(第13章)死者の英雄(ヒーロー)達

(第13章)死者の英雄(ヒーロー)達

 

佐代子の血液を吸い尽くした後に魂を吸収した死神ホラー・タナトス

生と死の境に存在する海とは正反対の方向にパシパシと砂浜の砂を蹴って歩き出した。

しかしすぐに死神ホラー・タナトスの背にある海の向こうから急ぎ足で

誰かが駆け付けていた。駆け付けた誰かは岩のようにしわだらけの顔に

ふくよかな口髭。黒で統一された衣装の初老の男だった。

「やはり!ヒントの解読に手間取り遅れたか・・・・」

続けて初老の男に続いてあの黄金騎士ガロの冴島鋼牙の父親の

冴島大河が知りコートをなびかせて現れた。

「大河!やはりあの人間が作った『ガメラ邪神再誕』じゃったか?

あのゲームの全てのエンディングを解放した上で日常パートの

各地の街にあるパチンコ玉の球体のオブジェクトと

イリスの石像を全て集めると真エンディングが見られる。

その真エンディングの中に死神ホラー・タナトス復活のヒントが隠されておったわ!」

「しかし復活したのならば!我々がやるべき事はひとつだ!」

阿門法師は魔導筆を構えた。

冴島大河は白いコートの赤い内側から真っ赤な鞘を取り出した。

続けて剣を素早く抜いた。

そして両手で構えて右手の甲に魔戒剣の両刃の長剣を乗せた。

巨大化した死神ホラー・タナトスは小人サイズに見える冴島大河と

阿門法師を見下ろした。そして不敵な笑みを浮かべた。

死神ホラー・タナトスはのぴそっくりの女性の声に模倣して話し始めた。

「魔戒騎士と魔戒法師よ!妾(わらわ)は『死』そのもの決して勝てぬ!」

「そうかな?俺達人間を甘く見ない方がいいぞ!死神ホラー・タナトス!!」

死神ホラー・タナトスは『のぴ』そっくりの声でけたたましく高笑いした。

「キャハハハハハハッ!」と。

続けて死神ホラー・タナトス話を続けた。

「妾の望みは全ての人々に『死』を与え!人々を喰らい尽くし!

太陽神テスカトリポカの契約通りに楽園の扉を開かん!」

死神ホラー・タナトスは両腕を組み、瞬時に左右に広げた。

全身から真っ赤に輝く太陽の聖環の形をした衝撃波を放った。

しかし大河と阿門法師は吹き飛ばされる事も無ければ決して倒れる事も無かった。

阿門法師は「ほほおっ!しかしながらお主はまだ不完全体!

お前はさっき目覚めたばかりじゃ!」と冷静に落ち着いた口調でそう指摘した。

「ああお前は今のところ!『デストルド形態』だ!完全体ではない!」

すると死神ホラー・タナトスは舌打ちした。しかしすぐにこう返した。

「フン!すぐにでも『ニュクス形態』となり!現世に行ってやる!」と。

死神ホラー・タナトスは息巻いて見せた。

大河は冷静に魔戒剣を構えると死神ホラー・タナトスに向かってこう言った。

「だが!その前に俺達がお前を片付けるさ!!」

死神ホラー・タナトスはまた高笑いした。

「キャハハハハハハハッ!片付けると?妾を?

お前達のようなちっぽけな小人に何ができる?」

死神ホラー・タナトスは大河と阿門法師の

2人だけしかいない状況を長々と嘲笑い続けた。

確かに死神ホラー・タナトスの言う通り大河と阿門法師はちっぽけな小人だった。

対して死神ホラー・タナトスは巨大な魔獣であった。

ある意味では『死』そのものだった。

阿門法師によると『死神ホラー』の肩書の他に『メシアの唇』。

『戯阿音(ギャノン)の姉魔獣』と称されている。

続けて死神ホラー・タナトスは「それに妾を復活させたのは!」と高らかに言った。

続けて自らの胸部の真っ黒なコア(核)の中で

体育座りしている『のぴ』の姿を見せた。

「この他人にただ殺される恐怖と自らの死に対する負の感情!そして佐代子と言う

人間の女の旧人類に対する激しい敵意を持ち!憎悪と怒りの負の感情が妾を

闇から目覚めさせたのじゃ!!妾は『メシアの牙であり妹のギャノン』。

『メシアの吐息のトミノ』『メシアの涙のエイリス』

『メシアの子宮のアナンタ』。妾『メシアの唇』じゃ!」

死神ホラー・タナトスは自信たっぷりに「妾は簡単には倒せぬ!!」

死神ホラー・タナトスはさっき血液を吸い尽くした佐代子のカラカラに

干からびたミイラの死体を触手で指さして阿門法師と冴島大河に見せた。

「フフッ!血を吸い尽くす前には人間の美女にしてはなかなか可愛く

血液はとても美味じゃった!!狂気に堕ちて気を狂わせて正気を失った

人間の血液はまるで赤ワインのように美しい赤の色ととても香ばしい匂い。

最高の食事だった!特に女の血は処女の方がとても旨い。

他にも現世には成熟した人間の女の肉体は沢山あるのだろう?

ワインの樽の中に入った極上の赤ワインを飲み干すのが楽しみじゃ!!」

死神ホラー・タナトスはペロリペロリと舌なめずりを繰り返した。

「やはり!気の毒な娘じゃな・・・・」と阿門法師は悲しそうにつぶやいた。

阿門法師の視線にはカラカラに干からびたミイラ化した佐代子の肉体を見た。

「やはり!自らの業の深さ故に喰われてしまったか?だが!これ以上は喰わせんぞ!」

大河は死神ホラー・タナトスを見上げて鋭い視線を向けた。

阿門法師も「これ以上!好き勝手させんぞ!タナトス!」

と言うなり死神ホラー・タナトスに鋭い視線を向けた。

しかし死神ホラー・タナトスはこう指摘した。

「好き勝手させぬだと?2人で何が出来るのだ?ましてや死人の貴様らに!

おとなしく極楽で次の転生先を探せば良いものの!」

「ほっほっほっ!本当に二人だけだと思っておるのか?死神ホラー・タナトスよ!」

「残念だがここに来るのは俺達2人ではないのだ!」

大河が力強い声で言った直後、青緑色の海水が遠くで大きく撥ねた。


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やがて遠くから大勢の人々の力強い雄叫びが響いてきた。

それは徐々に近づいて来た。やがて青緑色の海水が遠くで

撥ねる音も最大まで大きくなって行った。

続けて遠くから大勢の人々の力強い雄叫びも最大になった。

そして青緑色の海水を左右に切り裂いた。

同時に「うおおおおおおおおおおおっ!」と言う無数の雄叫びと共に

天文学的な数字の銅や銀や金の狼の鎧を纏い

魔戒剣を持ったハガネの魔戒騎士達が走って来た。

大河は力強い口調でこう言った。

「彼らは称号を持たぬ魔戒騎士達!!名も人々に知られず!!

そして今を生きる現実(リアル)の人々の生活を陰で守る為!

彼らは表彰もされず!唯一誰一人に知られる事無く!誰にも褒められず!

表舞台に決して出る事は無い!それ故に闇の中で命を懸けて人々を。

大切な家族を子供を老人を守る為にホラーを切り裂き!

誰にも知られる事無く現実(リアル)の世界を守り!生活と安全を守る!

それが『守りし者』!魔戒騎士の仕事なんだ!死んでも生者でも関係無いッ!」

「死んでも痩せても枯れても『守りし者』たる!魔界法師の阿門!

これ以上!現世(リアル)の世界に『死』を持ち込ませんぞ!」

ぐぬぬぬぬっ!おのれえええっ!魔戒騎士よ!魔界法師よ!死んでも邪魔をッ!!」

「おっと!俺達も忘れて貰っちゃ!困るよ!!」

「俺達は元々『こちら側(バイオ)の世界』の住人だからね!!」

そこに二人の青年が現れた。1人は赤髪のベリーショートヘア。

キリッとした細長い眉毛。青い美しい瞳。

両腕と手首に黒のリストバンドを付けていた。

そして青い服と迷彩のズボンに金色に輝く2丁拳銃のゴールドガーと言う

サブマシンガンを持った青年のスティーブン・バーンサイド

もう一人の青年は坂立った茶色のベリーショートヘア。

キリッとした細長い茶色の眉毛と茶色の瞳。黒いマフラを首に巻いていた。

更に『A・POS』の文字の付いた分厚い防弾チョッキを着ていた。

更に背中にスナイパーライフルを背負っていた。

彼の名前はピアーズ・ニュヴァンス。

かつてBSAA北米支部クリス・レッドフィールドと同じ特殊部隊に所属していた。

「さあーここで片づけてやる!俺達が『ホープ』だっ!!」

「かかってきな!死神ホラー・タナトス!返り討ちにしてやるよ!!」

ティーブンは二丁拳銃のゴールドルガーを。

ピアーズは背中からスナイパーライフルを抜き、両手でそれぞれ構えた。

2人は死神ホラー・タナトス銃口を突きつけた。

死神ホラー・タナトスは高笑いした。

「ハハハッ!妾は『死』そのもの!死者である貴様らに何が出来ると?

幽霊の分際が何をたわけた事を!!

生者であろうと死者であろうと妾は『死』そのもの!

『死』は不変にして不動!決して倒せぬわ!!」

「死者だから!何も出来ないのでは無いッ!死者だからこそ!

この三途の川で自分達が出来る事をするだけだ!死者も生者も無力では無いッ!!」

力強い言葉と共に大河と阿門法師は魔戒剣と魔導筆を両手で構えた。

その時、急に死神ホラー・タナトスの真っ赤な全身の皮膚に波打った。

やがて真っ赤な全身の肉々しい皮膚を突き破ってかつてアンブレラ社が

両生類の受精卵に培養過程で人間の遺伝子を組み込むと言う手法で開発された

ハンターγ(ガンマ)の姿形と性質を模倣させた自らの肉体の一部を

一気に次々と天文学的な数を作り出した。

「ありゃ?ハンターなのか?」とスティーブン。

「あれはジルのラクーンシティ報告書にあったハンターγ(ガンマ)だ!

恐らく人間を丸呑みにして肉体を消化して

魂を腹に入れて集めるのに適しているのだろう。

気おつけてくれ!奴は丸飲みと切り裂きと尻尾を振り回す攻撃が得意だ!

地上に出る前にこいつらも何とかしないと!」

「あれは人間が創り出したのじゃな?」と阿門。

「はい!そうです!人間と両生類の肉体を合体させて」とピアーズ。

「一体?どう言う発想したら?そんな事が出来るのやら?」

大河が余りにも奇妙な姿をしたハンターγ(ガンマ)

の姿を見て呆れ果てた口調で言った。

「呆れてものも言えん」とつぶやいた。

「ほっほっほっ!わしらの知らないところで人間も変な物を創っおった。

だだそれだけじゃよ!大河!そろそろ奴は成長を始めるぞ!」

死神ホラー・タナトスは空に向かって奇妙な咆哮を上げた。

それはフクロウやキジバトの鳥類の声を濁らせた低い鳴き声を上げた。

「フオオッ!ホオオオッ!」と。

続けて牛の形をした頭部と恐竜のような両脚や恐竜かトカゲに似た赤い身体は

急激に変化して行った。そして2対の昆虫の触角に似た赤と緑の角。

4対の青い冷めた輝きを持つ眼。両腕は女性らしく細くしなやかで肘の下部から

上腕筋辺りから4対の真っ赤に輝く翼の形をした鋭利なカッターを残して

そのほとんどが変形して行った。両頬から生えた細長い魚のエラ状の

突起物は完全に消滅した。

続けて死神ホラー・タナトスはガバッ!と大きく口を開けた。

口には無数の獣のような牙が生えて並んだ。4対の眼は真っ青に輝いた。

続けて両肩から延びた男性らしい筋肉質な逞しい両腕と

元々のぴの細長くしなやかな赤いカッタの付いた両腕を大きく左右に広げた。

両掌4対に真っ赤に輝く太陽の聖環が現れた。

更に胸部は2対の青緑色に妖しく輝く球体が現れ、中心は細長く真っ赤に輝いていた。

両脇腹が十字架に発光した。

全身はより真っ赤に輝いた。

更に頭部に真っ赤に輝く天使の輪を二重に発生させた。

その見た目は両性両具の神の姿だった。

またより人間に近く直立歩行を行うようになった。

両脇腹からもう2対の銀色に輝く鋭利な槍腕を皮膚を突き破り離した。

これにより両腕は6対生えていた。まるで阿修羅かシヴァ神のように。

背中からバサッ!と4対の銀色に輝く三角形の翼を生やした。

両脚ものぴと同じようにむっちりとした細長い女性の形に変形していた。

両足は三角形の緑色に輝く足があった。

オレンジ色と筋肉質な分厚い鎧に覆われた胸部。

そして大きな丸い筋肉質な分厚い鎧に覆われたお尻。

背中から天文学的な数字の美しく緑色、茶色、赤色に縁取られた

長い触手を空中でそれぞれクネクネと動かしていた。

「ふむ!悪くないぞ!!この依り代となった女に肉体は模倣しやすく

とても良い!これで妾は『リビドー形態』じゃ!さて!あともうすぐじゃ!

さてどうするか?まだ戦う気かのう?ふふふははははっ!」

「勿論だ!」

「当たり前だぜ!」

「さっさとかかって来いよ!」

「フッフッフ!」と阿門法師と大河とスティーブン。

「では!そうさせてもらおうッ!」と死神ホラー・タナトスは力強く叫んだ。

 

(第14章に続く)