(第77章)洋子……怪獣世界へ……

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第77章)洋子……怪獣世界へ……

 凛、洋子、美雪、覇王を先導していた若いウラヌス部隊の隊員が
「あれ?あれ?」
とつぶやき陰気な廊下の周りをグルリと見渡した。
 彼はマークと凛、さらに洋子がいつの間にか
その場にいない事に気が付いたのだ。
 しかし凛の視界には、陰気な廊下の暗闇に
向かってフラフラ歩いて行くのが見えた。
フラフラ歩いていた洋子の脳裏に太い男の声がした。
「来い!戦いは既に始まっている!この先へ進めばもう後戻り
出来ないぞ!」
バトラこと、ウリエル・バラードの声だった。
しかし洋子は
「でも!行かないと!怪獣が呼んでいるわ……」
「なら!来るがいい!」
ウリエル・バラードの力強い声に励まされるように
洋子は青緑色に光輝く勾玉を「ギュッ!」
と握りしめ、決意に満ちた表
情で更に暗闇の先へ進んだ。
その時、背後から
「おい!何処へ行く?!」
「戻って来い!」
しかし洋子は暗闇に魅入られたように
背後から聞こえた声を無視し、その先の暗闇に向かって歩き続けた。
ウラヌス部隊の一人が
「彼女を連れ戻しに行きます!」
と走り出そうとした。
しかし凛は
「待って!あたしが行くわ!」
とそのウラヌス部隊の一人を制止すると蜃気楼のように消えて
行った洋子を追い掛け、凛も闇の中へ消えて行った。
覇王は驚きと困惑の入り混じった表情をし
「怪獣世界の扉があそこに??どうなっているんだ??」
 洋子と後を追って来た凛が静かに目を開けると、
目の前にアメリカ・アパラチア山脈のシェナンド国立公園の森の空の上だ
った。そこに起動停止して森の中に倒れているガイガンが見えた。
その時、洋子と凛の耳に
「怪獣に乗り移った『第3の堕天使』だ!」
と声がして、二人は、まるで操り人形の様にバタンと立ち上がるジラに自然と目を向けた。
凛はジラを睨みつけ
「あれが……第3の堕天使?」
洋子はようやく凛の存在に気が付き
「凛ちゃん??どうしてここに??」
「あたしがいた方がいいからよ!ほら!見て!」
と言い、自分の首に掛けている小さな鏡を出した。
 小さな鏡は黄金色に何度も点滅していた。
洋子も自分の首に掛けている勾玉を見ると、
何かに共鳴するように青緑色に何度も点滅していた。
洋子は周りを見渡し
「誰?ウリエル・バラードでしょ?」
「そうだ!君達の真上にいる!」
 凛と洋子はすぐに真上に気配を感じ、空を見上げた。
 そこには黄色の縁取られた稲妻模様の漆黒の翼を持つ、バトラの巨体が見えた。
 洋子は口を広げ、ただ巨大なバトラの姿を茫然と眺めていた。
 洋子とは対照的に、凛は、自分よりも圧倒的な
巨体を持つバトラの姿を見ても、一切動揺せず、
慣れた顔でバトラの姿を見た。
何故なら凛は怪獣世界に何度も踏み入れた経験があるからである。
 しかし洋子は激しい恐怖を感じ、全身が震え、両足が竦み、
バトラの血の様な赤い眼を金縛りにあった様に茫然と見ていた。

 東京地球防衛軍本部の広い物置き部屋。
 蓮は、恐怖に怯え切った様子のレイに接近しようと試みたが、
レイに激しい口調で脅され、それ以上、レイに近づけず、足踏みしつつも、ようやく長い沈黙を破り、
「何があったんだ……教えてくれ!誰かに脅されているのか?」
「『第3の堕天使』の声が……あいつに脅されているの!」
再びレイの脳裏に
「奴は私の事を知っている!殺せ!さもなくばお前は死ぬぞ!」
としわがれた声が聞こえ、彼女は悲鳴を上げ、片手で耳を押さえた。
「『第3の堕天使』?まさか?よし!そのカプセルを静かに床に置くんだ!」
と驚きつつも冷静な口調で蓮が言った。
 レイは蓮の指示に従い親指ほどのカプセルを静かに床に置き、ゆっくりと手を放した。
 それから蓮が次の指示をレイにしようとした瞬間、急にレイ
は「ギャアアアッ!」と絶叫し、懐からサバイバルナイフを取り出し、蓮の腕を切りつけた。
 レイは完全に自分でさえ制御のとれない恐怖に苛まされ、
とうとうバッドトリップになり、激しく絶叫しながら容赦なく蓮を切りつけようとした。
 蓮はやむ負えず拳銃の引き金に手を掛け、発砲した。
 銃弾はレイのナイフに当たり、ナイフは彼女の手から弾き飛ばされ、倉庫の隅の暗闇に消えた。
 レイは蓮を嫌悪感に満ちた眼差しで睨みつけると
「アヤノさんが嫌いな理由を!教えてあげましょうか?あいつがあたしのクローンだからよ!」
と言う謎の言葉を残し、倉庫の先のドアをドアノブごとバリッとこじ開けそこから逃亡した。
 蓮は跡を追おうとしたが、出血が酷かったので、
ポケットからハンカチを取り出し、レイに切りつけられた手の甲を縛り、止血した。
 それから無線で仲間と連絡を取り、
切られていない手で器用に親指ほどの
大きさのカプセルを慎重に拾い上げ、顔に汗を滲
ませ、なんとかビニール袋に入れた。 そこに彼の連絡を受け、
ガーニャと丁度、遺伝子検査を終え、普通の人間と判断されたニック、グレンが駆け付けた。
「なんで?アヤノにそっくりの女がここにいるんだ?」
「……俺が高校生の頃に北海道でテロ事件を起こしたレイが逃亡した可能性が高いですね!」
「レイだって?」
とニックは素っ頓狂な声を上げた。
「確か?ロシアの地球防衛軍にいるんじゃなかったのか?」と
グレン。
「彼女は……一か月前にロシアの地球防衛軍本部から脱獄した……
まさか?ここまで来ていたなんて……」
とガーニャは周りの現場検証をした。
 そしてガーニャは、すぐに駆けつけた特殊生物犯罪調査部の関係者達に
「彼女の次の行き先は恐らくジェレルのいるカウセリングセンターだ!」
と言い、蓮も
「すぐに!カウセリングセンターに通じるあらゆるルートを徹底的に封鎖してください!」
「任せろ!よし!行くぞ!グレン!」
とニックに言われ、グレンも特殊生物犯罪調査部の関係者と共に走り去った。
蓮は腕を組み
「『あいつが!あたしのクローンだからよ!』?どういう意味だ?」
と考え込んだ。

(第78章へ続く)

では♪♪