(第6章)黙示のサイレンが鳴り地獄の扉が開く日。

(第6章)黙示のサイレンが鳴り地獄の扉が開く日。

 

鋼牙とシェリル刑事が『静かなる丘』にパトカーで到着した直後。

下水道から逃げ出したイバーナ・ストークンを保護する約3時間前。

少なくとも若村がアメリカ刑務所から脱獄して囚人の大量殺人が発生する前。

HCFのスパイのエイダ・ウォンとHCF保安部隊のエア・マドセンは

HCF上層部の命令で車で『静かなる丘』へ行き、秘密組織ファミリー所属の

魔人フランドールと合流する為に車を走らせていた。

やがてエイダとエアが乗った車のフロントガラスの外の深い霧の中から

一台の車を見つけた。エイダは車を停めて降りた。

エア・マドセンもあとに続いて降りた。

エイダは赤いチャイナドレス秘密道具を取り出した。

それで車のバックナンバーを分析した。結果は事前に知らされていた

エルザ・ウォーカー事、魔人フランドールの車と判明した。

それからエアは車に近付いた。

車の運転席のドアは開け放たれたままで彼女の姿も影も形も無かった。

運転席にはテープレコーダーと『静かなる丘』の地図が木の机に置いてあった。

更にエアは良く調べた。その時、エアはこの車が停まっている周囲から

僅かだが邪気と思念を感じていた。

また助手席には4年前の新聞記事と3年前の新聞記事があった。

それは新型コロナウィルスの世界的なパンデミックによる『緊急事態宣言』が

各国の政府から発令された事に関する記事と新型コロナウィルスの

『終息宣言』による『緊急事態宣言』の解除に関する記事だった。

更にその新聞の間に挟まって暗号数字のメモがあった。

「『静かなる丘』の2度目の0が訪れる時。2度目の1が始まらん。

2度目の0と1が終わりし時、0へと原点に戻らん。」とあった。

エアは何が何だか頭が混乱してさっぱり分からなかった。

またエイダも車の助手席を調べている内に助手席のシートの座席を開けた。

座席の中には「万が一の為にここに隠す」のメモがあった。

助手席の座席の空間の長四角の金庫があった。

エアはエイダに促されて暗号数字のメモを手渡した。

どうやら金庫はダイヤル式でメモ通りにダイヤルのつまみを回した。

その度にカチカチと鳴り続けた。まずは2と0に合わせた。

続けて2と1にダイヤルを合わせた。それから2と0と1に合わせた。

更にダイヤルを合わせた。それから2と0と1に合わせた。

2と3にダイヤルを回して合わせた。再び2と3に一回転させて

2と3にもう一度、ダイヤルを合わせた。それからラストの0に回した。

これ202123230である。しかし金庫の扉はロックが違うらしく開かなかった。

エイダはしばらく考え込んだ。うーんと唸り続けた。

エイダはもう一度、2と0にダイヤルを合わせた。

次に2と1のダイヤルに慎重に合わせた。

続けてゆっくりと慎重に2と3にダイヤルを合わせ、ラストに0に合わせた。

するとカチッと共に金庫のロックが外れた。

ギィと上向きに分厚い銀の扉が開くと中から。

銀色のペンダントと霧吹きが入っていた。

銀色のペンダントの蓋を開けると中から一粒の赤いカプセルが入っていた。

最初、エアはトマトケチャップか何かと思っていた。

しかしエイダによるとどうやら違うらしい。しかしエイダも良く知らないようだ。

エイダはもしかしたら魔人フランドールに何かあったのだろうと考えた。

またエアは未だに周囲の邪心と思念を感じていた。

エイダ・ウォンは普通の人間なのでそれらは全く感んじなかった。

しかし丁度、急に発生した異常な白い濃い霧が普通の自然現象で

起こるものとは全く異なる気配とい嫌な感じはあった。

とにかくエイダは肌寒さを感じて両手で自分の身体を抱きしめて上下に擦り続けた。

するとエアは自分が来ていた厚着のコートを脱いで、エイダの背中から着せた。

「ありがとう」とエイダは笑い、お礼を言った。

「迷惑をかけたせめてもの償いです!」

エアは申し訳ない表情で答えた。

「とにかくエルザ・ウォーカーを探さないと!」

「合流出来ないんじゃ困るわね!」

それから手に持っていた『静かな丘』の街の地図を見た。

次の瞬間、ドーンと言う爆発音がした。

同時に地面も激しく上下にグラグラと揺れ続けた。

「何?今度は地震???」とエイダはバランスを崩し、

危うく倒れかけたが自力で身体を支えた。なんだろう?と思い。

ある方角を見た時、エア・マドセンは大声を上げた。

「あれ!見て下さいっ!炎の柱が!!」

エアが指さした方角をエイダが見ると確かに遠くの街の近くに

建っていたであろう小屋が小さく見えてた。

しかも赤とオレンジの花火が散り、巨大な柱となっていた。

爆発したのは確かなのようだ。しかも強い風に交じってエアは

かなり強い間違いなく魔人フランドールの賢者の石の魔力をはっきりと感じた。

「行きましょう!エイダさん!もしかしたら!!」

「ええ!急ぎましょう!早く乗って!!」

エイダとエアは再び車に乗り込み、走らせてその火事のあった

遠くの小屋に向かって道路を走らせた。

 

それから約5時間後。

エアとエイダが乗った車は爆発して火事となった小屋のある

緑の芝の地面と道路に到着して車を停めた。

するとそこには既に爆発して火事の炎の柱も跡形も無く消滅していた。

更にそこに小さく見えていたであろう小屋は灰化して塵となり、

僅かに地面に黒い焦げ目と共にこびりついていた。

恐らく超高温の熱で完全に蒸発してしまったのだろう。

もはや残骸すら一つも残っていなかった。

しかも地面は円形に深々と抉れて巨大なクレーターと化していた。

そこには勿論、エルザ・ウォーカー事、魔人フランドールの姿は無かった。

「何があったんだ??何かを彼女を使って召喚したのか?」

エアはゆっくりと慎重にクレーターに近づいた。

そしてエイダをクレーターの外へ待たせてズズズッと地面を滑った。

やがて彼はクレーターの中へ入って行った。そして黒く焼け焦げた地面を見た。

すると内部から真っ赤に輝く粒子と黒く輝く粒子が螺旋状にあっちこっちで

柱のように天井へ登って行くのが見えた。

「これは?なんなんなんだ?」とエア。

「むやみに触らないほうがいいわ」とエイダ。

エイダはチャイナードレスの腰にある黒いポーチから空中に

四散した真っ赤に輝く粒子と黒い粒子を分析した。

すると分析結果は何かの有機物が2つ検出された。

ひとつは魔人フランドールの賢者の石。

もうひとつ真っ黒に輝く粒子は未確認の未知のものだと判明した。

エイダは黒いポーチの蓋を開けて長四角のカプセルの中に真っ赤に輝く粒子と

真っ黒に輝く粒子を採取した。どうやら真っ黒に輝く粒子も変異した

賢者の石である事が分析で判明した。その時、ザッザッ!と足音がした。

エアは足音がした方を見た。その時、急に軽い耳鳴りがした。

そして暗くて良く見えなかったので胸のライトをカチッと付けて周囲を照らした。

白いライトの先には真っ赤な瞳と黒いドアノブの形のナイトキャップをかぶり、

真っ黒な服装をした女の子がいた。

しかも半袖もミニスカートも真っ黒でボロボロだった。

その姿は確かに魔人フランドールそっくりだった。

魔人フランドールそっくりの女の子はウフフフフッ!と笑った。

スタスタとエイダとエアの方へ歩いて来た。

やがて突然、真っ黒な夜空にサイレンの音が長々と響き始めた。

ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウーッ!ウーツ!

ウウウウウウウウウウウウッーウウウウウウーッ!!

「なっ!なんだ?これは?サイレン?なんで??」

エアは余りのうるさい音に両手で両耳を塞いだ。

エイダも同じように両手で両耳を塞いだ。

間も無くしてエイダとエアは頭が痛くなって来た。

やがて頭の痛みは酷くなり、平衡感覚がおかしくなった。

2人は立っていられずまるで酔っ払いのように

千鳥足で左右左右にフラフラと歩き回った。

やがて目の前の視界が霞んで何も見え無くなった。

それから目の前が真っ暗になり、身体が地面に倒れる音を聞いた。

こうしてエイダとエアは完全に意識を失った。

2人はうつぶせとあお向けに倒れ、両瞼を閉じた。

エアは目の前の暗黒の視界を彷徨った。

やがて脳裏に女の子の声がした。

「昔!ドカン!と爆発して宇宙が産まれた!そして!

ドカン!と爆発して太陽が産まれた!またドカン!と爆発して地球が産まれた!

ドカン!とぶつかって月が産まれ!そして地球に生命が産まれた!」
Silent Hill Theme

 

(第7章に続く)