(第5章)悪魔の覚醒

(第5章)悪魔の覚醒

 

僕は死んだ。心臓もあんなにでかい真っ赤な銃弾を撃ち込まれたんだ!!

もうこの世になんかいないだろ?んっ?おかしいな?まだ感覚が?

全身が痛いっ!痛っ!暑いし!ヒリヒリする!もしかして僕はまだ生きているんか?

やがて僕はハッと目を開けた。どうやらここは医務室のようだ。

そこは一般用の医療区画でこの先の奥にはHCFの産婦人科があるんだっけ!?

とっ!とにかく!僕は生きている??とにかくそれだけは確かだ!

僕は周囲の棚を見ると何十種類もの医療器具や薬の箱が並んでいた。

そして自分の腹部を見てみると白い包帯が巻かれて

既に止血剤の投与で止血されていた。

そこにアッシュ博士が現れた。

「やれやれ!君もとんだ災難に遭ったな!」

さらに周囲には医療室で働く看護婦や医師が現れ、ベッドの周りにある

点滴の空になった袋を薬と食塩水の入った袋に付け替えていた。

「僕は・・・・生きているんでしょうか?」

「勿論!生きているよ!それなりにね!でも!」

「でも!何ですか?」

「君の胸部に突き刺さったあの真っ赤に輝く弾丸だがあれは医療室に運ばれる頃には

液化してどうやら君の全細胞内に賢者の石として分裂して寄生してしまったようだ。

丁度ミトコンドリアのようにね。」

「はい?ミトコンドリアって?中学生で学びましたが・・・・・・・・・・」

アッシュ博士は一枚の写真を見せた。

「これは君の皮膚の細胞を拡大したものだ。」

僕が目を凝らしてよく見ると確かに自分の細胞内に元々のミトコンドリア

もう一つ真っ赤に輝くミトコンドリアそっくりの生物がいた。

まさか?こいつが?

「そう!魔女王ホラー・ルシファーの賢者の石だよ!!」

「こいつが!僕の全身の細胞に?」

「ああ!そうだ!どうやら心臓を中心に全身の細胞に寄生したんだ!

何故?あいつが君に同じ力を与えたのか?」

その時、僕はスーツとあの魔女王・ルシファーが消え去る直前に残した言葉が

急にパッと電気を付けたかのように思い出した。

『汝に試練を与えよう。我は明日。ストークスの魂と血肉を奪いに行く。

汝は我と同じ力を与えた。闘うがいい明日。そしてこの理不尽に抗い。

私を倒して見せよ!期待しているぞ!』と。

そして奴は楽しそうに笑って消えた。

僕は全身の痛みもヒリヒリとした暑さにも構わずガバッ!と素早く上半身を起こした。

僕は大きく呻いた。しかしそれでも構わず僕はアッシュ博士にこう言った。

「あいつは明日!またあのストークスのところに現れます!!

いってえっ!早く撃!攻撃の準備をしないと!!

彼女を守らなきゃ!守らなきゃ!あいつは!あいつは!

僕と戦えと言って来た!僕は奴と戦うんだ!」

僕は素早くベッドから飛び起きた。

しかしアッシュ博士は素早く僕の身体を押さえた。

「落ち着きたまえ!今は大怪我の傷の再生で体力を

かなり消耗している!まだレッドゾーンだ!」

アッシュ博士は僕にある機械を見せた。

確かに僕の心電図の色は赤色をしていた。

つまりかなりの重傷だった。時間が掛かるらしい。

「戦うに何にしろ、まずは体力を回復させてからだ!

そんな体力ではあっと言う間に殺されるぞ!」

僕はアッシュ博士の言う事はごもっともだと思った。

でも、それが頭の中で分かっていてもどうしても落ち着いていられなかった。

大切な恋人が人食いの化け物に食い物として狙われている!!

この事実が今は僕の頭の中を占めていた。

なんとかして!あいつを撃退させないと!

彼女を守らないと!守り抜かないと!

やっと彼女に笑顔が戻ったんだ!絶対!絶対!守って見せる!

いや!守らなくちゃいけないんだ!

僕は何度も自分の心に言い聞かせ続けた。

それから僕の体力は何と賢者の石の力によって僅か30分程で

急速に回復し、赤色、黄色、オレンジ色、そして緑色にまで回復した。

しかもしかもである。胸部の巨大な傷も巨大な十字傷の跡を残して

完全に心臓も肺も皮膚組織も全て元通りに再生していた。

アッシュ博士や医師達は僅か30分で元気になった僕の生命力に驚きつつも。

ようやく僕は点滴を全て外されて自由の身になった。

そして自由の身になったところでまたTシャツと新しい防弾チョッキを着ている最中、

僕の父親のブレスと母親のアンヘラが分厚い自動扉が開いたと同時に入って来た。

父親のブレス・マドセンはアメリカ人で黒色の艶のあるオールバック。

広いでこにっても薄い眉毛。高い鼻に茶色の瞳。

とてもがっしりとした強面の男である。

母親のアンヘラ・マドセンはスペイン人で茶色の

艶のあるツインテールの髪を胸元まで伸ばしていた。

キリッとした細長い眉毛。高い鼻。茶色の瞳。

形の整った美しい顔立ちにピンク色の唇。

美しい白い歯。白いタンクトップに白衣を着ていた。

またセクシーで良く研究所内のプールで水着を着て泳いでいた。

勿論、男性職員や研究員からの支持を多い。

そしてアンヘラは僕の顔を見るとホッと息を吐いた。

父親のブレスはいつもの掠れた声で僕に優しく語りかけた。

「怪我はもう大丈夫なのか?」

「大怪我だって聞いたけれど元気そうね!」

「ああ、まあーね。どうにかこうにか生きているよ!」

僕は両親をこれ以上心配させまいと精一杯元気良くそう返事をしてニッコリと笑った。

続けて左拳を突き上げた。

どうやら両親も僕の仕草に安心したようだ。

そして僕はまだ何も知らない母親の為に今の事情と数時間前に

魔女王ホラー・ルシファーと何があったのか詳しく説明した。

魔女王ホラー・ルシファーはストークスの魂と血肉を狙っている事を伝えた。

そして自分は奴に力を与えられたのだと。その奴が与えた力を利用して僕は

奴からストークスを命懸けで守らないといけない事も伝えた。

すると母親のアンヘラは魔女王ホラー・ルシファーと命懸けで戦う事に

当然ながら大反対をした。勿論、父親のブレスも大反対した。

「ダメよ!駄目!絶対にダメッ!!」

「そうだぞ!ただでさえこんな大怪我を負わせられたんだ!」

しかし僕はストークスを守りたい一心でこう反論した。

「あいつに通常武器は通用しない!ハンドガンの弾丸を10発!

あいつに撃ち込んだけれど!ピンピンしていた!」

「だからと言って!あいつの力がお前にあったとしてもだ!!」

「同じ力を持っているからと言って勝てる保証なんかないのよ!」

「いや!勝ちたいんだ!勝てると言う問題じゃなくて!」

「ダメだっ!絶対駄目だ!相手がどんな奴かも知ら‥‥」

「それでも僕はストークスを守る為にやりたいんだ!」

ブレスの怒鳴り声に反抗して僕も更に声を荒げた。

両親と僕は長い間、口を堅く閉じていて黙っていた。

そして僕と両親は真剣な目でお互いみつめ合っていた。

結局、両親を心配させてしまった。

そんな申し訳ない思いに駆られながらもストークスを守る為に

自分の出来る事をただしたかった。僕の本当の想いはたったそれだけだった。

「ダメだ!絶対に認めんぞ!まだ子供なんだ!」

「僕はまだまだ子供でもやるっと言ったらやるんだ!」

ブレスの反論に僕はまだ全力で抵抗した。

何度も両親に反対されても僕の思いは決して変わらなかったし。

絶対に自分の言葉を曲げたりしなかった。

とうとう父親のブレスも母親のアンヘラもこれ以上、息子のエアの

『ストークスを守りたい』と言う強い意志と想いに心が折れた。

こうして僕の両親は渋々、僕の戦いを認めたのだった。

 

(第6章に続く)