(第53章)ナイト・オブ・ナイツ

(第53章)ナイト・オブ・ナイツ

 

ブリーは戸惑いつつも真剣な表情で見ているアヴィゲイルに答えると

ようやく恐怖でパニックを起こさない様に「大丈夫!」

「絶対助かるから!」と声を掛けてバスの中にいる男子高生と

協力して女子高生達をうまくまとめてスクールバスに乗せた。

しかも不思議な事にスクールバスの入り口がまるでとなりのトトロのネコバスのように

大きく上下左右に歪むように開き、一気に女子高生が乗れるようになっていた。

一方、アキュラスは全身に突き刺さった銅の杭と銀のナイフを引き抜こうと

悪戦苦闘しながら路上に虫ピンのように打ち付けられている銅の杭以外の

数本のマネキンの肢体を伸ばして赤い血を吹き出しながら一本、一本確実に

引き抜いて行った。そして『金髪の血塗れの看護婦』の幽霊そっくりの女性は

大声で「こっちよ!こっちよ!餌はこっちよ!」とアキュラスを挑発した。

アキュラスは「このリサ・ガーランドめえ!また邪魔する気かあっ!

吸血鬼といい幽霊といい忌まわしい!!」と絶叫した。

直ぐに彼はカサカサと四つん這いで高速でリサの方へ向かって行った。

そしてさっきよりも怒り狂った甲高い叫び声で吠えた。

更に背中の幾つもの死神の鎌を伸ばしてリサに切りかかった。

何故かリサは余裕の笑みを浮かべた。

同時に不思議な事にアキュラス本体がまるで

時間が停止したように行動を完全に停止させた。

リサは前屈みになったり、左右に素早く避けながら

時間停止して動かなくなったアキュラスに急接近した。

続けてリサは身体を半回転させてアキュラスの幾つかの少年の顔を蹴飛ばした。

リサは緑色に瞳を輝かせた。

するとアキュラス本体の停止した時が動き出した。

その瞬間、アキュラスは訳が分からないままぶっ飛ばされた。

アキュラスはアスファルトの道路に叩きつけられた。

アキュラスは仰向けにひっくり返ったがすぐに無数のマネキンの肢体を

上下にバタバタと動かして起き上がった。

アキュラスは訳が分からずやられた事に腹を立てた。

そして獣のような甲高い怒りの声を上げた。

リサに向かってアキュラスは巨体を叩きつけようと高速で接近した。

リサはまた緑色に輝く瞳をアキュラスに向けていた。

同時にアキュラスはまたリサの目と鼻の先で時間停止した。

リサは片手で銀色のナイフを引き抜くと。

ズバッ!とアキュラスの首筋の赤い皮膚を切り裂いた。

再びリサの瞳は緑色に発光した。アキュラス本体の時間が動き出した。

同時にブシュウウウウウウッ!!と音を立てて切り裂かれた

アキュラスの首筋から真っ赤な血を噴水のように噴出した。

アキュラスは苦しみ後退した。

しかも時間が停止した僅かな間にリサの姿が消えていた。

アキュラスは今まで奪い取った女性の精気を利用して首筋や全身の火傷を回復させた。

実際リサと戦い始める前に全米でかなり数の若い女性の精気が喰われていて

肉体をマネキンにされて完全に肉体の一部として取り込まれていた。

リサはアキュラスの目の前の暗闇から現れた。

アキュラスはその瞬間、隠していた死神の鎌を振り上げた。

リサの魂をバラバラにして現世からもこの世からも消し去ろうとしていた。

しかしリサはまた緑色に輝く瞳をアキュラスに向けた。

アキュラスは隠していた死神の鎌を振り上げたまま時間停止した。

リサは素早く横に避けてカーディガンの

ポケットから赤い液体の入った瓶を取り出した。

リサはその場で身体を捻り、長いしなやかな細長い白い肌の右腕を

思いっ切り、真上に振った。同時にリサは右手をパッと離した。

そしてリサの手から投げ出された赤い液体の入った瓶は

アキュラスの12歳の少年の顔の右頬に直撃して割れた。

再びリサの瞳が緑色に輝いた。

同時にアキュラス本体の停止した時間が動き出した。

次の瞬間、アキュラスは甲高い声で長々と悲鳴を上げ続けた。

更にアキュラスの12歳の顔と肉体の一部が真っ赤に晴れ上がり、再び火傷になった。

そしてジュウウウッ!と白い煙を上げた。

リサに投げつけられた赤い液体を喰らいアキュラスの

12歳の顔と肉体の一部は硫酸を浴びたように焼け爛れていた。

アキュラスはしばらく苦しんでいたが怒り狂った。

更にアキュラスはリサに向かって無数のマネキンの肢体を伸ばした。

「捕らえてやる!!お前の魂も吸い尽くして取り込んでやる!

お前は仮の肉体しかないから魂しか取り込めないが!!まあーいいよ。」

アキュラスはニヤリと笑った後に舌なめずりを何度もした。

サ・ガーランドを捕まえたアキュラスはニヤリと笑い話を続けた。

「僕の胎内に永遠に囚われ、僕の分身とセックスを続け。

僕の為だけにこの超巨大な人形を動かす燃料となるんだ!

「クソっ!最低な奴ね!このクソガキ!!絶対に許さないッ!!クソっ!!」

アキュラスは肢体の手の4本の指と親指でがっちりと目元の顔面を掴んだ。

そしてリサ・ガーランドの瞳の視界を封じた。

彼女は瞼を反射的に閉じてしまい緑色に発光させる事が出来なかった。

その為、時間停止能力は使え無かった。

「うっ!やめろ!うっ!くそっ!嫌だッ!やめろおおおっ!」

「フフッ!僕と永遠の快楽と。さあ―裸体となりなさい!」

アキュラスは無数の手の内、一つを伸ばした。やがて掌が青く輝き、バチン!!

と言う音と共にリサの赤いカーディガンと白い服が消え去った。

たちまちリサの白い肌の裸体が露わになった。

しかしすぐにアキュラスの真横から冴島鋼牙の野太い声が長々と夜の空気に響いた。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

アキュラスは驚き、無数の12歳の顔の内、一つを茶色の瞳で

右側の方から高速で接近する白いコートの男を見た。

鋼牙はいつの間にか黄金騎士ガロの狼を象った鎧を纏っていた。

鋼牙は牙浪剣の剣先の鋭利な先端でアキュラスの右横腹の赤い肉部分に

深々と突き刺した。さらに鋼牙は力任せに両手で勢いよく手首を捻った。

バチン!!と赤い肉部分を爆発させて穴を開けた。

アキュラスは甲高い絶叫を上げた。アキュラスは全身から大量に血を吐いた。

アキュラスはリサを投げ飛ばし、右側に大きく鋼牙から離れた。

アキュラスは横腹から血を吹き出したままそのまま右側に身体を動かした。

そして冴島鋼牙と正面から向き合った。

続けて鋼牙は再び牙浪剣を構えた。

アキュラスは全身の死神の鎌を多数伸ばした。

更に全身の死神の鎌を上下左右に高速で振り回して鋼牙に切りかかった。

鋼牙はアキュラスが振り回す死神の鎌を上下左右に牙浪剣を

高速で振り回して全て火花を散らし、弾き返した。

続けて鋼牙は牙浪剣を両手で構えて臆する事も無ければ

一点の曇りもなく高速でアキュラスの懐に飛び込んだ。

アキュラスは甲高い声で怒りに満ち溢れた悍ましい咆哮を上げた。

しかし鋼牙はそんな甲高い悍ましい咆哮を聞いても何事もなかったかの

ように両手で牙浪剣を構えて高速でアキュラスの胸部に突き刺した。

「ぐううがああっ!があああっ!がっ!うがああああああああああああっ!!」

アキュラスは牙浪剣で自分の胸部を高速で突き刺された結果、激痛で呻いた。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

鋼牙はアキュラスの甲高い怒りに満ち溢れた悍ましい咆哮を

遥かに凌駕する凄絶な迫力のある怒号の太い雄叫びを上げ続けた。

更に鋼牙は両手の超怪力で相当な重量のある超巨大な

アキュラスの身体を軽々と真上に持ち上げた。

更に鋼牙の『守りし者』として強い意志に反応した牙浪剣は黄金に輝いた。

そして牙浪剣は巨大な牙浪斬馬剣に変わった。

続けて鋼牙の持っている牙浪剣が牙浪斬馬剣が変化したと同時にバチン!

と大きな音を立てて牙浪斬馬剣はアキュラスの胸部から高速で

名状しがたく恐ろしく硬い外骨格の白いプラスチックの背中を一気に刺し貫いた。

アキュラスは凄まじい声で絶叫した。

自身の重みで重力に従って落下してしまい

その僅かな傷口から真っ赤な血が噴き出した。

鋼牙はアキュラスの下腹部を蹴り飛ばした。

続けて鋼牙によって蹴り飛ばされていたアキュラスは空中高く蹴り飛ばされた。

「ぐあああああああっ!このおっ!司祭の僕があああっ!!ぐわあああっ!!」

アキュラスは3mの空中で鋼牙にサッカーボールのように蹴り上げられた。

2分後にはアキュラスの超巨大な身体は爆四散した。

やがてアキュラスの大量の人形の部品と割れたプラスチックの板や

ガラスの眼球がバラバラと雨のように雨のように鋼牙の頭上に降り注いだ。

続けてガシャッ!と言う音と共に『静かなる丘』の道路に子供の人形の姿となった

アキュラスが落下した。アキュラスは人形の姿のまま立ち上がった。

直ぐにアキュラスは体内に溜め込んで濃縮された大量の若い女性の

精気を一気に放出してあっと言う間に元の無数のマネキンの肢体と

12歳のアキュラスの顔を持つ超巨大な蜘蛛の形状の元の怪物の姿に戻った。

 

(第54章に続く)