(第17章)無自覚な悪意と『死』を欲する人々

(第17章)無自覚な悪意と『死』を欲する人々

 

大河は素早く起き上がった。そして真っ赤な瞳で死神ホラー・タナトス

頭上の真っ赤な天使の輪を見ると狼の仮面の内側で大河は悔しそうな表情をした。

「クソっ!間に合わなかったか!!七つのラッパの赤き光!!」

大河は起き上がった轟天にまた素早く背中に跨った。

そこにスティーブンがさっきの大河の言葉が気になったのか?

周囲の死神ホラー・タナトスの模倣されたハンターγ(ガンマ)

の大群をゴールドルガーで倒しつつも質問した。

「あの七つのラッパって?まさか?あの魂を奪う光が?」

大河は轟天に再びたずなで操り、態勢を整えながら丁寧に答えた。

「ああ。そうだ。あれは第2のラッパだ!終末の合図だ!」

「じゃ!また沢山の人々が!クソっ!何とか残りの5つのラッパを止めないと!」

「ああ。残念だが。状況は悪くなる一方だ!何とかせねば・・・・・」

その時、ピアーズが落としたであろう無線機が作動した。

ティーブンは無線機を拾って耳に当てた。すると女性の声が聞こえてきた。

「こちら・・・・クレア・・・レッドフィールド・・・・。

赤い光がニューヨーク市内全体を覆って・・・。

みんな!お願い!あの光に触らない!触ってはいけない!!・・・・・・・。

現在、ニューヨークの大都市のみに・・・・。

赤い光の出現により・・・・。街中のニューヨーク市民が・・・・人間が・・・・。

オレンジ色の液体となり即死!!生き残っているのは私とレオン・S・ケネディ

ヘレナ・ハーパー、兄のクリスレッドフィールド。シェリー・バーキン

リヴィアのゲラルド。フィリパ・エイルハート。バリー・バートン。モイラバートン。

恐らくジェイク・ミュラーも生きていると思う。あとはミア・ウィンターズ。

ローズマリー・ウィンターズ。アイリーン・タウンゼット。

ヘンリー・タウンゼットの10名はミアの娘の

ローズマリーのE型特異菌の未知の能力により、生存を確認した。

また他にも10代や20代の若い女性達も大勢、生存しているわ。理由は不明!!

ああっ!こんな事!今までは無かった・・・大勢の大人の男達も

子供達もお年寄りもみんな赤い光を浴びて・・・オレンジ色の液体に。

街中にオレンジ色の海が広がっていて沢山の衣服がプカプカ浮いていて。

いや・・・・もう・・・・見たくない・・・ああ。どうしよう!

私同じ事があった事を知っている。また人々の意識がひとつになろうとしている!

私はもうひとつには・・・・なりたくない。私は・・・死ぬのが怖い・・・・。」

そこでクレアの無線通信は途絶えて無線機から何も聞こえなくなった。

「クレア!クレア!くそっ!あの強気のお嬢様まで怯えてやがる!畜生!」

しかし再び無線でノイズ交じりで聞え辛かったがクレアの声が聞こえた。

「ザーザーガーガーピーピー。生存者ザーザーザー。ルシファー。鬼島神具。

しゅがー。ザーザーガガガッピーピー。バベル超結界を用いて生存したと報告。

一般人の2人の生存をかくザッ!にん!ザーザーガガーピイイッ!ピッ!」

ティーブンは無線機の向こうのクレアに「クレア!生きろ!」と声をかけた。

しかしその直後にまた無線が切れて何も聞こえなくなった。

咄嗟に口から出た言葉だったが。クレアにはちゃんと聞こえたのだろうか?

答えは神のみぞ知ると言った所であろう。分からない。いや伝わればいいが。

「確か残り5つのラッパとやらがある筈だな。止めなかったら・・・」

「例の人間の肉体が液化して魂だけが現世を彷徨う現象は

大都市から国内から国外に広がって行くだろう。

最後のラッパが鳴る頃には人類のほとんどは液化して魂だけになってしまう。

耐えられる人間と奴の食事となる人間の若い女性達を

除いて人類は確実に滅亡してしまうだろう。

勿論、耐えられる若い女性達も奴に捕食されれば人は誰もいなくなるだろう。」

「畜生!何だって言うんだよ!まるでヨハネの黙示録じゃねえか!ふざけんなよ!」

「奴を早く封印してしなければ!こちら側(バイオ)の世界と俺達の向こう側(牙浪)

の世界や多数の並行世界(パラレルワールド)の人々や動物達の命も危うくなる!」

「マジかよ!最悪じゃねえか!他の世界の人々や動物達も道連れかよ!!」

「奴はあくまでも『死』そのもだ。生命の始まりがあれば終わりの死もある。

いいか!若僧よ!動物や人間はどの世界にいても幾ら医療技術で生きる時間が

長くなろうとも身体の異形の怪物に変えようとも人間も動物も必ず『死』ぬのだ!」

大河にそう言われスティーブンも自分も「クレア。愛しているよ!」と

伝えて死んだ事を思い出した。ああ、そうだよ!クソっ!俺はっ!俺は・・・・。

彼女の寂しさと悲しさしか与えられなかったんだ!

ティーブンはしばらく重苦しい表情をした後にすぐに気持ちを切り替えた。

「それでも!俺達はやるしかねえ!クレアの為に『死神』を止める!」

彼はクレアの死に怯えている声を聞き、静かな声で決心を固めた。

大河はそんな彼の強い心を感じ取り「ああ!必ず止めるぞ!」と返した。

ティーブンと大河は「うおおおお!」

「やああああっ!」と雄叫びを上げながら丁度目の前に現れた

死神ホラー・タナトスの身体の一部を模倣させたハンターγ(ガンマ)

の大群の中にハガネの騎士達と共に突っ込んで行った。

また別の場所で闘っていたピアーズ・ニュヴァンスの無線機が鳴り始めた。

また勝手に米軍女性兵士やBSAA隊員や

エージェントの女性多数の報告が聞こえてきた。

「こちら!米軍本部!」

「米軍の男共がオレンジ色の液体にッ!誰もいないッ!」

「BSAA隊員!特殊部隊の男達がッ!エージェントの男達が!いやああああああっ!」

「いやだあっ!誰か助けてええええっ!いやああああっ!ああああああっ!」

「どこにいるの?何処にいるの?誰か返事を!返事をしてよ!」

「ひいいいいっ!液体化しているッ!BSAA北米支部の隊員達がみんな!!」

「空に大量の青緑色の魂が・・・・なんで?これは何?何なの?魂???」

「空に漂っている・・・・なんで?みんなあんな風になるの?」

「クソっ!」とピアーズは死者であるが故に

何も出来なかった自分に思わず腹が立った。

ピアーズの無線のスピーカーを通して米軍兵士やBSAA隊員の

救難信号の声がずっと絶え間なく聞こえ続けていた。

「メーデ!メーデ!誰か!?生き残った者は??」

「メーデ!メーデ!お願いッ!誰か応答して!」

「イヤ!死にたくない!誰か!誰か!?あれは?・・・・・何??」

「メーデ!巨大生物が白い霧の中から出現しました!!」

「あれは・・・・声が聞こえる・・・・なんなの??」

「腕の印が暑いッ!?なんなの??あれに反応しているの??

「私の胸の谷間の印も凄く暑いよ・・・・・」

赤い印??まさか?太陽の聖環の事か??

ピアーズは赤い印に思い当たる節があったので無線で質問を試みた。

「あーこちら!BSAA隊員!生き残りだ!!その赤い印は!?

いつ?何処で?付けられたものだ??答えてくれ!」

「こちら!BSAAの生き残り?良かったわ!これは一ケ月前に・・・・・」

「私も同じです!」

「私も同じですね」

「私も確かその位でした。」

ピアーズは返答した米軍女性兵士や

BSAA女性隊員や女性エージェントにこう説明した。

「それは太陽の聖環と言う印だ!その印を持つ君達は・・・・・・。

『進化体』と呼ばれるんだ。進化体とはつまり・・・。

次の世代に子供を残す役割を持っている。君達が他の男性米軍兵士や

BSAA隊員や一般男性のようにオレンジ色の液体にならなかったのは。

それに守られているからなんだ!君達は生命の力を失う事は無い。

仲間は・・・・・・。残念ながら『死』が訪れた。でも・・・・魂なら・・・・・。

現世でこちら側(バイオ)の世界に戻せる方法がある。それは・・・・・。

途中でピアーズは言葉に詰まった。

なんて無線の女性米軍兵士やBSAA隊員や女性エージェントに

その方法を伝えればいいのか?大きく迷い続けた。

ああっ!なんて伝えれば!クソっ!おい!目の前邪魔だああっ!

ピアーズは次々とピアーズは次々と襲い掛かって来るハンターγ(ガンマ)を

次々と100体余り遠くから全て機械のような正確さで撃ち抜き倒しながらも

スナイパーライフルの銃をしっかりと両手に構えたまま方法を彼女達に正確に伝えた。

「魂を戻すには。目の前にいる巨大生物と・・・・・・」と。

「キャー」

「それ?正気ですか?」

「あの巨大生物と・・・その・・・・」

「私は…子育てなんか・・・・」

「子供なんて今は・・・・欲しくありません・・・」

「でも。仲間の魂は戻ってくる・・・・どうしよう私?」

ピアーズは彼女達と話しながら

「ああ、分かっている無理にとは言わないさ!」と答えた。

その答えに女性米軍兵士やBSAA女性隊員や女性エージェントは一同黙り込んだ。

ピアーズは「子供を望まないのなら!巨大生物や小型生物に見つからない様に

旨く隠れてやり過ごすんだ!間違っても闘おうとするな!!連中は・・・・。

本物の『静かなる丘・サイレントヒル』の土着神の天使や神だ!絶対に倒せない!」

「はい!分かりました!」

「うまく隠れてって・・・・」

「何とかして見せます!」

「巨大生物が近くにいるわ!」

「早く隠れよう!」

「急いで!皆!!」

そしてピアーズの無線はプチンと切れた。

無線機から何も聞こえなくなった。

ピアーズはハンターγ(ガンマ)と闘いつつも彼女達の安否を心配し続けた。

また続けて無線機のスイッチが入った。

やがて途切れ途切れに誰かの声が聞えてきた。

「こ・・・・こ・・・・は?どこ?ここは?どこ?・・・どこ・・・どこに・・・・」

ピアーズは「こちら!BSAA隊員!今!何処にいる?君は誰だ?」と言った。

すると誰かの声は甲高い声で泣き出した。

「私はゆあてゃん!かすみんとオーディションの準備をしていて。

それが終わって昼寝をしていたら。誰か男の人が来て!ぴえん!」

「落ち着いて!もしかして誘拐されたのか?」

ピアーズは先程の100体全てのハンターγ(ガンマ)をスナイパーライフルで

倒してしまい一段落がついたので立ったままそのゆあてゃんに話しかけた。

「攫われたのは私だけ!かすみんは無事!!

日本の自分の家に帰ったみたい・・・・・・」

その時、コツコツと足音が聞こえてきた。慌ててゆあてゃんは持っていた

スマートフォンをベッドか何かにバサッと被せて隠したような音が聞こえた。

「貴方は誰?誰なの?あの!帰して下さい!日本の家に戻して下さい!」

すると少年の優しい声がピアーズの無線機のスピーカーから聞こえてきた。

「とうとう始まりまでこぎつけたようだね!僕が創造した『生命』や

無数の並行世界(パラレルワールド)に『死』を授けた

太古の神にして死神ニュクスと結婚の契りを交わした『生命』の

『太陽の妻』テスカトリポカによる新たな世界と新人類の誕生・・・・。」

「誰?どちら様?どうして私を攫ったりしなんかしたの?」

すると青年はゆあてやんの質問に優しく穏やかに答えた。

ゆあてゃんもピアーズも彼の正体と名前を聞きただただ困惑して黙り込んでしまった。

「僕の仮の名は『神崎りゅうすけ』だよ。この方が人の子は覚えやすいだろうね。

間も無く旧人類と人間社会の崩壊と滅亡が始まる!!

いずれ!友達のかすみんさんも周囲の家族も友人も大勢の人々が『死』ぬだろう。」

「そんなぁっ!私やりたい事がッ!みんなと!

これから沢山あるのに!アイドルになれるのに!」

「しかし『死』は必ず訪れるもの人間も動物も植物も全てね!!

決められた運命を変えるのは容易では無いよ。

最初に『静かなる丘・サイレントヒル』の儀式を行ったのは

若村秀和っていう人間の男なのさ。でもね。彼だけ責める事は出来ないよ。

何故なら君のような一部の人間達の除いてこちら側(バイオ)の世界の人々や

並行世界(パラレルワールド)の人々。反メディア団体ケリヴァーと若村秀和。

つまり彼らは自ら滅びを『死』を欲して

太陽神テスカトリポカと楽園を欲していたんだ!

古き人類と動物の絶滅『死』と次の世代の新人類の誕生と再生の始まり。

バカな!人類が自ら滅びを絶滅を欲するなんて!

いや!そうかも知れない!でも!

さらに神崎とゆあてやんの会話が無線機のスピーカーを通して聞えてきた。

「死神ニュクスは命の答えを得た男の子の命を使って現在も封印されている。

とは言え。まさか普通に生きている沢山の人達から漏れ出した悪意の塊。

生きている意味が見えずに他人の『死』に触れたがる

現在の怪物のエレボスと同様にあの若村秀和や反メディア団体ケリヴァーは

自覚の無い悪意と選民思想と排他的呪縛によって

悪霊の集合体が現れる事になろうとはね。

あれもまた『柳星張の宇宙』で眠るイリスオブジェクトに触れたがっている。

こちら側(バイオ)の世界の世の中が生み出した怪物だね。」

「嘘・・・・そんなものが渦巻くのが今の世の中なんて!

私!ぴえん・・・ぴえん・・・」

「なんとかして!奴らをイリスオブジェクトに

触れさせないようにしなくてはね。勿論。」

怪物だと?人間の無自覚な悪意のせいで!こんな超常現象が多発したと?!

するとまるで彼の質問に答えるかのように神崎はこう言った。

「その通りだよ。結局人間の敵は同じ人間なのさ。

今回は無自覚な人間達と若村秀和や反メディア団体ケリヴァーの

メンバー達が更にこの超常現象事件の事態を悪化させたんだ。」

「じゃ!・・・この世界や人々は・・・みんな…世界が滅んじゃうの?」

涙声で神崎にゆあてゃんは震える声を交えて質問した。

「ああ、このままだと。いずれはどちらにせよ。消え去るだろう。

しかし希望は失ってはいない。もしかしたら正常な世界に戻るかもね。

でも元に戻らず。人類が人間社会は滅亡する事もあり得る。

どちらにせよ。君には人類が犯した大罪の責任を取ってもらう。

我々は人間達のせいで我々人々を喰らう魔獣ホラー・メシア族は

食糧不足になる可能性が高くなった。これは由々しき問題だ。

そこで君には新しい宇宙と人類を産んで貰う。」

「はあ?意味が解りません・・・・・」

「君には人類と宇宙の卵を産んで貰うのさ。君を抱いてね。

ただし。それは今日たった一度きりの関係。それ以降は君に手出ししない。

痛い思いもさせない。怪我もさせない。あとは・・・心も体も傷は残さない。」

「私・・・・そんな・・・私はこれからアイドルになるんで!・・・ちょっと!」

「我々にとっても死活問題なんだ。多くの同胞が飢えに苦しむかも知れない。」

「・・・・・私は何も悪い事していません・・・責任なんて・・・・」

「悪いが人間同士の醜いお互いの責任の擦り付け合いは見たくないし。聞きたくない。

人間共はいつもそうだ。誰かひとり悪い事を必要以上に悪人を責める。

それに。これは人類全体が招いた罪だ。個人ひとつの問題じゃ済まない!!」

神崎の厳しい言葉に思わずゆあてゃんは黙り込んだ。しばらく沈黙が続いた。

さらに神崎は優しくゆあてゃんに言った。

「だが世の中は人間は常に愚かしい生き物だ。

アフガニスタンと言う国ではイスラム首位組織タリバンが首都カブールを制圧して

反政体制狩りをしているのを知っているかね?彼らは首都カブールを初めとする

都市部で一軒一軒住宅を回り、批判的な市民を家族も全員殺害されているんだ。

今回の事件も似たようなものだ。人間は闇を持っている。

この異常な多重超常現象を引き起こしている。」

「・・・・・・・」とゆあてゃんは沈黙し続けた。

「責任は取って貰う。君は大人だからね。

通常の人間の倫理観ではこの大罪は抗えない。」

「でも・・・・私!本当に!私は・・・・」

「そう。じゃ!やっぱり止めだ!!やっぱり君一人に人類の大罪を背負わせるのは。

僕もどうかしてたよ!君はアイドルだからね!そうだ!今思い出したけど。

アイドルはファンやみんなの恋人だから僕一人が占領したら駄目なルールだったね。」

「あっ!はい!そうです!なので!関係はお断りします!ごめんなさい・・・・」

「責任を負わせるのは他の反メディア団体ケリヴァーの若い女性からにしよう。

そうだ!エリカ・ハリスって女が生き残っていたな。あいつに責任を取らせよう!!

僕を攻撃したら。その時は確実にやろう。全ての人類の罪を彼女に負わせる。」

この怪異事件がうまく人間の手で解決したのなら。

現世に戻そう。君は無傷で家に帰れる。」

ピアーズは神崎がゆあてゃんを見逃す条件としてこう指示した。

それはさっきの今まで話した全ての真実を

君のTwitterとラインで全てを文章で書き記す事である。

そしてありのままの闇の真実とさらに人類に対する警告と警鐘を鳴らせと。

 

(第18章に続く)