(第44章)虐待された男達による怨念達の宴

(第44章)虐待された男達による怨念達の宴

 

(フィッシャーズのメンバーのモトキが書いた手記の続き)

「何処かで20代の男性の幽霊が現れたり消えたりして。

相変わらずカメラやスマートフォンには『呪い殺す!ここへ来るな!』

と聞こえたりした。あとはドンドン!と扉を激しく叩く音やエレベーターが

ガチャガチャ開いたり、閉じたりして。

いきなり建物全体が上下左右に地震みたく揺れたりして。

ポルターガイスト現象がヤバくて。みんなヤバって言う空気がずっと流れていた。

本当にさ!!それでアルミケラ病院の中を彷徨っている内に

病室のベッドの上に神話っぽい絵本があって具体的な内容はー。

『神の従者であり、輪廻転生を司る天使と赤い服の看護婦の救われなかった魂は

遂に結ばれて最強の神の腕にして神の兵力の娘が産まれる。

2人から産まれし分霊の子』みたいな内容でなんかその絵がさー。

途中までは子供向けの内容なんだけど。

途中から子供と言うか公の場ではちょっと見せられない内容なってんだよね(汗)

動画でもさ。ユーチューブの成人的な制約でモザイクにしているけど。

本当になんだろうね?誰が書いたんだろうね?分かんない。

あとアルケラ病院のアルミケラ病院(間違えた)の外の骨董屋に

偶然どうやって辿り着いた分からないけど。しかも外は白い雪と霧が降っていて。

しかもまだ夏場なのに冬みたいに寒いんだよね。息も白いしさ。

それで骨董品屋の鍵を使って中へ入ったんだけど。

階段を下りて置き時計の張ってあるメモを見つけたんだけど。

それによると『赤の祭祀』と書かれていて内容はー。

『語れ。我は真紅のものである。嘘と霧は彼らではなく、また我である。

我らは我が一人である事を知っている。そう、一人は我である。

おお信じる者よ。四百の僕、七千の獣と共に言葉を聞き、そして語れ。

太陽の下にあってもそれは忘れてはならない。無限の盲目と降り注がれる矢。

それは我の復讐である。枯れ行く花の輝きと否定される死者、それは我の祝福である。

汝らは我と我を司る全ての沈黙の内に称えよ。

赤き心臓を四方へ放つ誇り高きよ。白き酒を満たす杯、全て始まる』とある。

それで骨董屋の置き時計の奥の部屋の地下に祭壇があってー。

しかも床にはヤバかったよー。なんせー。なんと言えばいいか。

ガチで本物の死体があったんだよ!!男の人で。

既にミイラ化していて体格からして男の人だと思うけど。

全員絶叫したよ。シルクが慌ててスマホで警察呼ぼうとしたけど無理で。

祭壇が見た事も無い模式で三角頭の絵があってー。

カップの中に粉のようなものが入って。

触っていないよ。いかにもヤバそうだから。

あと白の香油とか黒曜石の酒杯がご遺体の男の人も周りに置いてあったんだ。

あとでリサと言う人から聞いたけど。古い儀式で死者を復活させるらしい。

しかも男の人は儀式をした後に自らナイフで刺して自殺したらしい。

成功したのかは分からない。血塗れのナイフが転がっていて。

もうヤバ過ぎてみんな外に出てー。アルミケラ病院の受付に一度集合して。

それでリーダーのシルクがアルミケラ病院の受付で見つけたメモにかなり

おかしな事が書いてあってさ。

内容はシルクが全部読んだけど。あいつの顔が完全に顔面蒼白だった。

『これから起こる出来事』『アレッサ』『アキラ』

『魔人フランドール』が関係しているらしい。

ロケは完全中止。それから『本当に大変な事が起こるぞ!』

と言ってすぐにスマホで鋼牙さんと話していた。

(彼はアサヒナ探偵事務所にいたらしい)あとあの骨董品屋の男の仏さんに

ついてリサ・ガーランドさんによると一人思い当たるアメリカ人男性がいるらしい。

名前は『マイキー・カール』って人だったかも知れないとか言っていた。

それからモーテルには行かずにキャンピングカーに戻って。

とりあえずさっき撮影した動画はマサイの編集でSE無しで

テロップにも注意や警告を入れた文字やマークを付けた上で

チャンネルにアップしたみたい。

あとはリーダのシルクのさっきあった話と『静かなる丘』には

決して近付かない様に何度も念を入れて視聴者さんにお願いするのと

行くのなら責任を持って下さいとか。

何が起こっても身の安全は保障しませんと言う事を伝えたそうだ。

でもそれから鋼牙さんとニューヨーク市警の刑事さんが来て。

どうやらシルクの言う通り大変な事が起こったらしい。

今は町は危険な状態になっているようです」

「やっぱり。彼らも同じ体験をしていたんですね。」

「じゃ!エアも血塗れの赤い服の看護師に遭遇したの?」

「勿論です!マジでビビりましたよ!あれはヤバかった!」

エアは顔を青くして回想した。エイダはくすくす笑っていた。

「笑い事じゃないですッ!」

「あらあら。ごめんなさいね」

その2人の横でレッドフランドールはこう口を挟んだ。

「でも彼女は悪い霊じゃなかったでしょ?」

「まあ、そうだね」とエアは生返事をした。

そして3人はモーテルの多数の部屋がある長四角の番号部屋を一つ一つ調べていた。

エアとエイダとレッドフランドールはうろついているストレイドジャケットフランや

ツーバック、ワンバックの攻撃をかわしながら茶色の扉の前に立った。

305号室の前にエアが立った時、部屋の中から声がした。

「あたしは。独り。私は独り。貴方も独り?抱いて!抱いて!」

306号室の前にエアが立った時、また部屋の中から声がした。

「貴方は昆虫っぽいけど現在の理想の男の人。愛して愛して抱いて!」

307号室にエアが立った時、またしても部屋の中から声がした。

「あの男は私を殺そうとした。でも貴方は違う。優しい。優しい。」

308号室にエアが立った時にまた部屋の中から声がした。

「向こう側と言う言い方は正しくないのかも?その部屋に壁は無いの」

最後の309号室にエアが立った時、もう何度目か部屋の中から声がした。

「現実と非現実の壁の境目。ここは近くかも知れない遠い場所」

ちなみにエアには聞こえるがエイダには

全ての部屋の中の声はひとつもしなかったと言う。

つまり聞こえていたのはどうやら僕だけのようだ。

さらに『STAAF ACCOMODATION』の2つの扉の前に立った。

今度はエアには全く聞こえていないがエイダにははっきりと聞こえた。

しかも複数の女性の声だった。

「あの男は殴ってきた」「あの男はしつこく私を殴った」「私は傷だらけ」と。

その女性の声はエイダの頭の中でどんどん増えて行った。

「あの男は私を殴って思い通りにしようとした。

私は反メディア団体ケリヴァーの活動に疑問があった」

「やめたいと頼んだ!でも!あいつは!団体を去ろうとした私を!

数人の強い男で囲って集団で殴りつけた!」

「こわい。こわい。助けて!助けて!そう願った!」

「無理矢理活動に協力させられた。あの悪魔共!!」

「苦しくて辛くて誰も手を差し伸べてくれなかった!!」

その時、エイダの脳裏に漠然とあるイメージがよぎった。

無力な女の子達。日本人やアメリカ人やイスラエル人、たくさんの女の子。

ただただ「止めて欲しい!止めて欲しい!」と泣き叫ぶ女の子の声が

まるで蝉の鳴き声のように頭が痛くなる程まで響き続けた。

容赦なく集団で振り下ろされる沢山の拳達。

衣服を引き裂かれる音と共に筋肉質の男達が女の子達に向かって覆いかぶさって行く。

次第にうるさいくらいの息遣いが激しくなって行く。まるで家畜小屋の獣のように。

やがて泣き顔は虚ろな表情に次第に変わって行く女の子。

更にドンドン激しくなる息遣い。全員二度と立ち上がれなる女の子達。

支配欲で喜びに浸る男達。

気が付くとエイダは両眼から涙を流し、両頬まで伝っていた。

「ううっ!うっ!うっ!あっ!あっ!ちくしょーちくしょー!

相手の気持ちなんかどうせ考えないのよ!クソ男!クソ男!殺してやる!!」

エイダはまるで幽霊に身体を乗っ取られたかのようにいきなりエアに

向かってマシンガンの銃口を向けた。エアは大慌てで両腕を上げた。

「エイダさん!落ち着いてください!」と大声で叫んだ。

エアは冷静を装っていたが内心大慌てしていた。

エイダは怒りに満ちた表情でエアを見た。茶色の瞳は狂気を帯びていた。

「あんたも同じよ!下心があるんでしょ?!このっ!このっ!」

エイダはマシンガンも引き金を引いた。エアは大慌てで全速力で駆けた。

そして角を曲がり、横の建物の壁に身を隠した。

「だああああっ!なんなんですか?エイダさん!ちょっと待って!!」

するとレッドフランドールは素早くエイダの背中に右掌を乗せた。

「やめなさい!!貴方達がそんなの事をしても何も変わらないわ!」

「うるさいっ!小娘!」そう言ってエイダは振り向こうとした。

しかしレッドフランドールはバシン!とエイダの背中を叩いた。

するとエイダは「うっ!」と唸り、そのままバタンとうつぶせに倒れた。

 

(第45章に続く)