(第40章)ミライギア・インパクト

(第40章)ミライギア・インパク

 

しばらくして十六夜咲夜はイリスオブジェクトの真っ赤なコア(核)の

中にいる若い女性達がどうなったのか気になり下から覗き込んだ。

するとさっきまで魔王アリオクもどきによって性行為で

魂の中の生命エネルギーを吸収され続けていた若い女性達は

魔王アリオクもどきの本体と無数の触手が雲となり、上へと消えて行った。

それによって全員は我に返り、何があったのか状況を飲み込めずにいた。

彼女達はハアハアと荒々しく息を吐き続けており

両頬と深い胸の谷間を紅潮させていた。

ちなみに全員ようやく正気に戻ったようで。

目を丸くしたまま周囲をキヨロキョロ見渡す者。

呆然とした表情で四つん這いのままの者。

その中には仰向けに倒れたまま呆然とした表情の者。

執拗に襲い掛かる性的快楽から解放されて

安心した表情をしているニコル・ブレナンの姿もあった。

未だに性的快楽の余韻に浸っている佐代子など反応は個人個人様々だった。

それを見ていた咲夜はひとまず安心した。

そして若村秀和も反メディア団体ケリヴァーの男女の大勢の魂は

いずれも母親から産まれた状態で人の個体を取り戻して復活するんだわ。

のぴは更に儀式を続けた。

彼女は自身の『月』ヴィシュヌ・アバターと共に

魔王アリオクもどきを最後の儀式の贄として

全て捕食し尽くすと『月』ヴィシュヌ・アバターの覚醒は続いた。

のぴは『神牙因子』の解放によって自らの巨大な邪悪に苦しんでいた。

しかし若村秀和や反メディア団体ケリヴァーの男女の魂から分離された

自己中心的で自分勝手な欲望と邪心の入り混じったメディアの

テレビやゲームやスマホや携帯、パソコンに対する敵意と憎悪。

全ての人間社会に対する一方的で

独り善がりな敵意と排除しなければならない正義感。

自分が選ばれた特別な存在だと言う妄想や妄信や創り出された偽善。

選民思想。自分達が選んだ人間が楽園に行けて。

選ばれなかった人物は排除される。

他人の気持ちや価値観も全て踏みにじり。

一方的に苦しめようとする醜い心。

それらの邪気と悪魔の力を取り込み、消化する事によって腹は満たされた。

同時に強大な邪気の力は抑え込まれ、『神牙因子』は完全に安定して制御された。

のぴの金髪は元の茶髪に戻り、両頬の狼の牙の形をした痣も消えた。

そして口の中に何処かカレーライスに似たスパイスが聞いた味に満たされた気がした。

美味しいとい感覚がしたのはなんか不思議な感じだった。

やがてヱヴァンゲリヲン4号機のコア(核)の中にいた霧島マナはのぴと

ペルソナの『月』ヴィシュヌ・アバターが安定した事と

最後の生贄の魔王アリオクもどきを

取り込んでいつでも儀式が可能となる準備が整った。

霧島マナはのぴと咲夜にこう説明した。

「これで儀式の準備は終わった。

若村秀和も反メディア団体ケリヴァーも儀式は行えないわ!

太陽神テスカトリポカが現れるまであと5分前!!」

時間が早過ぎる!早くしないとヤバい!ヤバい!あと5分!時間無いやん!

ちゃきとゆいにゃとりあら達が焦り出す一方で

のぴと咲夜は真剣な表情で落ち着いていた。

「OK!何するの?」とのぴは自信に満ちた表情で霧島マナに切り出した。

「方法を教えてくれない?」と十六夜咲夜

霧島マナは「うん」と頷いた。

「これではまだ『ヴシュヌ・アバター(魔神の分身体)』は不完全なのよ。」

「何が足りないの?悪いけど急いで教えて貰える?」と咲夜。

「あとは私の魂とヱヴァンゲリヲン4号機のコア(核)。

そして咲夜さんの肉体と魂。天魔にして『正義』ゼルエルを組み合わせて。

あとはー。現実(リアル)の元の日常へ帰りたいと強く願う人々の心と

こちら側(バイオ)の世界と並行世界(パラレルワールド)を守りたいと願う

『守りし者』達の強い意志よ。それがあれば儀式起こせる筈よ!」

「私らも手伝おう!」

「そうだ!わてら!アイドルで歌を歌う!」

「いいアイデアだね!」

『おこさまぷれーと』のりあら。ちゃき。

ゆいにゃは歌を歌うアイディアを即採用した。

どうすればいいのか全く分からない。リアルに何をすればいいか?ミライがあるのか?

誰も分からない!でも私達はアイドル!歌で人々を楽しませて元気にする!

きっと!きっと!何かの役に立つ筈だ!自分達は歌って人の心を動かすだけ!だけど!

今できる事を自分達でやらなきゃ!何も変わらない!やろう!やろう!

「もう!やれる事はやれるからな!踊りも振り付けもここでやるぞ!」とちゃき。

「分かったよ!」りあら。

「よし!いっちょ!やったるぜ!」とゆいにゃ。

霧島マナもそんな『おこさまぷれーと』の

3人を見て嬉しくなり、両眼から涙を流した。

彼女は静かにはっきりと「ありがとう」と感謝の言葉を述べた。

そしてりあらとゆいにゃとちゃきはイリスオブジェクトの

真っ赤なコア(核)の上に円形に並んで立った。

丁度ステージの代わりになっていた。

やがて3人は歌を歌い始めた。


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すると自然に不思議な事に自分達の歌のメロディと音楽が流れ始めた。

それは2929年の6月16日にリリースされた『ミライギア』だった。

やがて全てのメロディと曲と歌声は一気にイリスオブジェクトの

真っ赤なコア(核)と表面と内部に反響した。やがて共鳴し合った。

そしてイリスオブジェクトの外部の『柳星張の宇宙』へとちゃき。りあら。

ゆいにゃの3人の歌声と『ミライギア』のメロディと音楽がまるで

衝撃波のように周囲に広がって行った。

彼女達の歌声はクリス・レッドフィールドにもドラキュラ伯爵の耳にも届いた。

「これは?歌か?」と未だに『柳星張の宇宙』の虚空の床に

仰向けに寝転んでいたクリス・レッドフィールドが呟いた。

ドラキュラ伯爵も呑気に大の字になって床の上に寝転んでいて

「そうだな!ミライギアだっけか?」と呟いていた。

更にそのドラキュラ伯爵の隣に寝転んでいた

惣流・アスカ・ラングレーはフーンと鼻を鳴らした。

「『未来の歯車』か?悪くないタイトルね!」とほめた。

そして彼女達の歌の『ミライギア』は『柳星張の宇宙』を超えて

今度は生と死の狭間の三途の川まで届いた。

それは巨大でな天まで届く三角形の塔の外神ホラー・イリスのゲート(門)を

通して天空に浮いていた黒き月を塔の真上まで磁石の様に引き寄せられていった。

「これは?どうやら歌声のようだ!」と冴島大河。

「これは。ほっほっ。純粋で強い希望の心に満ちておるわ!」

阿門法師は少し子供のようにはしゃいでいた。

「この歌?あっ!あのクレアさんがファンだった!

あの日本のユーチューバーアイドルの!

おこさまぷれーとの『ミライギア』だ!」とピアーズは直ぐに分かった。

しかしピアーズは知っていてもスティーブンは知らないらしく首をかしげていた。

他のハガネの騎士達も次第に彼女達の『ミライギア』の歌声によって

精神的に弱っていた心が回復して元気になった。

ティーブンもピアーズも大河も阿門法師もさっきまでの

精神の疲れは跡形も残さず消え失せていた。このまま何なら生き返りそうな勢いで。

大河を乗せていた魔戒馬・轟天も嬉しそうに何度もヒヒン!いなないていた。

そして『ミライギア』の歌声は

黒き月の中にひとつになっていた人々の魂にまで響いた。

人々の魂は心を激しく揺さぶられ、やがて全員、現世・現実(リアル)の世界へと

強く帰りたいと願った。全員そうなったので黒き月の内部は金色の光に包まれた。

そして『おこさまぷれーと』のメンバーの一人で魔女王ホラー・ルシファーと

鬼島神具のおかげで現世・現実(リアル)のこちら側(バイオ)の世界の

聖ミカエル病院の屋上にいた『しゅが』は何処からともなく聞こえてきた

『ミライギア』の歌声に反応した。

彼女もまた自然に立ち上がった。

そしてしゅがは途中のところから『ミライギア』の歌を歌い始めた。

鬼島神具も魔女王ホラー・ルシファーもしゅがの突然の行動に戸惑っていたが。

しばらくして何が起こっているのか鬼島も女王ホラー・ルシファーも理解した。

2人は『しゅが』が『ミライギア』を歌った事で霊道が出来たのだと推測した。

もしかしたら他のメンバー達やニューヨーク市民やアメリカ全土の魂が

現世・現実(リアル)に帰還して元通りになるかも

知れないと言う希望と願いをはっきりと歌から感じた。

そして再びイリスオブジェクトの真っ赤なコア(核)の上層部には

未だに歌い続けている『おこさまぷれーと』のちゃき。ゆいにゃ。りあら。

そして咲夜とのぴは彼女達の『ミライギア』の元気な歌声が心の支えとなった。

更にそれが大きな希望となり、無限の力が沸き上がるのを感じ続けた。

ほぼ同時にのぴと咲夜はまた5本の指でまるで小型拳銃の様に形造った。

そして左側頭部に当てた。続けて二人はペルソナの名前を掛け声として叫んだ。

「ペルソナ!『正義』ゼルエル!」「ペルソナ!『月』ヴィシュヌ・アバター!」と。

同時にヴィシュヌ・アバターゼルエルは現れた。

そして儀式始まった。

2体のペルソナの周囲に真っ赤に輝く生命の樹のセフィロトが現れた。

そして2体のペルソナはそのまま合一してひとつのペルソナとなった。

続けて霧島マナは「全ての魂の為に!みんなの願いを一つに!」と掛け声を上げた。

『ヴィシュヌ・アバター』はようやく完全体となった。その姿は。

黄金の仮面に大きく変化した。仮面は金色の憤怒の仮面を付けていた。

両肩からは黄金の細長い鳥の羽根をバサッと生やした。

また両腕は特に変わらず女性の様にしなやかで長く黒と黄金の鎧に覆われていた。

両手の真っ赤に輝くボクサーグローブは無くなった。

代わりに10対の金属の鋭利な長い爪が生えていた。

胸部は金色に輝き、三角形の赤い印は太陽の聖環に変化していた。

頭部から2対の鬼に似た角が生えた。

両肩を除いて上腕の外側にまるで魚の

背びれの形をした鋭い突起が生えているのが見えた。

更に金髪のショートヘアの形をした兜を被り。

左右には呪文の書かれたお経の束が2対あった。

両脚も分厚い黄金の鎧に覆われていて両脚は真っ赤な血の色をした裸足だった。

そして再び鋭い牙が並んだ大口を開けた。やがて静かに威厳のある声でこう言った。

「私は完全体となった!私の名はヱヴァンゲリヲン・ヴィシュヌ』!」

さらに鋭い爪の生えた両手はシャッ!と短くなった。

そして両脚でしっかりとガイウスの槍を握り締め、投擲する為に構えた。

「私は最高神!破壊と創造を司る者!のぴの願い通りに私が奇跡を起こそう!!」

更に『ヱヴァンゲリヲン・ヴィシュヌ』と精神がシンクロした事で後ろの首筋の

細長いカプセルの形をしたプラグの中に収容された

咲夜とのぴの瞳は瞬時に美しい紫色に変化した。

続けて全てのエネルギーが無限大となった。

続けて両手を強く握ったガイウスの槍を一気に天上に向かって両腕を振り上げた。

のぴと咲夜と同じく腹の底から力の限り、絶叫した。

「やあああああああああっ!」

「はああああああああああっ!」と。

そしてヱヴァンゲリヲン4号機のコア(核)の中

にいた霧島マナも2人の意志に応じた。

「やあああああっ!いっけえええええええええええええええええっ!」と。

最後に『ヱヴァンゲリヲン・ヴィシュヌ』も呼応し、腹の底から力の限り、

野太い声で長々と咆哮し続けた。

「ウウオオオオオオオオアアアアアアッ!」と。

ヱヴァンゲリヲン・ヴィシュヌ』は天上に向かって両腕を振り下げた。

同時に超巨大なガイウスの槍の鋭利な先端と

オレンジ色に輝く先端は超高速で移動した。

そして若村秀和や反メディア団体ケリヴァー達が選んだ若い女性達の魂の入った

イリスオブジェクトの真っ赤なコア(核)は串刺しになった。

それから10分後、ガイウスの槍で反対側まで貫かれたイリスオブジェクトの

真っ赤なコア(核)はまるで風船のように大きく急激に膨張した。

間も無くして限界を迎えてとうとうパアアアアン!と破裂した。

同時に若村秀和や反メディア団体ケリヴァーの人々の諸共、

無理矢理縛られていた『排他的脅迫の呪縛』を打ち破って行った。

更にそれは同時に人々の魂は完全に自由となった事を意味していた。

もはやこの呪縛に従う必要も無くなり。

既に若村秀和も反メディア団体ケリヴァーのメンバーの大勢の男女も

彼女達の魂を束縛させることは事実上不可能となった。

自由となった『選ばれた』と言われただけの若村秀和や

反メディア団体ケリヴァーの男女を含めた大勢の女性達の魂はあっと言う間に

ヱヴァンゲリヲン・ヴィシュヌ』の周囲に円盤状に集結して行った。

そして一気に『ヱヴァンゲリヲン・ヴィシュヌ』はイリスオブジェクトと同化した。

続けて再び長々とした野太い咆哮と共に全身からオレンジ色と青の光が放たれた。

それはまるで朝の優しい日差しのような暖かな光だった。

イリスオブジェクトは天空を仰いだ。一気に頭上の天使の輪と全身が

連続でオレンジ色と青色に点滅するようにぴかぴかと輝いた。

続けて朝の優し日差しのような暖い円形の衝撃波をゆっくりと放った。

それは世界の元の日常に戻す為の人類の明日の光を告げるものだった。

4回放たれた朝の陽ざしのような温かい円形の衝撃波は生と死の境界の

三途の川の銀色の外神ホラー・イリスのゲート(門)となる筈だった

三角形の塔からまるで砲弾の様に発射されるように通過した。

同時に真上にあった黒き月も衝撃波の中央から柱として伸びてきた

青とオレンジ色の点滅する光によって真下から真上に撃ち抜いて行った。

続けて黒き月もまた膨張して限界に達すると風船のように破裂した。

そして内部に閉じ込められていた

若村秀和や反メディア団体ケリヴァーに選ばれなかった

男性や子供や赤ちゃんと言った『死』を経験した大勢の人々の魂が解放された。

全ての動物の魂も同時に解放された。

現世・現実(リアル)ののこちら側(バイオ)の世界の聖ミカエル病院を通って

2つのコア(核)から解放された大勢のニューヨーク市内の一般市民や動物を初め。

アメリカ合衆国全土を中心に一気に地球上の全ての大陸と海全土に広がりつつあった。

そしてほとんどの人類は人間の感覚で『死』を迎えていた。

しかしすぐに全員1人残らず一般人の女も男も子供も赤ちゃんも

今日この時代と時間に死ぬ予定が一切なかった若い女性達。

その他大勢の人々をひっくるめて生命の力を完全に取り戻した事で

首輪や所持品や衣類の残ったオレンジ色の液体の生命のスープは消失してパシャッ!と

音を立てて次々と最初に母親から

産まれた状態で人の個体を取り戻して維持して行った。

更に滅亡しかけた旧人類と人間社会は元の日常を取り戻す為に全て書き換えた。

そしてガフの扉も開く事無く。本来この時代と時間で日常生活において

事故や病気で『死』を迎える筈だった一部の魂達は自然にSHB

サイレントヒルベイビー)の妊娠した女性達の子宮に宿った。

こうしてSHB(サイレントヒルベイビー)の赤子の肉体に宿り転生した。

そして元の自然の木々や山や動物に満ちた一部の自然と人間社会と文明全ては

共存する形でそのまま現実(リアル)の世界に残された。

こうして。のぴと咲夜と『おこさまぷれーと』とその他の多くの人々や

魔戒騎士と魔戒法師達の助けを借りて、インパクトの儀式は成功し、

世界は元の日常を取り戻した。

 

(第41章に続く)