(第22章)創造神イリス
のぴはクリスがそんな経験をしていた事に驚いていたものの。
それよりも若村秀和が鏡の中に出入りしてこんな恐ろしい研究を
していた事に背筋がぞっとした。恐ろしい男だと本気で思った。
そう、あの狂信者の男も他人の奥さんに酷い事をして・・・・。
更に壁には12枚のスケッチが描かれた大きな紙が貼ってあった。
一枚目にはあまり動かなそうな神像のようなあのカプセルの中のイリスそっくりの
二足歩行の生物のラフ絵だった。他にも10枚も似たようなコンセプトとイメージの
イリスそっくりの生物のラフ絵が張りつけられていたが。
最後の一枚には若村の手書きで
『完成体・創造神イリス』と言うタグの絵の書かれた紙が貼られていた。
その最後の『完成体・創造神イリス』の絵には。
頭部はまるでウナギのように太く長く左右に6対の細長い角が生えていた。
さらにまるでヤツメウナギのように黒いつぶらな丸い目が付いていた。
またバカッと上下に細長い下顎と太く長い上顎があった。
しかも耳まで大きく避ける程大きかった。
更に背中から三角形の分厚い板のような8枚の巨大な翼が生えていた。
両腕は細長い触手になっていて。いわゆるイカやタコに見られる触腕だった。
先端は鋭く長い槍のようなものが付属していた。
また肩の方からも8本の細長い触手が多数伸びていた。
細長い触手の2本は5本の指を持つ太く長い両脚が生えていて2足歩行していた。
そして背をビシッ!として真っ直ぐ立つ姿は人間のように見えた。
さらに少し離れて全体を見てみるとがっちりとした筋肉質の男性のようにも見えるし。
のぴのような細身のある女性の姿に何となく似ていた。
さらにスケッチの右端には若村秀和の直筆サインとメッセージが書かれていた。
それはとても丁寧であの乱暴な男とは別人だと思えるぐらい丁寧に書かれていた。
「止めたければ。この先の柳星張(りゅうせいちょう)の宇宙にある。
イリスオブジェクトのところまで来い!そこで決着を付けよう!!」と。
「リュウ?セイ?チョウ?イリスオブジェクトとはなんだ??」とクリス。
「奴自身が創り出した新宇宙。あるいはマイナス宇宙にあるオブジェクトのようだが」
「どうやらそこが目的地ね。私達で行けるかしら?」
「問題ない。私達は光速で空間移動できるからね。まあ単純に・・・・」
「ワープ出来ればいいって訳?」とドラキュラ伯爵の質問にのぴは答えた。
「その通りさ」とドラキュラ伯爵は返した。
のぴは既にもう一度、『メルキセデク』に変身していたので
素顔は仮面に隠れてクリス達には見えないが彼女が喜んでいた。
何と言うか?ワープすると言う言葉を聞くだけで子供心をくすぐられてワクワクした。
それは彼女の飛び上がるような行動に現れていた。
するとドラキュラ伯爵は「のぴ姫も大変お喜びのようだ。」と茶化した。
クリスは「おい!」と厳しい目をドラキュラ伯爵に向けたが全く気にしなかった。
彼は「先が思いやられる」と小さくつぶやき頭を抱えた。
のぴとドラキュラ伯爵、クリス達が若村の研究室の先にあるほら穴を通り抜けた。
そして若村の言っていた『柳星張の宇宙にあるイリスオブジェクト』に行ける
ワープの場所を探してほら穴の細長い道を進んだ。
そしてまた複雑な迷路のように迷子になりそうだった。
ドラキュラ伯爵は道案内でさらに奥へ奥へとクリスとのぴは急いで先へ進んだ。
しばらくはあのモールデッドや巨大昆虫に遭遇し続けていた。
だが次々とクリスとドラキュラ伯爵とのぴが一致団結して立ち向かい、
倒し続けながら先へ進んだ。そして多数のモールデッドや
巨大昆虫を倒して行く内に3人の団結は更に強くなり、絆も一層強まった。
同時にのぴの『正義』の人格もより強くなって行った。
まだ短いながら若村のメモを発見した。メモの内容はこうである。
「ガメラを造り出したアトランティスの組織が造り出したガメラ最終処分ディバイス。
そしてセラフィヌ・ケリヴァーの代わりにイリス・コピーを8体。
人類補完計画の儀式に利用させて貰う。そしてイリスのコピーの検証は済んだ。」
イリスのコピー?まさかイリス量産型か?これを利用して儀式を?
ドラキュラ伯爵は考えた。クリスはある事が疑問になり、ドラキュラ伯爵に質問した。
すると彼は嫌な顔をひとつせずに丁寧に答えた。
「ガメラって?あの亀の怪獣の?ガメラもBOW(生物兵器)だったのか?」
「左様!ギャオスに対抗して造り出したガメラを処分する為に造り出されたものだ。」
「対BOW(生物兵器)がイリスで?ガメラは敵なの?味方なの?」
のぴは頭が混乱して両手で頭を抱えた。しかしクリスは自信満々にこう答えた。
「何を言っている?ガメラは人間の子供達の味方さ!」と。
他にも幾つか資料があったのでクリスとドラキュラ伯爵とのぴは手分けして探した。
しかし特に気になる資料や写真は見つからなかった。
代わりに彼の事を知るのに必要になるであろう彼の日記が発見された。
ドラキュラ伯爵はその若村が書いた日記を優先的にのぴに読ませた。
クリスは自分に見せてもらえず少し苛立った。
のぴは若村の日記を読んだ。クリスもやや強引に日記のページを覗き込んだ。
そして開いたぺージ早々に超難しい数式がのぴの目に飛び込んで来た。
のぴは大きく面食らった表情をした。
クリスの隣で読んでいたドラキュラ伯爵は感心していた。
彼は頭の中であっさりとその数式を解き、若村の答えと照らし合わせた。
「フェルマーの最終定理か?しかも・・・正解だ!彼は賢かったようだ!」
「じゃ!頭が良かったの?」
「ああ!実に頭が良かった。惜しい男だ!その頭脳を人の役に立ててれば・・・・」
「だが。あいつは賢い。しかし両親に虐待され捨てられ。
保護された施設で『教団』の虐待を受けてサイレントヒル教団に洗脳された。
挙句に社会に強い憎悪を抱いたまま大人となってしまった。」
「冷静に考えたら。彼もまたシェリル刑事や
ウォルター・サリバンと同じ教団の被害者だな」
「だからこそ!彼を止めないといけない!この日記に手掛かりがあるかも?」
のぴは再び若村秀和が残した日記を読み始めた。2人もさらに読み進めた。
次のページの文章には異世界や並行世界(パラレルワールド)の旅の記録があった。
「2030年。(夏)
私は6月の初夏に『ブラッディーローズ事件・R型事件』で逮捕された。
そして!『R型』は私達を裏切り、仲間が大勢死んだ。許せね!だが!
私はアメリカの刑務所にある鏡を通して自らの研究所を作った。」
「太陽神はやっぱりどうも信用できない。だから創造神となる道を考えた。
私は創造神になる為に素材を探した。異世界は以下の通り。
『E型特異菌の菌根』。過去のこちら側(バイオ」の世界のヨーロッパの村。
『柳星張(りゅうせいちょう)イリスの細胞片』。燃え尽きた京都駅の跡地。
つまり並行世界(パラレルワールド)ガメラと人類が存在していた世界。
存在していた並行世界(パラレルワールド)。
『21の秘跡』と『ウォルター・サリバン』。
『静かなる丘・サイレントヒル』の裏世界。
『賢者の石と始祖ウィルス』。こちら側(バイオ)の世界。
『ネガブドネザルの鍵』聖母・のぴ。
2030年8月16日(夏)。
「全ての素材が集まった。私は研究を開始する。
イリスと菌根を中心に研究を開始する。
しかしあの並行世界(パラレルワールド)とガメラが存在していた
日本の海岸の地下空洞にパチンコ玉のような球体を発見。若い女性の妊婦を発見。
内部にイリスと思わしき生物を確認。どうやら妊娠しており。
イリスの幼体を持つようだ。
これは貴重な研究サンプルとして冷凍保存する事にする。
研究には京都で回収したイリスの細胞片を利用する。
これはイリスと人間が交わって自ら子孫を残せると証明された物的証拠である。」
「まさか?人間と交配したイリスの生体サンプルがここのどこかに?」とクリス。
「安心しろ。あれは元の並行世界(パラレルワールド)のガメラと人間が存在していた世界に戻した。だが。既に奴は完成させていたようだが。」とドラキュラ伯爵。
「戻した?球体の中の若い女性の妊婦は?まさか助けていないのか?」
クリスの質問にドラキュラ伯爵は一切何も答えなかった。
横からドラキュラ伯爵の表情を見ていたのぴは何かに堪えて耐えるかのように
舌口を噛みしめており、とても悔しそうな表情をしていた。
多分、助けなかったのでは無く。助けられなかったのだろう。
世界と世界の境界のルールに従わざる負えなかったのだから。
ドラキュラ伯爵も「済まないな。これもお上の我が外神ホラーの副王の
ヨグ・ソトホースの命令だ!流石の私も奴にだけは逆らえない。
世界を守る為なんだ。」と初めて彼は人間に対しての謝罪の言葉を口にした。
クリスは彼の意外な答えに戸惑いを隠せなかった。
さらにドラキュラ伯爵が持ちかけた話にクリスは今度は怒りを見せた。
「なんだと?!あいつは『R型暴走事件』で大勢の仲間も見殺しにして
10歳の少女を虐待したんだぞ!そんなあいつを許して?
心を救えだと?冗談じゃないぞ!」
「別にやるのは君では無くのぴだ。今回はただ殺すだけでは解決しない。
いいかね?君達人間は悪は滅びるだの。地獄で苦しみ続けると宣うが。
そんなもので解決するのはお前達の頭の中の空想の中だけだ。
どんな悪人も魂と心を救わねば悪霊となり、奴は神を求めて君達やあらゆる
並行世界(パラレルワールド)に闇と絶望と破壊をもたらすだけだ。
地獄は存在するだろうが。決して最後は救われない訳では無い。
別に永遠に生と死の中で人間同士殺し合いを演じ続けたくば勝手にすればいい。
私はその茶番劇を観客席から嘲笑うだろう。それで人間達が誰の心も救わず
ただ殺し合うだけの地獄に居座ると言うなら別にいいが?」
「殺し合いでは何も解決しないか。クソっ!頭で分かっているのに!」
「それで?解決するなら?どうしたら?その若村って人は救われるんでしょう?」
「奴を説き伏せた上で。奴が望むものを与えてやればいい」
のぴはピーンと来た。。まるでそれは頭の中に電気が付いた。そんな感じだ。
母親の愛情?誰かの温もりね。それが本当に彼が望んだもの・・・・・。
それを与えてやれば。彼はきっと。感心するかどうか自信はないけど。
あいつと私は似ている。だから私と精神は繋がっているんだ。
だから彼の心を救えるのは・・・多分私だけだと思う。やってみるしかないけど。
のぴはしばらく心を迷わせていたがやはり自分がやらねばと考えた。
しばらくなかなか決意が固まらなかった。しばらく彼女の心の中がもやもやしていた。
さらにもうひとつの新聞記事が張ってあった。その記事はクリスもよく知っていた。
「これはかなり前の記事だな。あのヴィレッジ村から1ケ月後の記事だな。」
「ニューヨークタイムズ紙。ニューヨーク市内で謎の失踪事件発生。
犯人はテロリストか?!BOW(生物兵器)か??あるいは幽霊???
「2020年の約10か月余り、ニューヨーク市内の各地で200人から
300人単位の若い女性が衣服だけを残して次々と消失したかのように失踪している
奇妙な事件が相次いでいたのを受けてニューヨーク市警とブルーアンブレラ社と
BSAA北米支部はバイオテロリストによる新型BOW(生物兵器)によるテロ事件の
可能性から捜査を開始した事を世間に公表した。
そして新型BOW(生物兵器)らしきものを目撃したと言う通報が相次ぐ中ー。
懸命に通報を受けた現場に捜査に向かうものの発見されず。
その多くがデマの可能性を指摘した。
しかし通報した一般市民達は『確かに見た』と主張しており。
奇妙な対立が見られた。一般人の人々は共通して『貝と鳥のような生物を見た』
と頑固に主張していた。『それは巨大なシェルエットのようなもので
まるで幽霊のようにスーツと消えた。』と話す老人もおり。
現実の存在なのか?虚構の存在なのか不明である。
また現場近くで衣服を残して失踪する
若い女性の現場となっていて事から何らかの共通点があるようだ。
さらに監視カメラやレーダー等の機械的なセンサーの類には全く映らないらしい。
ただし目撃者のみ認めであれば姿を捉えられると言うおかしな科学者もおり。
一部では『BOW(生物兵器)ではなく別次元から出現した生物では?』と推測された。
不可思議な生物の存在に今後も更に話題が続きそうである。」
「まさか?イリス量産型の実験体が現世のこちら側(バイオ)の世界の過去に??」
「恐らくそうだろう。タイムスリップしたと言うより別次元から出現したようだが。
「新型のBOW(生物兵器)の一種じゃないなら?
若村は一体何を作り出していたんだ?」
考え事をしていたクリスはふと若村の研究所の床に誰かが残したメモが落ちているのに気付いた。しかもどうやら書いた人物は若村秀和でもヘンリック・ターナでもない
全く別の人の第3の人物が書き残したものだと分かった。
どうやら若村秀和やヘンリック・ターナ以外にもこの若村の研究所付近を
うろついていたようだ。こんな地下洞窟で何をしていたのか目的は不明だった。
ドラキュラ伯爵とクリスはメモに目を通した。
「ここが例の反メディア団体ケリヴァーの若村秀和の研究所か?
自分達だけの単体生命体に進化した事による楽園を創造する為の研究と実験場。
どうやら彼はかつて別次元の世界のヱヴァンゲリヲンと共に存在していた
『リリス』と『ゴルゴダオブジェクト』『マイナス宇宙』に興味があった。
そして僕が支配するこちら側(バイオ)の世界であの『ゴルゴダオブジェクト』。
あるいは『エヴァンゲリオンイマジナリー』と同等の力を持つ存在。
『柳星張の宇宙』と呼ばれるマイナス宇宙を発見した。しかし奴は未だに
『ヱヴァンゲリヲンイマジナリー』に代わる新たな存在は発見出来てない。
さてと『静かなる丘・サイレントヒル』の裏世界と表世界よりもさらに高次元の世界へ行ってしまったのぴ。若村秀和。十六夜咲夜。3人の運命はどうなるのか?
これからがとても興味深く楽しみだよ。ここ最近、現実(リアル)の世界で美しい
金髪美女のサマー・メイブリー。あの子の精気はアイスクリームのように美味しい。
僕のデザートとして最高だ。だからこちら側(バイオ)の世界の虚構(フィクション)
と現実(リアル)の境界線がどうなろうとも僕は永遠にあの美女の精気を
死なない程度に喰らい続けるんだ!!ただ心配なのは自分のホラー
としての人間を喰らいたい本能と自分の精気を喰らいたいと言う強い欲望の
陰我を抑えきれるか?ちょっとした怒りで我を忘れて。
美女の精気を吸い尽くして殺してしまわないか?いやそれ以前に・・・・。
死なない程度に精気を吸収できるか?しかも足りないから大勢集めないと!!
出来れば美女は殺したくないし。何より人間は丸ごと食うのは違法だ!
ちゃんと自制しなければ!あのリングのような間違いを犯してはならない!!
最近、違法で人間を丸ごと喰らうプリズンホラー達に手本を示さないといけない!!
それが僕の大事な仕事だ!やらないと!やらないと!
それにあの幻想郷で博麗の巫女の3日分の命を喰らう際に死んで
冥界にいた元ヴァンパイアのビル・コンプトンの霊魂と西行(さいぎょう)の
幽々子の余計な横槍のせいで外の世界のニューブラッドの世界から来た
エリック・ノースマンに色々邪魔されかけたが結局僕の敵じゃなかった。
ただ千年生き続けた元ヴァイキングのヴァンパイアだけあってなかなか強かった。
彼とはまたいずれ闘いたいね。博麗の巫女とセックスは経験しているかもね。
血を吸われて絆を結び、新しい力を手に入れたかも。」
「あのニュヨークの監視カメラの映像の男か?とんだ変態だな!!」とクリス。
「相変わらず陛下も甘い物がお好きなようだ。
この人間の女は陛下のお気に入りだ。もしかしたら・・・・・・。」
ドラキュラ伯爵は黙って両腕を組み何かを深く考えこんでしまった。
一方、クリスはメモの内容に面食らいつつも参ったと言う表情をしていた。
ああっ!クソっ!こっちの問題が片付いても。
その陛下って謎の存在がきっと・・・・・・・・・・・・・。
何か問題を分からんが持ち込んでくるのだろうな・・・。
いつまでもこちら側(バイオ)の世界は平和にならないぞ!!困ったな・・・・。
(第23章に続く)