(第14章)甘き死よ来たれ(前編)

(第14章)甘き死よ来たれ

 

現世のこちら側(バイオ)の現実(リアル)世界。

『静かなる丘・サイレントヒル』の教会から脱出しようとしている

エイダ、鳴葉、破壊神ミカエルはアレッサの部屋から出た。

そして全員はまた赤い血と錆に覆われた廊下を歩き続けた。

しかもオレンジ色の霧もオレンジ色に燃え盛る炎も消失していた。

さらに廊下から暗く静かで不気味だった。

そして茶色の扉を開けて、あの赤い血と錆に覆われた壁と

赤く汚いタイルの床に覆われ、細長い網の部屋に入った。

直後にまたケリヴァー・ミショナリー達が次々と天井から

落下して来て銅の杭を振り回して襲って来た。

しかしすかさず鳴葉がアルミサエルの印章を向けた。

次の瞬間、大きな爆発音と共にアルミサエルの印章から青い熱線が放たれた。

そして青い熱線はケリヴァーミショナリー達の全身を粉々にして完全に消滅させた。

続けてエイダは両手でマシンガンを構えて

遠くから走って来るケリヴァーミショナリー達

を複数ハチの巣になるまで撃ち続けた。破壊神ミカエルはエイダと鳴葉を守るように

前に立ち、真っ赤な電撃を帯びた激しいパンチをケリヴァーミショナリー達の

顔面や胸部や腹部に叩きつけた。そして破壊神ミカエルのパンチを喰らった

ケリヴァーミショナリー達は真っ赤な電撃に抱かれて全身を痙攣させた後に

真っ黒に炭化して次々と倒れて行った。その時、ふと鳴葉は何かに気付いた。

そして「あれ?」と声を上げた。おかいしい。

確かに七羽さんと最初にケリヴァーミショナリー達に遭遇した時は無数いた筈。

それが凄く減っているわ。気のせいかしら?いや!それにズタ袋の男で

今ここにいたのはがっちりとした体格にプロレスラーのような

筋肉質な胸板の厚く大きな男や細身の男はわらわらとゴキブリの様にいたけど。

女性型ケリヴァー・ミショナリーが日本人もアメリカ人女性も

一人も見当たらなくなっている?しかも男だけ?どうして?

「おかしいわ。男も女もたくさんいたのに減っているの」

「減っている?一体!?もしかしたら太陽神テスカトリポカが彼女達に何かを?」

そしてエイダと鳴葉、破壊神ミカエルは全てのケリヴァー・ミショナリー達を

殲滅した後にさらに教会地下の裏世界の赤い血と錆の壁にある細長い廊下を進んだ。

そして鳴葉はアルミサエルの印章の青い熱線でエイダ・ウォンはマシンガンの連射で

次々と躍起になって襲い掛かって来るケリヴァーミショナリー達を地獄に

堕とすように真っ暗な崖の下へと粉々に落として行った。

破壊神ミカエルもエアと同じ真っ赤に輝く両刃の長剣のミカエルソードで

次々とケリヴァー・ミショナリー達を右斜めに右肩から左腹部まで切り裂いたり。

一刀両断したり。上半身と下半身を瞬時に切断して次々と倒して行った。

しかしいきなり暗闇から一体のケリヴァーミショナリーが飛び出した。

しかもそいつはプロレスラーの体格の男だった。

そして油断していた鳴葉の目の前で両手で銅の杭を振り上げた。

直ぐに気づいてエイダは振り向いてマシンガンの銃口を向けた。

しかしそれよりも早くケリヴァーミショナリーは両手に持っていた銅の杭

を振り下げようと勢いよく両手を降ろした。

鳴葉は再び死を覚悟し、瞼を閉じようと思った。

そして銅の杭の鋭利な先端が鳴葉の心臓にある胸部に高速で迫った。

エイダは引き金を引こうとするが

間に合いそうになく悪態を付き、「よけて!」と叫んだ。

そして銅の杭の鋭利な先端が鳴葉に突き刺さる直前、ミカエルソードの

真っ赤な両刃の長剣の上部の刃で銅の杭の鋭利な先端を受け止めた。

ガン!!と大きな金属音がした。鳴葉は左側に顔を向けるとその隣に

イエローピラミッドシングの事、破壊神ミカエルが立っていた。

鋭利な銅の杭は鳴葉の胸部10cmで止まっていた。

続けて破壊神ミカエルは両腕を高速で水平に振り、

ケリヴァーミショナリーを軽々と吹っ飛ばした。

ケリヴァーミショナリーはそのまま崖から転落した。

ケリヴァーミショナリーは真っ黒な穴の中へとあっと言う間に消え去った。

破壊神ミカエルは続けざまに正面から襲い掛かって来たもう一体の

ケリヴァー・ミショナリーの身体を一刀両断した。

更にもう一体のケリヴァー・ミショナリーの頭部を切断した。

それから破壊神ミカエルは三角頭を鳴葉に向けた。

するとおずおずと鳴葉はお礼を言った。

「あっ!ありがとう!とても強いのね!カッコいい!」

破壊神ミカエルは呆れたように首を左右に何度も振った。

そしてエイダに促されて鳴葉と破壊神ミカエルは教会の外へ

脱出する為にどんどん先へ進んだ。さらに廊下の途中の

男性型ケリヴァー・ミショナリーを次々と全て油断なく慎重に倒して道を確保した。

 

『静かなる丘・サイレントヒル』の教会の屋上の何処か十字架の形をした

円形の広場のような場所で白い濃霧が立ち込める所で女の子と男の子と

大人の男性が会話していた。どうやら全員、異世界に迷い込んだ訳ではなさそうだ。

「なんで?あたしがここに呼び出されたの?私は前世の記憶。

もう『ゲシュタルト計画』も魔王もお兄ちゃんも解放されたのに?

兄ちゃんと私はどうして?ここにいるの?」

「理由は説明しよう。私は『こちら側(バイオ)の世界』にいる

人間達の生命と世界を守りたいのだ!その為に我は動く!」

「人間を守りたいって言う事は大切な人がいるの?」

「私には妻がいる。そして『柏崎の悲劇は繰り返さない』」

「その柏崎って何をしたの??」

「世界と宇宙をすべて破壊し尽くした魔術師だよ!

彼は私と白痴の魔王を同時召喚して無理矢理争わせてね。

だからループした世界で柏崎は倒されて『人類・世界滅亡』は阻止されている。

若村秀和も同じように世界の人々の生活と肉体を破壊し尽くして滅ぼそうとした。

男の話を聞いた女の子は沈んだ表情で黙り込んだ。

「今、こちら側(バイオ)の世界の人類は余りにも見勝手な

人間達の集まりによって太陽神テスカトリポカが復活し。

旧人類は消え去ろうとしているのだ!」

「まさか?だけど!私達の世界を滅ぼした『神』?」

「いや。全く別の異教の神だ。

元は『静かなる丘・サイレントヒル』の土地を治めていた太陽神だった。

だから君達人間達の肉体と魂を引き離してお互い争わせた

『神』とは全く異なる存在だ!そろそろ霧が晴れるな。」

やがて周囲の霧が晴れた。彼の言う通りに。

すると十字架と円形の広場の中央に三人いた。

大人の男性は短い黒髪。黒いスーツにTシャツ。

黒いネクタイを付けたいかにも紳士的な風貌をした男だった。

大人の目の前にいるのは人間の女の子と男の子の魂だった。

女の子の魂は両肩まで伸びたサラサラの金色のかかった銀髪。

やや青みが掛かった灰色の瞳。歳は12歳で在ろう。

大きな緑のリボンの付いた純白のドレスを着ていた。

そんな幼さを残した少女の姿をした美しい魂だった。

更にもう一人の男の子の魂もいた。

髪はツンツンとした髪型は白に近い銀色をしていた。

瞳の色は灰色を帯びた青色の瞳だった。

白い模様の付いた服と黒い鎧を纏っていた。

魔王の副王と名乗る男は少年と少女を見た。

「君達は珍しい前世を持った魂だ。

そう、あの現在(リアル)を生きる『のぴ』の肉体に

宿っているのは『キメラソウル』と呼ばれている。

これは通常の前世の記憶は魂に一つ一つしか宿らないが。

ごく稀に夫婦かあるいは兄弟、姉妹の強い絆によって

2人の魂が結合してひとつの魂になる事がある。

勿論、しょっちゅう起こる訳では無く確率は極めて低い。

よほどの絆か強い想いが無い限り発生する事は無い。

ほとんどの場合は兄弟も姉妹も2つに離れてひとつひとつの肉体にしか宿らない。

そして『キメラソウル』は魂の宿った個人のひとつの

肉体にひとつの魂と2つの前世を持つ人間となる。」

「それが僕達ですね!」

「そう!私達は『のぴ』さんの魂の一部!!」

「その通りだよ!ニーアとヨナ!君達の協力が必要だ!」

「世界を救う為ですね!」とニーアと呼ばれた男の子。

「私達に出来るならやりましょう!」とヨナと呼ばれた女の子。

「よろしい!では!早速儀式を始めよう!」

「よろしくお願いします!ヨグさん!」

ヨナとニーアはぺこりと頭を丁寧に下げた。

「よろしい!」とヨグは言うとタロットカードを取り出した。

やがてタロットカードはそのままヨグの手を離れ、宙に浮いた。

そしてシャッ!と音を立てて綺麗に並べられた。

「まずは!」とヨグはタロットカードを順番に見た。

「『のぴ』は『女帝』と『刑死者』。

そして13番目の大アルカナ『死神・死の宣告者』と共に持つカードだ。

『のぴ』の前世の『ニーア』と『ヨナ』は『星』のカードだ!

そして『刑死者』から13番目の大アルカナのカード

『死神・死の宣告者』のカードと組み合わさる事となる。

そしてシルクロードとマサイが司る『運命』の

大アルカナのカードは『愚者』の大アルカナと並ぶ。

魔人フランドールとシェリル・メイソン刑事。

そして私の『運命』と『星』のニーアとヨナ。

今や『刑死者・吊るされた男』から『死神・死の宣告者』

となりつつある『のぴ』。これら全てのカードが組み合わさり。

『正義』として善悪と理性を取り戻すであろう。

ヨグは直ぐに円形の広場の銀色の床を見た。

足元の銀色の床は大きな鏡に変化した。

ヨグはその大きな鏡を見るなり、「チッ!」と舌打ちした。

「チッ!やはり我が予測したよりも早く始まっているな!!」

ヨグにつられてニーアとヨナは床の円形の大きな鏡を見た。

円形の鏡にはこちら側(バイオ)の世界の様子が映し出されていた。

そこは聖ミカエル病院の屋上だった。

屋上には鬼島神具とアサヒナルナ。しゅがー。

アシュリー・グラハム。魔女王ホラー・ルシファーがいた。

また屋上の下の建物の窓から真っ赤な光が窓ガラスを割り、大量に噴射していた。

「一体?何があったんですか?」

「生命のスープだよ」

「兄ちゃん!あの光なんか凄く怖いよ・・・・見たくない!」

ヨナは酷く怯えた表情でニーアの胴体に両腕で抱き締めた。

「聖ミカエル病院の建物自体が陰我のあるオブジェ(物体)。

つまり死神ホラー・タナトスが通るゲート(門)だ!!

あそこから死神ホラー・タナトスが門を通って現世に出たらおしまいだ!

あの封印されている『のぴ』の肉体も魔戒結界が死神の力で砕け散り。

死神ホラー・タナトスの元に帰るだろう。完全体だ!!」

「光の中の人達はどうしたんですか?」

「うっ!そんな。嘘でしょ・・・・人が・・・・人が・・・・」

鏡の中では『しゅがー』が床にへたり込んで顔を真っ赤にして泣きじゃくっていた。

眼から大粒の涙をポタポタと床に垂らしながら子供のように泣きじゃぐっていた。

「ゆいにゃあっ!わあああっ!ちーが!りあらが!みんな!みんな!

服だけ残してオレンジ色の液体になってしもうた!!どうなってん?!

うわああっ!みんなあっ!みんなああああっ!わああああんっ!」と。

 

(第15章に続く)