(第62章)深淵に至る真実の穴

(第62章)深淵に至る真実の穴

 

『静かなる丘』教会の鐘桜の部屋。

「早いところ先へ進みましょう。攻撃の意志はないんで」とエア。

4人は天魔ヴァルティエルを無視した。

更に茶色の扉を開けてその先の廊下に出た。

すると吊り下げられた大きな長四角の箱と穴と細長いL字型の廊下に出た。

どうやら四角い細長い道になっているようだ。

4人は角や先の扉を調べたがどこも鍵が壊れて開かなかった。

しかし一番端の茶色の扉のドアノブを回すとカチャッ!と音を立てて開いた。

その時、エアは暗闇の中に何か大きなものが動いた気がしたが

直ぐに暗闇に溶け込んで見えなくなった。

エイダはドアを開けて、エアは鳴葉と

魔人フランドールと共にその先へと進んで行った。

ドアの先はどうやら書庫らしく左右中央に大きな本棚と本が並んでいた。

ついでにコンクリートの壁に埋まるように本棚があった。

どの本棚にも本がびっしりと詰まっていたが特に関係無さそうだった。

しかし一番奥の本棚から一冊の赤い本が落ちていた。

魔人フランドールはそれを手に取って聞いて読み始めた。

「これはっ!分かったわ!あの儀式でどんな神様が出てくるか?

反メディア団体ケリヴァーが目覚めさせようとさせているのが」

するとエイダとエアも鳴葉も集まって魔人フランドールが開いたとある

アテスカ神話の神様を紹介するページを指さした。

その神様の名前は『太陽神テスカトリポカ』とあった。

「夜、闇、神秘、不和、力を象徴する神様である。

最強の戦士で魔術師である。

未来が見える。力を求める者は

王族、戦士、魔術師、奴隷、犯罪者でも誰でも応援する。

本来の性格は豪快で気まぐれである。

生贄が大好きで多くの生贄を要求している。

他にも様々な別名が存在している。

それは神性の異なる側面を示している。

モユヤン(全知全能)

ティトラカクン(彼らは彼の奴隷)

イパネモアニ(我らを生かしている者)

ネクヤオトル(両方の敵)

トロケナワケ(近くにいる者、傍らにいる者の王)

リエエカトル(夜の風)

オメ・アカトル(2の葦)

イルウィカク・トラルティワパケ(天と地の所有者)」

「成程。今までメモでも太陽神、生贄、葦のキーワードは確かにあった。

やっぱり元はキリスト教系の悪魔じゃなくてアテスカ神話の神様だったのか」

「どうやらそうみたいね!ほら!このテスカトリポカの祭祀に関する

記述にあの殺された男性達と同じように心臓を生贄にされているってある!!」

エイダも興奮して本の文章を指さした。

「神の如く本人は崇められて。4人の若い女性とえーつ??

なんだか。ちょっと8の従者がいて。なんか羨ましい。」

鳴葉は顔を赤くしてそう言った。3人は笑った。

更に4人は太陽神テスカトリポカの祭祀の続きを読んだ。

「テスカトリポカの祭祀はアテスカ太陽暦の5番目の月であるトシュカル(乾燥)

の期間に行われる。祭りの準備は1年前に行われ、

神官によってテスカトリポカに良く似た男性が選ばれた。

祭りまでの一年間、男性は宝石を見に付け、8人の従者を付けられ。

4人の若い女性と結婚した神のような生活を送った。

最後の一週間に歌い、踊り、大いに食べ、4人の若い女性と結婚した。

(ちなみに何故か鳴葉は自分とエイダがそのテスカトリポカの祭祀に

なった男性との妻になった事を無意識に夢想した。)

そして祭り当日。男性は神本人の如く崇められ、自ら神殿の階段を昇り。

神官はその胸を切り裂き、心臓を取り出し、太陽へ生贄とした。

生贄の死の直後、翌年の祭りの為に新しい犠牲者が選ばれた。

9番目の月の祭りである。ミッカイルウィントントリ(死の小祝宴)。

15番目の月の祭りである。

パンケアッアストリ(旗の掲揚)においても祭られたと言う。」

そこまで読んだ時、鳴葉は徐々に顔を青くした。間も無くして静かにこう言った。

「あーあっ。前言撤回。全然羨ましくないわ」

するとエアとエイダは思わず噴き出した。魔人フランドールも力無く笑っていた。

「たはあああっ!確かに誰だって死にたくないものね」と魔人フランドール。

「ただこれはあくまでも状況証拠」とエイダ。

「はい!やっぱり!この教会のどこかに持っと決定的な証拠がある筈です。

そもそも連中がどんな儀式をしたのか?」

「突き止める必要があるわね。肉屋で拾ったあの

『とある絵本の物語の後編』もきっとこの辺にあるかも」

すると鳴葉は思った事を口にした。

「もしかしたら?今までの街中で取り忘れたとか?」

「それは嫌だなー。」とエアは頭を掻きながら答えた。

「結構探したつもりだったけどあるかも」とエイダ。

魔人フランドールも鳴葉の指摘に困った表情をした。

とりあえずこの先の教会でメモが見つかる事を祈った。

そしてふとエアはアメリカの大学生のサークルの『オズ』の

日本人とアメリカ人のハーフの女性の行方が気になった。

全員襲われたか?何とか生き残っているのだろうか?

見つけたらどうにか保護しないと。

ビデオカメラでは『仲間達』と呼んでいた。もしかしたらまだ生き残りがいるかも。

エア、エイダ、鳴葉は書庫から出た。4人は廊下に出ると細長い四角い道に出た。

しかも四角く細長い道が続いているのかと思いきや途中で途切れていた。

その下は完全に崖になっていた。エア達はそれに気付いて立ち止まった。

危うく落下するところだった。エアが恐る恐る崖の下を覗き込んでみた。

それは真っ黒な穴の中だった。それはどこまで深くか分からない。

とにかく深い深い穴だった。

まるでそれは深い。真っ黒な深淵。

しかもその深淵の穴から何かの視線を感じた。深淵の何かに覗き込まれている感覚だ。

何かに覗き込まれているような不気味な感覚を感じていた。

ふとエアの脳裏にドイツの哲学者のフリードリヒ・ニーチェ

ある名言がはっきりと浮かんだ。

『怪物と闘う者は、自らも怪物にならぬよう気お付けるべきだろう。

深淵を覗き込む者は深淵からも覗き込まれているのだ』と。

4人は黙って深淵を見ている内に深淵に魅入られる前に移動した。

それから反対側を歩き始めて元の道に引き返した。

しかもそこにまたストレイトジャケットフランが3匹。

セクシャルスラーパーが1体が現れた。

エアとエイダはマシンガンでストレイトジャケットフランを倒した。

1匹のセクシャルスラーパーは飛び掛かって来たところを

下腹部を蹴飛ばして細長い通路の外に弾き飛ばして下へ落とした。

セクシャルスラーパーはそのまま落下して暗闇に消えた。

それから再び鐘桜に続く廊下に出た。

その直後、突然入ったばかりの赤と血の錆の扉が跳ね戸のように開いた。

更にいきなり10体の人型クリーチャーが現れた。

驚いてエアとエイダと魔人フランドールが振り向いた。

その瞬間、さっき見たズタ袋を被った男達が鳴葉の両肩と両胸を

思いっきり掴むとそのままドアの内側に引きずり出した。

余りにも早過ぎた為、全員反応出来なかった。

やがて鳴葉の絶叫は長々と暗い赤と錆に覆われた廊下に響き渡った。

エイダとエアと魔人フランドールは

鳴葉の絶叫を頼りに10体のボロ袋男達を追跡した。

3人は赤い血と錆に覆われた廊下を走り出した。またすぐ元来た道に戻った。

そしてエアは直ぐに入ってからすぐの廊下の壁に空いた大穴に190体の

ボロ袋の男達が力づくで鳴葉の華奢な身体を引きずり込んで行くのが見えた。

そこはいつの間にか壁に穴が開いていた。

更に穴の先は大人一人が通れるような穴が真下に向かってあった。

しかしどこに繋がっているか分からない為、入るのは止めた。

大穴はアリの巣になっているように見えたからだ。

下手に入ってちゃんと到着したとしてもあのボロ袋の

反メディア団体ケリヴァー『教団』の狂信者に囲まれて袋叩きに遭えば

元もこうも無い。

エイダは四角い金網の箱の正体がエレベーターだった事を突き止めた。

すぐに魔人フランドールはそれを彼に知らせた。

3人は彼らの後を追って、危険な場所から

鳴葉を救い出そうとエレベーターに乗って起動させた。

やがてエレベーターは下へ下へとスーツと早く降りて行った。

その後、下へ続く扉が開いた。

 

(第63章に続く)