(第69章)コトリバコ


【死印】アレンジメドレーより『死るし』FULLVer【BGM】

 

(第69章)コトリバコ

 

「離れろ!離れるんだ!早くしろ!離れろと言っているんだあああああっ!!」

エイダと鳴葉が訳が分からずに鋼牙に従ってそのパズルの木箱から離れた。

それからすぐにエイダの身体に異変が起こった。

エイダの顔は血の気が失せて真っ青になっていた。

更に彼女は両手で下腹部を押さえてその場にしゃがみこんでしまった。

「うっ!がっ!ぐっがあっ!何?今度は何が痛いッ!痛いッ!」

エアは慌ててエイダに話かけた。

「エイダさんッ!どうしたんですか?エイダさんッ!しっかりして下さいッ!」

しばらくしてエイダはゴホゴホと激しく咳をした。

同時に「おごごごごごごごごっ!」と声を上げ続けた。

続けて彼女は口から真っ赤な血を大量に吐き出した。

吐き出された大量の血はたちまち床を真っ赤に染めた。

更にどんどん口から血がどぼどぼと流れ続けた。

やがてエイダはお腹を両手で押さえて、身体をくの字に曲げた。

更にゆっくりと倒れ、苦しそうに叫び、床を這い回った。

エアもどうした良いのか分からず戸惑い、鋼牙を見た。

「マズイ!コトリバコの呪いだッ!!」

魔導輪ザルバは直ぐに鋼牙に呪いの箱の正体を告げた。

「コトリバコ?なんですか?それは?なんですか?それ?」

エアは大声で鋼牙に尋ねた。彼は完全に気が動転していた。

鋼牙は冷静な口調でエアにこう答えた。

「後で説明する!」と。エイダは両手でお腹を押さえて口から血を吐き続けた。

「うっ!ぐごっ!がっ!痛いッ!痛いッ!ああっ!がああっ!内臓がッ!

千切れるように痛いッ!嫌っ!死にたくないッ!!」

エイダは死の恐怖に怯え、咳と喀血を繰り返し、激痛で泣き叫び苦しみ続けた。

鋼牙は魔導輪ザルバに深刻な報告をした。

「マズイ!コトリバコの呪いの力で内臓が徐々に千切れている!!」

「そうだ!鳴葉は?彼女も呪いの力を・・・・」

鋼牙とエアは一斉に鳴葉の方を見た。鳴葉は顔面を真っ青にしていた。

同時に彼女は立ち上がり、部屋の隅に座り込み、激しく嘔吐した。

「うっ!うげええええっ!があああっ!かっ!かっ!」と。

エアは直ぐに座り込んで泣いて悪寒で震えている鳴葉を介抱した。

鳴葉は奇跡的にコトリバコの呪いから守られていた。

どうやら天魔アルミサエルとお腹の子供のSHB(サイレントヒルベイビー)の

強力な魔封守護の力によって守られているようだ。

しかしエイダは一番強くコトリバコの呪いを受けていた。

彼女は涙目のままジタバタと身体を動かし、内臓が千切れて行く激痛に絶叫した。

更に泣き叫び続けて、口から血反吐を吐き続けた。

「うごがあっ!がごおおっ!ぐがあああっ!」とドバドバと血を流し続けた。

「ザルバッ!解呪方法を知っているか?」

鋼牙は緊迫した表情で魔導輪ザルバに尋ねた。

「俺様を誰だと思っている?鋼牙!時間が無いぞ!!」

鋼牙と魔導輪ザルバの会話のやり取りを聞いていた

エアと鳴葉は彼らがとても頼もしく見えた。

「こいつは!!」と鋼牙は何かに気付いた表情をしていた。

彼は一切躊躇う事無くエアに手渡されたサバイバルナイフで一切の

躊躇も無くズバッ!と自分の指と掌を切り裂いた。

それから素早くエイダの口の中にその血塗れの指と手を入れた。

「すまない!俺の血を飲むんだ!気持ち悪いと思うが飲んでくれ!」

鋼牙は自分の血をエイダに強引に飲ませた。

エイダは激しく咳き込み、血を吐き出すのを

我慢して必死に喉をゴクゴクと鳴らし続けた。

彼は冷静な表情で口を大きく開けて、呪文を唱え続けた。

「・・・・・の天井、ノリオシンメイイクトアケマシタ、

カシコミカシコミマモウス。

・・・・・・の天井、ノリオシンメイイクトアケマシタ、

カシコミカシコミマモウス。」

彼は6回程同じ呪文を繰り返した。

やがてエイダは鋼牙の指と手を吐き出した。

更に続けて彼女は「うおおおおおえええええっ!」と大きな嗚咽の声を上げた。

同時のエイダの口から真っ赤な血では無く真っ黒な呪いの本体と思われる

大量の液体をどぼどぼと吐き出した。

「鋼牙!呪いの本体が出たぞ!!」と魔導輪ザルバ。

「分かっている!」と鋼牙は素早く返答した。

鋼牙は直ぐに血塗れの手を例の木箱の上に被せた。

「コトリバココトリバコ・・・・・クソっ!」

鋼牙は真剣な表情で再び同じ呪文を唱え続けて10分後。

「よし!終わったぞ!」と鋼牙は額に大量の汗を流し、荒々しく息を吐き続けた。

彼はエアに「タオルくれないか?」と頼んだ。

エアは今にも泣きそうな表情でフェイスタオルを渡した。

鋼牙は自分の手をコトリバコの木箱を縛り付けた。エイダは意識を取り戻した。

既に大量の喀血と咳と内臓の損傷も嘘のように完全に収まっていた。

エアは直ぐにレッドハーブとグリーンハーブの調合薬を飲ませた。

「はあはあはあ。ありがとう。うっ!おえっ!ああ!最悪ね。」とエイダ。

「あれはコトリバコと言うものだ。1860年代後半から80年代頃

にとても貧しい村で生まれたとされる呪具(じゅぐ)だ。

コトリバコは漢字で『子取り箱』と書く。」

子取り箱・・・・」

「嫌な漢字ね。」

「マジかよ。」

鳴葉、エイダ、エアは既に完全に封印された箱を見ると引いた。

鋼牙はドン引きした3人に話を続けた。

コトリバコはとある田舎の更に奥にとても貧しい村があった。

代官が重税を強いて災害にも見舞われて

作物が取れずに飢餓状態に苦しめられたそうだ。

そんな最中、近くの村で戦があり、一人の武士がその村に逃げて来た。

そして村人は貴重な食べ物を食べていた武士を発見して殺そうとした。

武士は『自分の命を助けてくれたら大量破壊兵器の製造方法を教える』と言った。

そして村人はお互いに相談した結果条件を飲み『コトリバコ』を製造した。」

「製造方法は俺様達の間では禁止されているから話せないぜ!」

ネットで流出した情報も管理されて、抹消したりしているが。

この危険な呪具(じゅぐ)兵器の製造方法を見つけて

流出させる人間が後を絶たず、この手の問題は解決していない。」

「人間達はこの武器の製造方法を知ろうと様々手を使っている。

人間の殺したい欲求と他の土地を支配したい強欲がある限り。

あれは永遠くならないだろうな。と一緒にな。」

「『コトリバコ製造禁止法』なんかほとんど役に立っていない。

今回使用されたコトリバコは2人の生贄の使用でレベルは

『二法(二ホウ)』クラスだ。これでもまだ効力が弱い方だ。」

「弱いって?じゃ!これ以上のものとなると?」

エアは想像しただけで背筋が凍り付き、吐き気がした。

何せ生贄の人数が多ければ多い程、効力が強い。実際に村人達が製造し、

隣の村に送った結果。村の女達、子供達はエイダと同じ症状を起こして。

隣の村の女子供は全滅し、村はあっという間に滅び去った。子孫繁栄が途切れてな。

そして報復の報いを恐れた代官は次第に

その村の干渉を止め、税金も取られなくなった。

村はそのおかげで豊かになった。しかし・・・・・」

「しかしながら強過ぎる核兵器は他人だけではなく

自分達にも向けられる事になるんだ。

村人達は圧倒的な力を得る為に13年目には16個の箱が製造された。

しかし13年目に誰か恐らく何も知ら無い村の女の子が管理外へ持ち出した。

そしてコトリバコの呪いの漏洩事故により。

しかも最悪な事に一番、恐らくクラスのコトリバコの呪いが箱から漏れ出した。

これにより村の女達や子供達が被曝して死亡した。

この漏洩事件以降、村人達は箱の使用と製造を中止した。

それ以降、俺達、魔戒法師と魔戒騎士が調査の為に村を訪れー。

村の男達と話し合いの結果ー。ルールを作り、

『コトリバコ製造禁止法』『使用禁止法』

更に『コトリバコ処分法』を作った。こうしてルールを作り。

現在でも一部の日本の村で引き継がれている。

そして3つの家で持ち回り、管理を現在も続けられている。」

「そうよ!鋼牙の言う通り、反メディア団体ケリヴァーの

幹部やメンバーにリーダーの若村秀和はその呪いの箱であるコトリバコ

を作らせていた事が秘密組織ファミリーの調査で明らかになっていた。

正確には魔獣新生多神連合だけどね。」

エア、エイダ、鳴葉、鋼牙が天を仰ぐと魔人フランドールが上の階から降りて来た。

魔人フランドールは安心した表情になった。

「よかった!下の階からエイダさんの絶叫や苦しみ抜く声が聞こえて。

何とかコトリバコを封印したようね。

彼女が死なずに済んで本当に良かったわ。

さてと!放置しておく訳にはいかないわよ!」

「分かっている!みんな下がってくれないか?」

鋼牙に促されて全員下がった。鋼牙はコトリバコの木箱から手を退けた。

すかさず彼は魔導火のライターをカチッと着火した。鋼牙はフッと息を吹きかけた。

次の瞬間、緑色に輝く魔導火は火炎放射器のようにコトリバコの木箱に掛かった。

そしてあっと言う間に真っ黒な灰となって崩れ落ちた。

同時にエイダの口から出た黒い液体もしゅーつと音を立てて消滅して行った。

「これで良しだ。あとはさっき破壊した赤いバラ型のコトリバコ以外にも

まだあるかも知れない。今後も注意をした方がいい。」

全員は頷いた。木箱には触らない方がいいな。

「さてと戻りましょうかね!」と魔人フランドールが言った。

「そうだな!」と言うとエアと鋼牙は空を仰いだ。

エア、エイダ、鳴葉は鋼牙と魔人フランドールの空を飛ぶ力を借りて。

閉じ込められた地下室から脱出した。

そして全員無事に元の七色に輝く壁や床や天井に覆われた短い廊下に戻った。

エイダ、エア、鳴葉、魔人フランドールや鋼牙は改めて

目の前の血のように真っ赤に輝く扉を見た。

魔人フランドールは「いよいよね。この先には何があるの」と言った。

「判らん。この『静かなる丘』の力による一連の多数の

怪異事件を引き起こした元凶の人間がこの先にいる。」

「若村秀和って奴ね。彼が全ての元凶かしら?」

「間違いないです。だってこの扉の先から・・・・。」

「怪異とは人間達が持つあらゆる邪心や欲望や怨念と言った負の感情そのものだ。

あの男の負の感情を中心に禍々しい不特定多数の人々の怨念や怒りが渦巻いている。」

「つまり世界を終わらせられるのは人間様だけと言う事さ。」

数時間後、元の七色に輝く壁や床や天井に覆われた短い廊下に戻った

エア、エイダ、鳴葉、魔人フランドール、鋼牙は改めて真っ赤に輝く扉の方を見た。

その時、ふと鋼牙は床に貼られたメモの束を手に取った。

どうやら若村秀和の残したメモらしい。やや乱雑な文字で文章を書き残していた。

「私は若村秀和。この世界を救済する事だ。

私は霊的な能力がある故に私は私には異世界の者達とコンタクトが取れるのだ。

彼ら異世界の者達は鏡の世界から教えてくれる。例えば秘密組織ファミリーと

魔獣新生多神連合の情報ー。あのアミリとジンガはコピーの『宇宙の卵』を

本来そこにいた並行世界(パラレルワールド)に持ち去った。

だから魔獣ホラー達は損害を受けていない。多数のケリヴァーの戦士達が

天魔ゼルエルにー。何故なんだ?まさか?アルミサエルと同じように裏切った??

堕天使め!堕天使め!許さない!!許さない!!幹部の巨人も倒された!!

無念は必ず私が晴らす!!私はこの先の未来!!奴らに捕まり拷問を受ける!!

「そしてあの堕天使ゼルエルは虹色の異教の女神イーリスを再生させた!

あの女の胎内に宿り続けている。私は怨霊や怨嗟の声に屈しない!!

私のやり方は正しいからだ!!私は正義だ!!オペラ座の怪人も消えた!!

もう協力者はいない!!アキュラスでさえ!私を裏切ったのだからな!!

メディア社会は地獄に!そして私と太陽神の力により!新たな美しい楽園を!

忌まわしき霊!アレッサ・ギレスピー!シェリル刑事!リサ・ガーランド!

咲夜の母!忌まわしき分霊!!コトリバコを大量に生産そして・・・・・。」

 

(第70章に続く)