(第43章)ケリヴァー・神の軍団

(第43章)ケリヴァー・神の軍団

 

奇妙な祭壇の上に置いてある聖ミカエル病院の看護婦のリサ・アルミケラの

他にHCFセヴァストポリ研究所に現れた魔人フランドールの顔写真もあった。

エイダはリサ・アルミケラと魔人フランドールの写真の木のプレートを見た。

「神を産み出す2人の聖母マリアにしてイヴ」と。

更に05号室の周辺を周辺を照らすとエイダは顔をしかめた。

そこはとても狂っていた。『FEMALE SECLUSION』の

05号室の周囲の茶色の壁には大量の意味不明な数列

『284863』と書かれたメモや『アダムとイヴの楽園』

と書かれたメモが所狭しと白い紙の上に張り巡らされていた。

更に床には破壊されたゲーム機やテレビ、ビデオ。

VHS、DVD、ブルーレイが散乱していた。

四角い部屋の中央には何かを祭ったなんというか奇妙な祭壇があった。

エイダが見つけたその奇妙な祭壇の上には2人の女性の顔写真が大切に置かれていた。

最初は団体メンバーの偉い人かと思った。

しかしライトで良く照らすと全く違っていた。

その2人は顔も誰かもエイダは知っていた。

1人目は聖ミカエル病院の看護婦のリサ・アルミケラ。

2人目はHCFセヴァストポリ研究所に現れた魔人フランドール。

エイダはリサ・アルミケラと魔人フランドールの写真の木のプレートを見た。

「神を産み出す2人の聖母マリアにしてイヴ」と。

リサ・アルミケラと魔人フランドールの写真の木のプレートにはこう書いてあった。

「神を産み出す2人の聖母マリアにしてイヴ」と。

更にライトで祭壇を照らしている内に2枚のメモを見つけた。

1枚目には「人類や多種多様な動物の創造神であり、光と闇を司り、

古くから『静かなる丘』に宿っていた土着神でもある」と。

更に2枚目には「全ての苦しみと悲しみと怒りを排除し。

理想の世界を創造する光と闇の神よ。我々ケリヴァーが

自ら神の楽園を神によって創造されるのを願い。

神の軍団(ケリヴァー)の名をもって悪しき者や悪魔達に立ち向かう!

そして死せる時!神は彼らの魂を救済し!新たな楽園で平和に暮らすであろう!

その為に我々ケリヴァー(神の軍団)は闘う!これは神の命である。

反逆は許さない!その者は必ず地獄へ堕ちるのだ!」

「成程、ケリヴァーってここのカルト教団の言う『神の軍団』って意味だったのねー。

とんでもないカルトな連中じゃないのー。」

不意にエイダは背後に気配を感じて素早く振り向いた。

するとエイダの目の前に一人のボサボサの茶髪の青年が現れた。

急にエイダ・ウォンの目の前に現れた青年は茶色の瞳で彼女をじっと見ていた。

それから青年はゆっくりと口を開いた。

「人間よ。その静かなる丘の神の力を滅すか?無限の可能性を信じ、

自らの意志で静かなる丘の神の力を受け入れるか?自由に選ぶが良い!」と。

同時にサイレンの音が長々とエイダの頭の中で響いた。やがてエイダは意識を失った。

数分後、意識を失ったエイダ・ウォンが目を覚ました。

それからしばらくしてエイダは最初の療養所の『LOBBY』

の広場の片隅の茶色のソファーで目を覚ましている事に気付いた。

エイダは片手で頭を押さえて上半身を起こして、起き上がった。

「私?確か?あの『FEM ALESECLUSION』の05室にいた筈?」

エイダは再び『EASTSOLR IUM』のドアノブに手を掛けた。

そして押したり引いたりした。しかしガチャガチャと音を立てて

ドアは開かなくなっていた。どうやら鍵がかかっていた。

彼女はロビーの玄関の扉の前で特殊な通信機で

HCFセヴァストポリ研究所に連絡した。

「こちら!エイダ・ウォン!裏世界へ潜入したが異世界の住人と

思われる者の手によって表世界。いや現実世界に弾き飛ばされました。

あちらの世界で聖ミカエル病院の看護婦のリサ・アルミケラと

魔人フランドールの写真を発見!!回収は出来なかったものの

反メディア団体ケリヴァーの2枚のメモは無事に回収できたわ。

どうやら『静かなる丘』の土着神が目覚めつつある模様。

厄介な事になりそうな気がするわ!」

さらにHCFセヴァストポリ研究所の保安部隊諜報班隊員の

カイネ・スラーヴァーはエイダに更にこう報告した。

「ではその2枚のメモを持ち帰って下さい!あと!どうやら

『静かなる丘』の神の力によって大体、

6か月前からアメリカ全土で濃霧が発生していて。

また大学生のユーチューバーが失踪した時に奇妙な巨大生物

や奇妙な集団の目撃情報が相次いでいます。

またネットの動画サイトのユーチューブでその奇妙な巨大生物の動画が

投稿されていてネット上で話題になっているようです。

更にそれに関連して魔獣新生多神連合はニューヨークの各地で

それぞれのメンバーがバラバラに活動しているようです。

現在、最近の活動はニューヨーク市内に住む若い女性に

魔王ホラー・ベルゼビュート由来の変異型賢者の石を植え付けて

『力無き者に力を与える』と言う共通の目的で

各メンバーの魔獣ホラー達が行っている模様です」

「成程!じゃ!『静かなる丘』の土着神は??」

「良く分かりませんが。何らかの興味を示している可能性があるかもしれません!

ただ魔獣ホラー・ベルゼビュート由来の賢者の石『賢者石ベルゼビュート細胞』

と『賢者石バエル細胞』の遺伝子を比べた結果、親子である事が判明しています。

つまり『あの新型T-エリクサー(仮)ウィルスに含まれる賢者石バエル細胞と

賢者石ベルゼビュート細胞の遺伝子は類似性があると言うらしい」

「そうーこれを知ったらみんな不安になるわね・・・・」と不安げにエイダも呟いた。

間も無くしてカイネ隊員は個人的な意見を交えてこう話した。

「我々人類はかつては目に見えない存在や自然、霊、天使、神、悪魔、妖怪。

そして精霊の存在を信じていました。

しかし目に見えない存在を全く信じる者もいれば。

大部分の人々は目に見えない霊、神、天使、悪魔、精霊達。

自然すら全く信じない者の現れています。でも実際は目に見えない者は確かに

存在している。そう漠然と信じている人達もいます。

例えばフィッシャーズのシルクロードさんとか。例えば我々、

HCFの人々に見える存在。それこそBOW(生物兵器)やウィルス兵器、

細菌兵器や昆虫、トカゲ、タコ、イカと言った様々な生物や機械類。

医療薬、ゲーム、テレビ、ラジオ、新聞、他人の顔や服装、女性の丸い胸やお尻。

ヌード写真、この世界には目に見えるもので溢れています。つまり我々HCFは

目に見える存在、あるいは目で視認し、頭の中に記憶された写真や机に置かれた

花瓶やコップのような物以外の存在には意識的、意図的に目を向けていません。

つまり全員、目に見えないもの、あるいは存在には全く目を向けず見ようともせず。

それ故に目に見えない存在を視認しようとはしません。

そして頭の中で記憶されても目に見えない存在を恐れたり、動揺したりして。

目を背けるか頭ごなしに信じず頭の中から忘れ去られます。

目に見えないとは?つまり夢、空想の世界と現実世界に線引きして結局は何もなかった。こちら側(バイオ)の世界に存在していけないものと考えてしまうでしょう」

「じゃ!逆に反メディア団体ケリヴァーは目に見える存在のゲーム、テレビ、ラジオ。

スマートフォンやメディアには全く目に向けず見せようともせずに目に見える

メディアを視認しようとしていないのね。だから頭ごなしに怒鳴りつけて

テレビやゲームなんかも取り上げているのね。」

「彼らはこちら側(バイオ)の世界に存在しないものと考えています。

あともうひとつ。既にこちら側(バイオ)の世界では唯一神一神教

多神教の抗争が始まっています。我々、HCFは秘密組織ファミリーと

密約している以上は魔獣新生多神連合側につくのが

大吉だとHCF上層部は考えています。

現にこちら側(バイオ)の世界には複数の大天使と思われる存在が目撃されています。

勿論、BSAAとアメリカ合衆国大統領直属のエージェント組織OSAも

秘密組織ファミリーと協力関係であります。唯一、ブルーアンブレラ社は

あくまでも中立の立場を保っている状況ですね。」

「余り嬉しくない情報ね。いや時代が大きく変わっているのね。

私達もこれからは目に見えない存在にも目を向けなきゃね」

エイダは広場の中央に視線を向けた。

そして彼女の視線の先には白いナースキャップに金髪に

赤いカーディガンを着た20代の女性の後ろ姿が見えた。

やがて看護婦がゆっくりと振り向いた。エイダも流石にギョッとした。

何故なら看護婦の顔面は血まみれだった。

そしてこちらに向かってきたので慌てて療養所から出ると車に乗り込んだ。

 

HCFセヴァストポリ研究所では色々のゴタゴタと昨日の

大騒動のせいでマッド達はある事をすっかり忘れていた。

しかも残念ながらブレス保安部長はそれを思い出したらしい。

それは大分前にブレス保安部長の4WDの車の排気口に『びっくりチキン』

をガムテープで固定させて仕掛けたあの悪戯の主犯のマッド・アディソン、

ウース・カーヴィス、ジョゼフ・マルスター、デ二ズ・サザーランド。

ドナルド・ゴールズ、マイク・シュナウザー以下6名である。

 

(第44章に続く)