(第15章)甘き死よ来たれ(後編)

(第15章)甘き死よ来たれ(後編)


www.youtube.com

 

円形の大きな鏡には泣きじゃぐるしゅがーと彼女をなだめる

アサヒナ・ルナと魔女王ホラー・ルシファーの横で鬼島神具は「クソっ!」

と怒り狂ってコンクリートの床を拳から皮膚が裂けて血が出るまで殴り続けていた。

さらに長い間、悔しさの余り怒号を上げ続けているのが見えた。

そして場面が大きく変わり別の場所が映し出された。

鏡には聖ミカエル病院の病棟内部だった。

病棟の床や壁にはオレンジ色の液体が大量に飛び散っていてこびりついていた。

また床や壁にはオレンジ色の液体になる前の生前に着ていたであろう

白衣や看護服や病院服や『ちゃき』と『りあら』『ゆいにゃ』の

お気に入りの服がオレンジ色の液体の中に沈んでいたり、張り付いていた。

さらに廊下や部屋には大量の青緑色に輝く大きな球体が浮かんでいた。

また病院内部は赤い光を帯びていた。

『おこさまプレート』のメンバーを初め、大勢の病院関係者や看護婦や

一般市民は運悪く死神ホラー・タナトスの陰我のあるオブジェ(物体)

としての強力な賢者の石と死神の力を帯びた赤い光の波動を

放った事により赤い光を浴びてしまった人々は生命の力を消失してしまい

肉体が維持出来ずにそのまま崩壊し、原始の姿に還った。

その結果がオレンジ色の液体の姿をした生命のスープだった。

また肉体から飛び出した青緑色の輝く魂はそのままふわふわと宙を漂い続けた。

やがて大量の魂は一か所に集合すると天井に現れた真っ赤に輝く

天使の輪の中に次々と吸い込まれて消えて行った。

やがて全ての青緑色の魂が天使の輪に吸い込まれると

僅かに帯びた真っ赤な光と共に跡形も残さず消失した。

周囲は不気味な程に沈黙していた。

天使の輪に吸い込まれた大勢の人間の魂は下へ下へと落ち続けた。

やがて天使の輪を通り抜け大勢の魂はどんどんまるで

一筋の青緑色の光となり、生と死の境界の三途の川の上空から

ヒラヒラとまるで桜の花びらのように降り注いだ。

そして三途の川の砂浜に立っていた死神ホラータナトス

無数の獣のような牙が生えて並んだ大きな口を開けたままにした。

死神ホラータナトスは上空から降ってきた大量の人間の魂を口から

どんどんどんまるで掃除機のように急速に吸い込んでい行った。

死神ホラータナトスの口の中に吸い込まれた大勢の人間の魂は

彼女の食道を通り抜けて体内の胃に当たる部分から生き物には存在しない

特殊な管の中を通り抜け抜け、胃で消化されず無傷で大勢の人間の魂は

死神ホラー・タナトスの下腹部に存在する子宮に似た広い空間に閉じ込められた。

大勢の人々の魂は最終的には偽世界の『東京』に最初に存在していた

大人の姿をしていた人々の魂と心はお互い融合してひとつとなった。

彼女達、彼達も彼女は楽園創造の新人類のSHB(サイレントヒルベイビー)の

赤子の中に転生されるその日まで男女でセックスと恋愛を模倣していた。

ほとんどの人々が転生されるその日まで全ての前世の記憶は完全に消滅していた。

しかし『ちゃき』と『りあら』『ゆいにゃ』だけは前世の記憶が保たれ、残っていた。

それは前世の記憶や思い出に強い想いがある為だった。

しかし融合してしまった不特定多数の心からは逃れられず

大勢の男女の心に飲み込まれた。

 

現実(リアル)のこちら側(バイオ)の世界。

鳴葉とエイダと破壊神ミカエルは地上へ続くエレベーターから

出て来たケリヴァー・ミショナリー10体を全て倒し尽くした。

破壊神ミカエル以外、エイダと鳴葉は

少し疲れた様子でエレベーターの中へ乗り込んだ。

そして地上の教会の一階に移動した。

しかしそこは全く別の場所になっていた。

3人がエレベーターから降りるとそこは赤い血と錆に覆われた

一番端に崖のある四角い道では無く何故か教会の外のとても

広い正四角形の緑の芝と花に覆われた広場に出た。

「あれっ?ここはどこ?裏世界?」

「いや!どうやら表世界のようだね」

鳴葉はエイダの指摘を受けて周囲を見た。

確かに表世界特有の真っ白な霧に覆われていた。

だが緑の芝生と花に覆われた広場の奥から男の絶叫が聞こえた。

すぐにエイダと鳴葉、イエローピラミッドシング事、

破壊神ミカエルはその男の絶叫がした方に全速力で走った。

やがて壊れた教会の建物の瓦礫の下の左右の隙間を通った

しかもそこは―。まるで地獄絵図のような光景が広がっていた。

目の前は広い砂地だったが真っ赤に染まっていた。

しかもあっちこっちには真っ赤に輝く卵の殻が散らばっていた。

更にその中から出て来たであろう白い肌の全裸の日本人やアメリカ人。

ヨーロッパ人、ドイツ人、ロシア人、様々な人種の若い女性達が物凄い速さで

走り抜けて行った。不特定多数で彼女は両腕を広げ、

自分達を今まで虐げてきたケリヴァーミショナリー達

(しかもほとんどが男性である。女性もチラチラ混じっていた)

の身体をむんずと掴みかかると彼らや彼女達を砂の上に押し倒した。

しかもケリヴァー・ミショナリーさえも上回る怪力で体を押さえつけていた。

さらにまるで獣のように大きく口を次々と開いた。

そして信じられない事にケリヴァーミショナリー達の

身体を次々と歯で深々と食らい付き、引き千切り、捕食し始めた。

ケリヴァーミショナリー達は絶叫した。

「うぎゃああああっ!やめろ!若村様!助け!ぐえっ!あががっ!」

さらにケリヴァー・ミショナリーを捕食する若い女性達は

全員共通して両瞳が真っ赤にらんらんと輝き、口が真っ赤に光っていた。

更に周囲には真っ赤な血が飛び散っていた。

若い女性達がケリヴァーミショナリー達を捕食する惨劇の光景に。

エイダと鳴葉は完全に言葉を失っていた。

そして若い女性達は胸部に銅の杭を突き刺されても自ら引き抜いた。

さらに致命傷となった皮膚をあっと言う間に元の皮膚に再生させると。

ケリヴァーミショナリー達に飛び掛かり、ズタ袋の頭部から猛然と食らい付いた。

そしてあっさりと全て喰らい尽くした。どうやら彼女達は自我を失っているようだ。

彼女達の狙いはケリヴァーミショナリー達で彼らを執拗に追い回して

追い詰めて次々と捕えてえてあっさりと喰い尽くして行った。

「何があったの?これはどうなって?」

「酷い光景ね。でも連中には同情できないわ!」

イエローピラミッドシング事、破壊神ミカエルはこう言った。

「どうやら!太陽神テスカトリポカの命令のようだな!」

「神の命令って?それってまさか?冗談でしょ?」

「全てのケリヴァーを喰い尽くせだ!」と鳴葉の質問に破壊神ミカエルは答えた。

「どうして?そんな。信仰していたのに・・・・」

捨て駒よ!うちじゃ!良くある話ね!」

「そんな・・・・酷いけど。同情できないけど。」

とりあえず同情できない点だけは一致していた。

またゴールドピラミッドシング事、破壊神ミカエルは無感情だった。

しばらくしてエイダは不意に強化ポシェットからジェネシスを取り出した。

ちなみにジェネシスはBSAAの機械知識や生物工学に精通した

クエント・ケッチャムが開発した携帯型解析ディバイス「バイオスキャナー」である。

エイダは両手で構えて狂暴化して他のケリヴァーミショナリー達を捕食している

多数の若い女性達の体内や全身の細胞を分析した。

その結果がジェネシスのモニターに表示された。

モニター画面には太陽神テスカトリポカ『静かなる丘・サイレントヒル』の

土着神由来のデモニックジーン(悪魔遺伝子)が100%の確率で検出された。

また賢者の石も全身の細胞からも検出された。

さらに太陽神テスカトリポカ由来のデモニックジーン(悪魔遺伝子)を

含むウィルスも検出された。

彼女達はどうやらいつの間にか感染していたようだ。

恐らくあの怪異天使レギオンやアダムの子も感染しているのかも?エイダは

更に心の中で考えた。ただ怪異天使レギオンもアダムの子も変異している?違うかも?

何故ならそのウィルスは若い女性(特に20代から30代)に感染したと言う報告を

さっきカイネ・スラーヴァー隊員から密かにエイダの端末機のメールボックス

送信されていた。それによるとこのウィルスに感染した若い女性の

性行為時に感染していない普通の男性とした場合。

若い女性はオーガズムの長期化と言う奇妙な症状を起こしているらしい。

また若い女性の性欲の増進と言った症状を起こしている事も判明した。

そしてこの奇妙な症状に全米の医師や科学者達が首をかしげているらしい。

しかも感染した女性の口かあるいは舌から分泌される唾液にはいわゆるED効果を

引き起こす特殊な成分と射精の長期化を促す奇妙な成分のふたつが検出されたようだ。

また今の所、新型コロナウィルスの重症化によって肺炎などの命に係わる症状。

の他に最悪の突然変異による怪物化は起きていない。大体の報告はそんな感じだ。

またエイダはカイネ隊員からはその調査を

引き続き行うようにダニア博士から指示を受けていた。

更に真っ赤に輝く粒子も間違いなく太陽神テスカトリポカ由来の

変異型賢者の石も長四角のカプセル内に回収済みだ。

これは最初に空中で採取したものだ。

また彼女達の白い肌と深い胸の谷間をよく見るとあの真っ赤な太陽の聖環があった。

以前、グーフィが見せた古代生物の画像の多数の

その時代、時代の生物の身体に付いていた『進化体』のものと同一だった。

「あの彼女達も怪異天使レギオンと同じく進化体??」

「つまり楽園に選ばれた者ね。あたしと同じように」

鳴葉は右手で優しく下腹部を「よしよし」と撫でた。

「適応できない種は絶滅してしまう。

そして楽園の新しい環境に適応して進化した種は絶滅を免れると」

「あのオペラ座の怪人が言っていたわ。太陽神テスカトリポカが

人類と動物の一部を進化させて世代交代をさせた上で楽園を創造する。

それが目的なのよ。」

エイダと鳴葉ゴールドピラミッドシング事、破壊神ミカエルは

目の前の若い女性達に捕食され続けているケリヴァーミショナリー達

の大群の悲惨な結末を黙ってみつめ続けた。

既に半分以上はあっと言う間に喰い尽くされ、数もかなり減っていた。

やがて満腹になった女性達は床の上に胎児のように

身体を丸めてすやすやと寝息を立てて眠り始めた。

更にエイダがジェネシスで更に彼女達の全身の細胞に寄生している

太陽テスカトリポカ由来の変異型賢者の石と太陽神テスカトリポカの

デモニックジーン(悪魔遺伝子)を持つウィルスの遺伝子内の活動を詳しく分析した。

エイダは驚いた表情をした。

「彼女達がどうかしたんですか?何か分かったの?」

鳴葉の質問にエイダは分かりやすく丁寧に質問に答えた。

「どうやら捕食して体内に取り込んだケリヴァーミショナリー達の

DNAや遺伝子にウィルスを利用して組み込んでいるのね。

つまり彼女達はケリヴァー・ミショナリー達を捕食して

自分達の素材として吸収進化しようとしているのよ。

要は連中は分解されたバラバラの部品のようなもの。

それを自ら組み立てて進化しているのよ。」

「じゃ?彼女達の身体って?体内ってどうなってんの?」

「どうやら彼女達体内の構造は普通の人間だった頃に

比べて見た目の変化以上に非常に複雑になっているのよ」

「男達の大きな体格と権力と肉体の力で今まで都合の良い良いように

支配されていた女達が我が主神たる太陽神テスカトリポカの力によって制約を失い。

女達は原始的な本来の在るべき自己複製システムに戻っただけ。

つまり今まで男に支配されていた女性達の唯物主義的な

システムの人間社会が異常だっただけなのだ。

破壊神ミカエルは淡々とそう説明した。

一方、眠っている若い女性達は肉体に全く異変も見られず

異形の怪物化する事は全く無かった。

見た目の人間の女性の姿形をしっかりと保っていた。

人型を維持していた。

しかし見た目の大きな変化が無くともエイダが向けているジェネシス

モニター画面には彼女達の体内でウィルスによって捕食して取り込んだ

ケリヴァーミショナリー達のDNAや遺伝子を彼女達自らの遺伝子やDNAに

組み込んで自ら進化して行く過程が次々と

データとして読み込まれていて録画されて記録されていた。

あとはこのデータをHCFとクライアント(依頼者)の

『未確認媒介性疫病顧問委員会』に回収した

太陽神テスカトリポカ由来のデモニックジーン(悪魔遺伝子)のサンプルと

『静かなる丘・サイレントヒル』に出現した

数体の異形の怪物『セクシャルスラーパー』『ファントム』

『ストレイトジャケットフラン』の細胞をどうにか回収に成功した。

あとは一緒に届けるだけね。

エイダはジェネシスの画面を見ながらそう思った。

 

(第16章に続く)