(第9章)ユダの血統の巣

(第9章)ユダの血統の巣
 
ユダの血統により休憩所の割れた窓ガラスから連れ去られた
マーゴット刑事はふと意識が戻り、静かに目を開けた。
視界はまだぼやけていて良く見えなかった。
彼女はその場から動けるか試しに両腕や両足を動かして見た。
しかし両足首は強靭な茶色の糸に絡められ、全く身動き出来なかった。
周囲を見るとどうやら自分は全裸の状態で壁に磔にされているらしい。
「ハアッ……ハアッ……一体どうなって……」
マーゴット刑事は自分がユダの血統によって何処に
連れ去られていたのか全く見当がつかなかった。
やがて視界がはっきりし彼女は周囲を見渡した。
そこはあのメモに書かれた通りの貸し倉庫の様だった。
多分、昔、運営していた運送会社が建てたものだろう。
何故なら周囲には湿っぽく濡れた段ボール箱が何十個もあったからである。
さらに透明な粘液が壁や段ボールに付着しているのが見えた。
「何これ?気持ち悪い……ひっ!何よ……あれ?」
四つん這いになっていたマーゴット刑事の目に飛び込んで生きたのは―。
余りにもおぞましい光景だった。
冷たい床には胎児程の大きさの7本の
節の付いたオレンジ色の物体が多数存在した。
「嫌……嫌……嫌……本当に嫌……」
彼女の目にはそのオレンジ色の物体は
どう考えても昆虫の卵嚢にしか見えなかったのだ。
しかも全てのオレンジ色の卵嚢は
大きく真っ二つに裂け、既に孵化した後だった。
「嫌だ……ユダの血統の幼虫が……」
多分、ほとんどのユダの血統の幼虫は恐らくこの倉庫から出たに違いない。
奴らはニューヨーク中の裏路地や何処か人目の付かない倉庫や地下で
卵嚢から産まれた幼虫から何度も脱皮を繰り返し、
成人男性程の大きさの成虫となり、巣を作り……多分……。
彼女は次の事をすこし考えただけで全身の鳥肌が一気に逆立つのを感じた。
全身が凍りつき、背筋がぞっとした。
そしてマーゴット刑事はふと顔を上げ、壁を見た。
壁には自分と同じように透明な粘液と
複雑な糸に絡め取られた全裸の女性の姿が見えた。
良く見ると首筋までの伸ばした
短い金髪にスレンダーな身体の若い女性をしていた。
「あっ!まさか……ヴィクトリア・マクライさん!!」
彼女は直ぐに気付き、必死に呼びかけた。
しかしその全裸の女性はどうやら
すやすや眠っているらしく、返事は無かった。
「ヴィクトリアさん!起きて下さい!
ワシントンDCの刑事です!マーゴット刑事です!」
彼女は必死に呼びかけたがヴィクトリアはまだ呑気に寝息を立てていた。
その表情はどこか恍惚に満ちていた。
ブブブブブブブブブブブブブブブッ!
何処からか羽音がした。
「ユダの血統だわ!早く!逃げなきゃ!助けなきゃ!」
マーゴット刑事は必死に眠っているヴィクトリアに呼びかけた。
直後、成人男性の体格をしたユダの血統が床に着地した。
ユダの血統は4対の昆虫に似た巨大な翅を閉じた。
更両肩から巨大な亜鋏状の鎌の付いた棘だらけの昆虫の脚を伸ばした。
やがて大きな仮面がパキッと二つに割れた。
続いて二つに割れた仮面の中からカマキリそっくりの
巨大な複眼の付いた灰色の逆三角形の頭部が現われた。
「カチュカチュカチュカチュカチュカチュ!」
ユダの血統は独特の鳴き声を上げた。
マーゴット刑事はユダの血統が
今までヴィクトリアに何をしていたのか滔々と悟った。
同時にジェレミー刑事の言葉を思い出した。
「基本昆虫は本能で動く捕食と繁殖は単純な生命維持の形さ!」と。
「ああ、そんな……このままじゃ……」
ユダの血統は透明な粘着質で
磔にされているヴィクトリアの元に静かに歩み寄った。
「ああ、信じられない!こんなの!
こんなの!正気じゃない!正気じゃないわ!」
マーゴット刑事は驚愕と恐怖に顔を歪めた。
更に酷い生理的苦痛も感じた。
それでも構わずユダの血統は徐々に
歩を進めてヴィクトリアに接近して行った。
「やめろ!やめろ!ヴィクトリアに近づくな!あっち行け!あっち行け!」
彼女は完全に身動きが出来ない状態のままどうにかユダの血統を
ヴィクトリアから引き離そうと何度も何度も絶叫した。
しかしユダの血統は彼女の絶叫を無視した。
そしてとうとう壁に磔になっているヴィクトリアの目の前に辿りついた。
「ああ、うそ。そんな……」
ユダの血統は大きな複眼でヴィクトリアの
スレンダーな身体をじっくりと眺めた。
やがてユダの血統は細長い下腹部をUの字型に折り曲げた。
続けて下腹部の先端の短い緑色の突起物が勢い良く伸びて、
彼女の膣を貫いた。
「ああああっ!はああっ!」
ヴィクトリアは強い快楽を感じたのか大きく喘いだ。
U字型に曲げられた下腹部の先端の
短い緑色の突起物は彼女の膣と繋がっていた。
それから精子の注入が始まった。
U字型に曲げられた下腹部から精子を汲み上げ、
膣内に注入、子宮内で放出。
次第にヴィクトリアは全身が熱くなって行くのを感じた。
同時にヴィクトリアの耳には
ユダの血統の胸部にある心臓の微かな博動を感じていた。
彼女の子宮に大量の精子が流出するにつれて、
ユダの血統の鼓動のリズムが加速した。
ゴンゴンゴンゴンから性的快楽に近い激しく狂乱したギャロップとなった。
やがて彼女の両頬と深い胸の谷間は徐々に紅潮して行った。
「ああっ!ああっ!ああっ!暑い!ああっ!ああっ!ああっ!はああっ!」
ヴィクトリアは青い瞳をうつろにし、口を大きく開けた。
ユダの血統は巨大な複眼で恍惚な表情を浮かべているヴィクトリアを見た。
ユダの血統はますます性的興奮に
駆られたのかあの独特の鳴き声を上げ続けた。
「カチュカチュカチュカチュカチュカチュ!カチュカチュカチュカチュ!」
ヴィクトリアは極めて速く呼吸しながら高い声で喘ぎ続けた。
その度に彼女の大きな丸い両乳房は
上下に大きく痙攣するように揺れ続けた。
「カチュカチュカチュカチュカチュカチュ!カチュカチュカチュカチュ!」
「気持ちいい!ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!はああん!」
次第に彼女の呼吸が速くなり荒々しくなって行った。
また彼女の大きな丸い両乳房は上下に大きく痙攣するように揺れ続けた。
そのヴィクトリアの様子をただただ
おろおろとした表情でマーゴット刑事は見ていた。
「カチュカチュカチュカチュカチュカチュ!カチュカチュカチュカチュ!」
「ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!
ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!」
ヴィクトリアの極めて速い呼吸と高い声の喘ぎ声は。
次第に荒々しい息遣いと甲高い喘ぎ声に変わって行った。
その度に彼女の大きな丸い両乳房は上下に
更に大きく荒々しく痙攣するように揺れ続けた。
全身から汗が吹き出し、彼女のスレンダーな身体を濡らした。
「カチュカチュカチュカチュカチュカチュ!カチュカチュカチュカチュ!」
「ああっ!んんんんっ!はああああん!
はあああああっ!はああん!あっ!はっ!」
ヴィクトリアはあっという間に性的興奮が絶頂に達した。
ユダの血統はヴィクトリアとの交尾を終えるとヴィクトリアから離れた。
同時に再び彼女は強靭な茶色の糸に絡められ、自分は全裸の状態で。
しかも十字架のイエス様の様に倉庫の壁に磔にされたままとなった。
それからユダの血統はギロリと大きな複眼で
マーゴット刑事の全裸の姿を見た。
彼女は小さく悲鳴を上げた。
 
ジェレミー刑事は一人、マーゴット刑事から渡されたメモを頼りに
パトカーでニューヨークの町中を走り回り、
目的の貸し倉庫に向かって走り続けた。
やがて沢山の大きな貸し倉庫が並んでいる一角に辿りついた。
ジェレミー刑事はその沢山並んでいる大きな貸し倉庫の扉に書かれている
番号とメモに書かれた貸し倉庫の番号を見比べながら、
目的の貸し倉庫を探した。
しかし幾ら探してもなかなか見つからなかった。
「畜生!何処だ!何処にあるんだ!」
彼は運転席で怒号を上げた。
それでもジェレミー刑事は彼女を助けたい一心で自分が持っている
パトカーで貸し倉庫がある敷地内をくまなく巡り続けた。
そして次々とパトカーで通り過ぎる貸し倉庫の扉に書かれている
番号とメモの番号を見比べ、根気よく探し続けた。
そして時間は無情にも過ぎて行き、既に3時間余りが経過していた。
「あった!見つけたぞ!」
ジェレミー刑事は大喜びした。
すぐさま、彼はパトカーを貸し倉庫の出入り口で止めた。
ジェレミー刑事はパトカーのドアを開け、降りると助手席に
置いていたモスバーグ500を拾い、右肩に担いだ。
そして目の前にある貸し倉庫の扉の前に堂々と歩み寄った。
「よし!OK!OK!」
彼は軽く自分の頬を叩き、気合を入れた。
そして貸し倉庫の扉の閂を外した。
続けて分厚い貸し倉庫の扉を全力で押し、開けた。
彼は貸し倉庫の中でおぞましい地獄の様な光景が広がるとも知らずに。
 
(第10章に続く)