(第58章)サイレントヒルの隠された神話(後編)

(第58章)サイレントヒルの隠された神話(後編)

 

10枚目のイコン画(宗教画)にはロブセルビス、スチェルバラ、

イロウルの4体の天魔達が大きな茶色の壺から大量の青い水を

大地に流し込んでいる様子が描かれていた。

たちまち大地は水で覆い尽くされて大洪水となっていた。

その中に宇宙船に似た方舟が水に浮いていた。

方舟の中には2人の日本人の他にも様々な人種と動物達が乗せられていた。

文章にはこうあった。「4体の天魔達は反逆した敗者の人間。夜の女神ニュクス。

神に従った動物達を絶滅させるべく白痴の魔王の許しを得ないまま。

大洪水を起こした。白痴の魔王はその光景を見て深く悲しみ人間や動物達から

1対づつ方舟に避難させて40日に及ぶ大洪水から救い出した。

生き残った人間達と神を見て多数の

他の神々や天使達は怒り、白地の魔王に訴えました。

「『白痴の魔王』よ!人間やこの神は汝に逆らう者達だ!

全て滅ぼさなければならない。』と

『彼らは既に汝が創りし人間では無く神の呪いの力を持っている!

いずれ!『静かなる丘』を土地を中心に世界に

呪いを広げる死者の集まる禍(わざわい)の神となるだろう!!』

白痴の魔王は答えました。『多数の神々と天使よ!お前達も我に逆らった者達であり、

同罪と言えよう!そして争いを止められなかった私の罪で在り、神の罪でもある。

よって人間が大地に満ちるまで神とその他多くの神々、天使を封印せん。

そして人間が我や神に逆らう者達なのか確かむべし。』と。

白痴の魔王は天魔ヴァルティエルとアルミサエルと生き残った

その他、神々と天使達に神に『静かなる丘』の土着神となり。

周囲の先住民や移民達の人々を初めとする人間の監視を命じて地上に戻した。

『人間が大地に満ちた時に完全な器を見つけ、直接人間を観察するように』と。

『静かなる丘』の土着神に命じた。

神はその白痴の魔王の命にしたがった。」とあった。

「白痴の魔王って?まさか?」

「ええ、そうよ!」と驚くエア達に対して魔人フランドールは冷静に答えた。

「えっ?えっ?白痴の魔王って?」と鳴葉。

クトゥルフ神話の神様でよく日本のネットで語られている?」

「はい!良く日本の最強の神様は誰かで議論に出てくるのは

グーフィから良く聞いていましたが。」

「そう、万物の本来の創造主。人間や動物、世界を創造した魔王アザトホース。

彼なのよ。『静かなる丘』の土着神と多数の神々と天使や私達は彼らの子孫か血族。

もしくはニャルラトホテプの化身かも知れない。だとしたら?

本来の『静かなる丘』の土着神はきっと・・・・・」

「きっと?なんなの?」とエイダ。

しかし魔人フランドールは答えを出さず結論を珍しく言わなかった。

彼女はまるでお茶を濁す様に曖昧な回答をした。

「まだ分かんないけど。多分、そうじゃないの?」と。

鳴葉とエイダは深く考え込んでしまった。

しかしエアは分かっていた。神話生物。特にクトゥルフ神話生物の神や

悍ましい儀式や知識は人間を狂わせて破滅させる。

きっと彼女も気を遣っているのだろう。

エアはエイダと鳴葉に「それ以上知らない方がいい」と言った。

するとエイダとエアはお互いお互い顔を見合わせた。

エイダはエアの言葉の意味を汲み取り、鳴葉にこう言った。

「そうね!これ以上深入りしない方がいいわ。」

鳴葉は納得しない表情でうーんと唸り続けた。

「と言う訳でこれ以上はおしまい!」

パン!と魔人フランドールは両手を叩いた。

それからいそいそとエアとエイダと鳴葉の先頭に立った。

それから先へ進もうとした時、エアはふと近くの台座に置いてある偶像が目に入った。

どうやらジル・バレンタインがモデルのようだった。

しかもそれは数年前に初めにジルとクリスが鋼牙達に出会った時に

ドラキュラ伯爵に依頼されて倉町浩平事、魔獣ホラー・ガーゴイル

造形家として制作したソフィアマーカーの造形だった。

それはジルとドラキュラ伯爵の両方の特徴を持つ魔獣ホラーのものだった。

そしてこれは生前にホラー化して封印されるまで自分に才能がないと

絶望していた倉田はドラキュラ伯爵に初めて才能を認められた事に涙した。

エアは知らないが倉町公平事、魔獣ホラー・ガーゴイルにとっては

とても思い出深い作品である。エアはとりあえず回収した。

エアとエイダと鳴葉、魔人フランドールは

オルガンの近くにある茶色の扉を開けて進んだ。

そこは曲がりくねった木の床と白いコンクリートに覆われた

壁が長く続く廊下になっていた。

そして曲がり角には茶色の扉の横に木製のフェンスが壁に

なっていて赤いカーテンで部屋の中は見えなかった。

どうやら懺悔室のようだ。エアは部屋の中へ入って見た。

しかしエイダも鳴葉も魔人フランドールも入らなかった。

懺悔室には絵と神父の写真が飾られていた。

懺悔室の目の前には木の長四角の扉と長四角の机があった。

そして扉の奥から女性らしき声がした。

「あああっ!あっ!私はどうすればいいのでしょうか?!

ここになんか来るのではなかったのです!恐ろしいズタ袋の男達に襲われて。

転んで気が付いたら懺悔室にいました!私は無力です!!

ズタ袋の男達にレイプされて仲間達はズタ袋女になってしまいました!!

私は必死に走って逃げました!神よ!お許しください!

頭のおかしな彼らに性行為を強要されて助けられなかった!

私を!!私は自分を守るのに精一杯で仲間を見捨ててしまいました!

私は必死に自分の生にしがみついていました!!

あの悪魔と悪鬼からどうか私を守って下さい!今はここに隠れていました!

凄く怖いんです!怖くて怖くて堪りません!!どうか!どうか!

ただ無限の慈悲のかけらをお与え下さい!

楽園でも仲間達に再開できるように地獄ではなく煉獄へ送り下さい!

私はそこで罪の償いをいたします!炎の中で祈り!

償いの終わる日を従順に待ち続けます。お許しください!」

そして女は外にいる誰かに向かってこう言った。

「ただ一言許すと言う言葉をお恵み下さい!」と。

エアはどう答えたらいいかしばらく迷った末に決心してたった一言。

「許す」と声をかけた。すると「ありがとう」と言う言葉が返ってきた。

やがて赤いカーテンが開き、木の長四角の机の上に昔懐かしい

8mmテープが2本出てきた。エアはそれを回収すると懺悔室を出た。

エアは外で待っている鳴葉とエイダに合流した。

エアは鳴葉とエイダに8mmのテープを見せた。

エイダはたまたま持っていた古いビデオカメラで再生させてみた。

カメラのモニター画面には教会のどこか広い部屋の映像のようだ。

床は白い汚れたタイルと錆びだらけのタイルが一面に敷き詰められていた。

それから部屋の隅に赤い椅子が沢山乱雑に置かれていた。

ビデオカメラはその赤い椅子の上に置いてあった。

部屋の中央には純白のシルクの美しい花模様の付いたウェンディングドレスを着た

詩音らしき日本人とアメリカ人のハーフの女性が立ち尽くしていた。

そこにあの無数のマネキンの肢体をカチャカチャと音を立てて

白いタイルの廊下を歩いていた。

それは以前の映像で見た通りの蜘蛛の姿形をしていた。

しかし基本は蜘蛛の姿は変わらないがその以前の映像の

リベラルアーツカレッジ女子大学や

メルヴィス女子大学と日本の東京の六本木の中学校に

現れたアキュラスは超巨大な蜘蛛の姿をしていた。

しかし現在の詩音のビデオカメラの映像に映っている姿は

少し違っていた。あの性的暴行を加えて若い女性をマネキンに変えて

自らの体の一部にして身体を超巨大に膨らませていた頃とはかなり違っていた。

アキュラスの身体は超巨大な蜘蛛の身体が縮んで小さくなっていた。

その体長は大体3m位だろうか?とエアは考えた。

アキュラスの蜘蛛の身体に付いている複数の顔は少年から

青年20代の顔つきに変化していた。

その中心部のアキュラスの20代の頭部と顔は開いており、

内部にはエイリアンのような真っ赤なフードに

覆われた顔と大きく開いた口から伸びたもうひとつの口は小型サイズになっていた。

少なくともエア、鳴葉、エイダ、魔人フランドールにもそう見えた。

目の前には詩音が立っていてアキュラスを見つめていた。

「いずれこちら側(バイオ)の世界は完全に復活した神によって浄化される!

今!君たちは新らたな種として進化しなければならない!!

だから僕と神の使者と契約して交わり、人の形を捨てて子供を残さなきゃ!

ズタ袋男や女達から身を守れなくなるんだよ!」

「じゃ!契約すれば私と子孫は守られるの?そうなの?」

「違う!騙されるな!人間の子よ!それは甘言に過ぎない!」

「誰だ!僕の邪魔をする奴はあっ!出て来い!この!」

「私は天魔アルミサエル!人の子よ!人間として生きる道はある!」

「人間として生きる道?何処にいるの??お願い!姿を見せて!」

そこで8mmテープが無くなり、たちまちビデオカメラの

モニター画面が真っ暗になって何も映らなくなった。

鳴葉は「この声?どこかで?まさか?マイキー?」と呟いた。

魔人フランドールは

「・・・・・・彼は人の形を捨てても心は捨てていない」と呟いた。

しかしその数秒後に急に教会の建物全体が上下左右に激しく揺れ始めた。

「きゃあああああああああっ!!」

鳴葉は両腕を素早く上げて、近くにいたエイダに抱き着いた。

エイダはいきなり鳴葉が急に抱き着いたせいでバランスを崩した。

彼女の華奢な身体がバタン!と仰向けに倒れた。

「わわあああああああああっ!!ちょっ!痛っ!ひゃああっ!」

エアはバランスを崩した魔人フランドールの身体を両手で受け止めて支えた。

その時、エアと魔人フランドールはお互いの視線が合った。

その瞬間一瞬だけエアと魔人フランドールは顔を赤くした。

やがて激しい上下左右の大きな地震は徐々に収まって来た。

そして大きな地震は直ぐに完全に停止した。

「何だったのかしら?」とエイダ。

「ああ、びっくりしたよおおっ!!」と起き上がりながら鳴葉は言った。

「分かりません。一体何だったのか?」とエア。

エアは魔人フランドールを立たせるのを手伝いながらそう言った。

大きな地震は収まり、良く分からないまま全員、落ち着いた。

そして気を取り直して教会の捜索を始める事で全員の意見が一致した。

 

(第59章に続く)