(第29章)致死性新型ウィルス災害阻止作戦

(第29章)致死性新型ウィルス災害阻止作戦

 

この変異型『プラントE46-43』の姿がはっきりと見えているのは

スペンスが手に持っている愛用の懐中電灯のおかげでもある。

すると『プラントE46-43』はスペンスかあるいはどこで立った

僅かな音に反応して花弁の中央から緑色の無数のイバラの棘の付いた細長い舌を

素早くどこかにシュルリシュルと伸ばした。

更に獣のような唸りと激しい息遣いが聞こえた。

変異型プラントE46-43は両腕の剥離した無数の筋肉組織を呼ぶべき

太くたくましい木の幹に覆われていた。更に両手と両足に真っ赤に輝く鋭利な

太く長い鉤爪をそれぞれ10対持っていた。

少なくとも脳は露出していないからあれだが。

それでもあいつはきっと視覚器官は無いだろうから

聴覚が異常発達しているに違いない。

実際、僅かな音に反応している。全身は粘液のせいかとてもヌメヌメしていた。

体格もがっしりとした成人男性だった。

ところで萌博士は何処だろうな?今はとにかく!!

スペンスは自分でも「少々薄情だな」と思いつつも出来るだけ物音を

立てないように慎重にリッカーそっくりの姿になった変異型『プラントE46-43』

の真上にある金属の床を慎重に踏みしめて前へ進んだ。

とにかく何も考えずにただ物音をひとつも立てずに前へ進み続けて

レバーを下げる事だけを考え続けて集中した。

やがてようやくリッカーそっくりの『変異型プラントE46-43』

がへばりついている天井の真下の金属の床を踏みしめてようやく何事も無く

無事に通過しようとしていた。しかしふと萌博士の行方がどうしても気になった。

そこでスペンスは勇気を振り絞ってゆっくりと慎重に。大丈夫!奴は視覚機能は無い!

光に反応しない筈だ!物音を立てたりしなきゃ!だいじょうぶ!!

そう思いつつも心臓が今にも口から胸から飛び出しそうな位に激しく

凄まじく大きく鼓動していた。心臓はまるで早鐘のようだ。

そしてゆっくりとゆっくりと懐中電灯の光を天井の『変異型プラントE6-43』

の方へと静かに音をたてぬように姿を照らした。

しかしふと何かを足で踏んだ感覚がしたので懐中電灯の光をまずそこに向けた。

すると金属の床にはズタズタに切り刻まれた白衣やシャツやズボンが

ヒラヒラと風に吹かれて僅かに揺れていた。その奴ー。

リッカーの姿をした変異型『プラントE46-43』は相変わらず天井にいた。

奴は両手足の鋭い真っ赤に輝く鉤爪で天井の鉄の板を刺し貫いて引っ掛けて

ぶら下がっていた。奴は自分の身体を逆にして天井にぶら下っていたようだ。

だから萌博士の姿は見えないのか?仕方がないな!

しばらく約一分間だけ萌博士の姿を探したが見つからなかったので諦めて先へ進んだ。

悪いが時間がないんだ!スペンスは無事、真下にある『プラントE46-43』

を突破してすぐに素早くウィルス漏洩対策スプリンクラーのレバーを

下へ思いっきり下げたと同時に直ぐにボタンを押して警報装置を作動させた。

余りにも必死で死に物狂いだったのでどうやって移動したのか

自分でも全く記憶が無い。もう覚えていない。

覚えているのは俺はレバーを下げようとした瞬間、変異型リッカー

『プラントE46-43』がまるで何かの危険を本能的に察知したかのように

甲高い吠え声を上げて、素早くカチャカチャカチャとやかましい金属音を立てて

その場から逃げ出す様に『ウィルス兵器遺伝子改良実験室』のまだ別の

改良用ウィルス遺伝子サンプルを持つ実験用動物を入れる部屋の中に逃げ込んだ。

そして咄嗟にスペンスは天井のスプリンクラーからウィル漏洩対策用の抗ウィルス

散布剤とワクチン散布剤を全身にまんべんなく浴びて実験室が真っ白なスモークに

包まれる前に素早く分厚い扉を閉めてAI(人工知能)のアポロに

「この部屋をロックしろ!」と声を掛けた。

「了解!桜谷萌主任研究員がいるようですが止む負えません!

全てのロックを作動させて外部から完全にシャットダウンします!」

それからリッカー変異型『プラントE46-43』と萌博士を閉じ込めるように

超厳重な何十個のロックを作動させて完全に外部からシャットダウンした。

スペンス場ウィル漏洩対策スプリンクラーから放出される抗ウィルス剤とワクチンの剤

の混ざった白い煙状の薬品は『ウィルス兵器遺伝子改良実験室』

内の広い部屋の隅々まで広がり、やがて彼の視界も真っ白になり、

鼻から口からその薬品を出来るだけ多く深呼吸を繰り返し、吸い込み続けた。

途中何回かむせたが生き残る為に必死にやった。やがてスペンスは意識は遠くなった。

スペンスは壁にもたれかけるように倒れて意識を失い、目の前が真っ暗になった。

 

ウィルス漏洩事故発生から30分後。

スペンスとダニエル、クリスティン他の研究員、職員スタッフ達はそれぞれ

HCFセヴァストポリ研究所内の『ウィルス兵器遺伝子改良実験室』

の床に設置された医療用ベッドの上で目覚めた。

するといかにも中年な男の顔が自分の視界に飛び込んで来た。

短い黒髪にとても短い前髪。とても広いおでこには年相応の2本の皴があった。

真っ直ぐ太く長い黒い眉毛。丸っこい高い鼻。丸顔で茶色の瞳で眠っている

スペンスをじっと見ていた。すると俺はついうっかり驚きの余り、「わっ!」

と声を上げてしまった。すると中年男性も「おっ!」と声を上げた。

そして改めてよく見るとその中年男の顔はHCFの医療施設主任の

アッシュ博士だとすぐに気付いた。すると慌てふためいて罰悪そうにこう言った。

「アッシュ博士!医師?驚かせておいて済まない!」

アッシュ博士は少し驚いた表情から済ました表情となった。

「まあー気にするな!君は完全密室となったこの場所であのリッカーの姿をした

変異型『プラントE46-43』は無事隔離できたし!現在この実験室内に飛散した

『新型T-エリクサー(仮)(E型特異菌遺伝子有り)ウィルスは空気中から

完全に消滅している。そしてウィルスワクチンを含んだガスを全員ちゃんと訓練通りに

鼻や口からしっかりと体内に取り入れたおかげで『新型T-エリクサー(仮)

(E型特異菌遺伝子有り)』ウィルスも全員の体内から消滅した。

そして全員、ウィルス抗体が確認されている。

もう心配はない!安心してくれ・・・・ただ・・・・」

そう言うとアッシュ博士は厳重にロックされた扉に目を向けた。

アッシュ博士が向けた厳重にロックされた扉の中には止む負えず閉じ込められた

萌博士とリッカー変異型『プラントE46-43』が密室状態で閉じ込められていた。

アッシュ博士とスペンスはその厳重にロックされた扉を茶色の瞳でみつめた。

またダニエルやクリスティンや他の男性研究員や職員、スタッフも集まった。

やがて厳重にロックされた分厚い扉の丸い覗き窓から

バンバンと叩く音と共に桜谷萌博士の顔が現れた。

「この野郎!早く出しなさいっ!私はこの実験室の主任よ!

私は主任なのよ!早くワクチンか!抗ウィルス剤を寄こしなさい!このっ!」

萌博士は両手でバンバンと激しく強化ガラスを両手で叩いた。

「落ち着いてくれ!いいか?それじゃ!これから!!」とスペンスが言いかけた途端、

萌博士は普段の穏やかで厳しくも優しい表情は跡形も無く

消え去り、怒りに歪み切ったまるで鬼のような表情でスペンスやアッシュ博士。

他の研究員、職員、スタッフ達を超鋭い突き刺すような視線で見つめていた。

明らかにいつもと違う。激しい殺気さえ感じた。

「分かったから。落ち着いてくれ!そんな風に騒ぐとあいつが!」

アッシュ博士の落ち着いた口調に萌博士は急に落ち着いて

いつもの穏やかで優しい口調でこう言った。

「ごっ!御免なさいっ!そっ!それで助けてくれるのよね?でしょ?」

「ああ、そうだ!どうにか早くなるべく早くここから!」

「ちょっと!待ちなさい!駄目よここから出しちゃ!」

いきなり『ウィルス兵器遺伝子改良実験室』の入り口の

分厚い扉が開き、美しい顔立ちの東洋系女性。エイダ・ウォン

エイダは右手に分厚い資料の束をファイルに持って立っていた。

彼女はとても美人だった。彼女は黒髪は短く両頬まで伸ばし、

下は全て綺麗に揃えていた。

更にキリッとした細長い眉毛にぱっちりとした茶色の瞳。

丸顔に真紅のチャイナドレスと黒いスットキングに赤いハイヒールを履いていた。

彼女は資料を一枚一枚丁寧にめくり、全員に説明した。

「貴方が最初にこのHCFにウィルス学者で博士として入社してから大体2年。

とは言ってもその位かしら?貴方は秘密裏に『ウィルス兵器遺伝子改良実験室』

の主任として何食わぬ顔で働き、そして時々、仲間のスタッフや職員の女と

接触しているわね?他にも貴方はこのセヴァストポリ研究所内で無断で侵入した

ミッシェル達と接触していた。つまり反メディア団体ケリヴァーよ!

貴方か彼らに『ストークス』の居場所と位置を彼らに伝えた。

彼らに直ぐに『ストークス』いる場所へ行ったようだけどAI(人工知能)のアポロ

とダニア博士と協力して彼らは『プラントE46-43』の

温室の中で被験者になったわ!

あと仲間の一人のヘザーは反メディア団体ケリヴァーを裏切ったわ。

理由は貴方達の非常識なやり方にうんざりしていたそうよ!

あと無理矢理自分の母親に団体に入れられたのも嫌だったようね!

そしてヘザーは仲間の4人の男と2人の女と貴方の名前と『R型』強奪作戦と

『新型ウィルス兵器』のウイルスワクチンとウィルスサンプルを

持って逃げ出すつもりだったんでしょ?」

 

(第30章に続く)