(第40章)リビド・ストランディング(性の座礁)の考察

(第40章)リビド・ストランディング(性の座礁)の考察

 

エアと鳴葉とエイダはようやく悪夢から覚めて上半身を起こした。

3人の隣にはホワイトフランドールの安心した顔があった。

3人がほぼ同時に周囲を見渡した。そこは既に療養所の中では無く

外の『ALLEN STORAGE』の建物前の

『TOLUCA ARE』道りの路上のど真ん中で眠っていたらしい。

周囲は白い霧に覆われた街の中だった。

やがてエアの耳にカサカサと言う僅かな音が聞こえて来た。

そして路上に落ちていた新聞を拾って読んだ。

『性的暴行被害者のテレビ局のアナウンサー!!ついに勝訴!!』。

数か月前にテレビ局のアナウンサーのしおりさんが同じテレビ局の

プロデューサーの男性に酒を大量に飲まされて意識を失い。

気が付いた時には性行為をされていて拒絶しても行為を続けた問題で

本人は性行為後、アフターピルで妊娠を免れている。

それから長い裁判の末にとうとう勝訴した。

しかしテレビ局のプロデューサーは直後に姿をくらまして行方不明となっている。

現在、更なる責任の追及の為に警察は後を追っている。

(その下にはブラックフランドールの落書きがあった)

望まぬ性行為を日本の美人アナウンサーに強要した。

性的暴行罪。本人に反省の色無し。

だから赤い三角頭(レッドピラミッドシング)の手で槍で下腹部を刺し貫く。

死んで生き返って。また槍で刺される。死んで生き返って。

また槍で刺される。一生救われない。永遠の死刑!!」

「他にもまだ裁かれない多くの罪人がいるのか?」

「全く酷い悪夢だったわ。あー怖かった。」と鳴葉。

『この静かな丘』の街には沢山の罪人が呼び寄せられる。

きっとエアの新聞のテレビ局のプロデューサーやあの療養所の3人以外

にも虐待したり、暴行したり、殺人をしたり罪を背負ってここに来る。」

エイダはエアの持っている新聞記事を読みながらぽつりとつぶやいた。

ホワイトフランドールはエイダ、エア、鳴葉が目覚めた事を心の底から大喜びした。

「あーあーあーよかった!よかった!」

それから3人はホワイトフランドールに言われた通りにモーテルへ向かう事にした。

この通りの先に『RIVERSIDRDR』の通りと十字路があり、

その上を行く『RIVERSIDEMOTEL』があるようだ。

そこにブラックフランドールはいるらしい。

直ぐに3人は意識がしっかりとはっきりして

きちんと正気なのかをお互い確認し合った。

日に3人はようやく霧に覆われた街の道を歩き続けた。

しかし不思議な事にこの通りだけクリーチャーの姿が1匹も見えなかった。

しかもあるリビドー・ストランディング(性の座礁)もファントム(幻影)

らしき不定形の黒光りの怪物もいなかった。

なんかおかしい。おかしい。何か嫌な予感がする。

エアがそう思っているとまた無線が鳴った。

エアが無線に出ると久しいHCFセヴァストポリ研究所から

自分が所属する保安部隊の仲間のグーフィから連絡がきた。

「何か分かったのか?グーフィ博士!!」

「んっ?ああ!分かったよ!大学の調査チームの分析で色々とね」

エアはそうやって無線の相手が一般人だと装った。

勿論、理由は鳴葉がいるからである。

グーフィもそれを察してくれてうまく口裏を合わせてくれた。

グーフィは話を続けた。「実は今回の調査分析で『静かなる丘』の街を

中心に世界中で発生しているリビドー・ストランディング(性の座礁)は

今回は初めてではなく過去に何度も起きているんだ。

実は大学の調査チームが残した例のUSD・20メモリーから

多数の画像データがあった。今、送って調査結果を報告するよ。」

それからエアの端末機のモニター画面に今度は次の画像が表示された。

「ここから話が結構長くなるが」とグーフィはそう前置きした。

鳴葉もエイダもエアの端末機の画像を覗き込んだ。

グーフィの話は無線のスピーカーを通して続けられた。

「この画像のデータは地質時代のものだ。それぞれ古代生物の画像。

この街で見たであろうあれがあったんだ。

まずはそれぞれの時代の生物の画像を見てくれ!!」

エアの端末機にはまずは生カンブリア紀時代に生息していた生物で

初めて酸素分子を作り出した細菌のシアノバクテリアの拡大画像が表示された。

3人が見ているとすぐに何かに気付いた。「これ?まさか?嘘でしょ?」と鳴葉。

「まさか?これが太陽の聖環??何でこれが??」とエイダ。

エアも驚きを隠せない様子で端末機のシアノバクテリアの画像を見ていた。

何故ならシアノバクテリアの表面に確かに真っ赤に輝く太陽の聖環が存在していた。

続けてエディアカラ生物群の一種で中央に仕切りのある船のような形をした

細長い形の多細胞生物プリティリディウムの皮膚にも太陽の聖環は存在していた。

続けて時代は変わり、泳ぐ為の鰭と飛び出た複眼に棘のある2対の触角のある

エビの仲間のアノマロカリスの背中にも太陽の聖環があった。

カンブリア紀の生物である。オルドビス紀最大のものは11mもあったと言う説がある

最大最古のオウムガイの仲間にカメロケラスの円錘状の殻に太陽の聖環が確認された。

そして最大の大きさでこの時代から最も繁栄していた三葉虫のイソテルスにも

太陽の聖環が確かに画像データが確認された。

シルル紀の5mm程度の小さな鋏角類でカブトガニやサソリの仲間で

現在のカブトガニに似た足や呼吸器官を持つ

オルファコスの殻にも太陽の聖環があった。

更に硬い骨の装甲と顎を持ち、初めて体内受精に成功した巨大魚のミクロブラキウス。

最古の淡水魚エリヴァビス。続けてまだまだ画像データは続いた。

そして画像データはいつの間にか時代が進み。

石炭紀の巨大なヤスデの仲間のアースプロレウラ。

最大の羽を広げた大きさが70cmのトンボのメガネウラ。

でかすぎるオタマジャクシの全長2mのクラッシギリウス。

半膜を持った初めての有半膜類ヒロノムス。更に時代は進んだ。

ペルム紀を代表するアーチ状の帆を持つ単弓類ディメドロン。

水中に適応した最初のは虫類メソサウルス。

原始的な爬虫類で体中を覆ったプロヴェロサウルス。

犬歯が大きくサーベル上の牙になっていたペルム紀後期の生態系で頂点だった

獣弓類リカエノプス。中生代には小柄で鋭い牙を持つ恐竜の祖先エオラプトル。

ジグソパズルのような縫合線を持つアンモナイトのセラフィス。

そして細々と暮らしていた胎盤を持つ遠い祖先のジュラマイア。

いずれも太陽の聖環が付いていた。

グーフィの話はエアの無線を通して話が続いていた。

それによると恐竜にも幾つかの種類ステゴサウルスやティラノサウルス

カルノタウロス。ゴジラサウルス(グーフィによると本当に実在したらしい。

実際はあまり大きく無い恐竜で5,5mの体長らしい。)

他にもシネミスガメラと言う大亀も実在したらしく甲羅に太陽の聖環があった。

8mから10mの巨大鰐のディノ二クス。

恐竜絶滅後の新生代には水陸両用のクジラアンケトウス。

いわゆる進化の途中のクジラの仲間。

恐鳥ガストル二ス。全長Ⅰ3mの巨大蛇ティタノボア。

最古の像のステゴテトラベロドン。同じ集団でいたマカイドウス。

初めての人類マルディピテクス。

そして現代人、つまり僕達の中にも太陽の聖環を持つ者達が」

「太陽の聖環を持つ人間って?どのくらいの人数がいるんだ??」

「記録では過去にダリア・ギレスピーの一人娘のアレッサ。

分離した彼女の分霊シェリル。アレッサの転生体のシェリ

(偽名はヘザーと名乗っていた)つまりシェリル・モリス・メイソン刑事さ。

そしてかつてアッシュフィールド地方都市のサウスアッシュフィールドハイツの

元住人のアイリーン・ガルビン氏にも全員共通して右掌に太陽の聖環が確認された。

まだ動物には確認されていない。また恐らく君とストークスの赤ちゃんにも

赤い太陽の聖環がある可能性が高い。

それに他にも6ケ月前から失踪していた20代から30代の女性達も

失踪直前に右掌に太陽の聖環のマークがあったようだ。

地方都市アッシュフィールドの街で失踪した20987万人以上のあの若い女性達だ。

他にも世界中で失踪した20代30代の多数の若い女性にも確認されている。

恐らくエンハンサーに何らかの霊的な影響を与えている可能性が出てきたんだ。」

「エンハンサーって何?さっぱりわからないんだけど?」

「頼む一般人に分かりやすく説明して欲しい」

「よろしい!コホン!ダニア・カルコザ博士によると

『地球上のあらゆる生命には遺伝子の動きを調節するレバー』がある。

それがエンハンサーと呼ばれる。

例えば今、神が復活したとして新しい環境に変わって行くとする。

そうしたら新しい環境で適応出来ない生物の種は絶滅する。

仮に新しい環境で適応するように進化した種は絶滅を免れる。

いずれ我々人類は絶滅か?進化か?選択を迫られている。

彼女達やSHB(サイレントヒルベイビー)はこの現世の今の時代と

異世界の奇妙な時代が繋がっている。臍の尾のように。

いずれ異世界は現世に招かれてしまう。

そうなれば僕達!人間や動物は絶滅と新しい人類と

動物の進化と次の時代に取って代わってしまう!」

「このままじゃ!今この世界の社会が崩壊してしまうな・・・・」

「あっ!ちょっと待ってくれ!」とグーフィ。

「どうしたんだ?」とエアはグーフィに尋ねた。

スパニッシュハーレムで『静かなる丘』の影響と思われる白い霧が発生!!

内部から巨大イカ型の生命体が出現!!

近くの売春店を次々と襲撃して若い女性や女の子を襲っている模様!!

3D分析画像を送る!!DNA分析もするよ!」

早速エアの端末機に3D画像が最初に送られた。

3D画像には巨大なイカの生命体が映し出されていた。

それはカニとクモを掛け合わせたような節足動物のようで

巨大なイカにも確かに見えなくもなかった。しかも僅かに人間にも見えた。

また過去にジルとクリスが洋館で遭遇したあのプラント42にも良く似ているな?

とエアも思った。

そいつは甲殻類の殻に似た胴体から8対の緑色の細長い蔓が生えていた。

しかもそれは人間の指に良く見えた。先端には花のつぼみがひとつづつ咲いていた。

また胸部と腹部の中央がバックリと開き、まるで女性器を思わせる形をしていた。

鳴葉はそれを見て思わず背筋が凍り付いた。またバックリと

開いた女性器の器官から紫色の4対の分厚い巨大な花弁が現れた。

また巨大な分厚い花弁の中央から細長い4対の蔓を伸ばした。

巨大な花弁と細長い4対の蔓の中央からひときわ太くて長いヌメヌメした

緑色の管状の触手が伸びていた。どうやらグーフィによるといわゆる生殖器らしい。

エイダは意外と平然としていたが鳴葉は顔や耳を真っ赤にした。

エアは冷静にグーフィに「DNA分析の結果」はと尋ねた。

「始祖ウィルスと賢者の石を検出。そしてDNAからはイカ

プラント42と最近失踪したと思われる日本人の女性で多分、アメリカ在中。

名前は田中萌歌さんのものに間違いありません!」

「そんな。あの化け物?人間から産まれたの?」と鳴葉。

「あるいは彼女の変異の成れの果てか?」とエア。

「多分、違います。こいつは交配種かも?」とグーフィ。

「えっ?じゃ?父親は人間じゃないの?」と鳴葉。

「こいつは雄で売春婦達と交配しています。

恐らく父親はこの地球上の生物じゃないかも?

あと分析によると『静かなる丘』の白い霧の異世界からではなく

恐らく何らかの方法で過去から遡るように送られた形跡が。」

「一体?誰が?」とエア。

「分かりません」とグーフィ。

「そうか」とエアは残念な表情で返した。

それからグーフィは太古の生物達と太陽の聖環の話に戻った。

 

(第41章に続く)