(第63章)あれは?デビルマン?

(第63章)あれは?デビルマン

 

『静かなる丘』の教会の暗い何処かの部屋。

しばらく意識を失っていた鳴葉はゆっくりと瞼を開けた。

そこは教会の地下のどこかの部屋のようだった。

周囲を見ると彼女がいる部屋は長四角の広い大部屋である事が分かった。

更にその部屋には自分ともう一人に日本人女性がいた。

その日本人女性は裸で灰色のボロボロの布を纏っていた。

両頬まで伸びた黒髪。やや太く長い茶色の眉毛。

美しい茶色の瞳。丸っこい低い鼻。ピンク色の唇。

少し口が開くと美しくも白い前歯が見えた。両頬はふっくらとしていて丸顔だった。

彼女もまた日本の大学生のサークルの『オズ』のメンバーのようだ。

そして他のメンバー達と同じようにズタ袋の怪物の

反メディア団体ケリヴァーの『教団』の狂信者達に捕まってしまったようだ。

そして他のメンバー達と同様に性的暴行を受けていた。

自分以外のメンバー達は全員彼らに洗脳されてズタ袋の怪物になってしまったらしい。

しかし自分は仲間になる事を拒絶した為、奴らの仲間にはならなかった。

それでも連中は自分(名乗るのを忘れている事に気付き、彼女は七羽と名乗った。

メンバー名は『おくびょうライオン』らしい。)そして今も生き残っているのは

自分と逃げ出したリーダーの山岡詩音さんだけらしい。

とは言っても(生き残っていないかも知れない)と不安な表情になった。

「とにかくここから出ましょう!もしかしたら!会えるかも?」

鳴葉は落ち込む七羽を励まして立たせた。しかしそこにガチャッ!とドアが開いた。

そして入り口からはあのズタ袋の男が沢山現れた。

ズタ袋の男達は全員共通していた。

頭部に茶色の四角いズタ袋を被っており、素顔は見えない。

茶色のエプロンを付けており、灰色のズボンを履いていた。

そしてがっちりとした体格にプロレスラーのような筋肉質な体格で

全員胸板が厚く大きかった。また何人かの女性も入って来た。

彼女達は細身のあるスレンダな体格で胸は丸く大きかった。

また日本人らしき体格のズタ袋を被った怪物も混ざっていた。

間違いなく彼らに洗脳されて怪物化した大勢の若い女性の被害者の成れの果てだろう。

そしてズタ袋を被った人型クリーチャー『ケリヴァーミショナリー』の大群達は

あっと言う間に鳴葉と七羽の周りをグルリと取り囲んだ。

鳴葉は七羽を庇うように片手で七羽の身体を掴んだ。

ケリヴァーミショナリー達はじりじりと包囲網狭めて近づいて来た。

くそっ!駄目だッ!囲まれているから逃げられないッ!!

ケリヴァーミショナリー達に包囲されて絶体絶命の中、

鳴葉はどうにか防衛しようとマシンガンを取り出そうとした。

しかしタイミングが悪い事にマシンガンはあの

ケリヴァーミショナリー達に攫われた時にどこかに落してしまったらしい。

クソっ!これじゃ丸腰ッ!どうすれば??守れるの??

それから無意識の内に下腹部を撫でた。

七羽さんを守らなきゃ!自分のお腹の子供も守らなきゃ!!

でも!武器が無いッ!どうしたら?ポケットには何も無いッ!!

やがてケリヴァーミショナリー達はまるで壊れた機械のようにしゃべった。

「若村様に従え!さすれば幸福を与えん!楽園へ行こう!!

若村様に従え!さすれば幸福を与えん!楽園へ行こう!!

若村様に従え!さすれば幸福を与えん!楽園へ行こう!!」

「若村?薬でもやり過ぎたの?私!幻でも見ているの?」

七羽は激しく動揺し、混乱して両手で頭を抱えた。

しかし鳴葉はケリヴァーミショナリー達の言葉にこう反論した。

「楽園?ふざけた事を抜かすな!!この臆病者がッ!!

楽園がどこだか知らないけど!痛みも苦しみ何も無い世界なんてある訳がないッ!

そんなの『死』だけだッ!!現実のメディア社会を否定しているけど!

本当は恐ろしんでしょ?羨ましいんでしょ??」

ケリヴァーミショナリー達は鳴葉の言葉に激しく動揺した。

更に我が意を得たとばかりに鳴葉は反撃した。

「ただ人を無理矢理従わせている!!望まない支配はいらない!」

鳴葉と七羽に拒絶されたケリヴァーミショナリー達は

自分達の思想が拒絶されても自分達の思想を伝えようとした。

「我々はゲームやテレビ、テレビ、携帯、スマートフォン

人間の精神や肉体無く影響を与える!だからこそ!我々は神をこの日に降ろし!

ゲーム、テレビ、携帯、スマートフォンのメディアやAI(人工知能)の

一切存在しない新世界の楽園を世界にもたらす!

そうすれば我々人々は救われるんだ!!」

「私達はそんなの望んでなんかいないッ!!」

「いい迷惑よ!返してよ!私達の仲間も全員返せ!!」

それから鳴葉と七羽は怒り狂い怒鳴った。

「すると自分達の思想がもはや二人に届かないと分かった

ケリヴァーミショナリー達は「メディアの申し子!魔女共め!」と一斉に叫び始めた。

そして狂ったように銅の杭を持ち、両手を振り上げた。

2人は悲鳴を上げた。

「メディアに犯されて悪魔となった人の子は殺さねば!

メディアに犯されて悪魔になった人の子は殺さねば!

お前達は楽園に住めない!お前達は楽園に住めない!!

害悪!ゴキブリ共!ゴキブリは殺す!殺す!ゴキブリ!!

悪魔の子を腹に宿す魔女!私に近い!私に駄目だ!駄目だ!

反乱者め!反乱者め!小汚いゴキブリめ!」

ケリヴァーミショナリー達は両手で銅の杭を振り上げた。

そして先端を鳴葉と七羽の顔、胸部、腹部に一斉に向けた。

「きゃあああああああっ!」と七羽は悲鳴を上げた。

鳴葉は「ここまでか」と呟記、瞼を閉じようとした。

彼女は「死にたくない!死にたくない!いやあああああああっ!!」

甲高い声で泣き叫ぶ七羽を両腕で彼女の身体をしっかりと抱き締めた。

せめて死の瞬間は見せないよう鳴葉は深い胸の谷間に七羽の顔をうずめさせた。

七羽の視界は真っ暗闇で何も見えなくなっていた。

それでいい。死の瞬間は見せない方がいい。

ああーマイキ!せっかく人生をやり直せると思ったのに!

くそっ!こんなクズ野郎のせいで!くそっ!くそっ!

次第に鳴葉も悔しくなり、シクシクと泣き出した。

「嫌っ!やっぱり!やっぱり!死にたくない!死にたくないッ!助けて!

マイキー!エア!エイダ!魔人フランドールッ!あああっ!」

「魂は今!天の元へ!魂は浄化され!楽園へ!!」

ケリヴァーミショナリー達は一斉に銅の杭を

七羽に向かって振り下ろそうと力を込めた。


Devilman No Uta (NickStradi feat. Howl)

その時、ぽちゃん!と水が落ちる音がした。

「えっ?」と呟くと鳴葉は部屋の入り口を見た。

すると入り口にあのマイキーが変身した天魔アルミサエル

彼は青い瞳は涙を流した。涙は両頬を伝って流れた。

涙を下顎を伝って右掌に落ちて行った。

その瞬間、右掌に円形の青い逆三角形に周囲に幾つも

読めない文字の入った模様の銀のメダルに変わった。

そしてマイキー事、天魔アルミサエル

「『アルミサエルの印章』の力を知れ!」

と言いながらアルミサエルの印章を鳴葉と七羽を殺そうとした

ケリヴァーミショナリー達に向けた。

するとアルミサエルの印章は青く輝いた。

鳴葉は咄嗟に七羽を床に伏せさせた。

同時に青い光はアルミサエルの印章から放たれた。

ドオオオオオオオオオオオオオン!!

大きな爆発音とともに部屋全体が大きく上下左右に揺れた。

鳴葉と七羽を取り囲んでいたケリヴァーミショナリーの大群は

一斉に断末魔とも取れる絶叫を長々と上げ続けた。

ケリヴァーミショナリーの大群は全身を粉々に砕き、

砕け散った破片は天井へ向かってバラバラと昇って行った。

たちまち全員白骨化し、骨も砕けて消え去って行った。

あっと言う間にあれだけ存在していた筈の

ケリヴァーミショナリー達の姿も影も形も見当たらなかった。

残ったのはようやく起き上がって座り込んだまま

呆然としている鳴葉と七羽だけだった。

天魔アルミサエルは茫然としている鳴葉と七羽の元に歩み寄り、屈んだ。

鳴葉は涙を流した。「ありがとう。助けに来てくれたんだ!!」

天魔アルミサエルは無言で頷くとそっと鳴葉の手を取った。

彼女の手の上にそっとさっきのアルミサエルの印章を乗せた。

「これはアルミサエルの印章!強力な火炎属性魔法の力が宿っている。」

「要はお守りみたいなもので。デビルマンの熱光線みたいな感じね。ありがとう!」

鳴葉は天魔アルミサエルからアルミサエルの印章を受け取った。

天魔アルミサエルは真剣な表情をしている鳴葉にこう告げた。

「ただし!これは退魔させるだけ!また連中は来る!」

「じゃ!急いで彼女を外へ出さないと!異世界の外に!!」

鳴葉は緊迫した表情で七羽を見た。

彼女はまだ鳴葉の胸の上に顔をうずめてシクシクと泣き続けた。

更に「帰りたい!」と呟き続けて来た。

鳴葉は頭の茶髪を優しく撫でた。右手で何度も撫でた。

天魔アルミサエルは「方法はある」と答えた。

「彼女は妊娠していない。だからここから出られない。

でも君と僕のSHB(サイレントヒルベイビー)の力を借りれば。」

「SHB(サイレントヒルベイビー)?私の子供の力をどうやって?」

アルミサエルの印章を彼女の頭の上に向ける。

続けて七羽さんの手を君の子供の宿ったお腹に付ける。」

鳴葉は言われるがままアルミサエルの印章を頭の上に向けた。

そして七羽の手を優しく掴み、自分のお腹に付けた。

「貴方が帰りたい場所を思い浮かべて。君の家でもいい。

赤ちゃんの本来のホームは子宮だ。

水のある場所がどこかにあるか?」

「お風呂場。そこなら」

「よろしい!ならば目とつぶり瞑想を」

鳴葉は天魔アルミサエルと見た時、ふと正気に戻り、彼を見た。

「貴方?私を助けてくれた?」

天魔アルミサエルは静かにこう返した。

「私はあの時のマイキー・カールだった者。君が私に託した『ディライト』

はメンバー全員に投与して元の姿に戻した。

元々はTウィルスのゾンビ病の特効薬のようだ。

これは彼女の胎内に侵入したTウィルスに類似した人間をケリヴァーミショナリーに

変異させるウィルスを即死滅させて元に人間の姿に戻し。

投与後もゾンビ化するウィルスと同様に抗体が維持され、永続的に感染による

ケリヴァーミショナリー化を防ぐ事が出来る。

皮肉だが『テレビやゲーム、パソコン、携帯、スマートフォン等を

正しくルールを守って使い。節度を守り、多種多様な自然とメディアの

価値観を受け入れて生活に生かす知恵のある日光さえあれば選民思想

汚れた他人に思想や価値観を押し付けて他人のメディアや

価値観を全否定するような腐った真っ黒な反メディアの作った傘はいらない。』

と言う訳だな。さて脱出の続きをしよう。」

七羽は本当にこれで地獄から出られるか

不安に感じつつも天魔アルミサエルの言う通りに目をつぶった。

天魔アルミサエルは鳴葉にも目をつぶり瞑想するようにと指示をした。

 

(第64章に続く)