(第78章)アトランティス大陸の最後

こんばんわ畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第78章)アトランティス大陸の最後

 空想と現実の狭間の怪獣世界。
 洋子はもう一度、自分の首に掛けている勾玉を見た。
勾玉はこれまで以上強く青緑色に輝いていた。
 それから今初めて真上に現れた巨大なバトラに視線を向けると、
洋子は自宅で目撃したあの激しい恐怖を感じ、全身が震え、
両足が竦み、ただバトラの血の様な赤い眼を、金縛りにあった様に茫然と見た。
 しかし洋子と対照的に、凛は自分よりも遥かに巨大な体を持つ
ウリエル・バラードの姿を見ても、
一切動揺せず、正々堂々とバトラと視線を合わせた。
 洋子は全身の震えが止まらず、冷や汗をかき、口調も明らかに震えていた。
凛は穏やかに
「大丈夫!バトラはあなたの味方よ!」
バトラも血の様な赤い眼で洋子の顔をじっと見た。
「そうだ……君の味方だ!」
その時、凛は優しく
「あれを見て!」
とそこにはしばらく起動を停止しているガイガンの姿を指さした。
 洋子は不安のあまり、何かに共鳴するように
青緑色に何度も点滅する勾玉をギュッと握りしめ、
大きく深呼吸すると目の前で起動を停止しているガイガンの姿を見た。
 洋子は、ガイガンの巨大な鉤爪やライフルに変化した尾が、
まるで自分の首に掛けている勾玉に共鳴するかのように点滅を続けている事に気が付いた。
「あれ?あたしの勾玉と同じ色をしている?」
「そうよ!きっと!あの怪獣の中にバトラの言う朱雀の魂が宿っているのよ!」
「そうだ!」
と赤と黄色に縁取られた稲妻模様の黒い翼をはばたかせ、ウリエル・バラードが答えた。
 それから洋子は目の前に倒れている自分よりも
圧倒的に巨大なガイガンに恐怖を感じつつも、
まるで魅入られる様に優しく片手で赤く巨大なモノアイを撫でた。
 再びウリエル・バラードは血の様な赤い恐ろしい目で洋子の顔を凝視すると
「すでにどうすべきか?既に分かっている筈だ!」
しかし洋子は幾ら考えてもどうすべきか分からず、徐々に焦りと不安と恐怖が募り、
「どうすべきかあたしには分からない!こんな所にいつまでも!……」
と言いかけた時、急に洋子の脳裏に突然、激しい複数の人間らしき悲鳴が一斉に響き渡った。
 さらに目の前がフラッシュバックし、沈み行く巨大な大陸が見えた。
 だが……その大陸の様子がどこかおかしい。
 大陸の中心から青緑色と灼熱の混じった光の柱が立ち昇り、
それは酷く禍々しく邪悪に見えた。禍々しくも邪悪な青緑色と灼熱の炎の赤が混じった光の柱から、
まるで黒い竜巻の様にコウモリの様な怪獣の群れが、飛び立っていた。
 それは巨大な手の形にも見えた。
 一瞬洋子はパニックになりそうになったが凛が
「大丈夫??何か見えたのね!教えて、それは何?」
と優しく尋ねたので洋子は自分の感情に何とか堪え、
脳裏に流れた映像について話し始めた。
「何人かの悲鳴と沈んで行く大陸が見えたの……
様子がどこかおかしかったわ!光の柱が立ち昇っていて!
光の柱の中から、黒い竜巻の様にコウモリの様な怪獣の群れが。
それは大きな手の形にも見えて……かなり気味悪かった!一体なんだったのかしら?」
ウリエル・バラードは静かに
「それは超古代文明のあるアトランティス大陸の最後の姿だ!」
洋子は動揺し
「あれが?最後の姿??なんで?沈んだの?」
凛は静かに
「大昔、アトランティス大陸
『朱雀』『玄武』『白虎』『青龍』と言う組織があったの!
その組織の中の『朱雀』は生体実験の開発を進めていた。
彼らは勾玉や十字架といった道具を使い、『朱雀』『玄武』『白虎』『青龍』
とそれぞれ名付けられた生体兵器の巫女となって一心同体になり、アトランティス住民を守ろうとした。
でも……その四つの生体兵器の中の『朱雀』の巫女になった
アトランティス住民の傲慢な心に反応し、
一心同体なっていた生体兵器の『朱雀』が狂って、
他の開発途中のコウモリの様な怪獣達を従わせ、
アトランティス大陸にいる住民達を食べながら共に成長して行ったのよ。
それからその狂った『朱雀』を止めようと、
別の巫女達は開発していた生態兵器を使って『朱雀』を倒した。」
「でも?『朱雀』の巫女はどうなったの?」
と洋子は尋ねた。
「『朱雀』が狂ってしまった事で巫女の人格も破壊されたの……つまり……
殺人鬼となり果てて自ら破滅したのよ!」
その時、洋子の脳裏に再びあの女性の悲鳴が脳内に響き渡り、
青緑色の勾玉を首に掛けた女性が自らナイフを突き刺して、
自殺を図る映像が一瞬だけ流れた。
「そんな……酷いわ……」
とつぶやいた。

 東京、地球防衛軍本部内。
 蓮は2時間前にアヤノそっくりの顔をしたレイが目撃された、
現在使われていない倉庫の現場を調べていたが、
何も手掛かりは見つからず、止む無く、
封鎖される予定の特殊生物病院に戻り、
国連の警備員と共にカウセリングセンター付近の廊下を警備していた。
その時、蓮の背後から
「特殊生物犯罪調査部の蓮さん!」
と声が聞こえたので、蓮は振り向くと、ニックが傍にいた。
「どうしました?」
「大変だ!死体が!」
「え?そんな馬鹿な?」
そしてすぐに死体のあった現場へ向かった。
 現場はカウセリングセンター付近にあるボイラー室で、
そこに3人のミュータントの警備員の死体が転がっていた。
どれもどす黒く全身が変色していた。
恐らく死後、24時間は経っているだろう。
「間違いない。M塩基破壊兵器のG塩基が組み込まれたA群溶血性レンサ球菌による感染死だ。」
「どうして?タブリスの抗生剤は?」
「実は昨日、地球防衛軍の上層部が……」
とおずおずとニックは
「『タブリス』にG塩基を持つアオシソウ抗生物質を利用したものらしいが、
ミュータントの能力が失われると言う重大な副作用が確認されたので、すべて焼却処分されたらしい。」
「そうか……そうでしたね!でも……人が死んでいるんだぞ!」
「実際!既に『バイオハザード隔離区域』にする準備が始まっている!」
「そう言えば?ジェレルさんは?」
「既に隔離措置でカウセリングセンター内に!」
とニックは答えた。

(第79章に続く)

では♪♪