(第36章)巣食うもの

(第36章)巣食うもの

 

「ではお腹に住み着いた寄生虫が腹をぶち破るまで守ってあげる。

と言われたら貴方達は嬉しい事だと思うのかしら?それにね。

そいつは単に自分の家を取られるのが嫌で反撃していただけだったら?」

するとラミエルの言わんとしていた事を3人はようやく理解した。

つまりその正体不明の霊的な何かは自分の都合だけでのぴの中に居座っているだけで

ひょっとしたらのぴから何かから奪っているのかも知れません。

それにいつかのぴをぶち破って本当に出現したら・・・・・・。

3人はそうなったらのぴが死んでしまうのでは?あるいはもっと酷い事が・・・・・。

何が起きるかなんて想像したく無いし。とても恐ろしかった。

3人は極限の恐怖の余り震えて言葉すら出てこなかった。

しばらく3人はのぴの心の中の巣食うものの存在に怯えていた。

さらにちゃき、ゆいにゃ、りあらの目の前が真っ暗になった。

3人の視界は急に何も見えなくなったのでますます怯えた。

えっ?なに?なんなの?こわいッ!何が始まるの?!

「そうやらここに『マイナス宇宙』の影響で

のぴさんの心の闇の記憶が流れたようですね。」

間も無くしてのぴの家の寝室が現れた。

さらにのぴは自分のベッドの上ですやすやと安らかな寝顔で身体を

ネコの様に丸めて横になって眠っていた。そこにヒューと風が吹いた。

とにかく気持ち悪くなるようなじとーとした感じのとても冷たく湿った嫌な風だった。

やがてベッドの近くに大量の顔が現れ始めた。

更にそれは真っ青に巨大なまるで大蛇のような

恐ろしく長い身体とガラガラヘビを思わせる

無数の男の頭部が組み合わさった巨大な尾を持っていた。

更に全身から無数の両脚と両腕をあっちこっち生やしていた。

続けてその大量の(ラミエルが言うには)

無数の死者の悪霊の融合体は両腕を伸ばした。

そしてのぴの精神と肉体をあの世へ連れ去ろうと身体を掴もうとゆっくりと伸ばした。

「うわああああっ!」「ヤバいッ!」

「ヤバい!ヤバいって!」「起きてえっ!連れて行かれるよッ!!」

悪霊達は「一緒に行こう!」「寂しいよ」

「もっと沢山の人を取り込むぞ!」

と恐ろしい男女の声で呻くように口々に話しかけるようにしゃべり続けた。


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しかしその直後にのぴの身体から銀色に輝く人型の何かが飛び出した。

その銀色に輝く人型の何かは悪霊の融合体が伸ばした

無数の腕の内の1本を左手で掴むとそのまま上下に捻った。

同時にグシャアッ!と音を立てて1本の腕はボキイと音を立ててへし折れた。

さらにブチッ!と引き千切った。

一斉に無数の悪霊達が激痛で絶叫した。

「うぎゃああああ」「ぎゃあああっ!」「ぎゃああっ!」と。

銀色の人型の何かはまるで獣の如く長々と大きく吠え続けた。

「ウウオオオアアアアアアアアオオオオオオオッ!!」

一方、のぴは何事もも無かったかのように布団の中ですやすやと眠っていた。

どうやら彼女本人には何も聞こえておらず安眠状態だった。

続けて無数の悪霊の融合体は逃げ出す事も反撃すら

出来ぬまま銀色に輝く人型の何かが素早く動いた。

ちゃき、りあら、ゆいにゃには何が起こったのか分からなかった。

気が付くと悪霊の融合体の蛇のような身体は一撃で十字に引き裂かれていた。

無数の悪霊の融合体はドスンとベッドの横の床に倒れた。

やがて銀色の人型に輝く人型の何かは物凄い速さで四つん這いになった。

そして4足歩行しながら倒れている悪霊の融合体に素早く接近した。

銀色に輝く人型の何かは大きく口を開けた。

続けて勢い良く頭を下げた。

バグッ!バリュバリュベリッ!バリバリバリべリリッ!ペチュッ!ベチュッ!

銀色に輝く人型の何かはその無数の悪霊の融合体を引き裂いた。

さらに鋭い歯で食い千切り、口の中で咀嚼して飲み込んだ。

ラミエルが言うには「あの危険な因子は目覚めていない」らしい。

しかし当然の事ながら

ちゃき、ゆいにゃ、りあらも何の事だかさっぱり分からなかった。

ただ彼女達は目の前の出来事に呆然としていた。

また彼女達の耳に野太い男の声と甲高い悲痛な女の声が大きく鼓膜を震わせていた。

「助けてくれえええっ!ここから出してくれええっ!ここを開けてくれぇ!

誰かああああああああああああっ!ここを開けてくれええええええええっ!」と。

それは確実に誰かに助けを求める声だった。

同時にラミエルを除いてその場にいた全員が一気に震え上がった。

しかしたちまち銀色に輝く人型の何かに悪霊の融合体の霊体は魂諸共喰い尽くされた。

同時に何も聞こえなくなり、長い長い不気味な静寂が辺りを包んだ。

「ウウオオオアアアアアアアアオオオオオオオッ!アアアアアアアアアアアアッ!」

それからまた大きく獣のような声で長々と吠え続けるとのぴの身体へと帰って行った。

そこでちゃくとゆいにゃとりあらが気が付くとさっきのヱヴァンゲリヲン4号機の

コア(核)のところにおこぷれメンバー3人全員が立っていた。

勿論、顔面蒼白である。ちなみにさっきの出来事はのぴ本人は認知していないらしい。

「さっきのはなんや・・・・・」とちゃき。

「こわいよ~こわいよ~あれが守護神??」とゆいにゃ。

「ヤバいって!あんなのがのぴの体の中に・・・・」とりあら。

するとラミエル機械的な女の子の声でこう答えた。

「そうです。これは周囲の悪霊や怪異を捕食する事で

自らの神の力を蓄えていたようです。

恐らくこの『巣食うもの』も例の儀式に必要となるかも。」

「ちょ!ちょっと!まって!あんなヤバい奴!

どうやって利用するんねん!!」とちゃき。

無理だよ!無理無理無理無理絶対無理だって!!」とりあら。

無謀過ぎやって!どうやっておとなしくさせんの???」とゆいにゃ。

「ですが。あれを利用しなければ人類は滅亡しますよ。100%の確率で!」

「でも・・・・のぴは・・・・制御出来んの??・・・・」と誰よりも心配なちゃき。

「私は上空の若村秀和と反メディア団体ケリヴァーの悪霊の融合体のいる場所へ行き。

多分、巣食うものは欠けたものを取り込んで完全体となるのかも知れません」

「そうすれば人類を救うはもとより!私達の日常は守られんの?」

「恐らく理論上は可能の筈です!もしかしたら!その時の為かも知れません。」

しばらくちゃき、ゆいにゃ、りあらはしばらくお互い見合って黙っていた。

やがて3人の表情は決意のものに変わって行った。

そしてちゃきが一歩前へと踏み出して口を開けた。

「分かったで!その方法を教えてくれな!!」

ちゃきの返答にラミエル機械的な女の子の声で答えた。

「分かりました方法を教えします!ですが難しい事ではありません!

まずはちゃきさんに質問します。この一連の怪異現象を起こした若村秀和氏。

彼は幼い頃から両親に虐待されて捨てられました。

さらに捨てられて保護された希望の家で教団関係者の母親代わり

となった女性に虐待されて洗脳されました。

彼は教えに従って自らの欠けた母親の愛情を手に入れようとしました。

しかしそんな事をしなくても貴方達は持っています。

では?質問です。彼は今まで残酷な行為と因果応報による

自業自得でこの世界から消えるべきでしょうか?

あるいは欠けた愛情を。特に母親の愛情を与えてまた記憶を消して赤子から

転生させて真面目な人間として新しい人生を送るチャンスを与えるべきでしょうか?

ちゃきさんはどちらの選択を選びますか?」

「うーん。ちょっと。まって!超難しいやん。ずるいって・・・・・」

うーん。確かに今回。あいつは自分勝手な理由で私の大親友のぴを巻き込んでいるし。

今や世界は崩壊して滅亡寸前。そこまで追い込んだ連中を許せって・・・・。」

「みんなどうなん?」とゆいにゃとりあらに意見を求めた。

「うーん。良く分からん何とも言えん」とゆいにゃ。

「そうすれば元の日常に戻って親友のぴが

帰還するなら許してあげようよ!」とりあら。

「・・・・・・」ちゃきはまだ心の中の怒りと闘っていた。

「でも。若村秀和っていう男をどうにかせんと・・・・」とゆいにゃ。

「ああ、分かっとる。頭では分かっとんねん!

でも・・・・でもな・・・・」とちゃき。

するとラミエル機械的な女の子の声でこう言った。

「できれば決断早めにおねがいします。

私の今までのループによる確率計算によればあと30分後に

太陽神テスカトリポカが出現します。もはやそうなったら誰も止められなくなります。

勿論、のぴの中にいる『巣食うもの』

元は太陽神テスカトリポカと同じ性質の神だから。

合一すれば本来の目的を達成できるのでのぴさんの肉体は必要なくなるでしょう。」

「いやだ。私は・・・・どうしてものぴが必要なんや!

『おこさまぷれーと』も彼女一人除外なんてありえへん!

絶対に!必要なんや!現代の社会も地上も必要なんや!!

あいつは私的に許せん気持ちがある。あるけど!今の世界を元に戻したい!」

「じゃ!やろうよ!のぴと日常を。

アイドルユーチューバーの日常を取り戻す為に!」とゆいにゃ。

ちゃきはしばらく無言で頭を上げて瞳を閉じ、唇を噛み、「うーん」と唸り続けた。

しかし脳裏には2年前にアイドルと動画投稿を始めた一番最初のおこさまぷれーとの

動画で初めて元気良く頭を下げて「おまたせしました!」のあいさつの記憶。

勿論、ゆいにゃ。のぴ。りあらもしゅがーも自分も一人一人自己紹介した

記念すべき最初の動画投稿。さらに次の動画にはアンチコメントを読む動画で

「笑ってはいけないシリーズ」をやった時にそれぞれ視聴者さんのコメントを紹介。

『左からヤンキー、納豆、にゃんこスターアゴ』と

書かれたコメントを紹介した事で。

ぶわっ!と水をビニール袋に噴出したことを思い出した。確か―。

「ちゃきが納豆(確かおかめ納豆だっからか?)シュガーが髪の色的にヤンキー。」

ついまたしても吹き出してしまった。他にも『AV予備軍』とか書く奴もおったなー。

懐かしいなー。あとは高校時代のプリクラが流出したドッキリとかー。

あれは面白かったなー黒歴史とか。自分はそのまんま持ってきてたなー。

でも他の人達は携帯かスマートフォンだっけ?

昔ののぴはめちゃめちゃ可愛かったな。

あとはアイドルとして色々な曲を出したな。

最近は『ドッキリDONDON大作戦』。『ミライギア』。

やっぱりみんなとまた一緒にドッキリや色々な事をしたい。

またどんどん沢山新しい曲を出して大勢の人々に勇気を与えたい!元気にしたい!

そしてちゃきはいつしかまたみんなと一緒になりたい。仲間や視聴者達。

リスナーさん達と深く繋がりたいと強く願うようになった。

そして彼女と他のメンバー2人のゆいにゃとりあらも同じ思いを抱いていた。

彼女は決断した。嫌な事は色々あったけど!

それでも現在の大勢の人々の繋がりを大事にしたい!

私達はそう言うアイドルユーチューバーなんや!

「もう!決めたで!迷いはあらへん!」とちゃきはビシッと真剣な表情になった。

ゆいにゃもりあらも迷う事無くちゃきに従い決断した。

ラミエル機械的な女の子はその『おこさまぷれーと』の決断を

しっかりと聞くとどこか人間らしい安堵の声を上げた。

「そうですか?では!貴方の決断に全てお任せしましょう!

これで私の役目も終わりです!彼女の霧島マナさんの魂と自我を目覚めさせます。」

「えっ?」とちゃきとゆいにゃとりあらは

驚きつつもかなり寂しそうな表情を浮かべた。

「はい!私は一時的にどのくらいかは分かりませんが機械の機能を停止させます。

いいんです。私は儀式として邪魔になりますので。もっとも私が示した

2つの選択以外の第3の罪の十字かの選択を選ぶのも貴方達次第です。」

『対魔獣ホラー・悪霊天魔型防衛兵器ラミエル』はガクンと音を立てて

あらかじめ組み込まれたプログラム通りに一時的に全ての機能を停止させた。

同時にヱヴァンゲリヲン4号機の真っ赤なコア(核)の内部の霧島マナはドクン!

魔力で心臓を動かし、やがて動き出した。マナはゆっくりと瞼を開けた。

それから両眼でしっかりとちゃきとゆいにゃとりあらを見た後に優しく微笑んだ。

「ありがとう。人間らしい決断をしてくれて!私はループの記憶から出会って。

ようやくここでちゃんと出会えて良かったわ。これで・・・・」

しかし突如、ちゃきとゆいにゃとりあらの頭上で大きな爆発音がした。

全員、驚きの余り、両手で頭を抱えてしゃがみ、身を守ろうとした。

間も無くして霧島マナは静かな口調でこう言った。

「始まったわね!早くしないと!儀式は30分以内に終わらせないと。

取り返しが付かなくなる。急ぎましょう!巣食うものとメルキセデクの融合。

それに伴う両者の争いはもう始まっているの!」

「わっ!分かった!」

「急ぐで!あと30分!」

「あかん!時間がないやん!急がへんと!」

それからちゃきとゆいにゃとりあらは霧島マナの意志により。

ヱヴァンゲリヲン4号機のコア(核)が

上空に向かって移動をし始めたのを確認すると。

3人ものぴと咲夜とイリスオブジェクトのコア(核)の

ある上層部へと真っ直ぐに飛び続けた。

 

イリスオブジェクトの真っ赤なコア(核)の上層部。

若村秀和と反メディア団体ケリヴァーの悪霊の融合体と向き合っていた

のぴと咲夜はしっかりと茶色の瞳と青色の瞳と見据えた。

その若村秀和と反メディア団体ケリヴァーの大量の魂が融合して悪霊と化した

巨大な芋虫と赤ちゃんを組み合わせた

悍ましい怪物は大きな長い縦の口を左右に開いた。

「ぶわあああああっ!私達は悪霊から新たな神となるううううっ!のだああっ!」

さらに口から最初の若村秀和の声につられて多数の男女の声が一気に溢れ出た。

男女の声は大きな衝撃波となり、咲夜とのぴの身体に襲い掛かった。

2人は両腕を組んで、しっかりと足を踏ん張り耐え抜いた。

しかしすぐに自らの身体に異変が起こり大きく戸惑った。

「うっ!わっ!何?!これ?うげええっ!

気持ち悪いっ!止めてっ!メルキセデクっ!」

のぴは耐えられず何度も吐きかけながらも自らの体内にいる

巣食うものがいきなり魂の中で暴れ始めたのを感じた。

それを押さえつけようと体内にいた『正義』メルキセデクが

巣食うものと激しい取っ組み合いと争いを繰り広げた。

『正義』メルキセデクは体内で幼い頃から成長し続けた巣食うものに

対抗して不本意ながらも暴れていた。

のぴは吐き気と気持ち悪さに咳き込みながら、その場に座り込んだ。

「のぴさんッ!一体?!嘘?二つの心霊が宿っているの?」

咲夜は自分は『天魔ゼルエル』を宿しているが。

勿論。虹の女神のイーリスも宿していたが

今の所、自分の体内で激しく争う事は無かった。

流石の咲夜も青ざめて大声でこう叫んだ。

「マズイ!このままじゃ彼女の魂が精神が壊れちゃうっ!」

何とかしようと咲夜はあれこれ考えたがどれも思いつかず。

出来る事と言えば。

のぴの背中をさすって吐き気を押さえて様子を見てるしかなかった。

しかしそんな余裕すら無く若村秀和と反メディア団体ケリヴァーの

悪霊の融合体はこれがチャンスだとばかりに悍ましい男女の甲高い叫び声と

太い叫び声の混じった怨嗟の声を長々と上げ続けながら2人に容赦なく襲い掛かった。

 

(第37章へ続く)