(第30章)絶対恐怖領域からの現実逃避者

(第30章)絶対恐怖領域からの現実逃避者

 

「誰も傷つかないのに・・・みんな幸せなのに・・・・

どうして?どうしてだよッ!!」

「そうよ!早くここから出してよ!」

「こんな場所耐えられへん!」

「現実に帰って早く毎日動画を出さなあかんし!アイドルもしないと!」

のぴと若村以外の別の女の子の声が複数聞こえた。

勿論、聞き覚えがあった。

のぴの周りには現実(リアル)の世界で赤い光によって生命のスープに

還元されてイリスオブジェクトの真っ赤なコア(核)に

大勢の女性達や男達の魂がひとつとなっていた筈の

『おこさまぷれーと』のメンバーが全員立っていた。

ゆいにや。ちゃき。りあらがいた。

3人は背中から黒い2対のカラスの羽根のようなものを生やしていた。

そして真っ赤なドレスを全員着ていた。

「どうしてあそこから抜け出た??」と戸惑い混乱する若村。

「潜入捜査を頼まれたんよ」とちゃき。

「ここに現在逃亡中でこの大事な時にニコルさんに暴行を働いた男がいるの」

「そいつを逮捕したいから自分達を現実(リアル)に返して欲しいって」

ゆいにゃとりあらは口をそろえてこう言った。

「バカな。出られる筈がないんだ・・・みんなひとつに・・・・」と若村。

「正しくはひとつに成りかけているだけよ。私達は貴方達とは違う!」とのぴ。

「そう言う事や。早く私らやみんなを現実(リアル)に帰して!」とちゃき。

若村は両手で頭を抱えてまた座り込んだ。

「いやだあっ!計画は完成目前なんだ!絶対あきらめないぞ!

独りになるのは嫌だ!あんな汚れた世界なんか絶対に戻らないっ!!」

若村はギャーギャー子供のように周囲に大声で喚き散らした。

堪らずちゃきはいつもの大きな声で怒鳴った。

「うるさい奴っちゃな!いい加減にしろ!子供か?前はよ!」

ちゃきの怒りの言葉に若村は怯えたようにビクン!と身体を震わせた。

彼はしばらく沈黙していた。それからブツブツと何かをつぶやき続けた。

「せっかくコトリバコとかえるのうたを集めて組み合わせたのに!まだ諦めきれない!

どうして?君達は否定するんだ?気持ちよい筈なのに!安心できるのに!ブツブツ」

「ブツブツやかましいな!はっきりと喋れよ!」とまた大声でちゃきは言った。

「それならコア(核)の中を見てよ。ほらほら!」

若村はしつこくのぴ達に足元の真っ赤なコア(核)を見るように促した。

ゆいにゃとちゃきとりあらは「もう!見たくない」ので目を閉じた。

そしてブツブツとはっきりとお経か何かを唱え続けた。

のぴは若村が抱える心の闇を深く知らなきゃいけなかったので・・・・。
恐る恐る下へ顔を向けて真っ赤なコア(核)の中を見た。そこにはー。

無数の星の数だけの若い女性達と反メディア団体ケリヴァーと思われる

若い男性や中年のおっさん達が全裸でコア(核)の赤い液体の中を彷徨っていた。

男と女は所々で一組となっていた。

のぴも流石の奇妙な光景に言葉を失った。

さらに気持ち悪くなった。なんなの?この光景??

うわっ!トラウマになりそう・・・・と正直思った。

確かにちゃきの言う通り、自分でも耐えられそうにないと思った。

「ごめん・・・・・若村・・・・無理だわ・・・・」と反射的につぶやいてしまった。

しかし若村はそんな彼女の呟きを無視してこう話を続けて来た。

「これで大勢の『知恵』となる君と

『ネガブドネザルの鍵』と『母体』の生贄と・・・。

最後に神殺しとなる私が融合して。みんな融合すればね。

最強の単体生命体に進化するんだ!

そして太陽神テスカトリポカや天魔達や他の邪悪な異教の神々共や

悪魔達、汚れた人間達を消してね。魂を地獄に落とせるんだ!」

しかしそれでものぴ、ゆいにゃ、ちゃき、りあらははっきりと「嫌だ」と否定した。

「どうして否定するの???下の真っ赤なコア(核)の魂は浄化されたんだよ??」

若村はまた足元の真っ赤なコア(核)を見ろと指さした。のぴはまた見た。
再び真っ赤に輝くコア(核)の中には美しい日本人女性がいた。近くに男性もいた。

短い茶髪のキリッとした細長い眉毛に青い瞳の筋肉質の

がっちりとした男性と日本人の若い女性は抱き合っていた。

真っ黒なツインテールが両脇辺りまで伸びていた。

やや太い眉毛。ぱっちりとした茶色の瞳。丸っこい低い鼻。

ふっくらとした両頬は紅潮していた。

ピンク色の唇にネズミのように2本の前歯が見えた。

更に張りのある大きな丸い両乳房があった。

更にプルプルと上下左右に激しく揺れていた。

やがてその若い女性は気持ちよさそうに瞳を閉じた。

筋肉質のアメリカ人女性の男性は彼女の両脚を左右に大きく広げさせていた。

若い日本人女性は荒々しく息を吐き、深い胸の谷間を紅潮させて高い声で喘いでいた。

もはや現実(リアル)では純情可憐だってのであろう彼女は乱れていた。

他にもそんな男女は沢山いたが見ていられず直ぐに目を背けた。

若村はニヤニヤ笑いながら

「ねえ?気持ちよさそうでしょ?幸せそうだろ?」と言った。

しかしのぴは「こんなの幸せじゃない。ただ気持ち悪いだけ」

と突き放すように答えた。

若村はニヤニヤの表情が消え、ショックを受けたのか真顔になった。

「・・・・・・・・」長い間、お互い沈黙していた。

長い沈黙を破り、若村を諭すようにのぴは声をかけた。

「貴方はフェルマーの最終定理を解ける位、頭が良い筈。だったら・・・」と。

のぴは若村に慎重に言葉を選びながら声掛けを続けていた。

「もう分かっているんじゃないかしら?こんな計画では自分の。

自分自身の心は救えないんだって。

頭に知識を一杯入れても心は満たされない。

一人だったの。ずっと。愛情は知識だけじゃ手に入らないってね。」

若村には図星だったのかまた更に長い間、沈黙した。

確信を付かれたのだろう。またしてもお互い長い沈黙が続いた。

若村の表情は絶望的だった。とにかく暗黒のようにその表情は真っ暗だった。

しかし俺に対してのぴは希望に満ちた表情をした。

「大丈夫!貴方は私が救い出す!あのウォルター・サリバンのように・・・」と。

 

イリスオブジェクトの真っ赤なコア(核)の外のイリスオブジェクトの本体が

安置されている『柳星張の宇宙』。クリスとドラキュラ伯爵はその

ディラックの海の暗黒空間の虚空の床に伏せたまま若村秀和自身が

トリガー(引き金)になったであろう『インパクト』が続いていた。

彼らはその場から動かずあのアスカと言う名前の女の子が『ガイウスの槍』を

持って来るまでイリスオブジェクト本体の動向を見守っていた。

間も無くしてまたイリスオブジェクトの頭上の天使の輪と全身が真っ赤に発光した。

続けてまた高熱の円形の衝撃波を放った。

そして真っ赤に輝く衝撃波は現世の現実(リアル)こちら側(バイオ)の

世界のアメリカ合衆国全土から国外の別の国全土に広がって行った。

そしてまた国外のメキシコやアメリカ近くの国全土の人々はー。

ニューヨークやアメリカ合衆国に住んでいた人々と同じく一人残らず

全員、男も女も子供も赤ちゃんも動物も全て生命の力を失い、一斉にパシャッ!と

音を立てて衣服や首輪などを残してオレンジ色の液体の生命のスープに還元された。

また人間の感覚で言う『死』がメキシコやアメリカ大陸。

他の大陸に一気に広がり、地球上の全ての世界の大陸をあっと言う間に覆い尽くした。

世界中の大勢の人々と動物達の魂は生と死の境界の三途の川へと向かって行った。

やがてまた三途の川に辿り付いた世界中の大勢の魂達は群れを成して天へと届く

三角形の銀色の塔へ落ちて行った。そして若村に選ばれなかった男性や

赤ちゃんや子供の大勢の魂は黒き月に吸い込まれるように消えて行った。

クリスとドラキュラ伯爵、大河、ピアーズ、スティーブン、阿門法師矢生き残った

ハガネの騎士達は手出しが出来ずにただ事の成り行きを見守るしかなかった。

話は戻り『柳星張の宇宙』の虚空の床に伏せていたクリスは歯噛みしていた。

ドラキュラ伯爵は「まだだ!第4のラッパ!あれが来るまでは!」と声をかけた。

クリスは酷く焦った表情で大声でドラキュラ伯爵に言った。

「時間が無いぞ!第5のラッパ!第6のラッパ!第7のラッパ!間に合うのか?」

「チッ!残り三つか・・・既にアメリカの外に広がっているな」とドラキュラ伯爵。

「だが。のぴとさっきのイリスオブジェクトのコア(核)の

人に協力を頼んだんだろ?」

クリスの問いにドラキュラ伯爵は答えた。

「ああ、なんとか時間稼ぎをね」と。

「時間を稼いでどうにかなるものなのか?どう考えても悪くなる一方だぞ!」

「まあまあ。あともうすぐで彼女はここに来る!あともう少しの辛抱さ!」

のんびりとした口調のドラキュラ伯爵に呆れ果てた表情でクリスは首を左右に振った。

ドラキュラ伯爵はクリスがとある事件についての事を考えているのに気が付いた。

「例の『R型暴走事件・ブラッディローズ事件』の解決直後に発生した

未解決の連続レイプ事件について考えているんだろ?

被害者は20代から30代の若い女性達。ほとんどが金髪美女だったな?

ただの人間の仕業だと思っていたら。確か?」

「ああ、明らかに人間業じゃない。高速移動しながら上着と下着を脱がせて。

行為をする。しかしそれだけでは我々は新型のBOW(生物兵器)の仕業とは

断定できずに結局。人間かBOW(生物兵器)なのかうやむやになった。

しかし被害者の若い女性達の体内から『賢者の石』と

『始祖ウィルス』が血液中から発見されて。一時ネットニュースで騒ぎになった。

被害女性達はゾンビにもクリーチャーにもならず

抗体物質が当時あるかと思われていたが。

実際は賢者の石の力でウィルス完全適合者の肉体に改造されていたのが

主な原因と判明した。だから女性被害者達はウィルスと共存している状態らしい。

それどころか休眠状態であり。感染力もゼロだと判明している。

不思議な事にな。勿論、妊娠はしていないが

代わりに烈花法師によると犯人は『外神ホラー』で間違いない。

しかも良く分からんが精気を死なない程度に吸われていたらしい。」

「精気とは生命力・生命エネルギーの一種さ。君達の気力のようなものだよ。

どうやら人間の血肉魂よりも若い女性の精気が大好物の可能性が高い様だ。

他の魔導輪ザルバや魔道具達のように

人間を殺さずの生命を喰う方法を知っている事から。

犯人の外神ホラーはかなり賢い様だ。

またどういう訳かセックスフレンドもいるらしい。」

ドラキュラ伯爵はスマートフォンを操作して防犯カメラの映像を見せた。

場所は道場で両頬まで伸びたベリーショートヘアの若い女性が

日本人の青年と柔道のけいこをしている様子が映し出された。

日本人の青年は彼女を組み手で投げようと両手で

金髪の美女の柔道着の首元の襟をつかんで左右に引っ張った。

次の瞬間、ビリッ!と柔道着が左右に大きく裂けた。同時に上半身が裸になった。

そして張りのある白い肌のスイカサイズの大きな丸い両乳房を露出させた。

すると日本人の青年は大きく口を開けて大爆笑して両手で腹を抱えた。

「これはなんだ?ただのドッキリの映像じゃないか?」とクリス。

「この先からがとても面白い!!あの日本人の青年は凄いぞ!」とドラキュラ伯爵。

防犯カメラの映像では日本人の青年は「悪い子におしおきだぞ!」と言った。

次の瞬間、日本人の青年は姿形が見えなくなり。

高速移動したと同時に。

金髪女性の柔道着の上着はそのままに

あっさりと下着とパンツを脱がしてほぼ裸にした。

続けて日本人の青年は金髪の女性を目にも止まらぬ速さで仰向けに押し倒した。

彼は目にも止まらぬ速さで彼女の両脚の内太腿を両手で掴み、左右に大きく広げた。

日本人の青年は目にも止まらぬ速さで腰を前後に振り続けた。

彼女はキリッとした細長い細長い茶色の眉毛をハの字にして額にしわを寄せて行った。

丸っこい鼻。ふっくらとした両頬と深い胸の谷間は紅潮していた。

彼女は灰色の目を丸くして驚きつつも気持ちよさそうに瞳を閉じた。

そしてピンク色の唇を震わせて精一杯、大きく口を開けた。

更に張りのある白いスイカサイズの大きな丸い両乳房はピンク色の乳輪と

乳首を屹立させながら目にも止まらぬ速さで前後左右に揺れ続けた。

「ただのセックスではない。あの子の精気を気絶寸前まで吸い取っているのさ。」

ドラキュラ伯爵の解説にクリスは額にしわを寄せて厳しい表情をした。

 

再び生と死の境界の三途の川ではピアーズと阿門法師とスティーブン。

生き残った魔戒騎士のハガネの騎士達は太気配を感じて空を仰いだ。

すると天空の魔戒法師達に助けられ天井の時空が大きく歪んだ。

やがて魔戒法師の法術によって出来た時空の歪みによる球体の空間内部から

赤いプラグスーツを着た女の子が槍を持って出て来た。

「人が?」と驚くピアーズ。

「危なくないか?」と不安げな表情のスティーブン。

「心配ない」といつも冷静な大河。

「ようやく槍を手に入れたか?全く冷や冷やさせる」と阿門法師は苦笑いを浮かべた。

そして2万人の魔戒騎士ハガネの騎士達も空中を落下し続ける女の子。

惣流・アスカ・ラングレの勇姿を見ていた。

彼女は槍を持ってパラグライダーの様に大の字になっていた。

アスカの耳元からビュウウウッ!と風の斬る音が聞こえ続けた。

風に吹かれてとても気持ち良さそうだった。

彼女は外神ホラー・イリスの陰我のあるオブジェ(物体)でゲート(門)となる

超巨大な三角形の銀色に輝く党全体が分離して花弁のように開いた。

三角形に開いた突起の先端からひし形に分厚いオレンジ色の壁が現れた。

アスカの身体はその張り巡らされたオレンジ色の

分厚い壁に阻まれて内部に侵入出来なかった。

「クソっ!ATフィールドだ!入れない!クソっ!何とかして壊さないと!」

アスカな苦々しく口を噛みしめてガイウスの槍を使って壊そうとしたが無理だった。

「ダメだっ!あーあーもーもーロンギヌスの槍さえあれば壊せるのにいいっ!!」

地上では大河は「ATフィールド?聞いた事無いな」と小首をかしげていた。

「あのアスカと言う娘によると『心の壁』のようなものらしい。」

具体的にはあれは『他人との恐怖』で生まれるらしいな。」

阿門法師はアスカから聞いた話を大河とピアーズとスティーブンと

魔戒騎士のハガネの騎士達に短くわかりやすく説明していた。
ハガネの騎士達は口々にお互い話していた。

「それもマズいな。俺達も手伝うべきだろう。」とスティーブン。

「無理だな。あれは通常の武器では破壊不可能のようだ!」と阿門法師。

「クソっ!それじゃ!入れないじゃないか!!」と焦りを募らせるピアーズ。

アスカは一人で逆立ちの状態のまま空中に浮き続けていた。

そしてガイウスの槍の先端を突き立てながら何かを決意したように。

「やるわよ!アスカ!」と呟き、閉じていた瞼を開けた。

アスカは「うおおおおおおっ!」と声を荒げた。

彼女のスレンダーな身体は徐々に変化した。

変化した姿形は『未完成の量産型イリス』に類似していた。

姿形は真っ赤に輝くシェルエットの

ようなもので透明な中央の球体の中にアスカがいた。

アスカの周囲を取り巻く巨大な霊的な物質化したオーラのようなものは大河と

ピアーズと阿門法師。そしてスティーブンの肉眼ではっきりと見えた。

『未完成の量産型イリス』のシェルエットはアスカの意志に従うように動いた。

真っ赤に輝く4対の細長い触手の先端の銀色の矢じりをATフィールドに突き立てた。

「ATフィールドを中和してやる!悪いけど!

『郷に入っては郷に従わせて貰うわよ』」

『未完成の量産型イリス』のシェルエットは

全身の表面に同質のATフィールドを展開させた。

『未完成の量産型イリス』の霊体を増幅させて自己のATフィールドを強化させた。

 

(第31章に続く)