(第1章)ある少女の全ての悲劇の始まり。

BIOHAZARD BIOOBY ROSE(バイオハザードブラッディローズ)

MICHAEL(ミカエル)

 

(第1章)ある少女の全ての悲劇の始まり。

 

『R型暴走事件』から約一ケ月後。ニューヨーク市内のチェルシー地区。

ジル・バレンタインは夕方頃BSAA北米支部の事務勤務を終えて、

娘のアリス・トリニティ・バレンタインと

息子のシェーシャ・バレンタインのいる自宅へ

帰ろうとしていた。ジルは家近くの公園を通っていた。

何故かは分からないが気分で近道をしようと思っていたのだ。

その時、ふと立ち止まり、脳裏にふと突然、自分の精神世界。

つまり内なる魔界から急に姿を消した魔女王ルシファーを思い出した。

どうやら魔女王ホラー・ルシファーは自分が目標にしていた

人間の肉体と魂を憑依して手に入れる為にここを去ったらしい。

さらに自分の精神世界、つまり内なる魔界に残っていた魔神ヴィシュヌによると

あの黒い縞模様の緑の異形の戦士アンノウンの魔獣装甲が残っていたそうだ。

しかもどこまでが天井で、何処までか壁で、どこまでが床かどうか分からない

上下左右が混沌とした真っ赤な空間は相変わらず残っていた。

ジルはふと青いジャージの右胸のポケットからスマートフォン

取り出して電源を付けた。

そしてネットのニュースを指でタップして検索した。

やがてスマートフォンの画面にあるニュース記事が表示された。

ニュース記事は数年前にエジプトの首都のカイロで発見された石碑の

『ジェルリック神話』の一部分の文章が消えて新しい文章が

浮かぶ怪奇現象が起こった事が報道されていた。

ネットニュースの記事によるとー。ジェルリック神話の一部の文章である

『昼にはルキフェルがストークスと言う人間の女性に姿を変えて』のくだりの文章が

突然、ゆっくりと時間をかけて薄くなって行き、やがて消失してしまったと言う。

しかしそれらは直ぐに『昼にはルキフェルがアンヘラと言う人間の女性の姿を変えて』

と言う新しく書き替えられた文章がまたゆっくりと時間をかけて

浮かび上がり、現れたと言う。またその様子は実際に現場にいた

研究員が自分のスマートフォンのカメラで録画したらしい。

そしてその録画された怪奇現象はネットのニュース記事やその他のネット動画や

SNSにアップされて既に広く拡散され、不特定多数の人々に知らされていた。

ジルはその動画を再生して、観たあとまたスマートフォン

青い服の右胸のポケットに仕舞った。

「まさか?アンへラって名前の女性がストークスって

女性の運命を変えたのかしら?まさか魔女王ルシファーが??」

ジルは自分の頭の中でしばらく考え事をしていた。

それから何分か思考を巡らせた後、ジルは家に帰ろうと

また公園の入り口の方に一歩右足を踏み出した。

次の瞬間、満天の星空の空高くから大きな火の玉が超高速で公園の砂場に落下した。

ズドオオオオオン!と言う凄まじくも大きな落下音と

同時に真っ赤に輝く円形の衝撃波が

周囲に広がり、落下地点から大量の砂が舞い上がり、巨大な柱となって

空高く昇って行った。ジルは驚き、両手で顔を覆って慌てて後退した。

やがて落下地点の大量の砂の柱は消えて、土埃もゆっくりと消えた。

落下地点には大きなクレーターが出来ていた。

そしてクレーターの中心には一人の青年が座り込んでいた。

青年は頭を地面に向け、両腕をX字型に組んでいた。

しかも両腕を曲げ、そのまま座り込んでいた。

間も無くして青年は両腕を伸ばしゆっくりと立ち上がった。

続けてX字型に組んだ両腕をゆっくりと解いた。

やがて頭を持ち上げた。その青年は真っ赤に輝く瞳でジルをしっかりと見据えた。

ジルはその青年の真っ赤に輝く瞳から強い眼差しを感じた。

まるで鋭利なナイフで身体を貫かれるような強烈な殺気だった。

しかも青年の全身からは自分の全身の細胞に寄生している

あの賢者の石の力と存在を感じた。しかも青年の魂は人間のままだった。

つまり賢者の石の力を持つ人間だ。自分と同じ存在。間違いなさそうだ。

青年は胸元まで伸びた真っ赤に輝くサラサラの髪はポニーテールの髪型をしていた。

キリッとした太く長い真っ赤に輝く眉毛。高い鼻。真っ赤に輝く瞳。

真っ黒な鎧のような戦闘服に身を包んでいた。

両頬には真っ赤に輝く天秤の模様があった。

背中から真っ赤に輝く巨大な無数の剣が集合して出来た鳥の翼が2対生えていた。

「また?天使?じゃなさそうだけど?」

ジルはどこか大天使に似た姿に戸惑っていた。

青年は真っ黒な装甲に覆われたしなやかな細身の両腕を広げた。

続けて口を大きく開け、まるで獣のように吠えた。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

同時に胸部の中央からバリっと音を立てて真っ赤に輝く両刃の長剣が現れた。

青年は右手で剣の柄部分を掴むと瞬時に引き抜いた。

青年は真っ赤に輝く両刃の長剣の鋭利な先端をジルの鼻先突きつけた。

しかもジルがよく見ると真っ赤に輝く両刃の長剣は微かに

ドクンドクンドクンと脈打つように動いていた。

この瞬間、ジルは直感した。あの真っ赤に輝く両刃の長剣は間違い無く

心臓の筋肉組織から賢者の石の力を使って生成したものだと。

青年は心臓の筋肉組織から生成した両刃の長剣の鋭利な先端をジルの鼻先に

突きつけたまま静かに口を開き、ゆっくりとしゃべり始めた。

「あんたが!ジル・バレンタインか!?あんたが魔女王ルシファーを産み出した!

あんたが!あいつを野放しにしたんだな!!」

ジルは明らかに青年の怒りが籠った叫び声を黙って聞いていた。

しばらくの沈黙の後、ゆっくりと口を開き、ジルは答えた。

「私は産み出した訳じゃない。でも魔女王ルシファーは確かに私の精神世界、

えーと内なる魔界にいたわ。でも私は野に話した訳じゃないわ!あいつの方が……。」

「嘘だああっ!あんたが勝手に野に放したんだろ?そのせいで!そのせいで!

俺の恋人は襲われかけて!!しかも俺の母親は俺と俺の恋人を守る為に

あいつに魂を喰われて!肉体を乗っ取られたんだぞ!

そうなったのも!あんたのせいだ!」

青年は両手で真っ赤に輝く両刃の長剣を構えた。

ジルは素早く後退して一気に距離を取った。

「殺してやる!殺してやる!母の憎き敵!悪魔の女め!

さあ―罪を僕の母を奪った罪を死をもって償いやがれえええっ!」

男はドオン!と地面を両足で踏みしめて、高速でジルに向かって一直線に駆けた。

男は両手で真っ赤に輝く両刃の長剣を鋭利な先端はジルの心臓のある胸部の中央に

向けられていた。胸部に両刃の長剣の刃が10cm近くまで迫った。

その瞬間、突然、天空から金色に輝くに熱りたつ雷光が高速で振って来た。

それは男の頭上に直撃した。「ぐうわあああっ!」と男が声を上げた。

男は全身が感電して痺れてしまい大きく身体が右側に

ズレてバランスを崩し掛け、足元がふらついた。

ジルはその隙を逃さず高速で走り出した。

更にジルは身体をくの字に曲げて、姿勢を低くした。

ジルは両手で青年の黒い装甲に覆われた胴体を掴むとそのまま腰を右側に

半回転させて一気に青年を公園の地面に向かって投げ飛ばした。

男はそのまま右側に身体を高速で半回転させながら公園の地面に叩き付けられた。

硬い地面は衝撃で蜘蛛の巣状にヒビが入った。青年は仰向けに倒れた。

その時、天空に両腕が金色の鳥の翼を持つ人間の女性らしき人影が視界に入った。

青年は直感的にこう呟いた後、大声で喚いた。

「ママ?イナンナ?どうして……どうしてだよ!何で!」

すかさずジルは大声で喚く青年の腹の上に馬乗りになった。

そして腰に付けたポーチから一本の注射器を取り出した。

青年は「くそっ!このおっ!このおおおっ!」と絶叫した。

同時に男の絶叫に呼応するかのように背中から伸びた真っ赤に輝く

無数の剣が集合して出来た2対の翼が跳ね戸のように勢いよくまるで

トラバサミのように地面に持ち上がった。

そして真っ赤に輝く2対の翼の無数の剣の鋭利な

先端がジルの両首や両腕に向かって高速で接近した。

その間に今度は青年の脳裏にまるで鳥の鳴き声のような鋭い女の声が響いた。

「やめなさい!エア!!」と。エアと呼ばれた青年は戸惑い激しく動揺した。

そして青年の真っ赤に輝く2対の無数の剣の鋭利な先端は

ジルの両首と両腕と胴体、僅か1mmのところで停止した。

その隙を突いてジルは手に持っていた注射器の細長い針を

青年の首筋の頸動脈に向かってブスリと突き刺した。

ジルは指で注射器のピストンを押して中の薬を投与した。

やがて真っ赤に輝く無数の剣が集合して出来た2つの翼と真っ赤に輝く

両刃の長剣は真っ赤な霧となってあっと言う間に消失した。

更に青年の両頬から真っ赤に輝く天秤の模様も消えた。

真っ赤に輝くサラサラの髪は美しい金髪に戻った。

キリッとした細長い真っ赤な眉毛も金髪の眉毛に戻った。

真っ赤に輝く瞳も茶色の瞳に戻った。

「ママ!どうして!!あともうすぐで敵を取れたのに!どうして!」

青年が動揺している中、ジルは淡々とこう説明した。

「残念だけど。これは始祖ウィルスの源の賢者の石の力を抑制する特殊な薬なの。

効果は今ここで投与してから28時間、賢者の石の力も全く使えなくなるわ!!」

青年は苦々しく悔しさに満ちた表情で唇を噛んだ。

「仕方無いな・・・・これもままの望みなら!もう!諦めるか・・・・」

「そう!それはよかった!貴方?名前は?」

ジルが青年に尋ねると男はこう答えた。

「ミカエル・プレストン」と。

ジルは立ち上がり、天空を見た。

そしてミカエルと言う青年が見た人影は既に消え失せていた。

「ミカエル・プレストンね。まあーいいわ。それで?どうして私の命を狙ったの?

私の元を去った魔女王ホラー・ルシファーは一体?貴方達家族に何をしたの?

とりあえず話してくれる?」

ジルは真剣な表情をして青い瞳でミカエル・プレストンと名乗る青年の美しい

顔を見た。しばらくしてミカエルと名乗った青年はゆっくりと

口を開いて、動かし、身の上話から順に話し始めた。

 

(第2章に続く)