(第52章)最後の来客者(ゲスト)

(第52章)最後の来客者(ゲスト)

 

ジョンはのぴの厳しい表情を覗き込んでいた。

のぴは急に表面に現れた彼の茶色の瞳から漏れ出る殺気に圧倒された。

彼女の額からじんわりと汗が流れるのを感じた。そして心が震えるのを感じた。

しかしそれは自分と自分自身の中にいる『巣食うもの・ヴィシュヌ・アバター

に向けられたものでは無い事に気付いた。

ジョンのさっきは背後に向けられた何者かに向かってだった。

のぴはゆっくりと椅子から立ち上がって背後を振り返った。

ジョン・C・シモンズが聞き取り調査をしていた部屋の戸口に誰か立っていた。

その男はのぴと同じ日本人だった。しかし周囲には禍々しい邪気を感じた。

両頬まで伸びた黒髪。右側に太い眉毛。丸っこい高い鼻。

ぱっちりとした茶色の瞳。ピンク色の唇。

「バレないように屋敷にいたのに良く僕だって分かったね!」

「のぴ君。私の背後にいたまえ。この青年は人間ではない」

ジョンはのぴに指示すると彼女は素直に従って後ろに隠れた。

「僕は他の人間が見ても平気な見た目をした人間体もホラー体もね。

名前は神崎りょうすけ。またの名を混沌の魔王にして

こちら側(バイオ)の世界の創造主アザトホース。」

「嘘をつくな!混沌の魔王の創造神アザトホースの本体ではないだろ?

本物ならば『最後の不定形の黒い影。無窮の中心で

冒涜的な言葉を吐き散らかしている』筈だな!違うか?」

ジョンは直ぐに本物では無い事を見抜いていた。

本来の本物の彼なら『無限の魔王アザトホースが時間を超越した創造を絶する

明かり無き洞窟の中で押し殺したような気を狂わせるような忌まわしい

太鼓の音と呪われたフルートが

か細く単調な音の真っただ中で貪欲に噛み散らかしている。

こんな奴間違って何の知識もない人間共が本体を呼び出そうものなら大変だ。

そうなればこちら側(バイオ)の世界に恐怖と破壊をもたらす事となる。

奴は『白痴』故に怒りの本体が大きく膨れて無数の為足を振り回し。

地上の全ての建物を破壊して。

半径地内は確実にアザトホースによって

あらゆる人間や植物や動物が枯れて死んで行き。

残されるのは砕けた岩や建物の残骸とアルカリ性の水溜まり。

裂けて枯れ果てた野菜の様にしなびた生物の死骸だけだ。

とするとこいつが本体じゃないとしたら?

やはり例のフラウロス装置の中に封印されたもの??いや???

まさか何かの要因で封印は解除されたのか?何故だ?まさか?

あの定期的に産み出される白痴の魔王の落とし子のアザーティ?。

確か白痴の魔王の落とし子アザーティは強いエネルギーを

持つが故に死ぬのが大半。稀に制御できるものがいるとか?

生存しているアザーティは『アザータ』

『アザーテ』『アザートゥ』の三体のみ。

こいつは存在しない筈の4体目なのか?」

しばらくその場にいた全員は沈黙していた。

すると先に神崎は口を開いた。

直ぐに彼は自己紹介を改めて始めた。

「僕はメシア族のトップだね。

僕もまた本体と同じ最強の窮極(きゅうきょく)の存在だ。
のぴさん。ジョンさん。初めましてだね。

僕は白痴の魔王ホラー・アザトホースの

落とし子。君の言う通り存在しない筈の4番目のアザーティ『サムエル』さ。

僕は本来は無限窮極の最奥にして沸騰して沸き立つ原始の

混沌に潜んでいるんだ!こちら側(バイオ)の世界を創造して。

君達人間と動物と植物と昆虫と星々と霊と魂を!そして自然を創造した者!

勿論、君達の他にも多種多様な生命体を創造したのも僕の本体!

そして始祖ウィルスの生みの親。元々僕は直接人間の前に現れたりはしないけど。

ジル・バレンタインと言う寄る辺の女神との出会いがきっかけでね。

太古の昔に自ら生存している3体のアザーティ以外の新しい落とし子達や

ニャルラトホテプの化身体を創造して分離させて

人前に見せる他にも色々な事が出来るようになったのさ。

『私達と植物と動物と自然の創造』とのぴは頭の中で混乱していた。

神崎はそんなのぴのリアクションをしばらく楽しんだ。

しかし我慢できずにジョン事、魔王ホラー・ベルゼビュートは口をはさんだ。

「それよりも僕のメイド達と僕に許可なくセックスして!妊娠させて!

生命の成長の時間を操り次々と出産させたのは?」

「これは僕の能力の確認だよ。いいかい?

人間の男女の恋と結婚と有性生殖の理(コトワリ)

からは決して逃(のが)れられない。

君。のぴ君もいずれはよく知る日が来るだろう。そうだね。あとそうだねえ。

大体、5年後には君は好きな男性と出会い、結婚してアイドルも卒業して。

いずれは『E型特異菌』の実験体として命を散らした『エヴリン』の

転生体の女の子を授かるだろう。これであの子は救われるんだ!」

のぴは目を丸くしてさらに両頬染めて恥ずかしそうに笑った。

「えっ?マジ?それって予言的な?」と言った。

「まあーそうだね。」とクスクス笑い神崎は言った。

それからすぐに真剣な表情となり、彼は厳しい口調で話を始めた。

「さて!この次は真面目な話をしないと人類にはもう少し

命の大切さを教えるべきだろうね。今後の『のぴ』さんの幸せの為に。

真面目な話をしないと人類は命の大切さをもう少し考えるべきだろう。

我々か?魔戒騎士と魔戒法師にね!まあ若村秀和も

反メディア団体ケリヴァーの連中を生きているがね。

ただ今回の事件は我々メシア一族の魔獣ホラーと

人類の共存を脅かして大事なルールを破った。残念だね。

またあの魔界法師の不道シグマのような事件が起こるとは!

ついでに数年前の過去にもミロク教典が氷川と言う

名前の人間の男の手によって全て解読された挙句に。

『東京受胎』が始まり。最終的には元の世界に創生された事件があったばかりなのに。

しかも今回もまたしても破ったのは人類の方だ!全く!!」

「まあ。氷川と言う人間の男や若村秀和と

反メディア団体ケリヴァーは知らずとは言え。

ルール(掟)を破った。だからこそ人類には今度いう今度こそは

全ての大罪の責任を取って貰う。そう考えているんだろ?」

「勿論!彼らの生命の全ての機能を無理矢理動かしてね!

これ以上!若村秀和にも反メディア団体ケリヴァー共にも思い上がって欲しくないね!

それは勿論、過激派ポリコレやフェミ二ストの仁藤夢乃氏や三浦よし先生達

にも言える事だよ。三浦よし先生も仁藤夢乃氏も若村秀和と

反メディア団体ケリヴァーもいずれは人間達の社会的な罪の罰を受けるだろう。

警察に逮捕されていずれあのヘンリック・ターナも

全て1人残らずいずれは今までそのような人間達がして来た

犯罪の全てを自白してきちんと裁判で判決が下り、刑務所で全員罪を償うだろうね。」

「それじゃ!もう他の何も関係のない人類や僕のメイド達や少なくとも

僕の愛人は警察も関わっていない!それに僕の愛人達やメイド達に罪は無いし。

ましてや背負って罰を受ける必要は無い筈だ!違うか?!」

「そうかな?君達の愛人やメイド達だけ特別扱いしていいのかな?

今頃は魔獣人間協定食糧保護連盟の魔獣ホラー・ベリスが激怒して

老院の神官や魔戒騎士や魔戒法師達に膨大な抗議文章を送っている事だろう。

大変な目に合っているだろうね。

あちらさんは中庸(ニュートラル)の立場も辛いねぇwwww」

「フン!あいつは何かあると昔も現在も直ぐに怒っている。いつもの事さ!

しかしな!もう事件の犯人達は一部はまだ先だが

いずれ人間の法律によって裁かれる。」

「あのね!君は魔王ホラーなんだよ?どうしてこんな深刻になる前に若村秀和と

反メディア団体ケリヴァーの血肉魂とマガツヒを喰い尽くそうとしなかったの?

そうすればここまでの大事件は確実に阻止できたでしょ?

それとも人間の女性の魂を大量に取り込み過ぎたが為に

人間に近づき過ぎちゃったかな?

所詮人間は僕達魔界の住人の餌に過ぎないんだよ?

君がホラーの存在意義を失えば我々はリーダーを失う事になるんだ。

君がボスなんだよ?分かる?それとも代わりに僕がボスをやろうか?」

神崎は目と鼻の先まで威圧してジョンに顔を使付けた。

しかしジョンも男らしく(?)びしっと「僕には愛している人間の女がいる。

マーティと言う息子もいる。僕の子供も連中よりか強いぞ!」

そこで神崎は狂ったように大笑いし始めるとのぴは恐怖を覚えた。

「僕はジル・バレンタインの観測の力によって『アザトホースの夢』は消失した。

急に神崎りょうすけは狂ったように笑うのを止めて真顔で話し始めた。

「でもこちら側(バイオ)の世界の創造主に変わりは無かった。

そして賢者の石も宇宙の賢者の石も僕の力の原形であり。

元々は僕の力なのさ。どう?何か思い出して来た?ねえ!のぴちゃん!ねーえ!」

のぴは自分の血液中にあれ(宇宙の賢者の石)が入っている事を思い出した。

やがて彼女の脳裏に魔王アリオクもどきの邪悪な心やメディア社会や人間に対する

憎悪の宿った悪霊を喰らい。そして若村秀和と反メディア団体ケリヴァーの男女の大勢の人々の魂と分離させて全員救い出していた光景がフラッシュバックされた。

のぴは自分の強い願いとみんなの力(中庸・ニュートラル)に変換させて

彼ら彼女らの魂が救われていた事に心底ほっとしていた。

よかった!みんなが救われて。

「君は大勢の人々の絆を借りて悪魔や悪霊を喰らう強大な闇の力を抑制して制御した。

そして君達が喰った魔王アリオクもどき生贄とした事で君は若村秀和と

反メディア団体ケリヴァーの全ての人々の魂とアストラル体を含めた

全ての人類に0の可能性を示した。そして君は君自身の強い願いに従い。

ワイルドカードを引き、君が望む世界(中庸・ニュートラル)に戻した。

君と幻想郷の紅魔館のメイド長の十六夜咲夜(いざよいさくや)と

共に短い間だけ『創造神』となった。そして自ら未来を手に入れた!

君達は想定外以上の素晴らしい動きをしてくれたよ!

君の中は既にさらに進化した『月』ヴィシュヌ・アバター

神の牙を持つ成長しきったであろう完全体の0の力。つまり自由の旅の始まり。

新たなる未知の光の力が宿ったんだ!それが『ワイルドカード』だよ。」

神崎は彼女達が行った全ての結果に満足していた。

のぴはさっき話したことが信じられずに黙っていた。

私は?どうして?そんな事が出来たのだろう?私は正しかったの?その選択が??

それから無言で考え込んでいるのぴに優しくこう話しかけてきた。

「未来は全ての物事は何かを犠牲にしなければ何も達成できない。

君は何も悪くない。だからと言って善い事をした訳では無いんだよ。

彼らの持つ魔王アリオクもどきと『静かなる丘・サイレントヒル』の選民思想

自分勝手な排他主義や反社会的な思考のみを生贄として君は若村秀和と

反メディア団体ケリヴァーの人々の全て魂を救い出したのさ!

彼らはせっかく僕達が創造した人々を反生命『死』の力で一時的にとは言え滅した。

そう。『静かなる丘・サイレントヒル』の儀式やエヴァの儀式を利用してね。

でものぴや君達は『元の日常に戻りたい』『選民思想』や怒りや憎しみに囚われた

若村秀和と反メディア団体ケリヴァーの人々の救い』を強く願った。

そして『未来の歯車』の力により、一時的に『死』は無くなり。

全ての若村や反メディア団体ケリヴァーの今までの人生や自分達が犯してきた

反社会的な数々の大罪の記憶のパーソナルデータも全て含めた元の生命は戻り。

人々は人間の形の肉体や記憶や自我や現世の縁(えにし)を取り戻した。

また一部の人々はそのまま魂は転生されてSHB(サイレントヒルベイビー)

の胎児に宿り、うまく行った。データも含めてね。

その代わりに魔王アリオクもどきは排他的主義や選民思想や邪心や欲望の魂は

反発する存在だから若村秀和の魂と反メディア団体ケリヴァーの全ての魂と

アストラル体から引き離されて

分離させられた後に生贄になり、消去(イレース)された。

そして若村秀和と反メディア団体ケリヴァーの人々や無理矢理保管された

大勢の一般人の魂とアストラル体はイリスオブジェクトの核(コア)と融合した。

インパクトと共に全員、一部は元通りに生き返って。

残りの一部は来世の人間の女性の胎内の

SHB(サイレントヒルベイビー)に転生して行った。

最初は君達の手で『死』や『破滅』『呪い』を滅して元の生命を取り戻した。

何も不自然じゃない。本来あるべき自然や人間の精神の法則に従っただけに過ぎない。

そして機械仕掛けの女神『デウスエクスマキナ』である君の手によって全ての

こちら側(バイオ)の世界と宇宙の自然法則のプログラムは元通りに運び動作した。

君は何も悪くないかと言って善い事をした訳じゃないんだ。これは諸刃の剣だ。

太陽神テスカトリポカが完全に復活した事で君と咲夜君を利用して

デウスエクスマキナのシステムをハッキングされて操られ続けた。

お陰で何回もシステムエラーを繰り返す羽目になったがようやく成功した。

彼女は自分のシステムデータを『デウスエクスマキナ』に

上書きする形でシステムを乗っ取った。

しかしこの現在のこちら側(バイオ)のシステムの時間軸ではそれが不可能となった。

分ったかい?理解できただろうか?」

「結構難しいけど。」とのぴは大体の彼の話を理解したのだった。

しかしその直後に何故かのぴは大体から一気に隅々から全ての話を不思議と

まるでデータを高速で読み取ったかのように全ての話を困惑しつつも理解した。

さっきまでは大体しか理解できなかったのに。

どうしてだろう?まるであたかたも自分が機械みたいに。

データを高速で読み取るように

まるで機械のシステムの如く神崎の話も全て理解していた。

のぴは不思議そうに神崎を見た。

これも機械の女神『デウスエクスマキナ』の力なのだろうか?

一方、神崎は困惑するのぴの表情を眺めながらクスクスと笑っていた。

その時、のぴは不意に戸口に誰かの気配を感じていた。

その人物の気配はジョンでも神崎でもなかった。

戸口に立っていたのはジョンの愛人だと神崎は最初に思った。

しかし一人の若い日本人女性は1年前の12月の真冬にジョンが偶然にもアメリカの

コラボ事業の居場所の無い少女達を保護する為にあった

ピンク色の宿家になるバスにいた15歳の少女である風紗と言う名前の

日本人女性の少女はとある理由から逃げ出して

冬場の街中を彷徨っている所をジョンが発見して捕食はしたくなかったし。

かといってそのまま放置も出来ずに悩んだ末に保護した。

それからシモンズ家の養子縁組となり、

血は繋がっていないが妹としか家族に迎え入れた。

その15歳の少女は両首筋まで伸びた茶髪のショートヘア。

右側の茶色の長い髪は耳と両頬の一部を隠し。

広いおでこは白くテカテカと光っていた。

キリッとした薄い茶色の細長い眉毛。

いつものジョン達の前では常にぱっちりと茶色の瞳は生きる希望にあふれていた。

しかし今はどんよりといつも以上に弱く見えた。

丸っこい低い鼻にスッキリとした真っ直ぐな鼻筋。ピンク色の唇。

左側の茶色の長い髪は後ろの耳にかかっていた。

そして右側に金色に輝く真珠のピアスを付けていた。

首にも白い肌の首のラインと首筋はとても美しく見えた。

白い肌が大胆に露出し、両腕の方近くにV字型にまっすぐに

伸びた真っ赤なドレスの帯があった。

腰は真っ黒なベルトが付いていて、真っ赤なスカートは両脚の太ももの上まであり。

ミニスカートだった。白い肌の深い胸の谷間も丸見えだった。

彼女は真っ黒な分厚い革のブーツを履いていた。

そんな風紗を見ながら神崎は笑いながら話した。

「はははははっ!君は『十六夜咲夜(いざよいさくや)』と『のぴ』はふふふっ!

正にホラーの始祖のような救世主(メシア)のような存在に近づいたね。」

続けて彼は風紗の方を見ながらのぴとジョンに向かって話を続けていた。

 

(第53章に続く)