【東方ヴォーカルPV】純情アルメリア(Vo:あやぽんず*)【森羅万象公式】
(第28章)暗黒塹壕の戦い(後編)
『静かなる丘』の『RIVERSIDE DR』にある倉庫の裏世界。
天魔エグリゴリと戦闘中だった鋼牙はトラックに
撥ねられたような強い衝撃と共に弾き飛ばされていた。
鋼牙は空中で前転して真っ赤なガラスの床に着地した。
「今の見たか?ザルバ?」
「ああ!一瞬だけだが」
鋼牙と魔導輪ザルバは一瞬だけ敵が見えたのを
手掛かりに敵の正体を突き止めようとした。
しかしすぐに暗闇から「投擲!」と言う男の掛け声と共に
コロコロと真っ黒な球体が鋼牙の方へ転がって来た。
次の瞬間、バチン!と破裂した。
同時に鋼牙は赤い煙と共に身体を吹っ飛ばされた。
鋼牙はうつぶせに倒れたが素早く前転して立ち上がった。
鋼牙は無茶を承知の上で真っ直ぐ暗闇の中に飛び込んだ。
そこに真っ黒な弾丸や真っ赤に輝く弾丸がマシンガンのように
次々と一直線に、走る鋼牙の方へ向かって行った。
しかし鋼牙は焦らず全てを魔戒剣で弾き返した。
キィィン!ピイイン!と言う金属音がしばらく鋼牙の耳に聞こえた。
鋼牙は赤い床を駆け抜けた。
しかし次の瞬間、超高速で伸びてきた強靭な頭部が鋼牙の全身、正面に衝突した。
鋼牙はトラックに撥ねられたような強い衝撃と共に弾き飛ばされた。
鋼牙は空中で前転して真っ赤なガラスの床に着地した。
「今の見たか?ザルバ?」
「ああ!一瞬だけだが」
鋼牙と魔導輪ザルバは一瞬だけ敵が見えたのを
手掛かりに敵の正体を突き止めようとした。
しかし未だに真っ暗闇の中に敵は隠れ続けていた。
だが不意にまた男の声がした。
「アヤ・ブレア」
「何か忘れているのか?」
「アヤ・ブレア」
「アヤ・ブレア?まさか?若い女性の中にその女性がいるのか?」
「もしかしたら?あいつはその女性を探しているのかも?」
「それであいつはアッシュフィールドの街で200987万人をさらったのか?」
鋼牙とザルバは耳を澄ましたがそれ以上は何も聞こえなかった。
ただ同じ言葉が繰り返された。間も無くして魔力を帯びた荷電粒子砲が飛んで来た。
鋼牙は全速力で右側に走って回避した。
「アヤ・ブレアをハッピーエンドにしてくれ!」
「アヤ・ブレアを殺すな!」
「アヤ・ブレアを返せ!」
「何を忘れている?」
「思い出せ!思い出せ!」
真っ暗闇からまた男の声が聞こえた後、またしても真っ黒な
鋭利な槍状の棘に覆われた弾丸が高速で鋼牙に向かって飛んできた。
鋼牙はまた左側に回って全て回避した。
しかし走っている途中に鋼牙の足元でズドオオン!と大きな爆発音がした。
同時に鋼牙の身体がフワッ!と宙へ浮いた。
そしてドーンと真っ赤なガラスの床に仰向けに倒れた。
鋼牙は甲高いキイイイン!と言う酷い耳鳴りがした。
そして何も聞こえなくなった。しばらくして魔導輪ザルバの声が遠くから聞こえた。
「おい!鋼牙!大丈夫か?」しかし遠くから聞こえる魔導輪ザルバと
キイイイン!と言う甲高い耳鳴りが鳴っているせいで鋼牙は良く聞こえなかった。
やがて鋼牙の耳鳴りは収まった。
続けて真っ赤な弾丸がマシンガンのように連続で飛んで来た。
鋼牙は素早く左右に転がり、全ての弾丸を回避した。
それから急に激しい射撃攻撃がぴたっと止んだ。
そしてすぐに「ドシーン!ドシーン!」と言う大きな音がした。
それは足音のようだ。やがて分厚い赤い鎧に覆われた4足歩行の巨大生物が現れた。
その姿は奇妙だった。逆三角形の頭部にまるで牛の角のように大きく捻じれた
2対の太く長い角。ドリルのようにグルグルと回転する突起物が
6対互い違いにズレて並んで生えていた。
ばっくりと開いた口内には上下に無数の牙が並んでいた。
しかも奥には三列に並んだ太く短い筒状の舌が生えていて
先端はまるで大砲のように丸い黄色の穴が開いていた。
首はグルグルと回転する鋭利な刃の付いたヒレが何枚も一直線に並んで生えていた。
更に捻じれたような太い両脚と2対の長い爪。更に両脚も首と同じ
鋭利な刃の付いたヒレが何枚も重なっていた。
両肩には鋭い曲がった爪が生えていた。
両脚のみならず前脚も同じだった。
また尻尾は太く長く分厚い真っ赤な鱗に覆われた皮膚をしていた。
尻尾の先端にはまるでクジラのような大きなヒレが生えていた。
その形がうちわにもハンマーにも見えた。
「こいつが正体か?」と鋼牙。
「でかいな!」と魔導輪ザルバ。
すると天井をから見ていた天魔ヴァルティエルは謎の巨大生物について
頼まれてもいないのに一人で勝手に解説し始めた。
「彼は天魔エグリゴリ。かつて彼はある事件によって神に等しき存在となり、
彼女の精神の破片から誕生した。それから私は母親から引き取り、
完全な天魔として転生させた。
彼はエノクの書の最古の天使の名前が与えられた。
彼は転生後、神の命によって異世界から現実の世界の人々を見張り・観察し続けた。
やがて神の命により、世界の滅亡に人々が生きるように決められた
若い娘達を妻にし、沢山の天魔と人間の混血児の子供達を妊娠させた。
そして今でも彼は神の命として子供を人間の娘に宿させている。」
「目的はなんだ?」と鋼牙。
しかしそれ以上、天魔ヴァルティエルは答えられず沈黙を守った。
「答えないか」と呟くと鋼牙は改めて4足歩行する
巨大生物『天魔エグリゴリ』を見た。
遂に姿を現した天魔エグリゴリは口を大きく開けた。
そして奇妙な鳴き声を上げ続けた。
鋼牙は素早く魔戒剣を天空に掲げた。
続けて頭上でヒュッと空を切り、一振りした。
間も無くして頭上に円形の裂け目が生まれた。
更に円形の裂け目から黄金の光が倉庫の裏世界全体を覆い尽くした。
間も無くしてゴルルッ!と言う狼の唸り声がした。
彼は狼を象った黄金に輝く鎧を纏っていた。
更に手に持っていた銀色に輝く魔戒剣は
黄金に輝く両刃の長剣『牙浪剣』に変化していた。
鋼牙は狼の仮面の緑色に輝く瞳で改めて天魔エグリゴリを見た。
すかさず黄金騎士ガロの鎧を纏った鋼牙は両手で
牙浪剣をしっかりと構えて走り出した。
天魔エグリゴリは口内の三列に並んだ太く短い筒状の舌から再び真っ赤に輝く
弾丸と真っ黒に輝く弾丸を鋭利な槍状の棘に覆われた弾丸を連続で
マシンガンのように鋼牙に向かって放って来た。
鋼牙は牙浪剣を右斜め、左斜めと素早く振った。
そして全ての3種類の弾丸を弾き返した。
さらに鋼牙は一気に天魔エグリゴリの足首を左右に素早く振り、切り裂いた。
バアン!バアン!と共に天魔エグリゴリの前脚は大きく弾けてくの字に曲がった。
どうやら切断出来なかったらしい。
だがすぐにシャキン!シャキン!と真っ赤に発光した。
同時にくの字に曲がった前脚はあっという間に元通りに再生した。
続けて天魔エグリゴリは首を天井に向かって伸ばした後、真上から真下に振った。
同時に自らの首を真っ赤なガラスの床に超怪力で叩きつけた。
鋼牙は天魔エグリゴリのヘッドバンドをまともに食らった。
さらに鋼牙の身体は一気に仰向けに遠くへ吹っ飛ばされた。
直ぐに鋼牙は立ち上がった。魔導輪ザルバは鋼牙にこう言った。
「鋼牙!どうやらあいつの肉体の各部位が独立した生命が宿っている!
しかもとんでもない再生能力をあるな。厄介だぜ!」
鋼牙は冷静に天魔エグリゴリに弱点が無いか探した。
天魔エグリゴリは再びヘッドバンドで攻撃して来た。
鋼牙はタイミング良く2mジャンプした。
「そこか?」と言うと鋼牙は牙浪剣を逆三角形の頭部に突き刺して手首を捻った。
バキイイン!と音を立てて天魔エグリゴリの頭部全体とグルグルと回転する
3対の突起のある上顎が砕けた。
結果、グルグルと回転する3対の突起のある下顎だけ残った。
しかしすぐに真っ赤な光と共に元通りに再生してしまった。
どうやら違うようだ。再び鋼牙は天空へ一気に駆けた。
天魔エグリゴリの背中に着地した。
すると背部に渦巻き模様の裂傷を見つけた。
すかさず鋼牙は牙浪剣を渦巻き模様の裂傷に深々と突き刺した。
天魔エグリゴリは激痛で甲高い声で吠えた後に男の声で「貴様!」と叫んだ。
続けて天魔エグリゴリは首を長くバネの様に伸ばした。
そして大きく後ろにグニャリと曲げた。
長く伸びた天魔エグリゴリの首は弓のように大きく曲げられた後に
グルグルと回転する8対の突起の生えた口を大きく開けた。
更に口内の短い筒状の舌から真っ赤に輝く弾丸と真っ黒に輝く弾丸。
鋭利な槍状の棘に覆われた弾丸を超高速でマシンガンのように鋼牙の
黄金騎士ガロの鎧の逆三角形の付いた背中に収束して攻撃し続けた。
3種類の弾丸は鋼牙の背中に直撃し続け、バチバチと火花を散らした。
(第28章に続く)