(第38章)腹ただしい決着

(第38章)腹ただしい決着

 

魔人フランドールはエレベーターに乗せていた反メディア団体の

ケリヴァーのメンバーの茶髪の若い女性をエアの目の前に置いた。

更に盗まれた『新型T-エリクサー(仮)(E型特異菌遺伝子有り)』

のウィルスとワクチンの入ったジェネラルケースを置いた。

「こいつは盗んだ物とそれを盗もうとした反メディア団体ケリヴァーの女。

どうやら彼女が最後の一人みたい。もう彼女が盗み出した物は私が取り戻したわよ!」

魔人フランドールは『新型T-エリクサー(仮)(E型特異菌遺伝子有り)』

のウィルスとワクチンの入ったジェネラルケースを指さした。

エアは頭を俯いたままはっきりとした悲し気な口調で声を振り絞るように答えた。

「分かった!ここは我々HCFが。引きつ継ぐよ・・・・・・・」と。

「よし!これであんたを魔獣新生多神連合本部まで要人案内してこれであたしの

仕事はおしまいね!行くわよ!もうここに長居は無用よ。さっさとここを去るわよ!」

魔人フランドールは明るくそう言った。

魔女王ホラー・ルシファーは彼女の隣に立った。

やがて魔人フランドールとも魔女王ホラー・ルシファーとは

全く違う声が広場に響いた。しかもその声は自分と同じ位の歳の少年の声だった。

やがて魔人フランドールと魔女王ホラー・ルシファーの足元に

巨大な紫色に輝くひし形の空間の時空の歪みが現れた。

「我は自ら太古の昔から餌としてしか認識出来ない程、ひ弱な汝ら人間達が

魔戒騎士と魔戒法師の助力も無しに自らの肉体と精神を駆使して何処まで

我らが外神ホラー達。例えば我、魔女王ホラー・ルシファーの抗えるのかが

知りたかった。我は汝らの精神と強い意志に挑戦したかった。今回は私の勝ち。

しかしいずれはエア・マドセン!我ら外神ホラー達を打ち負かす日が来るやも知れぬ。

それまで楽しみにしておる!!またいずれ闘おうぞ!」と

魔女王ホラー・ルシファーは最後の言葉を述べた。

しかし魔人フランドールは何もしゃべらなかった。

またさっきの自分と同じ位の歳の少年が明るくしゃべった。

「はーい!出発します!行き先は魔獣新生多神連合本部!!」

やがて魔女王ホラー・ルシファーと魔人フランドールはあっという間に

紫色に輝くひし形の時空の歪みに飲み込まれるように姿を消した。

それと同時に魔女王ホラー・ルシファーと魔人フランドールの気配は完全に消えた。

そして広場内の賢者の石の反応も消えた。同時に分厚い何百もの板に重ねられ、

厳重にロックされた巨大な分厚い扉が左右に開いた。

どうやら父親のブレス保安部長のIDで開いたようだ。

そして広場に保安部隊が一斉に突入した。

「おい!エア!エア!エア!しっかりしろ!」

昆虫に似たガスマスクの付けたマッドが必死にエアに話しかけていた。

そして他の保安部隊の隊員も次々と俺の目の前に集まって来た。

まずはガスマスクのレンズの奥からグーフィとウースの顔が見えた。

あとは保安部隊隊長のブレス保安部長の顔も見えた。

エアは必死に魚のように口をパクパク開閉させた。

彼は父親であるブレスに何か伝えようとした。

しかし目の前で母親を失ったショックのせいなのか何を言おうか分からなくなった。

ただ悲しみと悔しさのせいで頭がもみくちゃになり、しかも現実すら

まともに受け入れなくなった。

頭はぐしゃぐしゃで何が現実で空想か分からなくなった。

今ここはどこだ??ああっ!ママッ!ママッ!うわああああああああああっ!!

 

数時間後。何らかの精神ショックのせいで失神したエアを医務室へ

運び出す為にアッシュ博士率いる医療チームが駆け付けた。

そしてすぐさまタンカーに乗せられて医務室へ運ばれた。

続けて医療チームはエレベーターの中で失神していた

最後の一人である反メディア団体ケリヴァーのスパイの茶髪の日本人女性を捕まえた。

勿論、彼女が盗んだ『新型T-エリクサー(仮)(E型特異菌遺伝子有り)』の

ウィルスやワクチンサンプルの入った銀色のジェネラルケースは無事確保回収された。

更にウィルス検査によってどういう訳かストークスが持っていた

ウィルス抗体が大量に投与されている事が判明した。

ちなみにワクチンを投与した訳では無く、そのままウィルス抗体が血管内に

存在する事からアッシュ博士は茶髪の日本人女性を診察した後、こう指示した。

「この女には『新型T-エリクサー(仮)(E型特異菌遺伝子有り)』

のウィルス耐性がある!!例の『第一次・第二次世代・水虎計画』に利用しよう!」

他の医療メンバーも「了解」と答えた。

それから医療チームは彼女を大きな長四角のタンカーの上に仰向けに乗せた。

茶髪の日本人女性は不意に瞼を開けた。

次の瞬間、何が起こっているのか分からずパニック状態になってジタバタ暴れ始めた。

しかしすぐ筋肉質のガタイの良い体格の男と

大柄な男性数名で一斉に取り押さえられた。

さらに残りの一名の医療スタッフもアッシュ博士は

直ぐにタンカーに取り付けられている黒いベルトで胸部と腹部を固く縛られた。

その際に両腕も脚も胴体に密着させて完全に固定させた。

その際、首を左右に振り回して何かを絶叫して喚き散らす事しか出来なくなった。

しかしすぐにアッシュ博士が強力な鎮静剤を投与したので直ぐに眠り出した。

こうしてようやく周りは静かになった。そしてこの茶髪の日本人女性を乗せた

タンカーは広場の中央に向かって黒い車輪をカラカラと鳴らして進み始めた。

そしてアッシュ博士は失神した金髪の運び先をこう指示した。

「この若い女性はBOW(生物兵器)及びウィルス兵器開発中央実験室の

タイラント製造技術開発実験室』へ移送するんだ!もたもたするな!」

「へーい」と医療チームの職員達は眠りについた金髪の

若い女性が拘束された白いタンカーを押してアッシュ博士が指示した

タイラント製造技術開発実験室』へ移送した。

グーフィは広場の中央を調査していた。それからブレス保安部長にこう報告した。

「どうやらこの中央のコールドスリープ(冷凍冬眠)

カプセルが作動した形跡があります!ほら!ここ!」

とグーフィは中央の床が開いて擦れた僅かな傷跡を指さした。

「よし!ウォルト!個のコールドスリープ(冷凍冬眠)カプセルの

ロックを解除して開くんだ!中にストークスがいたら外へ出してやるぞ!」

「了解!ブレス保安部長!直ちに始めます!」

グーフィ事、ウォルトは直ぐに実験用の広場にある鉄壁の真下にある

さらに小さなパネルにパスワードを入力し、パネルの更に下のレバーを下へ引いた。

すると広場の中央の床が開き、中からプシューと言う

空気を抜くような音と共に起動中のコールドスリープ(冷凍冬眠)カプセルが現れた。

中には白い霧の中にストークスらしき女性の姿が見えた。

しかも全裸のようで青っぽく白い肌は美しかった。

「直ぐに救出だ!羽毛を寄こせ!グーフィ!開けろ!」

アッシュ博士の号令に「はい!分かりました!先生!」と言うなり

コールドスリープ(冷凍冬眠)カプセルの横にあるボタンを押した。

するとプシューと音を立ててカプセルの強化ガラスが開いた。

すかさずアッシュ博士とブレス保安部長が冷たくなって倒れて来る

トークスの身体を両手で受け止めた。そしてすぐに用意した

タンカーに仰向けに寝かせた。続けてマッドは白い暖かい羽毛を

トークスの身体にかけた。「よし!彼女を『冷凍覚醒処置室』へ急ぐんだ!

直ぐ近くにある!!そこで彼女を温めて元の体温に

戻して目覚めさせる!まだ休眠中だ!急げ!」

アッシュ博士の指示を受けた医療チームの職員達は大急ぎでストークスを

『冷凍覚醒処置室』へと運んで行った。

「さてと!アンヘラの姿は見当たらないが・・・・」

アッシュ博士はきょろきょろと広場を見渡していた。

すると急にブレス保安部長は顔をみるみると真っ青にした。

「おいっ!おいっ!アンヘラ!アンヘラ!どこだ??まっ!まさか?!おい!おい!」

ブレス保安部長はそうやってゾンビのようにフラフラと広場内を

さ迷い歩くようにあっちこっち移動し続けた。

不審に思ったアッシュ博士は直ぐにブレス保安部長に話しかけた。

「おい!どうしたんだ?一体?どうしたって言うんだ?ブレス保安部長!!」

ブレス保安部長は顔面蒼白になりながらも震える声でこう返した。

「AI(人工知能)アポロが俺達が付けているGPS機能の付いたカフスボタンから。

うちの。うちの妻の生体反応が消えちまったんだって!!消えちまったんだよ!!

生命が消えちまったんだよ!ここにいるのはGPS機能でAI(人工知能)アポロが

特定してくれた!でも!それから僅か一分で妻の生体反応が消えちまったんだ!

どうしてだ??妻の身に何があったんだ!!一体?一体?何処に?

俺の妻の身体は何処に消えちまったんだ??クソっ!クソっ!」

「ブレス保安部長!!・・・・マジか・・・・これ?カフスボタンですよね?」

「う。そ。だろ?裏は別人の名前であってくれ!マッド!頼む!」

ブレス保安部長に促されてカフスボタンの裏を見た。

カフスボタンの円形の周囲に「アンヘラ・マドセン」と書かれていた。

更にグーフィは別の金属の床にあの心電図計が落ちているのを見つけた。

既に心電図計は機能を停止していた。

 

(第39章に続く)