(第50章)近付く血塗られた儀式の真実。

(第50章)近付く血塗られた儀式の真実。

 

ガルヴァスター・スカーレット伯爵夫人は腹の底から大笑いしながらこう言った。

「あああああはははははははははははっ!!実に面白く愉快な話だったぞ!

私は満足だ!所詮、他人の存在や価値観を否定する事でしか

自分の存在理由や価値観を見出す事しか出来ぬ人間はいずれ暴露された

己の醜い本性を知った他人の手か自分自身の手で人生も命も地位も何もかも失う。

そして地獄の底で後悔し、惨めに誰一人に助けられる事も無く

孤独に永遠の真の闇を彷徨い続けるのだ。

そろそろ私の右掌の繁殖用の触手が若い女の子達の裸を求めて疼いてきておる。

早速私の『新たな種を産み出す程度の能力』と手に入れた

『アダムの種』を利用して・・・・・。」

その時、急に思いもしない角度から大声で鳴葉はエアとエイダと

レッドフランドールを呼び止めた。思わずエアは驚いて鳴葉の声がした方を見た。

すると鳴葉は奥の窓ガラスの隣にある出入り口になっている観音開きの

茶色の曇りガラスの付いた大きな扉に謎のメモがあった事を3人に教えていた。

エアとエイダは鳴葉と共にその謎のメモの内容を目で追って読み始めた。

レッドフランドールは最初っから知っているらしく黙っていた。

「闇に沈んだ太陽を昇らせて太陽を輝かせる為の必要な儀式のやり方。

『まずは外なる神にして異教の力を持つ女の子を聖母として儀式を行う。

(今回は教団の間違った影響は極力排除)

そして儀式の成功には賢者の石と強大な破壊の魔力が必要となる。

更に新しく『父親』の神獣。『操り人形』の神獣。

『種族』の神獣。『母親』の神獣。

『虐待』の神獣。(しかし間違いに気づいたのか書き直している。)

『父親』の神獣。『母親』の神獣。『虐待』の神獣。『操り人形』の神獣。

『種族』の神獣。5つの神獣を四角の中央の四角に奉納しろ。

そして神獣は5つの柱となる。これらによって霊的に高まった力は

異世界の強度を上げて質も過去とは異なるだろう。

聖母となる異教の力(外なる神は魔人らしい)を持つ女の子を仰向けに寝かせる。

太陽の聖環を床に描き、更にその上に仰向けに寝かせよ。

そして白い蝋燭を太陽の聖環の2本の赤い線の上に置き、

神が降臨する為の目印とせよ。

長四角の机に火の付いた蝋燭を立てて三角形の布を

置いて祭壇を作るのも忘れずにする事。

天魔ヴァルティエルの立ち合いの元で正しい呪文を間違えずに唱える事。

そして魔力の放出が確認されたら成功である。

これで私の理想の楽園が作られるだろう。

つまり今までの教団のダリア達はアレッサと言う

女の子に不完全な儀式をしていた訳だ。

クローディアも同じさ。だが私のやり方なら必ず成功する筈さ。

私なら、私なら、絶対、絶対!!(楽園の創造主となる者)」

「これが全ての異変の元凶ね!」とレッドフランドール。

「何が楽園の創造主よ。ただただ沢山の人々を苦しめて!」

「沢山の人の命と心を弄んで許せない!!」

エイダと鳴葉は両拳を握り、怒りの表情を見せた。

その時、レッドフランドールは何かの気配を察知したのか食堂の周囲を見渡した。

まさか?!この気配!幼い頃に母上のジャンヌと父上ドラキュラ伯爵の時に

感じたのと同じ。エアも「くっ!まさか?あの食堂の外に!」と言った。

レッドフランドールとエアは外で感じた強大な力を探して反射的に

目にも止まらぬ速さで動いた。賢者の石の力も感じる!

バン!と目の前の曇りガラスの付いた大きな扉を左右に開いた。

外はモーテルのハート形のプールの付いた広場だった。

しかも空は真っ暗闇で星すら見えなかった。

天空にはあのガルヴァスター・スカーレットが浮いていた。

背中から真っ赤に輝く8枚の蝙蝠の翼を広げてホバリングしていた。

両手には細長い鉤爪が生えていた。

「さてと!ようやく会えたわね。エア・マドセン。そしてお久しぶりね。

人間の娘のジャンヌ・ダルクとドラキュラ伯爵の間に産まれして

混血のダンピーラにして聖母よ。

名はフランドール・スカーレット。幼い頃以来久しぶりかしら?」

ガルヴァスター・スカーレットは口元を緩ませて笑った。

すると太く長い犬歯がチラッと見えた。

「僕の。あっ。抱いてどっ!どう!ど、ど、どうするつもりだ!」

エアはどもりながら叫んだ。

ガルヴァスター・スカーレットは「ホホホホッ!」と笑った。

「決まってるじゃない!私には『新たな種を産み出す程度の能力』と

『アダムの種』『赤き太陽の呪いを持つ女の子の肉体と子宮』

を利用して実験したいのよ。

個人的にね。あいつ。ギザイア・メイスンとか神崎もね。『ノアの方舟』とか。

なんか凄い物をこしらえててね。私も多少協力はしたけど。」

ガルヴァスター・スカーレット伯爵夫人は話を続けた。

「とりあえず娘のレミリアは優れた種であり、我が娘よ。でも!

勿論、フランドール!貴方もよ。でも貴方の力は余りにも強過ぎた。」

レッドフランドールは両手で下腹部を押さえて獣のような唸り声を上げた。

ガルヴァスター・スカーレットはモーテルの開いた扉の方を指さした。

「かつての最初の聖母であり、創造神のアレッサの転生体の

シェリル・モリス・メイソンの指し示す道に従って進みなさい。では。」

ガルヴァスター・スカーレットはエアとレッドフランドールに道を指し示した後

直ぐに真っ赤に輝く無数の蝙蝠の姿に変えてあっと言う間に飛び去った。

そして彼女がホバリングしていた白い床に分厚い本が落ちていた。

どうやら危険な魔導書ではなくただの自伝の研究ノートらしい。

アメリメイン州にあるハイスクールのクラスBでの『新たな種の創造』

に関する実験を行った。勿論。神崎やギザイアの『ノアの方舟計画』とは別で

我々、吸血鬼の幻想郷の外のこちら側(バイオ)の世界で生き残っている

スカーレット家の存続の為にね。実験をする事にした。

私は『静かなる丘』の表世界の未来のモーテル

『105号室』で『アダムの種』を入手。

そして『静かなる丘』の時を越える力を利用して

過去のハイスクールのBクラスに戻り。」

Bクラス全員の女子高生を実験にすると大人達が大騒ぎするので

Bクラスの女子高生の中でアビゲイルの双子の姉の

ハヴィー・ジョンソンを実験体とする。

右掌の触手を利用して自分のスカーレットの遺伝子と

DNAを組み込んだ『アダムの種』を彼女の子宮に注入。

無事妊娠を確認した。(2回行ってようやく成功)。

2日経過。子宮内の胎児は人間のスピードで成長中。

次の実験体はあのBクラスから選ぶか?次はー。

妹のアビゲイルか?それとも友人のブリーか?まあ―良く考えよう。

ガルヴァスター・スカーレット伯爵夫人」

「やっぱり何かの実験を。相変わらずね。

レミリアのお母様は」とレッドフランドール。

レッドフランドールとエアはモーテルの食堂に戻ってエイダと鳴葉に説明をした。

さらに二人の説明が終わった途端に別の声がした。

「もう!時間は残されていないわ!間も無く儀式は始まるの!」

急にエアとエイダと鳴葉の背後から声がしたので驚いて振り向いた。

するとレッドフランドールがまた両手で下腹部を押さえて苦しそうにしていた。

その隣にいつの間にか現れたエアが療養所で遭遇した

金髪のシェリル・モリス・メイソン刑事が立っていた。

彼女は口を開いてこう言った。

「今から新しい儀式と共に本来在るべき神の姿に戻ろうとしている。

既にこの子の神は目覚めて動き始めたわ。」

すると鳴葉とエイダは名前を尋ねようと口を開きかけた。

しかしそれよりも先にシェリル刑事は早口でしゃべり始めた。

「彼女。リサ・ガーランド。血塗れの赤い服の看護婦からの伝言。

『魔人フランドールの肉体は教会にに安置されている。』と。

でもまずは遊園地を通らないといけないの。」

シェリル刑事は迷いつつもこう言った。

「このアレッサだった頃の力を使うのは気が引けるけど!やるわ!」

次の瞬間、モーテルの食堂内にあのサイレンの音が長々と響き渡った。

続けて鳴葉、エア、エイダは頭が痛くなってきた。

やがてまた頭の痛みが酷くなり、平衡感覚がおかしくなって行った。

そしてその場で目の前の視界が霞んで何も見えなくなった。

そして頭の中でサイレンが鳴り続けた。

ウウウーウウウーウウウウーウウウッ!ウウウウウウウーウウッ!

3人は完全にまた意識を失った。

またもや3人は暗黒の視界を彷徨っていたがやがてフランドールの声がした。

「みんな!起きて!どうやら連れて来てくれたらしい!」

3人は目覚めて上半身を起こした。

辺りはまるで夜のように真っ暗闇だった。しかもそこは間違い無く。

「えっ?遊園地??どうして?」と鳴葉。

「きっとシェリル刑事の力よ!噂は聞いたでしょ?」

レッドフランドールが言うとエイダが思い出したように言った。

「ええ、そうね!最初にこの街の神の子を宿した少女。」

「勿論、あの人の心の闇の怪物達もさ。」とエア。

 

(第51章に続く)