(第20章)温室の中の悪魔の植物(前編)

(第20章)温室の中の悪魔の植物(前編)

 

エアはその嬉々とした実の母親のアンヘラに

『悪の天才科学者』の一面をかいま覗いた。

その事によってエアは思わず強い恐怖を感じて全身を震わせた。

するとアンヘラは電話を取り出してダニア博士に外出許可を貰う交渉を始めた。

やがてアンヘラはダニア博士により外出許可を出してくれて大喜びしていた。

それからアンヘラはエアに向き直りこう言った。

「大丈夫よ!ストークスは必ず助けられるわ!!

これからエイダ・ウォンと一緒にクレーマータックを探してみる!

うまく行ってあたし達と彼の利害が一致すれば!

きっと協力してくれる筈!何も心配は無いわ!」

母親のアンヘラはエアの額に優しくキスをした。

『それじゃ!行ってくるわ!」と言い残して

母親のアンヘラはエアに背を向けて歩き出した。

エアも茫然と母親のアンヘラの背中を見送った。

 

セヴァストポリ研究所内のBOW(生物兵器)及びウィルス兵器

中央実験室の片隅にあるHCF研究開発主任ダニア・カルコザ博士の自室。

ダニア博士はまたいつもの様に大きな金色の柱と縁取られた

黒色の玉座に座って目の前の大きなモニターを見ていた。

今回は多忙なのでしっかりと起きていた。

それからモニター画面の電話アイコンが点滅したので指で押した。

電話でエアの母親のアンヘラが言うにはー。

トークスの殺処分の根本的原因が反メディア団体ケリヴァーの

非常識で迷惑極まりない活動のせいだと言うようだ。

その上でアンヘラは確実に反メディア団体ケリヴァーを

闇に葬り去るアイディアを伝えた。

彼女は最近話題のクレーマー・タックを探し出してHCFの

『R型』計画に協力させたいから外出許可を欲しいと言って来た。

「理由はさっきの説明でよく分かったけれど。クレ-マータックは

かなり危険な殺人鬼よ!命の尊さを知らない悪い大人をターゲットに

生死を掛けたゲームを仕掛けて楽しんで最前線席で見るような奴よ!!」

「分かっています!勿論!危険は承知の上です!お願いです!!

彼がいれば!息子の恋人も助けられるかも知れません!私は・・・・・・。

私は『息子と恋人の幸せ』と『あいつらメディアの一切存在しない

くだらない理想の幸せ』を天秤にかけるなら

私は迷わず前者を選びます!だからお願いです!」

そんなアンヘラの熱意の説得にとうとう心が折れた。

「分かったわ!でも気おつけてね!相手は本当に危険だから!」

「ありがとうございます!早速エイダと一緒に行きます!」

それからダニア博士はアンヘラとの電話を終えた。

彼女はやれやれと首を左右に振り、呆れた表情をした。

ダニア博士は本来の多忙な仕事に戻った。

そしてモニター画面には例のまた極秘研究室の温室で育てられている

今、ダニア博士達が処理で一番頭を悩ませて多数の囚人達が融合した

超巨大怪植物の『プラントE46-23』についての報告書が表示されていた。

ダニア博士はそれを細かくチェックした。

「あの新型T-エリクサー(仮)(E型特異菌遺伝子有り)を投与した

ポイントE26-23のプラントの成長速度は目を見張るものがある。

新型T-エリクサー(仮)(E型特異菌遺伝子有り)ウィルスの強い影響で

もはや元人間の囚人達の人の形すら崩壊・融合し、人であったのか

想像するのも困難となっている。

プラントE46-43の栄養源は二種類ある。

ひとつは地下室に溜めてある水槽の水を根から吸い上げる方法と

多数の球根から伸びている何本もの蔓がもうひとつの養分を得る手段となっている。

E46-43は温室の中にいる人間の男性の存在を感知すると

丁度イカの触手の様に獲物の人間の男性に蔓を巻き付けて動けなくしてから

蔓の裏にある吸入器で大量の血をカラカラになるまで吸い尽くすのだ。

ただそれなり知能があるらしく獲物を手に入れた時や睡眠中は蔦を

分厚いセキュリティロックされた扉に絡ませて外敵の存在を防ごうとしているようだ。

またE46-23は餌用に放り込んだ男性の中に女性も交じっていたが

何故かE-46-43は人間の女性の存在を感知すると吸血用の蔓とは

別に人間の女性を捕らえる為の太いタコのような吸盤が下部に多数並んだ蔦で

絡め取って動けなくしてから持ち上げて太く長い二等辺三角形

周りに小さな棘の生えた花弁を大きく広げて信じられない事に

花の中央の黄色の雄蕊(おしべ)のを女性の丸いお尻に押し付けて胎内に

雄蕊(おしべ)の花粉のようなものを植え付けて人間の女性の卵子

ウィルスの力で融合させて子宮も変異させて大量の種子を作り出したんだ!

そして大量の種子の一部が発芽して身体のあっちこっちで

球茎を形成して植物人間となった。現在!第20実験として!

反メディア団体ケリヴァー男女のスパイをAI(人工知能)アポロと

協力して温室内に閉じ込める事に成功した。その映像を送る。

温室研究室主任ヘンリー・サートス・ジュニア」

さてさて!あの反メディア団体ケリヴァーがどうなったのやら!!

それにダニア博士は正直、自分達のHCFのセヴァストポリ研究所内を嗅ぎ回る

反メディア団体ケリヴァーの活動にうんざりしていた。

しかも温室研究室主任の報告書や実験の様子は必ず確認しなければいけない。

それがHCF社のバイオハザード(生物災害)予防ガイドラインのルールだからだ。

勿論、その実験結果もHCFの他の幹部達に報告しなくてはいけない。

ダニア博士はそれも仕事と割り切り無表情でさっき送られた

映像を再生させるようにAI(人工知能)アポロに指示した。

AI(人工知能)のアポロはダニア博士の指示通りに温室研究室主任

ヘンリー・サートス・ジュニアが送って来た映像を再生した。

再生された映像のモニター画面にはー。

筋肉質な黒服の男と細身の男、もう一人の太った男。金髪の若いスラっとした

身長の短パン男4人と若いアイルランド系とアメリカ人女性の2人がいた。

恐らく反メディア団体ケリヴァーのメンバー達なのだろう。

どうやってHCFに侵入したのか良く分からない。

いずれは生きている一人の女から聞き出してやろう!!

勿論、果実になってもしゃべれたらね!絶対聞き出して全員やっつけてやる!!

ダニア博士は反メディア団体ケリヴァーに対して闘志を露わにした。

そう思って無理矢理テンションを上げていた。

しかしストークスを誘拐して世間の晒し者にして政治の道具にしようとする

彼らには純粋に強い怒りを感じていたし、許せない感情もあった。

モニター画面で例のプラントE46-43のいる温室実験室に男2人と

2人の女の反メディア団体ケリヴァーのメンバーは無理矢理入れられた。

正確にはAI(人工知能)のアポロが少しづつ廊下の迷宮に誘い込み、

隔壁を操作してそこに行くように仕向けていたのである。

そしてまんまとAI(人工知能)アポロの計画に嵌められたのである。

間も無くしてモニター画面では4人の男と2人の女はひとつに集まって

ジャングルのような温室の実験室内を彷徨い続けた。

そしてすぐさまジャングルのような姿をした超巨大植物のプラントE26-43の

感知によっていきなり、床のダクトから吸血用の蔓を4人の男に向かって伸ばした。

そして4人の男達は逃げる間も無く首や両手、胴体を吸血用の蔓で絡めとられて

身動き出来なくなり、怪力で彼らの全身を締め上げてあっさりと首を折り、

胴体のあばら骨を全てへし折った。それから蔓の裏に付いている吸入器で

男達4人の血をまた一滴残らず全て吸い尽くしてカラカラの干物にした。

一方、それを間近で見た金髪の女性とアイルランド系の女性は絶叫した。

両眼を見開き、両手で口を押えて絶叫していた。

今度はプラントE26-23は2人の女性の絶叫と存在を感知した。

すると天井から太いタコのような吸盤が多数下部に並んだ蔦を8本伸ばした。

2人の女性は慌てふためいてその場から逃げ出した。2人の女性は温室実験室の

迷路のような分厚い鉄製の床をカンカンと音を立てて必死にこの悪魔のような

植物から逃れようと息を切らせて一緒に走り続けた。

しかし元々超巨大であるプラントE46-43から逃れる術は無かった。

そもそも逃れる事すら不可能だった。何故ならこの超巨大な温室実験室全体が

あの超巨大な怪植物の住処なのだから。プラントE46-43は温室実験室の

壁や天井を全て占拠している為、壁も天井も床もびっしりと吸血用の蔓と

繁殖用の蔓に覆われているのだ。つまり何処へ逃げても隠れても

必ず捕まると言う事である。何本かは蔓が垂れ下がっており、

女性らしき人物が吊り下がっているのが何人か見えるとますますパニックに陥った。

2人の女性はこの悪魔のジャングルを抜けようと走り続けた。

しかし走っても、どこの角を曲がってもこの悪魔のジャングルから抜け出せない!!

出口も見つからない!!あっちこっちには血を吸われてカラカラに

干からびた人間の男達の死体が床に緑の茂みに転がっている!!

 

(第21章に続く)