(第48章)静丘症候群

(第48章)静丘症候群

 

「名前は?やっぱりアダム?」とストークス。

「・・・・・・・・実は・・・・・まだなんだ・・・・」とエア・マドセン。

しばらくエアとストークスは無言だった。

やがてストークスはエアに恥ずかしそうに小さい声でアダムの子の名前を伝えた。

「シンジ」と。エアは「へえ」と言った。

「いいじゃない!エヴァ大好きなんだもん!!プンプン!」

トークスは両頬をカエルの様に膨らませた。

エアは笑いこう明るく答えた。

「ははは。御免。御免。じゃあ!名前はシンジ・マドセン!!」

「はぁーい!決定!!」と言うとエアとストークスはパン!と両手を叩き合った。

 

長い間、のぴは目の前が彼女だけ黄金の光がふっと消えた。

まるで急に希望の蝋燭の火が誰かに吹き消されたように。

のぴは大きく戸惑い、動揺して不安に押しつぶされながらも瞼を強引に開けた。

目の前には・・・・。さっきも観た『柳星張の宇宙』や『イリス・オブジェクト』の

真っ赤なコア(核)と呼ばれた多分、『STEVEN』の言っていた『宇宙の卵』と

外神ホラー・イリスとは全く別の恐らく宇宙の卵が

孵化して生まれた新宇宙が天高い場所で広がっていた。

それは余りにも美しく。

高い天井には無数の星々が瞬いていた。

そんな夜の幻想的だった。

高い天井には青く輝く大きな満月が浮かんでいた。

しかし地上はどうやら何処かのビーチのようだった。

地面の砂は青く輝いていた。

それは青く輝く砂に覆われた浜辺だと気付いた。

同時にのぴは純粋に幻想的でとても美しい場所だなと思っていた。

しかし不気味にも思えた。

ゆっくりとのぴは上半身を起こした。

目の前には青く輝く海水が照らしていた。

波が押し寄せて返して永劫に繰り返していた。

そしてパシャン!と大きな水の音と波打ち際の海岸近くの中央に

あの現世・現実(リアル)のこちら側(バイオ)の世界の

アサヒナ探偵事務所のアサヒナ・ルナ所長に顔も容姿も

瓜二つの女性がぽつんと立っていた。

「えっ?貴方は?アサヒナさん?・・・どうなってんの?

えっ?えっ?えっ?どうして??」

のぴは混乱した様子でアサヒナ・ルナ所長と瓜二つの女性を茫然と見つめていた。

「ここは高次元の世界」アサヒナ所長に瓜二つの女性はそう言った。

アサヒナ・ルナ所長そっくりの顔と容姿の隣に見知らぬ男の子?いや。

少年がいた。その少年は15歳で緑色の服を着ていた。

さらに独特な茶髪のツンツンした髪型に背が高くスラリとした細身の少年。

間違いないとのぴは直感した。

彼が魔神ナナシだろうと。つまりあの少年だと思った。

魔神ナナシは威厳のある声でのぴに言った。

「おめでとう!寄る辺の女神から産まれし人の子よ!私は唯一神YHVAを殺し。

大天使や天使を『神殺し』として殺し尽くし。

宇宙の卵を孵化させて新たな宇宙を創世した。

そして君と同じく人間を超えて唯一神となったものだ。

君は人間を超えてこちら側(バイオ)の世界の理を書き換えたね。

そして本来のあるべき正しい世界に戻した。

君はこの世界の『神』に相応しい。君こそ正義の救世主(メシア)に相応しい。」

続けてアサヒナ・ルナ所長そっくりの顔と容姿の瓜二つの女性が話し始めた。

「私はこちら側(バイオ)の世界の大地母神となり、魔神ナナシと交わり。

そして生命(いのち)を育てました。

私達は数多(あまた)の人間達と植物や動物も全ての自然な霊的な存在である

私が魔神ナナシと共に産み出して育んだものよ。

貴方達は旧宇宙から連れてきた魂の転生体となった子孫達よ。

つまり旧宇宙の旧人類の子孫達なの。私達がイザナミイザナギ。」

更に続けて大地母神アサヒは真剣な表情でこうのぴに警告した。

「このサイレントヒルの一連の超常現象から数日後に機械天使。

魔王ホラー・アザトホースの落とし子がこちら側(バイオ)の世界に現れます。

私達が産み出した人間達の若い女性達の肉体や精神。

そして大勢の世界中の何十億人の人々の個性の存続の危機に晒されまます!

どうか私達が産み育んだ人間の女性の若い女性達の肉地や精神。

そして大勢の世界中の何十億人の人々の個性を救って下さいッ!!」

のぴは『大地母神アサヒ』が今にも泣きそうな顔を見ている内に戸惑い。

どうしたらいいのか分からずついつい黙ってしまった。

しかし困っている人はほったらかしにはしない性分なので結局は。

「分かった」と無言で首を上下に振って答えた。

地母神アサヒはハッ!と両眼に涙を滲ませて両頬を紅潮させた。

笑顔で「ありがとう!感謝するわ!本当にありがとう!」と言葉を述べた。

「うん!安心して!必ずみんなを守るから!約束するよ!」

地母神アサヒは「頼みます!みんなを!」とのぴに全てを託したのだった。

のぴは魔神ナナシと大地母神アサヒを見た。

魔王ナナシは美しく輝く黄金の瞳でのぴを見た。

それはまるで自分の娘を見る父親のような優しげな力強いまなざしだった。

「もうすでに第3のフラウロウスは壊れて封印は解除された。」

彼はのぴの脳裏にある映像を見せた。

その映像はのぴと大地母神アサヒ魔神ナナシがいた例の青い砂と

海の浜辺のビーチの上空でどうやら数時間前の出来事らしい。

その出来事ではオレンジ色に輝く三面の箱がガシャン!

とガラスのように粉々に割れて周囲に散らばる様子が映し出されていた。

そしてフラウロウスの内部から封印されていた何かが飛び出していた。

真っ赤に輝く半透明の昆虫のような生物で。

ヤギに似た太い角が4対生えた頭部に加えて2対の細長い昆虫のような触角。

三角形の頭部。筋肉質な肉体に太く逞しい両腕と10対の赤い細長い爪の生えた両手。

逞しい両脚と両足。胸部には赤と黒の縞模様がついていた。

口周りには2対の昆虫のような鋭く太い顎。

真っ赤な目なのかはっきりしない黒い模様にのぴは見えた。

背中からは4対の細長い昆虫の触覚にも似た触手が生えていた。

それは通常の魔獣ホラーの素体とは異なる姿をしていた。

そして復活したアザトホースの落とし子と呼ばれた怪物。

外神ホラーはそのままドポン!と水柱を立てて青く輝く

海水の中に潜航して消え去った。そこで映像は終わった。

「あいつが?その?アザトホースの落とし子??」

のぴは2人に聞くと魔神ナナシと大地母神アサヒは

「そうよ」「そうだ」と同時に返した。

「素体なら戦闘能力は極めて低い。高人間界に人間に憑依したら」

「とても危険よ!あいつはホラーだから『真魔界』に回帰した後に。

人間界にある陰我の宿ったオブジェ(物体)に邪心がある人間が触れれば

ゲート(門)になって奴は人間に憑依するわ。もうすでに・・・・。」

「既に2年前にゲート(門)から出現して日本人の人間に憑依している。

どうやらアレッサ・ギレスピーを利用したダリアの儀式では無理だったのだろう。」

「だからあいつは侵入の手口を変えて正攻法で侵入しようと試みている。」

「ちょ。ちょまって!もう現世・現実(リアル)に居る訳???」とのぴ。

「そうよ。」

「だから君も現実世界に戻るんだ!」

魔神ナナシと大地母神アサヒが同時に言うとまた黄金の光に包まれて行った。

やがてのぴはゆっくりと瞼を開けた。

彼女は学校の教室の中に立っていた。

のぴは目の前の黒板を見た。

その黒板にはこう書かれていた。

「過激派ポリコレやツィフェミ二スト達は

この人間社会や政治や歴史に基礎知識が存在しない。

故に応用だけ学んでいるだけ。

彼ら彼女らは未熟な計算により全て間違う事になる。

過激派ポリコレやツィフェミ二ストは女性の格差を無くそうとしているのに

漫画やポスターの禁止と言った表現規制や歳の差に文句を言うだけであり。

男性嫌悪や女性嫌悪これらは立場を指す。

彼ら彼女らは新しいジェンダーフリーを重視しすぎる余り過激化する。

男らしさと女らしさを押し付けてはいけないと言う

正義の光と伴って男や女の存在と価値観を否定し。

己の価値観を強要してはいけない。のぴは全ては理解できるか?」

「どういう意味だろう?」とのぴは首をかしげて考え込んだ。

さらに別の黒板にはまたこう書かれていた。

それは誰かの質問のようだ。

「これは未来の先の彼女の。

のぴさんの未来を生きる為のヒントだ」

彼女は黒板を見た。そこには変な事が書いてあった。

『多くのモデルや企業やイラストレータの女性達の思想に

反していると言う理由で全て炎上させて排除している。これは正しいか?』

のぴは迷わず「間違っている」と答えた。

すると不思議な事に黒板の内容はフッと消えて、新しく内容が表示された。

『それが君の答えだな。よろしい。では次の質問だ。

我が副王のな。女性の頂点が過激派ポリコレやツィフェミ二ストは自意識過剰である。

傘を拾うだけで目が合うだけで男を犯罪者(ケガレ)とみなす。

男性を視線しただけで犯罪者(ケガレ)とみなす。

エロい視線で見ている男は犯罪者(ケガレ)。

ただ胸を見られるだけで男は犯罪者(ケガレ)とみなす。

ノーブラの女性が男が視線を向けただけで犯罪者(ケガレ)。

ケガレは浄化すべし。

女性の権利の敏感で自分を大切にして常に知識をアップデート

している頂点はツィフェミにストである。

そして加害されやすい未来ツィフェミ二スト予備軍。

一般女性ツィフェミ二スト予備軍。

名誉男性は相手にされない加害される心配がない為。

男に媚びを売って気を引くしかない同情すべき女性達(つまりケガレ)。

まるで天使達や大天使のヒエラルキー構造に見える。

自分の意志を黙って聞いて欲しい。

この世界は果たして正しいのか?

法と秩序は??どちらだ???上記の対フェミニスト

過激派ポリコレとツィフェミ二ストの法と秩序!

現在の人間社会の男女平等の多様性と法と秩序!どちらが光で闇か?』

のぴはえーつ!分かんないよ!!でも!分かんないって!えーと多分!多分!

「現在の人間社会の男女平等の多様性と法と秩序が光(ライト)なら。

過激派ポリコレとツィフェミニストの法と秩序は闇(ダーク)かな?」

『よろしい。どちらか汝は目指す?答えよ!』と表示された。

「現在の人間社会の男女平等の多様性と法と秩序を目指すかな?」

『よろしい。くれぐれも法と秩序の在り方を見失わぬように』

そんな文章が表示された後にのぴの目の前はまた金色の光に包まれた。

しかし突如、フラッシュバックが始まり、目の前が真っ暗になった。

そこはニューヨーク市内のどこかの屋上のビルの風景だった。

しかも季節は冬で何処からかクリスマスの歌が聞こえてきた。

ビルの屋上の鉄の柵の先には奇妙な有機物の塔が立っていた。

そしてビルの柵の近くで16歳の少女が立っていた。

ガチャッ!と屋上のドアが開き、1人の男が現れた。

彼は韓国人のようだった。彼は16歳の少女に話しかけた。

茶髪の首筋まで伸ばしたショートヘアに青い瞳に丸っこい高い鼻。

ふっくらとした両頬。ピンク色の唇。赤と黒の服とスカート。

名前はエミリー・ジェファーソンと言うらしい。

韓国人はウェーブをかけた茶髪にキリッとした茶色の細長い眉毛。

ぱっちりとした茶色の瞳。丸っこい高い鼻。ピンク色の唇。

黒い革の服とズボン。名前はブランクと言うらしい。

2人はしばらく顔を赤らめて色々世間話をしていた。

「私は・・・実は貴方の事が・・・・」とエミリー。

「僕も・・・実は・・・」とブランク。

2人は奇妙な有機物の塔が太く長く

巨大な植物の幹を思わせる物体だとのぴは気づいた。

奇妙で非日常的なニューヨークの冬の街並みを見ていた。

しかしやがて2人はお互い顔を見合った。

2人は顔と耳まで徐々に真っ赤にしてふい!とお互いそっぽを向いた。

やがてエミリーは「ねえ?キスしようか?」と提案してきた。

ブランクは「ええええ」と大声を上げた。

その時、プチンと映像が切れた。また目の前が真っ白になった。

続けてまた映像が流れた。そこはまた同じ場所だった。

2人がピンク色の唇を重ねて瞳を閉じてキスをしている間。

いきなり天空に時空の歪みに現れた。

しかしエミリーもブランクに夢中で全く気付いていなかった。

のぴは目を丸くして大口を開けて大きな声で警告をした。

「ええっ!ねえーっ!危ない!危ないッ!

上!上!上!にあるよ!早く逃げてええっ!」

エミリーはこの場に存在しない筈ののぴの声が聞こえたのか?

彼女は危険を察知して直ぐに行動を開始した。

エミリーはブランクを入り口まで片腕の怪力で投げ飛ばした。

そしてブランクを救った代わりに屋上の柵前に立っていたエミリーは

時空の歪みから現れた青色と銀色に輝く触手状の正体不明の怪物に頭上から襲われる。

青色と銀色の触手の針部分が真っ赤に輝く巨大な針穴が大きく開いた。

同時にエミリーを頭から飲み込んだ所で映像は途切れた。

そしてまたフラッシュバックが始まり、目の前が真っ白になった。

気が付くとのぴはまたどこかにいた。瞼を再び彼女は開けた。

彼女はまた雲の上を両足に浮いて歩いていた。

しばらくして彼女の耳に威厳のある声がした。

「汝は希望の光となるか?闇となるか?汝の心の在り方次第!

汝はあの子を助けられるか?」誰?誰?男の人だけど?誰なの怖いんですけど!!

のぴは普通の人間の素に戻り、思わずその場にうずくまった。

「恐れるな!自らの闇に飲み込まれるな!」と声がした。

のぴは目を丸く見開き、ゆっくりを目の前を見た。目の前に男が立っていた。

その男はあの死神ホラー・タナトスのコア(核)の中に取り込まれていた

のぴの肉体と精神を救い出した恩人だった。

あの黒いネクタイを付けたいかにも紳士的な風貌したあの男だ。

彼は初めてのぴに自ら名前を名乗った。

「我は外神ホラーの副王ヨグソトホースの落とし子。ヨグと呼んでくれたまえ!」

「あの助けてくれたのは貴方ですね?」

のぴは勇気を振り絞って質問すると答えをヨグは返して話を続けた。

「いかにも私である!さて!時間は無い!急いで話すとしよう!

『静かなる丘・サイレントヒル』の一連の超常現象事件は終わっていない・・・・。

超常現象はまだ続いている。収束していない。」

「えっ?終わっていない?だって若村も太陽神テスカトリポカも

なんとかなったんじゃないの??どうなってんの?」

「今回の最初の事件は魔人フランドールを利用した若村秀和と

反メディア団体ケリヴァーがかつての教団のダリア・ギレスピーが

自分の娘のアレッサに行った神降ろしの儀式を

行ったのがトリガー(引き金)となった。

最初の石と次の石。

さらに次の石と言うように。

水面に投げられた石は波紋として広がり。

『静かなる丘・サイレントヒル』の超常現象の津波

こちら側(バイオ)の世界を中心に超常現象は周囲の複数の並行世界

パラレルワールド)の空間に浸食して伝染している。静丘症候群だ。

今後も超常現象や怪異や怪物や異世界の目撃や報告はたくさん出てくるだろう。」

ヨグはショックを受けたのぴを励ます様にヨグこう言った。

「心配ない!君なら必ず収束させられる」と言った。

しかしのぴはどうやってこんな状態を収束させるのか見当もつかなかった。

そしてすぐに彼に見送られてまたどこかに送られた。

 

(第49章に続く)