(第66章)壊滅したX星の居住区

おはようございます。
お久しぶりの畑内です。
メリークリスマスが過ぎましたが……
ゴジラの自作小説を載せます。

(第66章)壊滅したX星の居住区

網走厚生病院の広場。
電話の男の意外な回答に神宮寺博士は、動揺と寒さに震える顔で
「それは?どういう事かね?」
電話の男は
「彼女は……」
と言って言葉を切った。
神宮寺博士はあわてて
「彼女は?どうなるんですか?」
電話の男は
「少ししゃベり過ぎました!これ以上の事は申し上げられませ
ん!X星人が言っていた『カイザー02』……いや!
『モンスター・キャリア』がまた増えた!ただそれだけです!では」
と聞こえると電話は切れ「ツー!」という発信音が静かな寒空に響き渡った。
神宮寺博士は携帯を耳に当てたまま
「どうすればいいんだ!今更ワクチン不要だなんて!今更!言
えるわけがないじゃないか!G塩基を組み込んだあの青黒い植物はどこへ行ったんだ?」
と言うと雪が静かに降る中、独り寂しく美雪達のいるテントへ
戻って行った。

網走市内。
サンドラとゴジラは両者共、体力がほとんど限界に達し
ほとんど動けない為、サンドラはビルの陰に隠れ、
ゴジラはマンションの陰に隠れお互い長い間、隙を伺っていた。
やがてゴジラはマンションに残り少ない渾身の力で勢い良く体当たりし、
マンションのレンガとコンクリートの建物を突き破り、
土埃を撒き散らしながら放射熱線を吐いた。
同時にサンドラも高層ビルに体当たりし、冷凍弾を放った。
冷凍弾と放射熱線は互いにぶつかり合い、
大爆発を起こし、再び辺りは水蒸気で完全に視界が遮られた。
しかし間髪をいれず、ゴジラは水蒸気を破り、体力の限界でフラフラになっている
サンドラの鉤爪のある腕を掴み、投げ飛ばそうとした。
しかしサンドラは腕を大きく振り回しゴジラを弾き飛ばした。
ゴジラは近くの民家に衝突し、瓦礫の山に埋もれた。

網走厚生病院の広場の物置小屋。
「あいつは生かす必要は無いぞ!」
と蓮。
「でも!彼女は苦しんでいるのよ!罪を償わせなきゃ!」
と凛。
蓮は怒りの声を上げ、
「罪と償わせる??父を殺した罪人に何ができる!」
と怒鳴った。
凛は
「何か方法がある筈よ!」
と外へ出ようと手探りでドアノブに手を触れた時、
「やめろ!」
と蓮が凛の身体にタックルし、その場に転倒させた。
そこに山岸が
「喧嘩しないで!」」
洋子も悲鳴に近い声を上げ
「やめてよ!お願い!」
蓮の怒りと憎しみに燃えた表情が、洋子の持っていたデジタルカメラに鮮明に録画された。
 ふと洋子のカメラの画面に、新約聖書が開かれたテーブルの
ある床に落ちているメモ用紙が映った。
洋子がその2枚のメモ用紙をズームアップすると、ロシア語で、
エスが予言通りに誕生する事で自分の地位が危うくなるのを恐れたヘロデ王が、
ベツレヘムの2歳以下の子供達を大勢虐殺した話が書かれていた。
文章の最後には、「まるで邪悪な魔王や魔神の力に魅せられたX星人達みたいね!」
とも書かれていた。2枚目のメモ用紙には
「光ある惑星に闇があり……生命を憎悪し、生命を食い尽くす邪悪な者達……
しかし死邪悪な者達を狩り、生命を守る生物の出現で初めてこの地球や他の惑星に生命が光り輝いた。」
と書かれやはり同じく文章の最後に
「滅び去ったあたしの故郷で聞いた神話と何か関係があるのかしら?」
と書かれていた。
 洋子がデジタルカメラで2枚のメモ用紙を録画している間、
蓮と凛は山岸が仲裁するのをも聞かず、激しくもみ合った。
 しかしその時、凛の首にかけていたインファント島のお守り
が黄金に一瞬輝き、蓮と凛は眠るように倒れた。

CCIの宇宙探査船はある極秘調査により木星の13番目の衛星「X星」地表に着陸していた。
探査船からは数人の宇宙飛行士が現れ、透明なヘルメットを通し、周りを見渡した。
周りは激しい砂嵐の発生により、周りの視界はほとんど遮られていた。
それから数人の宇宙飛行士達は特殊車に乗って、
目の前に見えた洞窟へ向かった。
洞窟は真っ暗な風景のみで何も見えなかったが、
特殊車のブラックライトを付けるとそこはゴーストタウンと化したX星人の居住区だった。
民家らしき所の壊れかけた下水管から青い液体がタラタラと流れていた。
その先に青黒いクリスタルの形をした宇宙植物の種子と、黄金、漆黒、暁の
混じった色のクリスタルの形をした宇宙植物の種子が生えているのが見えた。
それから宇宙飛行士達は外へ降り、8cm程の大きさの
2つの宇宙植物の種子を間近で観察していると、クリスタル状の種子の先端が開いた。
その中から出て来た暁のアメーバと青色の液体はお互い結合し、
やがて暁のアメーバの方が突然苦しみ出し、沸騰し、蒸発して跡形も無く消失した。
 それを見た宇宙飛行士達は驚いた顔でその様子を見ていた。
しばらくして女性飛行士が口を開き
「ここで何があったのかしら?」
別の男性宇宙飛行士達も首をかしげ
「さあ……分からん……」
と答えた直後、
「おい!天井を見ろ!」
と誰かが大声を上げた。
その大声を聞き、全員、洞窟の天井を見上げると、大きな穴が開いていた。
そこから青黒いクリスタル状の宇宙植物の種子が我先にと宇宙空間へ飛び出して行くのが見えた。
一人の宇宙飛行士が
「あれは?何だ?」
とすっとんきょうな声を上げた。
「宇宙植物の種子が別の惑星、もしかしたら地球へ移動する為に……」
「それなら?ここの住民はどうしたのだろう?」
「さあ…分からない……」
「とにかく生存者がいないかどうか?探してみよう!」
と言うと宇宙飛行士達は特殊車で、壊れたX星人の居住区の中を歩き出した。
X星人の居住区の中あっちこっちで
青い液体と手の平サイズのクリスタルを採取し、船内で調べた結果、
G塩基や多種多様の生物のDNAの中に、驚いた事に
あのカナダの宇宙人に類似したDNAやケーニッヒや
デストロイアのものと思われるDNAが検出された。
しかしここに住んでいたと思われる居住区のX星人の住民は
全く見つからず、今回の調査は打ち切りとなった。

(第67章に続く)