ?是非とも聞きたい!」

「『誰がお前みたいな。奴と若村と一緒にいるかよ。』

『アハハハッ!あの若村って馬鹿が死ねば!あいつの資金を貰ってさよならだよ!』。

『アハハハッ!知ってるぜ!俺の女に手を出しやがって!』

『アハハハッ!あんな子豚ちゃんこっちから願い下げだよ!』。

『お前達のようなクズ共の下で働けるかよ!』『このゲス野郎!』。

それから全員誰もが高笑いしながら殺し合い次々と死んで行きました。

あとはアスモディ様はお互い殺し合って死んだ反メディア団体ケリヴァーの

幹部達が人間に戻ったので一人残らずボール状に死体をおまとめになって

ジャグリングをしながら一人残らず丸呑みにしてお召し上がりました。

事の顛末はこんなものでございます。」

間も無くしてバチバチバキュッ!

と大きな音の後にシュッシュッと空を切る音が聞こえた。

 

(第50章に続く)