(第27章)ポルターガイスト(前編)

(第27章)ポルターガイスト(前編)

 

『ウィルス兵器遺伝子改良実験室』の実験内の四角い研究所の

隅っこに現れた2人の黒い影はあるドアの前にじっと立っていた。

やがてそれ1人と2人と増え始めた。更にもう3人、4人と増え始めた。

そこは研究主任ダニア・カルコザ博士の指示で新型T-エリクサー(仮)

(E型特異菌遺伝子有り)のTウィルスの他に含まれているGウィルス変異株

の影響を抑える為にこのウィルスに感染した『プラントE46-43』

の苗木畑が厳重なロックの扉の中の奥の隔離部屋に保存されていた。

つまり要はこの『プラントE46-43』の苗木から採取した植物細胞から注出した

『新型T-エリクサー(仮)(E型特異菌遺伝子有り)』ウィルスをサンプルにGウィルス変異株の異常な繁殖能力を誘発する遺伝子を改良しようとあれこれ、

ウィルス学者や生物学者、遺伝子学者のHCFの研究員達が協力して遺伝子操作による

改良を試行錯誤繰り返し重ねながらもなかなか良い方法は得られず

既に暗礁に乗り上げられていた。そして4人の黒い影は白い目で

『プラントE46-23』の苗木畑が保存されている厳重な

ロックの扉をただじっと見つめていた。

しかし突然、黒い人影の一体が笑い出した。

「フフフフフフフフフッ!フフフフフフフフフッ!フフフフフフッ!!」

この笑い声はさっきから見ていた桜谷萌博士にも聞こえていた。

しばらくして何人かの男女の研究員も集まって来た。

「さっきの笑い声は何ですか??」と短い茶髪の男が

ウィルス兵器遺伝子改良実験室研究主任の桜谷萌博士に尋ねた。

しかし桜谷萌主任が何かを応えようとした時。茶髪のツインテール

キリッとした茶色の眉毛に丸っこい高い鼻にそこそこ大きな丸い両胸の

クリスティンと言う名前の研究員が茶色の瞳で黒い影がなんと厳重なロックに

手も触れずに全てのロックを解除してしまうのを目撃してしまった。

それから黒い人影達は「フフフッ!」「アハハハハハッ!」「キャハハアッ!」

と楽しそうに笑い、その隔離部屋へ入って行った。

「おいおい!何だありゃっ?」

「まっ!まさか?あの前からの噂のゆっ!ゆゆゆゆ幽霊??」

「落ち着きなさい!幽霊なんてこの世にいるわけないでしょ??」

怯えたり、完全に動揺している男性研究員のダニエルと

女性研究員のクリスティンに萌博士はそう自信たっぷりに言った。

「幽霊はそもそも科学的に証明されているのよ!大体!あれが何よ!

きっとシステムのエラーか何かよ!きっとそうよ!でも困ったわね!

あれじゃ!直ぐに封鎖しないと!ねえ?聞いてんの?ほら!早く!

技術部に報告しないと!ねえ??聞いてんの?ほらほら!!

早く技術部に報告しないといけないのよ!

あれ?みんなどうしたの?真っ青な顔をして・・・・・」

ダニエル研究員とクリスティン研究員は顔面蒼白の表情でブルブルと

全身を震わせて震える指で萌博士の背後を指さし続けていた。

「何よ!言いたい事があんのならはっきりと!」

そして萌博士は背後に気配を感じて振り向いた。

みるみる萌博士の表情は血の気が引き、真っ青になり、引き攣った。

背後にはいつのまにか『プラントE46-43』が急成長していて巨大なまるで

食虫植物を思わせる中央に無数のノコギリのように並んだ牙を

内側に持つ太く長い二等辺三角形の周りに小さな棘の付いたヒトデ状の

赤い花弁をくぱあと開けた。更に赤い花弁と繋がっている太い緑色の茎と

シュルシュルと伸び、イバラの棘に覆われた蔦が茎の下部のから

多数に生えていてあっちこっちにウネウネと不気味に上下左右に蠢いていた。

また数本の蔦から真っ赤な血のような薔薇の花が何個か咲いていた。そいつは

ずりっ!ずりっ!と引きずるようにして萌博士の目の前に近づくように移動した。

萌博士が辺りを見回すと既に男性研究員のダニエルも女性研究員のクリスティンも

『ウィルス兵器遺伝子改良実験室』から一目散に脱出しようと必死に

全員各々IDを使って出口と入り口になっている分厚い扉の近くに

備え付けられているID照合パネルの扉のロックを外そうと必死の形相で試みていた。

しかし何故か本来はAI(人工知能)アポロが「IDは有効です!ロックを外します!」か逆に「IDは無効です!ロックされています!」といずれかのアナウンスが

流れる筈なのに何も言わない。それどころかID照合パネルの機能そのものが

完全に停止していた。「くそっ!どうなってやがる!クリスティン!」

「ダニエル!落ち着いて!何か脱出する方法が!!」

そしてクリスティンの意見にダニエルは「クソっ!」と悪態をついた。

クリスティンは素早く立ち上がり、AI(人工知能)アポロに助けを求めるべく

監視カメラの前に立ち、両腕を左右に振り回した。

なるべく彼女は大声で「ヘルプ!ヘルプ!ヘルプ!ヘルプ!」

とAI(人工知能)アポロが監視しているカメラにアピールをした。

しかしいくら大声で喚いても両腕を振っても

AI(人工知能)のアポロは反応しなかった。

駄目か。このままあのでかい植物の化け物の餌になるんだ!私達もみんな!嫌だ!

死にたくない!くそっ!くそっ!どうして?どうして?こんな!!

クリスティンは諦めかけていた。そして黒い影の4体は楽しそうに「キャハハハハッ!」と「アハハハハ!」と笑いい続けながらも今も遠くで腰を抜かして動けない

であろう萌博士に襲い掛かる『プラントE46-43』の姿を見ているであろう。

やがて「キシャアアアアッ!」と言う『プラントE46-43』の

獣の唸り声とヒュッルッ!ヒュルッ!と蔦だか蔓だかが動き、

空を切る音に続いて萌博士のけたたましい絶叫が響いた。

「きゃあああああああああああああああああっ!」

入り口まで逃げ延びた約120000万人の

男女の研究員達は『プラントE46-43』

に襲われた萌博士を助けに行こうとする者はダニエルもクリスティンも含めて

勇気を出して出て行こうとすらせず、何も出来ずにただ本能的に恐怖に耐える為に

まるで羊の群れのようにお互い身を寄せ合った。入り口と出口の分厚い扉の前で

ブルブルと全身を震わせて金縛りにあったようにその場に座り込んだ。

そして間もなくしてブレーカーの電源が落ちたのか実験室内は

停電して完全に真っ暗になった。

更にこの謎の事故をきっかけにこの地に縛られているのか?

それともHCFのウィルスやBOW(生物兵器)の人体実験で命を落とした者達

なのかどちらかは全く分からないが困った事にその幽霊達は目的は不明だが

HCFセヴァストポリ研究所の各地で心霊現象のポルターガイストが相次ぎ、

業務の一部を妨害されていた。ある場所の資料室内ではいきなり何の理由も無く

壁際の資料箱の大量の中の大量の資料ごと向かいの

壁に向かって交互に吹っ飛ばされた。

その結果、せっかく長時間かけて整理した資料が全て滅茶苦茶となり、

多数の資料整理係のHCF職員が号泣した。また別の場所では仮眠室のベッドの

マットレスが飛ばされていたり、または仮眠中だった職員、研究員、スタッフの身体を

幽霊達が次々とベッドから床へ何度も放り出された。

結局、全員仮眠室の床で眠りこけていたのをリー・マーラと

エイダ・ウォンが発見した。そして彼らに事情を聞いていた。

また何かを引きずる音やスリッパで歩く音が寝てる最中に聞こえていた。

更に時々、黒い影が何体かが仮眠室の中をうろうろしていたと言う。

またHCF上層部の特研部災害対策本部議長のザビエ・キングスレの自室では

まるで誰かが部屋の中で歩くようなスリッパの音がしたり、

足音に似たラップ音が昨日の夜からも続き、自室の扉の向こうには誰もいない筈。

なのにドアから何度もノック音が響き続けていた。

お陰で昨日は眠れず完全な睡眠不足のようだった。

また別のHCF上層部の衛生管理部門部長のアレキサンダー・マイクの寝室から

書斎までドラムを叩くような音が聞こえ続けていた。

そして黒い少女のような人影が現れてしわがれた声で

意味不明な言葉をしゃべっていた。

と仮眠中だった職員、スタッフ、研究員の事情を知っていたエイダとリーに説明した。

またしわがれた声が自分が持っているテープに録音されていたと聞きいたので。

エイダとリーはそれを聞いた。少なくとも全体的なしわがれた声は

はっきりとは聞こえないが一部のはっきりした言葉は

ぶつぶつとまるで途切れるように辛うじて聞えた。

『魔王・・・ルシファー』『地に縛られた』『我は神と』

『ストークス!ストークス!はどこにいる?』『混沌を起こせ!』

『私を人体実験した!』『ここから出たい!出たい!』どれも不気味なものだった。

これにはアレキサンダーの苦虫をかみつぶした顔で「気味が悪い」と呟いた。

 

更にもっと別のHCF内でとても重要な場所に幽霊の魔の手が忍び寄ろうとしていた。

そう、そこはさっき幽霊達が遺伝子改良用のウィルスサンプルを宿した

プラントE46-43の苗木が急成長した一匹のまるで獣のような姿に変異していた

あの赤い花弁と薔薇のイバラの蔦で覆われた怪植物の怪物がいる

『ウィルス兵器遺伝子改良実験室』である。そこでは萌博士があの

『プラントE46-43』花獣植物と呼ぶべき怪物に襲われている内に

一人の茶髪の研究員が何か別の音に気付いた。

 

(第28章に続く)