(第2章)神の出産

(第2章)神の出産

 

『静かなる丘』の教会最深部。

「魔人フランドールから『静かなる丘』の神が誕生する!

そして何億もの私が選んだ若い女性達の魂が一つとなった楽園として統合され!

完全な単体生命体に進化する事で彼女達や

反メディア団体ケリヴァーの男達は救われる!」

若村はそこまで話すと急に「かかかかかかかっ!」

と不気味に狂ったように笑い出した。

次の瞬間、魔人フランドールに異変が起こった。

魔人フランドールは両手で下腹部をしっかりと抑えた。

その間にも鳴葉とエイダは顔を青くして気持ち悪そうにしていた。

また魔人フランドールが激しく苦しそうにその場に

蹲っているのに2人は気付き、顔面を蒼白にさせた。

「ああああっ!ぐああああああっ!があああああっ!ぐうあああっ!」

魔人フランドールの全身はまるで毛細血管のような模様が広がり始めた。

さらに全身の白い肌を真っ赤な肌に変えて行った。

「フラン!しっかりしろ!フラン!」と鋼牙。

「おい!若村!フランに一体?何をした?!止めろ!さもなくば射殺するぞ!」
エアは大声で怒鳴り散らし、マシンガンの銃口を若村に突き付け続けた。

魔人フランドールは僅かに血の涙を流した。下腹部の激痛は更に酷くなった。

うろたえてどうやったらいいのか分からず

鳴葉はとにかく彼女の痛みを和らげようと背中を必死にさすり続けた。

「おい!若村!フランに一体?何をした?!」
エアは大声で怒鳴り散らし、マシンガンの銃口を若村に突き付け続けた。

魔人フランドールは僅かに血の涙を流した。下腹部の激痛は更に酷くなった。

うろたえてどうやったらいいのか分からず鳴葉はとにかく

彼女の痛みを和らげようと背中を必死にさすり続けた。

その魔人フランドールが苦しんでいる姿を見たエイダは何かに思い当たり。

『静かなる丘』の入り口でフランの車から暗号数字のメモを解いて

金庫から手に入れた金色のペンダントを取り出した。

直ぐに中を開けるとペンダントの中に一粒の赤いカプセルが入っていた。

すぐにそれがアグラオフォティスだと分かった。

既に魔人フランドールは神を出産する寸前だった。

エイダは魔人フランドールに大声で叫びながら赤いカプセルを掌に乗せた。

「早く!これを飲んで!急いで!」と。

魔人フランドールは迷わず赤いカプセルを口に入れて、一気にごくりと飲み込んだ。

魔人フランドールの全身に広がっていた毛細血管のような

模様はまるで潮が引くようにあっと言う間に消え去った。

しかし再び全身に毛細血管のような模様が急激に広がった。

再び激しい腹痛の苦しみが襲った。

魔人フランドールはそのまま四つん這いになった。

若村は狂ったように笑い続けた。

「もうすぐで!神は産まれる!メディア社会は滅亡するんだ!!」

喜びを露わにして大声で神に対し、祈りの言葉を言い続けた。

しかし魔人フランドールは激しく咳き込んだ。

うえええええええええええっ!うげええええっ!

彼女は激しく喉を鳴らし、口を大きく開けた。

たちまち口の中が血の味で満たされた。

気持ち悪過ぎて死にそうだった。

魔人フランドールは口から大量の真っ赤な血をどんどん吐き出して行った。

たちまち茶色の床は血溜まりになった。

やがて大きな声で「うげええええっ!」と上げた。

同時に魔人フランドールの口からボトオッ!と鈍い音を立て。

真っ赤な小さな胎児のようなものを吐き出した。それは角煮にも見えた。

魔人フランドールの全身を覆っていた毛細血管のような模様は今度こそ消え去った。

そして二度と白い肌に現れる事は無かった。

魔人フランドールはようやく立ち上がり、スッキリとした表情をした。

「神は堕ちたわ!残念ね!こいつを踏みつければおわりよ!」

魔人フランドールは真っ赤な鋭い瞳で若村を見た。

若村は両手で頭を抱えてまた大声で魔人フランドールに向かって怒鳴っていた。

「はあ?ふざけるなああっ!聖母の癖に!何で?俺の計画の邪魔をするんだ??

このクソがああっ!どうして?どうして?」

彼は魔人フランドールがアグラオフォティスを服用して神の胎児を

早産させた事に激怒しているようだった。]

魔人フランドールはそんな事はもうどうでも良かった。

続けて彼女はゆっくりと足を上げた。

「さよなら!」と一言を述べると魔人フランドールは

目にも止まらぬ速さで角煮の形をした神の胎児に向かって振り下ろした。

「やめろおおおおおおおおおっ!!」と若村は絶叫した。

魔人フランドールの足が角煮の形の赤い神の胎児に届く直前。

彼女の鋭い三角形に耳にはっきりと「待ってくれ!」と言う

自分のかつての恋人のアキラの声を聞いた。

彼女は無意識に「えっ?」と声を上げた。

すると角煮の形をした赤い胎児は魔人フランドールから取り込んだ

魔力と賢者の石を放出した。同時に真っ赤な分厚いドームの壁を形成した。

そして魔人フランドールの踏みつけ攻撃から自らの小さな身体を防御した。

魔人フランドールは真っ赤なドームを形成して

自身を守った神の胎児の姿に驚きを隠せなかった。

「そんな・・・・まさか?まだ不完全な筈!なのに!!」

魔人フランドールの踏みつけ攻撃から身を守った神の胎児はー。

真っ赤なドームの壁から衝撃波を発生させた。

そして魔人フランドール、鋼牙、エア、エイダ、鳴葉を

入口の方まで一直線に身体を軽々と跳ね飛ばした。

全員、仰向けに倒れた。

それからようやく立ち上がった。

神の胎児の全身を真っ赤な壁は球体に変化した。

神の胎児はふわふわと宙に浮いた。

更にすーつと礼拝堂の奥の細長い縦穴の方へ向かって行った。

そして細長い縦穴の開いた床のところで止まった。

更に徐々に大きくなり、成長しているようにも見えた。

「まっ!まさか?成長しているのか?」とエア。

「さっきのは!アキラ?嘘でしょ?どうして?」と魔人フランドール。

「不完全なら成長しても。と言う訳ではなさそうね。」とエイダ。

「奴め!魔人フランドールの魔力と賢者の石を!」と鋼牙。

「私が子宮に保存したアキラの・・・・嘘でしょ?

まさか?最初の神降ろしで魔力の氷結が溶けて」と魔人フランドール。

その場にいた全員が驚愕していたその時。

神の胎児の成長が始まったのを見計らって再び天魔ヴァルティエルが姿を現した。

神の胎児は待ちわびたように天魔ヴァルティエルに接近した。

そしてお互い正面を向き合った。

神の胎児は全身を真っ赤に輝かせて一筋の光を天魔ヴァルティエルに放った。

たちまち天魔ヴァルティエルは神の胎児から魔人フランドールの魔力と

賢者の石の力を与えられた。天魔ヴァルティエルはそれを喜んで取り込んだ。

天魔ヴァルティエルは大切そうに両手で優しく神の胎児を抱き寄せた。

続けて全身からフランの魔力と賢者の石の力を再び放出した。

放たれたフランの魔力と賢者の石の力は教会の穴の地下へと

落ちて行き元々穴の開いていた地下空間を消滅させた。

さらに地下に超広大な裏世界を形成した。

天魔ヴァルティエルは神の胎児を抱きかかえたまま

教会の地下へとゆっくりと降りて行った。

同時に地下に続く穴を真っ赤な壁で塞いだ。

更に教会の地下の超広大な裏世界へ消えた神の胎児と天魔ヴァルティエルを

追跡してエア、鋼牙、魔人フランドールはその穴の中に入ろうとした。

しかし直ぐに穴を覆い尽くしている真っ赤な分厚い壁に阻まれた。

接近した途端に3人は直ぐに外側に身体を弾き飛ばされた。

鋼牙の指に嵌められた魔導輪ザルバはカチカチとこう言った。

「こいつは魔人フランドールの魔力と賢者の石の力を高めて作り出した

バベル超結界だぜ!破壊するには・・・時間が・・・」

「でも!このまま手をこまねいていたら!」

「変な神様が成長しちゃうわ!早くどうにかしないと!」

「いや!駄目よ!まずはこのバベル超結界を無効化する方法を考えないと!」

「無効化って言っても賢者の石の力を使うのか?」

「それだぜ!2人の賢者の石の力を直接、バベル超結界にぶつけるんだ!

相すれば結界の機能を一時的に無効化出来るかも知れん!!」

魔導輪ザルバは魔人フランドールとエアにそうアドバイスした。

魔人フランドールはバベル超結界の前に立った。

「いい、エア?賢者の石の力を足でも拳でもいいから集束させて!

パンチかキックで最大の賢者の石の力をぶつけて一時的に無力化させるのよ!」

するとエアは「分かった!」と答えた。

そこにいつの間にかイエローピラミッドシング事、破壊神ミカエルがいた。

全員驚いていた。しかしエアだけは冷静にこう言った。

「君は僕の片割れだ。だから僕の考えは全部と見通しだろ?」

するとイエローピラミッドシング事、破壊神ミカエルは頷いた。

「じゃ!頼みがある!鳴葉さんとエイダさんを守ってやって欲しい!」

鳴葉とエイダは次々と声を上げた。

「エア!?一体どうして?」

「あたし達はここに残っていろと?」

エアは首を左右に振り、「違います」と答えた。

「ここから先はかなり危険だ!僕には分かるんだ・・・・・。

この下から途轍も無い魔力と賢者の石の力を感じるんだ!」

魔人フランドールも「あたしも同じよ!この先は死ぬかも?」と答えた。

鋼牙は反対するエイダと鳴葉に冷静にこう言った。

「そうだな。安全な場所に避難させるべきだ!

鳴葉さんは一般人だ!危険に晒す訳にはいかない!」

エイダも「そうね。第一彼女は妊娠しているわ。

妊婦はお腹の子の為に身体は大事にしないと!私も守らないと!」

そしてエアと鳴葉とイエローピラミッドシング事、破壊神ミカエルは鋼牙が

教えてくれたフィッシャーズのキャンピングカーに避難させる事にしようかと思った。

しかしふとエアは若村秀和の立っていた場所に視線を向けた。

するとそこにいた筈の若村の姿は影の形も無かった。

「おい!あいつは何処へ行った??」とエア。

「いつの間に?一体??どうやって??」と鳴葉。

「成程。鏡か?」と魔導輪ザルバ。

鋼牙は礼拝堂の右側の長椅子の近くに置いてあった

長い鏡台の方に右腕を伸ばして魔導輪ザルバを向けた。

更に鏡に血文字でこう書いてあった。

「我々教団の邪魔をした者は我々の仲間が死の罰を!!」

「やれやれ。逆恨みもいい所だな・・・」ともはや呆れるしかないエア。

「でも私にはマシンガンとアルミサエルの印章があるわ。」と鳴葉。

さらに鳴葉はどこか自慢げに笑顔でこうも話を続けた。

「それに破壊神ミカエルがいるし!強さは最高よ!ね!」

鳴葉はイエローピラミッドシング事、破壊神ミカエルを見た。

鳴葉の視線の先にいた破壊神ミカエルは無言で佇んでいた。

間も無くして鳴葉とエイダは頭の中でエアそっくりの破壊神ミカエルの声がした。

「俺は破壊神ミカエル。仲魔となろう!今後ともよろしく!」

「よろしく・・・」

「よっ!よろしく」と鳴葉とエイダは同時に答えた。

 

(第3章に続く)