(第67章)儀式を起こす狂信的な人の恐怖

(第67章)儀式を起こす狂信的な人の恐怖

 

『静かなる丘』の教会の地下の異世界

エアと魔人フランドールとエイダは鳴葉を探して裏世界の教会を進んでいた。

3人は角を曲がって歩き下の方を歩いていた。

勿論、裏世界なので相変わらず周囲は赤い血と

錆の壁に崖がある細く赤く汚れたタイルの床を歩いていた。

やがて一番端の扉を開けて先へ進んだ。

周囲は相変わらずオレンジ色のもやが掛かり、

赤い血と錆と壁のオレンジ色にメラメラと燃え盛るような動く模様の壁が見えた。

そして近くの茶色の扉に近づいた時、不意にドアがガチャ!と開き人影が出て来た。

エイダ、エア、魔人フランドールは敵が来たと思い身構えた。

するとエイダとエアはマシンガンを向けた。

「うわーわーわーまって!あたしよ!!鳴葉よ!!」

鳴葉は両手を挙げて大声を上げた。

エア、エイダ、鳴葉、魔人フランドールは無事に合流できた事に心底ほっとした。

「無事だったか!良かった!」

「またマイキー、天魔アルミサエルに助けて貰ったの!」

そう言いながらエア、エイダ、魔人フランドールに彼から貰ったお守りの

アルミサエルの印章』を見せた。魔人フランドールによると

どうやらかなり強力な魔力のあるお守りのようだ。

実際、彼女の話によるとこのアルミサエルの印章によって自分を攫った

ケリヴァミショナリー達を消滅させたと言う。

また『オズ』のサークルの大学生の女の子をこのアルミサエル

印章の力と自分のお腹にいる赤ちゃんの力を

使って異世界の外へ逃がした事も全て話した。

「成程ねー。結構良く出来ているわ!」

魔人フランドールも手に持ってアルミサエルの印章に宿っている魔力と

賢者の石を調べていた。更に彼女によると鳴葉の肉体と異世界と現世を

繋げる力のある赤ちゃんの魔力と賢者の石を増幅させる機能のあるらしい。

そして鳴葉に返した。

「それ!きっと役に立つわ。正直貴方の彼氏は凄いわよ!」

「まさに錬金術師ね。きっと才能があったのよ。」

魔人フランドールとエイダに言われて鳴葉は照れ臭そうに笑った。

「きっと!彼は日本の漫画の『鋼の錬金術師』が好きだったから。

趣味で実際に漫画の錬金術をやっていたみたいだし。結構面白かったのよ」

「あっ!それユーチューブで見たなあー」

「なかなか失敗したり。成功したり。面白かったわ。」

「まさか!彼の趣味がこんなところで生かされるなんてね。」

魔人フランドールは続けてこう付け加えた。

「人生何が起こるか分からないものね。」と。

またその動画は見たいもののとにかく色々と忙しいので

この事件が終わったらまた見返してみる事にした。

そして合流してようやく全員揃ったので開いたままのドアの中に入った。

ドアの先には赤い血と錆の壁に覆われ、床も赤く汚れたタイルの床に覆われていた。

また細長い金網があった。そして部屋の奥の扉には鍵が壊れて入れなかった。

鳴葉によるとここに大量のケリヴァーミショナリーがいたけど

マイキー事、天魔アルミサエルが使ったアルミサエルの印章で消滅したと言う。

それからエア、エイダ、鳴葉、魔人フランドールは手分けして既に

異世界から脱出した七羽と鳴葉と大量のケリヴァーミショナリー達が

いた長四角の大部屋を調べた。

床はまるで焼け焦げたように真っ黒に変色していた。

大部屋には何も無いが僅かに人が焼け焦げたような痕跡が床や壁に残っていた。

更に間も無くして遠くから微かに恐らく復活したと思われる

ケリヴァーミショナリー達の呻き声がエア達の耳に聞こえて来た。

エアは「まさか?」と呟いた。鳴葉は少し怯えた表情をしたあと慌てて呟いた。

「マイキー?天魔アルミサエルの言う通りだわ」

エイダはエアと魔人フランドールにこう言った。

「ここには何も無いし先を急ぎましょう!」

エアと魔人フランドールは頷いた。

「ええ、大量のケリヴァーミショナリーは流石に相手してられないわ。」

エアエイダ、鳴葉、魔人フランドールはこの大部屋を調べても

結局何も無かったので急いで引き返した。

そのあとドアの前で4人は警戒していたもののどうやら

ケリヴァミショナリー達は別のどこか場所で復活していたらしく

ドアを開けて廊下へ戻っても連中の人影も気配も無かった。

4人全員は「ほっ!」と一安心し、4人が廊下に出ると更に先へ進んだ。

どうやら連中は自身が「不死身の肉体がある」と思い込んでいる

限り『静かなる丘』の力で何度でも何度でも復活するようだ。

完全にケリヴァミショナリー達を消滅させるには大元の

『静かなる丘』の力を完全に断ち切り、現世から消滅させる

必要があると魔人フランドールから聞いた。

つまり私の胎内にいる神の胎児をどうにかしなければ。

連中は消滅しない。元の人間には戻らないだろう。

魔人フランドールは独りでそう考えていた。

エア、エイダ、鳴葉、魔人フランドールが廊下に出ると更に先へ進んだ。

4人は黙ってその先の赤い血と錆の壁に覆われた廊下を歩き続けた。

そして相変わらずオレンジ色の霧とオレンジ色の燃え盛る動く模様が

メラメラと動き続けている壁はしばらく続いていた。

そして更に茶色の扉を開けていた。

茶色の扉の先の四角い部屋で木の机とオレンジ色の四角い箱。

メモ帳。白いベッドの上にはメモが置かれていた。

部屋の奥には黒カビで汚れた本棚が2対あった。

更にその中央には4対の四角い窪みと

中央に窪みの付いたとても大きな茶色の扉があった。

そして四角い扉は完全にロックされていた。

勿論、取っ手もドアノブも無ければ開ける術も無かった。

また右側にはシェリル刑事が残したメモが張ってあった。

エアはまずはベッドの上のメモを手に取った。

それは『とある物語の絵本の文章』つまり謎のメモの続きに間違い無かった。

インキュバスは本来の太陽神の姿を取り戻そうと世界中を旅しました。

しかしながら方法は見つかりません。しかし諦めずに昼も夜も夕方も夕日も。

1日中、1年、何十年、何百年、何万年が過ぎようと探し続けました。

しかし見付からずインキュバスは途方に暮れました。

そこの20代の青年でアキラと名乗る・・・。」

「えっ?アキラ?!どうして??彼は大昔に火刑された筈!!」

魔人フランドールは信じられない表情でエアを見た。

「分からないが。俺の前世の記憶があるから・・・・いや。なんでも・・・・」

それから周りを見るとエイダは「あー」と声を上げ、鳴葉は白い目で見ていた。

エアは恥ずかしくなり、メモに視線を戻した。

魔人フランドールも同じだった。あーあ恥ずかしい・・・・。

「アキラと名乗る呪術師が現れた。

その呪術師は彼女と同じく世界中を旅していた。

彼はアメリカや日本を渡り歩いて最後にアテスカを旅してアメリカに戻り。

彼女の為に太陽神に戻る方法と呪いと解く方法を見つけてくれました。

インキュバスはその方法を教えて貰いました。元の太陽神に戻るには。

普通の人間の女の子の聖母では不可能であると説いた。

必要なのは神聖で強い賢者の石の力と強力な破壊の魔力。

螺旋を上回る機械生命体の力が必要だと。良く分からないが。

更に新しく『母親の神獣』『父親の神獣』『虐待の神獣』。

『操り人形の神獣』『種族の神獣』を神聖な場所の床の上に

四角と四角の中央の四角に間違いなく配置する。

聖母は強大な闇の力と神の力を持つ外なる神の血を引く

異教の神の力を持つ魔人が最も良いとされる。

早速、彼女は正しい降神術を欲深い人間に教えて実行させました。

(この先の文章はビリビリに破かれて読めない)」

「そんな・・・・・アキラがその神の正しい儀式を教えたの?」

「分からない。少なくとも前世の記憶には無かった。」

魔人フランドールとエアは戸惑いお互い顔を見合わせた。

そこにエイダが現れて2人にこう言った。

「とにかく!若村と造反したアキュラスが企んでいた計画は

ようやくやっと突き止められたわね。その先にーきっと。」

「その若村秀和がいると?」

鳴葉はエイダの方を見ると「きっといるに違いないわ」と答えた。

それに対して彼女も「ええ、ここは一本道だし」と言った。

「もしかしたら異世界の抜け穴を浸かってその先にいるのかも。」

「早いところ、多分、鉄板をはめると開く仕組みよ」

また魔人フランドールは扉に付いているシェリル刑事が残したメモを手に取った。

それは彼女が残した手記の一部のようだった。

「それはシェリル刑事のメモか?」

「ええ、どうやら私達がここまで辿り付くように導いてくれたようね。

聖母アレッサとの記憶と彼女本人がね」

「じゃ!ここはアレッサ・ギレスピーの部屋?」

「かも知れないけど。もしかしたら彼女の想いが」

「どちらにしろ。この先でようやくラストって訳でしょ?」

鳴葉はエアに今まで手に入れた鉄板を出すように頼んだ。

エアは鉄板を取り出し全て鳴葉に渡した。

鳴葉は扉の4対の四角い窪みと中央の窪みにあの鉄板を

ガチャッ!ガチャッ!ガチャッ!と音を立ててはめ込んだ。

時々、さっきのメモを確認しながら。『父親の鉄板』『母親の鉄板』

『虐待の鉄板』をはめ込んだ。しかし困った事

に他の『操り人形の鉄板』と『種族の鉄板』を所持していなかった。

これでは扉が開かない。

その時、茶色の扉がまた開き、白いコートの男が現れた。

ふとエアは最初にあのイコン画のあった礼拝堂で急に

教会全体が激しい上下左右の大きな地震があった事を思い出した。

エアは白いコートの男に例の地震の事を尋ねるとすぐにこう返答した。

「ああ、前にあったあの教会の地震か。あれは。

どうやらこの教会に安置されていた魔人フランドールの全身火傷の肉体に魂が戻り。

活動を始めたのをきっかけにこの教会の内部に宿っている

異世界の魔人フランドール由来の魔力が活性化した為だ。

そう、魔人フランドールの胎内にいる神が目覚めようとしている。

「フラン!もう感じている筈だ!胎内で神が胎動している事に!

神はお前から産まれたがっているんだ。」

「ええ、分かっているわ・・・・分かっているのよ・・・」

魔人フランドールは両手で下腹部を抑えた。更に彼女は俯いていた。

魔人フランドールは腰が砕けたのか?直ぐにその場にへたり込んだ。

エアは直ぐに居ても立っても居られず彼女の元に駆け寄った。

エアは魔人フランドールの肩にそっと触れた。

彼女の小さな身体はプルプルと震えていた。エアの手には彼女の震えが伝わって来た。

「こわい・・・・の・・・私の産んだ子供が・・・・・。

人間に・・・・私の友達のアリスちゃんや・・・・。

トリニティちゃん・・・・フィッシャーズのみんなの世界を・・・・。

また・・・・あの時・・・・みたいに・・・。私は・・・・私は・・・・。」

するとエアは無言で両手を出すとスーツとまるで昔からそうして

きたように魔人フランドールの身体をしっかりと抱き締めた。

その瞬間、フラッシュバックで目の前が真っ白になった。

魔人フランドールとエアの目の前には黙ってエアの前世の少年アキラが怖くて

震えている魔人フランドールをしっかりと抱き締めている光景が鮮明に映し出された。

「大丈夫!僕は何があっても君の味方だ。

例え神様や天使や人間世界を敵に回しても君を・・・・・」と。

魔人フランドールは彼の言葉がかつて前世のあの中世の

時代のアキラ少年が残した言葉だと気付き、心の底から安堵し、大粒の涙を流した。

 

(第68章に続く)