(第19章)ストークスが殺処分される理由

(第19章)ストークスが殺処分される理由

 

「何があっても何が起こっても決してそれだけは忘れないで!」

魔人フランドールは今までにない程の真剣な表情でエアにそう言った。

するとエアは静かに口を開きこう言った。

「ああ!理解したよ!決して忘れないようにするよ!」

そう言うとエアは笑って見せた。すると魔人フランドールも

温和な表情になり、ホッと息を吐いて優しく微笑んだ。

魔人フランドールは『何故?エアの恋人のストークスが

HCF上層部の命令で殺処分される事になった理由をようやく口を開き、説明した。

「貴方の恋人ストークスがHCF上層部の命令で

『殺処分』されるのか原因はこれよ!!」

魔人フランドールは何処からか隠し持っていた

ニューヨークタイムズ新聞をエアに見せた。

エアはそのニューヨークタイムズ紙の記事を読んだ。

『反メディア団体ケリヴァー!!

グローバルメディア企業の極秘情報を手に入れる!!』

という見出しに続いて次の記事の内容が書かれていた。

「反メディア団体のケリヴァーのメンバーの一人であるハッカー

グローバルメディア企業のデータベースに違法で侵入した際に

違法に軍用AI(人工知能)を搭載した人間兵器を開発していたとする物的証拠を

掴んだとしてそれを反メディア団体ケリヴァのビラやチラシにて世間に公開した。

反メディア団体ケリヴァーの代表の若村氏は『AI(人工知能)は

いずれは人類を破滅させるものだ!!AI(人工知能)による戦争を防ぐ為には

テレビやゲーム、ビデオ、スマートフォン、パソコン、ネットのあらゆるメディア

をこの世から消し去らなければならない!!AI(人工知能)も

いずれはこの世から消し去る!そうしなければ人類は救えない!!』と記者に話した。

「人間兵士ってストークスの事??」

「恐らくそうでしょうね!連中はこの事実を世間に公表した。

だからグローバルメディア企業は『AI(人工知能

を搭載した人間兵士のストークス』を反メディア団体ケリヴァーに

発見される前に始末しようとHCF上層部に働きかけていたの。

もっとも今はHCF側は『殺処分』は見送りにしているようだけど!

貴方の働きかけでしょ?」

「ああ!そうだ!成程!反メディア団体ケリヴァーが原因か?そうか!

あいつらのせいでストークスは死にかけているんだな!!」

彼は反メディア企業に対してやり場の無い怒りが沸々とまた湧き上がるのを感じた。

「本当に迷惑な連中なのよ!過去に幼稚園児に対する暴言と暴力を振って、

幼稚園に無断侵入したり、聖ミカエル病院にデモ行進して救急車の搬送が遅れて

何人かの患者が死にかけたり、極めつけは彼は米政府の民主党下院多数党幹事の

フランシス・スぺイシーに『出馬を取り止め!軍用AI(人工知能)を創り出し!

世界中の人々を洗脳しようとしている罪を認めろ!フランク!』とか。

『メディアの悪魔フランシス』『メディアの権力者は消えろ!フランシス!』とか。

ネット上のSNSで大量に投稿して、彼の予備大統領選挙を妨害していたの!

それと連中はグローバルメディア企業の極秘研究施設に無断で潜入して

軍用AI(人工知能)の詳細な情報を知り、更にその軍用AI(人工知能

の研究開発に利用された資金源が米政府の民主党多数幹事のフランク氏から

提供された事も突き止めたの。その時にストークスのことも突き止めていたわよ。

そして軍用AI(人工知能)の情報を自分のチラシや張り紙で世間に公表して。

政府もフランク氏も軍用AI(人工知能)の存在を否定していたし。

グローバルメディア企業も軍用AI(人工知能)は開発していないと否定しているわ。

連中から自身の会社を守る為に軍用AI(人工知能)が搭載されたストークスを

どうにかしようとHCFに執拗に殺処分を要求していたのよ。」

「それが・・・・・理由なのか!くっそっ!そんな自分勝手な連中のせいで!!

トークスの命が狙われるなんて・・・・・・・・・」

「そうよ!でも連中は軍用AI(人工知能)をHCFに殺処分させて

脳内から回収させるつもりだったけれど・・・・・。

あれは全部嘘よ!軍用AI(人工知能)ごと彼女を始末する気なのは既に

HCF上層部をスパイして分かった事だから!」

「じゃ!反メディア団体ケリヴァーが消えれば!彼女も助かるんだ!」

「まあーそうなるわね!でも!それよりも!

まずは魔女王ホラー・ルシファーから彼女を守るのが先決じゃないかしら?」

「そっ!そうだね!まずは魔女王ホラー・ルシファー!

次は反メディア団体ケリヴァーから僕は彼女を守って見せる!!」

そうエア・マドセンは決意を新たにした。

すると魔人フランドールはにっこりと笑った。

やがて魔人フランドールは何処からか緊急スプレーをエアに向かって投げ渡した。

エアは緊急スプレーを受け取り茫然とした表情で魔人フランドールをみた。

「これはさっき必死に頑張ったご褒美よ!!」

魔人フランドールは赤い瞳をキラキラと輝かせた。

エアは緊急スプレーの缶のラベルを見ると花丸が何重に書いてあった。

その傍に『たいへんよくできました』と書いてあった。

エアはありがたくその緊急スプレーを使った。

普通使って空になったら捨ててしまうが彼は捨てられず結局、

黒い服の中のポケットの中に大切にしまった。

「さて!こんな場所から戻りましょうか!!

私の教育係の役目を終わった事だし!!そろそろ帰らないと!!」

魔人フランドールはオレンジ色の天井に巨大な四角い真っ赤な結界を形成した。

やがてエアの目の前が真っ赤な光に包まれた。

エアは眩しくて両手で顔を覆った。間も無くしてエアが静かに目を開けるとそこは

四角いルービックキューブの異空間でもない、元のHCFセヴァストポリ研究所の

トークスの隔離部屋に続く一本道に戻っていた。

そして自分の背後にいる魔人フランドールに目を向けた。

魔人フランドールは「じゃーね!頑張ってね!」とだけ言った。

魔人フランドールの姿はあっという間にエアの視界から姿を消した。

それから30分後。急にいなくなった僕を心配したのだろう。

目の前にエアの母親のアンヘラ・マドセンが現れた。

アンヘラはエアの姿を見つけると心底ほっとした表情で胸を撫で下ろしていた。

「ああ!よかった!マッドや保安部隊のみんなやブレス保安部長が

無線で急に連絡が取れなくなったって言うから!

ダニア博士とアポロと協力して貴方を必死に探していたのよ!!

よかった!!見つかって!!」

アンヘラは直ぐに無線で父親のブレス保安部長と

ダニア博士に彼が見つかった事を報告した。

それからアンヘラは「一体?何処にいたの?」とエアに尋ねた。

エアはさっきのオレンジ色のルービックキューブの空間内で魔人フランドールなる

存在に出会った事。そしてストークスをHCF上層部が『殺処分』したがる理由が

全て反メディア団体ケリヴァーの無責任で自分勝手な行動で

グローバルメディア企業やアメリカ政府の米民主下院多数党幹事の

フランシスの周辺を嗅ぎ回り、ストークスの存在や軍用AI(人工知能

の存在が世間に公にされつつある事も全て詳しく分かりやすく説明した。

アンヘラはようやくHCF上層部が何故ストークスを処分したがるのか

謎が解けた事によってもしかしたら?HCF上層部に反メディア団体ケリヴァーを

どうにかすればストークスの命が助かるのでは?と考えた。

しかしその代わりに『殺処分』されるのがストークスでは無く

反メディア団体ケリヴァーの若村やメンバー達になるのだが。

別にそれでも構わないでしょ?だって!あいつらは自己満足に浸る為だけに

周りの人達に多大な迷惑をかけている。自分達の価値観を他人に押し付けて。

他人の大事な物や時間を奪い取ってヘラヘラ笑っているだけ。

そんな奴らをのさばらせたって良い事は何一つない。

母親アンヘラは普段はエアに見せないような何処か邪悪で口元を緩ませ微かに笑った。

そう!ストークスじゃなくてあいつらが殺処分されてしまえばいい!

丁度、HCFに件の米民主党多数党内幹事と名乗る男が大統領予備選挙

執拗に邪魔する反メディア団体ケリヴァーを

排除して欲しいという依頼をされていたし。

HCF上層部もそれをOKしている。反メディア団体ケリヴァーは

仮想国のバイオテロリスト。そういう風にすればいいのよ!

既に『R型』の実戦シュミレーションとE型特異菌を持つエヴリンの

事故原因を検証する被検体としての初期案があるから。

それを私が上層部に更に提案して確実に実行させられればいいわ。

そして何が何でも反メディア団体ケリヴァーは100%確実に潰せばいいのよ!

それからアンヘラはエアに丁寧にこう説明した。

「教えてくれてありがとう!!これでストークスを救う方法を思いついたわ!

いい!あの反メディア団体ケリヴァーを完全に潰すのよ!

そして若村も他のメンバーをバイオテロリストとして子供を虐待した

容疑で捕まって確実に社会から抹殺するのよ!

勿論ウィルス兵器とBOW(生物兵器)でメンバーを殺してね!

今最高のアイディアを思いついたわ!!

最近話題になっているあのクレーマー・タックって言う殺人鬼も利用しましょう!

私がそいつを探し出して協力してくれるように交渉してみるわ!」

 

(第20章に続く)