(第57楽章)貫かれし己の正しさと信念そして交差する闇と光

(第57楽章)貫かれし己の正しさと信念そして交差する闇と光
 
キリスト教ユダヤ教の関係者や神父達はそれを全否定する文章を公開した。
しかしニュースやバチカンローマ教皇のニュースの主張も
ジルはそれは鼻で笑って見せた。そして馬鹿にした態度を取った。
「バカな人達、『信じれば救われる』と言う言葉に踊らされて
自分達が神や大天使、天使達に精神を支配され、管理され、運営され、
人形のように弄ばれ、または作物として都合良く利用されている事に気付いていない。
何故なら人間の信仰心は神や大天使、天使達の便利な食物であり、
エネルギー源なのだから。だから欲しいのはそれだけ。
人間が大勢死のうが生きようが彼らにとっては知ったこっちゃないのよ!」
自分こそ、その事実に気付いている唯一の人間だと言う事は分かっていた。
やがてジルは休憩室の大きな窓の外の青空を見た。
 
丁度昼ご飯をダーマとモトキと家の外のチェルシー地区にある
おしゃれなフレンチレストランでフランス料理を食べてご満悦なアリスは
ミートスパゲッティの赤いソースを口の周りにつけて真っ赤にして笑っていた。
すると隣でダーマは白いペーパーでアリスの口の周りのミートソースを拭いてあげた。
するとアリスは「ありがと!」とお礼を述べると
またスパゲッティをフォークで巻いて、
口の中に運び、ずるるっとメンを吸ってまた口の周りを赤いソースで汚した。
これにはモトキも思わず苦笑いを浮かべた。
ダーマも「おいおい!服がっ!」と呆れつつもアリスの豪快な食べっぷりを見ていた。
何故ならアリスは大人が食べる量のほとんどをあっと言う間に平らげていたのだから。
勿論、モトキとダーマもまだ半分位残っていた。
「良く食べるなぁー」
「もしかしたら?ウチのンダホよりも凄いんじゃないか?」
「いやいや!早食いはさすがに無理でしょう!」
その様子をアリスは口の周りと服の胸元にトマトソースを付けて、
ニッコリと笑い、今度は自分で口の周りと服を白いペーパーで拭いた。
「おいしいよ!食べないの?」
アリスはニコニコ笑いながら言うとじっとトマトスパゲッティを見ていた。
すると何かを察知したのかモトキはダーマにこう促した。
「ヤバいぞ!狙っている!喰われちまうぞ!」
喰われるって?マジかよ?……こわっ!いやーん!」
するとモトキは口にスパゲッティを含みながら危うく吹き出しかけた。
勿論、彼はどうにか堪えた。
アリスも笑いながらまたトマトスパゲッティを口の中に入れ、
啜っておいしそうに食べていた。
それから3人は仲良く注文したミートスパゲッティを
食べるとお会計を済ませて店を出た。
こうして楽しい食事も平和に終わった。だがまだ楽しく平和な一日は続いていた。
「そう言えば!ジルさんのあれで夕食は焼き肉店に行くとか言っていたな?」
「えーつ!やった!楽しみ!でもその前に2時だから!」
 
BSAA北米支部
ジルが休憩室でテレビのニュースを視聴してから数時間後。
鋼牙とジルはBSAA医療施設で病室のベッドの上で
リラックスをしていたシャノン・カエデ・マルコヴィアを訪ねていた時の事である。
シャノンは病室のドアを開けて最初に入って来たジルには笑顔を向けた。
しかし続けて入って来た鋼牙に対して顔を強張らせ、歯ぎしりをした。
彼女は手こそは上げないものの鋼牙に対して憎しみの籠った眼差しを向けていた。
愛する人、人では無かったがいわゆるアレックス・M・スタンリー事、
魔獣ホラー・バエルを目の前で殺された怒りと悲しみはまだ消えていないようだ。
勿論それも当然であろう。
シャノンは「出て行け!」とも「二度と来るな!」とも言わなかった。
しかしその鋼牙を見るシャノンの視線は氷のように冷たく
憎しみと怒りの眼差しをしていた。
「何の用よ!貴方が何故?ここに来たの?」
「あんたが健康か、赤ちゃんが元気か確かめただけさ!」
するとシャノンは鼻を鳴らし、敵意を剝き出しにこう言った。
「貴方は大勢の人々の命を救う為、守る為に私の愛した魔獣ホラー・バエル!
アレックスを私の目の前で切り捨てた!
私は!そんなあんたを一生死ぬまで許さないっ!」
鋼牙はそんなシャノンの怒りの声を黙った瞼を閉じて無言で聞いていた。
しばらく彼は黙っていた。やがて静かにこう言った。
「ああ、そうだな。俺の行為は許されるべきでは無いな。」
それだけ言うと鋼牙はくるりと背を向けてシャノンの病室のドアから出て行った。
「まって!」とジルは後を追いかけるように病室を後にした。
シャノンはただ黙って心から沸き上がった怒りと憎しみを抑えるように
白いベッドのシーツを皴になるまで強く握り続けた。
そして両目から静かに涙を流し、唇をプルプルと震わせていた。
鋼牙とジルはBSAAの医療施設を後にして上階へ向かう
階段を昇っていた。その途中、ジルがとうとう沈黙に耐えられず口を開いた。
「鋼牙……その……なんて声を掛ければ……」
「気にするな!魔戒騎士の仕事をしていればそんな事はよくあるさ!平気さ!」
鋼牙はジルの心配も気にする事も無くそう答えた。
それから会議室に行く途中でジルと鋼牙はまた会話を続けた。
「とにかく俺は少なくとも正しい事をしたつもりだ。だが。
だからと言って俺のやっている事が絶対に正しいとも限らない。」
「俺達魔戒騎士も魔戒法師にも元々は人間故に欲望もあるし、
自分達が人々を守る為に魔獣ホラーを狩っていても。
それが正しいとは理解されず一部の人々から酷く憎まれ、
復讐されそうになったり、さっきのシャノンのように
俺の行為を絶対に許したりとはしないと言った事があり。
また殺意を持って俺を殺そうとしたり、自殺を強要する者もいるだろう。
俺達はなるべく大きく公に出る事も無く常に闇の中で戦い続けて来たんだ!」
「まあー今はあれだがな。結局は正義も悪も善も個人が持つ
今の感情や物の見方によってクルクルと流れが変わって行く。
時代が流れれば善も悪となり、悪が善となる。
全ては時の流れと個人の変化によって流れ変わるものさ!
たとえ!唯一絶対の正しい善であろうとな!」
「ああ、もう悟っているだろう?ジル?」
鋼牙と魔導輪ザルバの言葉にジルはドキッとなった。
ジルはなるべく平常心で冷静にこう切り返した。
「つまり?唯一絶対神も神性を失って大悪魔になると?」
「かも知れん!ただかなりの精神力と個人の力がー。」
「必要だな。間違いなくな」
ジルは鋼牙と魔導輪ザルバの答えに内心焦りを感じていた。
しかし心の乱れを悟られぬよう努力をした。
数時間後、ジルと鋼牙はBSAA北米支部の会議室である会議が行われた。
BSAA代表のマツダ・ホーキンスBSAA代表はジルと他にBSAA内で
最初の魔獣ホラーと外神ホラーに遭遇した
パーカー・ルチアー二、クエント・ケッチャム
と魔戒法師の烈花と魔戒騎士の冴島鋼牙。そしてこれから遭遇するであろう
秘密組織ファミリーを監視しているアメリカ合衆国大統領直属のエージェント集団
のOSDのエージェントのレオン・S・ケネディとヘレナ・ハーパーがいた。
彼らはある深刻な事態について話し合っていた。
「まずは色々説明しないと!」とマツダ・ホーキンスBSAA代表は集まった
ヘレナやレオン、ジル、パーカー、鋼牙、ジルに大体の大筋を説明した。
ヘレナもレオンも信じられないと言った表情をしていた。
「つまり?俺達の世界(バイオ)に真魔界や別次元の宇宙から一部の人を喰らう
悪魔の一族のホラーと大量の悪魔達がどんどん集結しつつあると?」とレオン。
「でもどうして?」とヘレナ。
「もしかしたら?母体に回帰する本能のようなものかも?」
マツダBSAA代表は人差し指で眼鏡の下部をクイッと上げた。
続けてマツダBSAA代表は眼鏡の奥でチラッとジルの方を見た。
「言う事はそいつらは?やはりリーダーがいるのか?」
「はい!秘密組織ファミリーの長であり、シモンズ家現当主の
ジョン・C・シモンズ、またの名を魔王ホラー・ベルゼビュート」
「間違いないの?まさか彼が人間じゃないなんて……」
「彼の呼びかけで魔獣ホラーや悪魔達が俺達(バイオ)の世界に
悪魔や魔獣ホラー達が集まって来るのかしら?」
「つまり?自らの生存の為に何か目的があると言う事なのか?」
それから元々、太ってはいたが以前、クイーンゼノビアで自身の
体重が重過ぎたせいでジルやクリスに心配をかけた事を反省し、自身も
エージェントからBSAA対テロ部隊の隊長として現場で戦い始めたのを
機にダイエットしたので少しお腹もポッコリと出ているものの筋肉も引き締まり
大分スリムとなったパーカー・ルチアー二が口を開いた。
「目的は確かえーとなんだっけな?うーむーうーん。
あっ!思い出したぞ!連中の目的はー。
『創造主の唯一絶対神』の排除だったな!」
それを聞いたレオンとヘレナは驚きの余り、
反射的にパーカーの方を見て両眼を見開いた。
「まっ?まさか?あの旧約聖書だとか新約聖書の?」
「人間や動物や天使や自然を作った神様の……事?」
すると坊主頭の男はこう返した。
「信じられないかも知れませんがどうやらそれが真実のようです。
彼らは秘密組織ファミリーとは別に
『魔獣新生多神連合』なる組織を新たに創っています。」
黒い服を着た茶髪のポニーテールの女性の魔戒法師の
烈花はレオンとヘレナを見るとこう言った。
「どうやらジョン・C・シモンズ、いや魔王ホラー・ベルゼビュートは
こちら側(バイオ)の世界を直ぐ近くの第3の世界、つまり唯一絶対神YHVAが
支配している天界(真女神転生Ⅳファイナル・ロウルート)を侵略する為に米軍で言う
前線基地にしようとしているようだ。これまで自分達、
神々や他の人間を悪魔の手先や神を悪魔に堕とされて苦しめられて来た
唯一絶対神や大天使、天使達に反旗を翻している
行為を評価して支持する神や悪魔、堕天使達がかなりの数もいるようで
どんどん仲間に加わり増えて行っている。」
「それだけあいつは多くの敵を作ったと言う事だ。
困った事にこれであんた達はBOW(生物兵器)やウィルス兵器による
バイオテロの他に悪魔や神様が起こした事件にも
俺達と共に対処せざる負えないだろう。」
「これも全て俺達、魔戒法師の不祥事のせいだ!」
鋼牙の意見を聞くなり、烈花は全員に頭を下げて静かに謝罪した。
ヘレナとレオンは良く分からないようだったがジルとパーカーと
クエントはその理由を知っていたがずっと黙っていた。
 
(第58楽章に続く)