(第7章)悪魔冷戦

(第7章)悪魔冷戦

 

真っ暗なまるで深海にいるような視界の中、エアの耳にまた女の子の声が聞こえた。

「生命は誰が創ったのか?誰だろう?神様?

それとも人間と呼ばれた幽霊達が産み出した幻想の心??」

「なんだ?君は魔人フランドールなのか?答えてくれ!!」

「生命は目に見える物質と目に見えない物質の境界にある」

やがてピーッ!ピーッ!と言う心電図の起動音がした。

エアはハッ!と瞼を開けた。そして大慌てで上半身を起こした。

気が付くと真っ白な霧に包まれた街中にいた。

自分は緑色の長四角の木のベンチの上に眠っていたらしい。

また「うーん」と緑色の長四角の木のベンチの前に

エイダ・ウォンはゆっくりと瞼を開けて、両手で頭を抱えて首を左右に振った。

そして直ぐに起き上がり立ち上がった。

続けてエアもベンチから両足を下ろして立ち上がった。

周囲をエアとエイダは見渡した。

どうやらこの街は間違い無く目的の『静かなる丘』の街のようだ。

エイダはチャイナドレスの懐から『静かなる丘』の地図を取り出した。

エアもエイダの持っている地図を横から読んだ。

どうやら二人が目覚めた場所が地図によると。

『CRICHTON・ST』の道路の様だった。

更に上へ真っすぐ進んで角を曲がれば『KOONTZ・ST』になるようだ。

そして『KOONTZ・ST』にはアルミケラ病院があるようだ。

また看板には『静かなる丘』の地図があったのでエアはそれを拝借した。

2人は『CRICHTON・ST』の道路を歩き続けた。

しかも周囲には真っ白な霧に覆われて良く見えなかった。

ただ建物や車らしき物や通りの緑の看板や『STOP』の丸い赤い看板が

周り角にあっちこっちにチラチラと見えた。

そこから角を曲がり『KOONTZ・ST』に入った。

近くには本屋とアルミケラ病院がある。

間も無くしてエイダは『KOONTZ・ST』の通りの路上の道路に

無造作に誰かが置いたように1枚のメモが落ちていた。

エイダは周囲を警戒しつつも屈んで1枚のメモを拾った。

どうやら写真とメモらしい。エアはエイダの横からまずは写真を見た。

その瞬間、エアは「うっ!」と小さく唸った。

エイダも「酷い状態ね!不味いわね!治療しないと!」

深刻な表情でそう言った。写真にはー。

全身真っ赤に。と言うよりも赤黒く焼け爛れていて今にも死にそうな表情をした

魔人フランドールの姿が映っていた。さらに写真とあったメモには。

「アレッサ・ギレスピーと同じように第三熱傷を負いましたか。

彼女は無意識状態。神の力によって内臓の損傷は防がれている。

組織障害は表皮と四肢に限定されている。

神の力を以ってすればこんなの簡単でしょう。

神の炎によって身を焼かれましたが聖母となりました。

さて!あの邪魔しようとする看護婦を脅して。

彼女の世話をアルミケラ病院でさせましょう!早く運ばねば!!」

「魔人フランドールが全身火傷ですって?!」

「じゃ!あの気絶する前のあの大爆発も??」

「恐らく何者かが魔人フランドールに儀式を!!」

「とにかく唯一の手掛かりはアルミケラ病院にある筈!!」

「行きましょう!アルミケラ病院はすぐ近くです!」

エイダとエアはアルミケラ病院へ向かう事にした。

エイダはふと思い出したようにエアに言った。

「そう言えば!BSAA隊員のジル・バレンタインからもらった資料。

まだ確認していなかったわね!」

「そうだったな。」と言うとエアは背中のコンテナ型のバックから

分厚い紙の束の入ったクリアケースを取り出した。

とりあえずジルの資料を確認しようとエイダとエアはまだ緑色のベンチに腰を掛けた。

そしてクリアファイルのロックを開けた。

早速、エアとエイダはクリアファイルの

中身の3枚の資料を順番に手に取って読み始めた。

最初の資料はとりあえず『静かなる丘について』の資料を読んだ。

とにかく自分はまだ『静かなる丘』について何も知らない。

エイダも前にここに来た事があるらしい。

それでも彼女も初めてなので良く知らないようだ。

とにかく何が起こるか分からないのでエアもエイダも少しばかり情報が欲しかった。

だけど?何故?ジルは敵対する組織に情報を渡したのだろう?

するとエイダがエアに向かってこう答えを出した。

「HCF、秘密組織ファミリー、BSAA、ブルーアンブレラ社。

そしてこの世界は深く繋がっているのよ!」と。

「と言うとこの任務の目的は?」

「説明していなかったわね。バタバタしちゃったから!」

エアの質問にエイダはそう言えばと思い出し、今回の任務の説明をした。

「勿論!一ヶ月の保安部隊とスパイの合同ミーティングで

色々この現代を取り巻く状況を聞いたわね」

「はい!現在!例の魔獣新生多神連合とこちら側(バイオ)の世界の僕達の世界へ

大天使や天使達が侵入。しかも大天使や天使達を殺す魔獣新生多神連合側の

魔女王ホラー・タマモノマエの争いと言った両者の対立が裏で行われているとか?

しかも両者は時空の壁を隔てて諜報や暗殺が何度も繰り返されているらしいですね。

リーさんから詳しく説明を聞きました。」

「両者の対立の原因はどうやら私達とは違うパラレルワールド(並行世界)の

第3の世界(真・女神転生Ⅳファイナル・ロウルート)における唯一神と悪魔王との

ハルマゲドン(最終戦争)後、唯一神側が勝利して悪魔王の残党の

堕天使、魔王、外道と言った悪魔達が時空の彼方に追いやられた。

そして私達のこちら側(バイオ)の世界に時空を操る

魔獣ホラーの介入によって流れ着いたらしいわ。それから現在はー。」

「はい!悪魔王の残党の堕天使や魔王、外道と言った悪魔と向こう側(牙浪)の世界に

住む魔獣ホラー達と時空の彼方に追いやられた異教の神々が集まって

唯一神組織『魔獣新生多神連合』が組織された。

一方で唯一神、大天使、天使のパラレルワールド(並行世界)にある

東のミカド国軍が2つの壁を隔てて対立中なの」

「まるでベルリンの壁みたいですね」

「更なる諜報員の調査で唯一神側の天使は強力な結界を使って

こちら側(バイオ)の世界の行き来を完全にシャットダウンしたそうよ。

そして今、BSAA、アメリカ政府、アメリカ大統領もエージェント組織OSAも

私達、HCFもブルーアンブレラ社も魔獣新生多神連合側に付いて、協力しているわ。

裏取引で。知ってるでしょ?リーとジョンの密約の話を。」

「はい!両者が対立して一種の冷戦状態だとか?

あとアメリカ政府やトルコ政府はそれを知っていて。

トルコ政府はその状態を悪魔冷戦と呼んでいて。彼らは裏でアメリカに

複数の潜入員(モール)を送って内部情報を探っていたようですね。

それからトルコ政府はこの悪魔冷戦を自由主義・資本主義陣営の魔獣新生多神連合

キリスト教共産主義唯一神の天使軍団の対立と解釈しているそうよ。

勿論私達もトルコ政府も自由主義・資本主義陣営の

魔獣新生多神連合側に付いているのよ。

あとトルコ政府は今回の『静かなる丘』の異変と全米各地に発生している

『リビドーストランディング(性の座礁)』から出現した未知のクリーチャーの

調査の為に軍をステルス機を利用してアメリカに近々上陸するみたいだわ。」

「そんな?まさかトルコ陸軍や空軍が??」

「ええ、アメリカ上空でステルス機能の付いたトルコ空軍の輸送機

A400アトラスが目撃されたそうよ。」

「連中が到着したら軍事作戦を??」

「しかもどう言う訳かアメリカ政府はそれを黙認しているわ。

恐らく秘密組織ファミリーの取引相手だから・・・・・」

「成程、狙いは僕達と同じ『R型暴走事件』で『R型』が創造した

巨大BOW(生物兵器」のエロースから見つかった

未知のデモニックジーン(悪魔遺伝子)と『静かなる丘』から

出現したクリーチャー達の生態サンプルか?」

エアは両腕を組んで考え込んだ。エイダも真似をして両腕を組んで考え込んだ。

しばらく二人は黙って考え込んだ。続けてエイダはこう言った。

「あと軍事作戦はモーテル内で開始されるそうよ」

「もしかしたら!もう始まっているかも知れない。」

エアは白い霧に覆われた空を見上げた。

しかしエイダはエアにこう言った。

「でも!まずは!私達の仕事をしないとね」

「まずは消えた魔人フランドールがいるかも知れないアルミケラ病院に行かないと!

ただあの写真のように全身火傷が本当なら!早くしないと不味いですよ!」

「と言うより今回の仕事が出来るかどうか・・・・・・」

エイダとエアは不安な表情のまま再び路地を歩き出した。

 

(第8章に続く)