(第46章)もうひとつのサイレントヒルの神

(第46章)もうひとつのサイレントヒルの神

 

冴島鋼牙は避難所の切り株の上に座っていた。

彼は右腕を真上に掲げてエアから貰ったフラウロウス装置に向かって話しかけた。

勿論話し相手は封印された事で強大な力は

抑えられている太陽神テスカトリポカである。

彼女はすでにあの『静かなる丘・サイレントヒル』の一連の超常現象事件は・・・。

たった今、事態は完全な収束に向かい、終わりを迎えつつあった。

そしてあの復活したような強大な異世界の表世界と裏世界を創造する

神の力は発揮で出来なくなっていた。

しかしその代わりに太陽神テスカトリポカは人間の言葉で鋼牙に話しかけていた。

「それで?もう!復活なんて考えないのか?」

鋼牙は珍しく冗談交じりにフラウロスの中に封印されている

太陽神テスカトリポカに聞いた。魔導輪ザルバも珍しく眉を寄せた。

カチカチと金属音を立ててしゃべり始めた。

「勘弁してくれ!あんな大事は一回で十分だぜ!」

続けて太陽神テスカトリポカはフラウロスの中でこう語り始めた。

「まあ!今の所は予定は我は無いとだけ言って置こう。

我は今や『教団』の儀式に頼らずとも自らの意志で復活できよう。

もはや誰も望まない。かつての教団が求めていた楽園は現在の人々は望まぬようだ。

しかしながら我が散らした白い霧の中のクリーチャー達と大量の我由来の

賢者の石の細胞が降り注ぎ。それは目に見えないものだ。

とても小さな存在としてな。全米中の人々の体内に潜んでいるのだろう。

もうすでに若村秀和と反メディア団体ケリヴァーの大勢の男女のメンバー達は

『死神ホラー・タナトス』を生贄にして外神ホラー・イリスを復活させて

神殺しにした人間に殺害させて玉座を奪い取り。インパクトを起こそうとした。

だがドラキュラ伯爵とクリス・レッドフィールドとネガブドネザルの鍵の

守り人によって阻止。若村秀和と反メディア団体ケリヴァーの男女の

メンバー達は最終的に元の人間の姿形になり。

記憶と過ちを残したまま今まで自分達が人生でやって来た全ての争いと共に

大罪の十字架を背負ったまま再度、現世・現実(リアル)に戻った。

いずれは人間達が彼ら彼女らを人間社会の法律を以て裁かれる事だろう。

我ら太陽神や処刑人の力で無く。

出来れば人間達にこれ以上!思い上がる事の無いように。

・・・・・・・・・いずれ人間達は大罪の罰が下される!」

「なんだって!クリスとドラキュラ伯爵も活躍していたのか!

しかし。いや。それよりも人間達に大罪の罰が下るとはどう言う事だ?」

「・・・・・・間も無く我と同等の『静かなる丘・サイレントヒル』の

『神』である存在が覚醒する。我とは別に堕とされて悪魔にされた存在が。

かつてフラウロスに封印されていた存在。

そしてダリアがアレッサの結界を破る為に利用したフラウロスとは

別のフラウロスに封印されていた過去に

ダリアとカウフマン率いる教団が呼び寄せた神。

勿論、既にそのもうひとつのフラウロスは粉々に破られているに違いない。

約10年前に現れた『静かなる丘・サイレントヒル』の『神』なる存在が

現在に出現している。不完全ながらも間も無く現実(リアル)に降臨するだろう。」

「と言う事はまさか?フラウロスは幾つも存在しているのか?」

鋼牙が実はダリアからリサ・ガーランドが手に入れていたとされる

フラウロウス装置は幾つか存在していた可能性を指摘した。

すると太陽神テスカトリポカはフラウロウスの中から考えつつもこう答えた。

「うーむ。どうやらそうらしいな。少なくともまだ服巣あるのかもやも知れぬ。

過去に両親にトラウマを抱えていたトラヴィス・グレディが最初の

アレッサーズドリームのサムエルを封印した上でアレッサ・ギレスピーの魂を

分割して神のサムエルの成長を阻害したフラウロウス。

2つ目はダリアがアレッサ・ギレスピーが作り出した結界を

フラウロウスの光で打ち破った。確かにそれは消滅した筈。

3つ目は太陽神テスカトリポカを封印したフラウロウス。

復活したとしたら1つ目のトラヴィス・グレディが使用していたフラウロウスの

可能性が高いな。これが粉々になって封印が解除されたのだろう。」

「3つの内、1つ目はダリアの手によって。もう1つはアレッサドリームの

サムエル復活の際に粉々になって完全に消滅して実在しない。」

「やはり真相は分からずじまいと言う訳か。」

「ああ、そうだな。今じゃ!恐らく確かめようがないぜ!

そう言えば!あんたの息子の分霊は何処へ行ったんだ?」

「フフフフッ!安心せい!もうしばらくは・・・・。

大事件になるようなサイレントヒルによる超常現象は・・・・。

少なくとも危険な事は起こらんさ!ただこの先には神の世界に確信で来た者。

知らずに来た者には罰は与えられて罠には嵌るだろう。異世界に囚われてな。

我のせいで大変な事になったとは言え。我は人々が心配じゃ!

だから我は分霊の息子を産み出した。いずれ事の真相を汝らに語り。

汝らの存在を許容し・共存しようとする。

そして困難に直面した人々を救い出す為にちゃんと尽力するだろう。」

「その子を発見してとりあえず様子を見よう。」

するとフラウロウスに閉じ込められた太陽神テスカトリポカはこう答えた。

「必要無い!その分霊はいずれ誰かが見つける。

我は静かに見守る事にする。汝らの選んだ中庸にしてニュートラルの道を。

そして人類は我の問いに答えを与えた。

現在の人類にはネットやCDやDVDやブルーレイや電子書籍

漫画の己の信念と志(こころざし)を持つ空想上の人々の持つ無数の価値観が存在し。

それらを許容し続け、我と同じように影響し合い・共鳴し続ける事で。

その時々の人々の理想の世界を産む大きな原動力となった。

人は時代それぞれに理想があり、そもそも時の移り変わりによって変化して行く。

時代とは生き物なのだ。だからこそ答え無くとも人々はそれぞれ

進化と進歩と模索を模索し続けるのだ。それが汝らの答えだった。

わざわざ人間の不完全さをわざわ捨てて神が住まう楽園を創る為に

今の世界を破壊してしまう必要はもう無い。無理な向上心を抱く必要も無い。

誰も潰したり、皆殺しにする必要は無い。

不必要に向上心で誰かと戦う必要も無いのだ。

我の答えでもある。まあ少々寂しいがのう。これも時代の流れ。」

太陽神テスカトリポカは最後にそう結論付けた。

 

場所は変わってフィッシャーズのキャンピングカー近くで今日の

この戦いに勝ったお祝いとして何か鍋パーティしようとンダホが

キャンピングカーの後部のトランクの食料を探していた。

そして幾つか出していた。不意にガサガサと近くの茂みが妖しく動いた。

んっ?人?人?まさか?モンスター?ズタ袋の奴???

ンダホは恐る恐る茂みの方へ行き、歩いた。

しかしまた左右にガサガサと動いたので驚いて

キャンピングカーのボディにゴツン!と後頭部をぶつけた。

いてぇっ!ちょっと!もう!なんなん??モンスターとか無しよ!!

もしも?ただの人だったら?もしかしてモトキのドッキリ?いや!流石に無いな!

とりあえず今日だけは皆、『ドッキリ禁止令』を出しているからな。

ンダホはどんどん緑の茂みに近づいて行った。

再び緑の茂みがガサガサと左右に激しく左右に動いた。

「うわあああああああああああっ!!」とまた大声を上げた。

彼はそのままドオン!と地面に尻もちをついた。

やがて緑の茂みの中からオレンジ色に

輝く球体の太陽神テスカトリポカの分霊が現れた。

その分霊の胎児は丸々と太っていた。

「赤ちゃん?浮いているけど・・・・どうなってんの?」

すると太陽神テスカトリポカの分霊ははっきりとした男子の声でしゃべった。

「私は太陽神テスカトリポカの分霊の天魔。

汝らの住まうこちら側(バイオ)の世界の行く末を見守り!

必要であるのなら!天魔の力を以て人々に力を貸す事になる。

そしてこちら側(バイオ)世界で人々が暮らす世界に留まり。

目指すはニューヨークの大都市!

そこで私は大勢の人々の営みと生活の中から学ぶ事になるのだろう。

またいずれ縁(えにし)を結ぶなら会う機会もあろう。

私はこの世界で何を学び、生きて行くか?私は人の子から学べるか?

どうやって生きて行くか?人の事を知り!学ぶのを楽しみにしている!

さて!今日はこの辺としよう!ンダホよ!

また汝が父親になった時にまた夢の中で会おう!では!!」

すると太陽神テスカトリポカの分霊の天魔はあっという間に真上へと飛び去った。

ンダホは『太陽神テスカトリポカの分霊』が青空へ飛び去る姿を天を仰いだ。

そしてニューヨーク方面へ飛び去った

太陽神テスカトリポカの分霊を呆然と見つめていた。

悪い感じはしなかった。きっと悪い霊じゃないな。

ただ?僕が親父になった時にまた会おうって?どう言う意味であろう。

その時、「おいっ!」といきなり背後から声をかけられたンダホは。

「うわああっ!」と言いながら二度びっくりして素早く振り向いた。

そしてまたしても地面に尻もちをついた。

座り込んだンダホの目の前には冴島鋼牙がスクッと立っていた。

「逃げられたか・・・・やはり予想通り素早いな」

続けてンダホの驚いた声が空に響いた。

「わああああああああああっ!鋼牙さん!もーつ驚かさないで下さいよ!」

鋼牙は顔色一つも変えずに冷静に尋ねた。

するとンダホは無言で青空のニューヨーク方面の彼方を指さした。

「どうやら逃げられたようだぜ!霊気と気配を消して人間のふりをしていた。」

「あのー太陽神テスカトリポカの霊体は何なんでしょうか?」

「さっきの太陽神テスカトリポカの霊体は要は息子みたいなものさ!」

「じゃ!もう世界を創造したりしないんですね!」

「ああ。そうだ!しばらくは大丈夫だ!」

鋼牙はンダホを安心させるように穏やかにそう言った。

「よかったああああああっ!」と安心してその場に大の字になった。

 

『静かなる丘・サイレントヒル』に残ったSCP財団の特殊部隊地収容

スペシャリストチームは完全に機能を停止させた白い分厚い装甲に覆われた

ティラノサウルス型の巨大生物をSCPとして登録準備が進められた。

そしてSCP登録予定のティラノサウルス

巨大生物を大きなコンテナに収容して回収した。

更にこの新しいSCPは現地で調査された。

そして現在報告書がまとまりつつあった。

ティラノサウルスの巨大生物のオブジェクトの全身の皮膚や装甲は

日本の企業が売り出していた(削除済み)の玩具の設定上で呼ばれている

『金属外骨格生命体』特有の金属が多数含まれていた事が判明。』と書かれた。

また彼女達の体内には好熱菌た多数生息しており。最終報告書には。

『核(コア)になった多数の若い女性の全身の細胞内にも

賢者の石を持つ好熱菌との生存が確認された。

まるで(削除済み)と(削除済み)人のような肉体であると結論付けた。

今後SCP財団は研究院と協力して更なる詳しい調査を続ける予定である。』とあった。

また他の場所ではキャンピングカーとSCP財団のテント近くの

広い緑の大草原の上に魔人フランドールとフィッシャーズリーダーのシルクロード

2人並んで仰向けに仲良く寝転んでいた。

しばらく二人は優しいその風に当たって夏の日差しの暑さを和らげていた。

やがて魔人フランドールは顔を横向きシルクロードに話しかけた。

「前。私は貴方の仲間のモトキさんやダーマさんとあとアリスちゃんを助けたり。

映画を観たわね。なんだか懐かしいわね。そんなに年月経っていないのに。」

シルクロードは横を向いて魔人フランドールに答えた。

「そうだね。その時はありがとな!マジで!お陰で助かっんだ。

俺達!あっ!ンダホも俺も鋼牙さんに助けて貰ったんです。

アリスちゃんはかなり元気だよ。

必ず毎日投稿する度にコメントを残してくれているよ。

今でも相変わらず僕達のファンだよ。」

「そう・・・・よかった。・・・・私・・・・。

このとんでも無い事件を起こしたのは。

私のそもそもの油断のせいです!・・・・・・・・・・」

 

(第47章に続く)