(第16章)操作される生命の時間

(第16章)操作される生命の時間

 

生と死の境の三途の川。

「では!そうさせて貰おう!!」

死神ホラー・タナトスは力強く叫んだ。

間も無くして死神ホラー・タナトスは無数の牙ある口を

大きく開けて上空から降り注いで来た人間の魂を吸い込み始めた。

それを見ていたスティーブンが横に立っていた阿門法師に

「ありゃ?魂か?」と尋ねると彼は「左様!あやつはこちら側(バイオ)の

世界の現世とこの三途の川を繋げるゲート(門)となる陰我のある

オブジェ(物体)から魂を集めて吸収しておる!!」と答えた。

「まさか?地上の人間達は??クソっ!嘘だろ・・・・・」

「建物。生と死の陰我が最も蔓延している」

「あれは!きっと病院だろう?場所がニューヨークなら?」

すると心当たりがあるのかピアーズ・ニュヴァンスが口を挟んだ。

「まさか?聖ミカエル病院か?あそこには・・・・・・」

「確か?前大統領の娘のアシュリー・グラハムさんが・・・・」

「あいつめ!死神め!やりやがったな!」とスティーブンは怒りと闘志を燃やした。

死神ホラー・タナトスはこちら側(バイオ)の世界の現世の聖ミカエル病院から奪った

人間達の大量の魂を全て吸収してバクッ!と口を閉じた後に自らの下腹部に収容した。

「さてと!食事の運動と行こうかえ!!」

死神ホラー・タナトスは全身からハンターγ(ガンマ)の姿形と性質を模倣させた

自らの肉体の一部を本体と分離させて三途の川の砂浜に解き放った。

そして操り、天文学的な数のハンターγ(ガンマ)を大河と阿門法師とスティーブン。

さらにピアーズとハガネの魔戒騎士達の軍勢にけしかけた。

大河が大声で後ろにいたハガネの騎士達に号令をかけた。

「行くぞ!奴を必ず封印する!!俺に続けええええっ!いくぞおおおっ!」

すると天文学的な数のハガネの魔戒騎士達は銀色に輝く

魔戒剣を振り上げて砂煙を上げて駆け始めた。

ピアーズはスナイパーライフルを構えてスコープを覗いた。

続けて両手に構えたスナイパーライフルの銃口を左右に何度も

高速で振り回し、次々と指で引き金を引いて行った。

パン!パン!と乾いた音と共にスナイパーライフルの銃口から

ホラー封印の法術が込められた特殊弾が放たれた。

更に続けて放たれたホラー封印の法術が込められた弾丸は自分に

接近してくるハンターγ(ガンマ)に模倣したタナトスの操り人形を

次々と正確に撃ち抜き、爆四散させた。

右左左右左左上と巧みに銃口を動かし、機械のような正確さで

次々とハンターγ(ガンマ)に模倣した操り人形を撃ち抜いて倒して行った。

さらに砂の中に潜っていたハンターγ(ガンマ)の操り人形も

素早くジャンプして彼を丸呑みにしようと大きく開いた口に

スナイパーライフルのホラー封印の法術が込められた弾丸を

5発叩き込むとその場でしばらくのた打ち回った。

やがてハンターγ(ガンマ)の操り人形は風船のように破裂して爆四散した。

ピアーズは空中で後転して砂浜に着地した。

「身体の重さを全く感じないな!案外悪くないな!」

ピアーズは感心したように笑って見せた。

ティーブンは両手にゴールドルガーを構えると大きくジャンプした。

続けてゴールドルガーの引き金を引き、ホラー封印が込められた特殊な弾丸を

ダン!ダン!ダン!と3発撃ち、ハンターγ(ガンマ)の赤い頭部に3発撃ちこんだ。

ハンターγ(ガンマ)は「ぐええええええっ!」鳴き声を上げた。

そして頭部からドス黒い血を吹き出させた。やがて身体は爆四散した。

続けてスティーブンは着地と同時に前転して砂浜を転がった。

その隙を付いて彼の死角の真横にいたハンターγ(ガンマ)が大口を

開けてスティーブンを丸呑みにしようと素早く突進してきた。

しかし彼は一切、真横を見向きもせず正面に顔を向けたまま両腕を

真横に伸ばしてゴールドルガーを構えた。

そして真横にゴールドルガーの銃口を二列に並べて向けたまま引き金を引いた。

さらにパン!パン!と銃音と立てて突進して来たハンターγ(ガンマ)を

立ち上がりながら両手にゴールドルガーをしっかりと構えて

銃口を向けるとそのまま引き金を引き続けた。

パンパン!と銃音を立ててゴールドルガーから放たれたホラー封印の法術が込められた

弾丸は次々と頭部、右肩、左肩、右胸部、左胸部、左腹部、心臓を連続で撃ち抜いた。

それは目にも止まらぬ速さの見事な早撃ちだった。

ティーブンはゴールドルガーの引き金を引き続けながらスタスタと歩き続けた。

最後は風船のように膨らみ、破裂寸前のハンターγ(ガンマ)をドガッ!と右足で

強烈なキックを食らわせた。ハンターγ(ガンマ)は美しい放物線を描き遠くへと

ふっ飛ばされた。やがて周囲にいた仲間であり、死神ホラー・タナトスの身体の

一部だったハンターγ(ガンマ)の群れの一部を巻き込み、大爆発した。

そして彼の攻撃により、2000体余りが消滅した。

するとスティーブンは気持ち良さそうに高笑いした。

「ははははははっ!久しぶりに最高の気分だぜ!ははははっ!はははっ!

ハガネのナイトのお出ましだぜ!現世で見てるか!クレア!!」

ティーブンは冗談交じりに大声で青空に向かって叫んだ。

するとそれを聞いていたピアーズは鋭く彼の声に反応した。

「クレア?だと?知っているのか?」と思わず声を上げた。

「知っているのか?知り合いか?」とスティーブン。

「ああ。確かBSAAとの共同作業の時に知り合って。

でも俺はあんたと同じように死んじまった。」

「俺はクレアを守る為に死んじまった。あんたは?」

「俺はクレアの兄のクリスを守る為に死んだ。」

ティーブンとピアーズは重く口を閉ざし、暗い表情をした。

2人は黙りつつも死神ホラー・タナトスとの戦いに集中した。

 

再び『静かなる丘・サイレントヒル』の教会の屋上の何処か十字架の形をした広場。

広場の床の美しい青色の鏡を見ながら

ヨグとヨナとニーアはある儀式の準備をしていた。

「いいかね?我が放つ窮極の矢の中に君達が宿るんだ!撃つタイミングで!!」

「それで?どうすれば?僕達は??」と真剣な表情でニーア少年はヨグに質問した。

「我が窮極の矢を用いて死神ホラー・タナトスのコア(核)の中にいる

『のぴ』の意識に君達ふたつの前世の記憶と思念を流し込み。

彼女の生命力の性(リビドー)を復活させる!

そうすれば元々死神ホラー・タナトスは人間の死の欲望・自殺したい心(タナトス

心の弱い人間に与えて意識を閉じ込めて融合して動いている。

しかし正反対の生命力(リビドー)は奴の弱点でもある。

そこを付けば死神ホラー・タナトスは弱体化する。」

「私達が彼女を説得して生きる意味を見出せればいい訳ですね!」

「窮極の矢には『のぴ』の現世の仲間達や家族の記憶のデータもある。」

「それで彼女が生命の力(リビドー)を取り戻したら?何が起こるの?」

「彼女が取り戻した家族と仲間の記憶と君達の思念が彼女に現世(リアル)

の世界に生きる意味を与えられて生命の力(リビドー)が復活すれば

死神ホラー・タナトスの下腹部に閉じ込められていた黒き月が飛び出し。

『のぴ』の賢者の石の力を帯びた生命力・性(リビドー)によって生命の源の海の中で

全ての魂が一つになった混沌の世界は『のぴ』が『おこさまぷれーと』

の仲間や不特定多数の人間の存在を望めば再び

生命の力(リビドー)の力が全て魂を引き剥がすだろう。」

「同時にまたお互いを言葉や手足で人々が

傷つけられる他人と言う恐怖が始まるんだね」

ニーアはどこか悲しそうに小さくそう言った。ヨグは「そうだ」と静かに返した。

「大丈夫だよ!お兄ちゃん!」と言ってヨナはニーアを元気づけた。

「・・・・・そうだね!あの子は自分の心の弱さを認められる強い女の子だもんね!」

ニーアはどこか安心した表情をした。

「お互い納得したようだな!では!始めるぞ!」

ヨグの円形の広場の鏡に立った。

続けて右腕と右手をグニャリと変形させた。

それは七色の輝く美しい弓の形をしていた。

それは三日月の形でとても芸術的だった。

左手が変形し、今度は七色に輝く細長い矢が現れた。

先端は名状し難いほど美しく鋭利な形をした矢じりが付いていた。

ヨナは白い光にニーアは青い光になると鋭利な形をした矢じりに吸収された。

ヨグは茶色の瞳で円形の広場に映る鏡をしっかりと見た。

円形の鏡は既に場所がごっそりと切り替わっていた。

切り替わった鏡の光景は生と死の境の三途の川の頂上決戦の模様を映し出していた。

そこでは冴島大河と阿門法師とハガネの魔戒騎士達。

ピアーズとスティーブンが死神ホラー・タナトスの肉体の一部を模倣した

ハンターγ(ガンマ)の軍勢と激しい戦いを続けていた。

ヨグは弓の向きを上下左右に変えながら『のぴ』をコア(核)に

取り込んでいる死神ホラー・タナトスの巨体を探し始めた。

 

ニューヨーク市内、秘密組織ファミリーの本部に当たるシモンズ家現当主

ジョン・C・シモンズの大きな屋敷。そして全ての魔獣ホラーと統括する大君主。

魔王ホラー・ベルゼビュートと他の魔獣ホラーと人間が住むアメリカの中心地。

ちなみに配下の上級ホラー達によって張り巡らされた強力な結界により。

太陽神テスカトリポカの太陽の聖環の影響やあらゆる『静かなる丘・サイレントヒル

の表世界と裏世界の異世界を完全に遮断されていて

唯一の安全なコロニーになっていた。

その為、ここには大勢のアメリカ市民が避難していた。

ジョンの命令により、避難してきたアメリカ人をみだりに捕食しないように命じた。

命令を破った者は上級であっても下級であっても全ての

魔獣ホラー達は片っ端から大きな屋敷の外の大きな庭に追放した。

そんな彼らの対応や避難してきたアメリカ人の世話を

メイドや執事や世話好きな自分の身内に命令していた。

彼に忠実な上級ホラー達はつまみ食いをしようとする礼節をわきまえないバカな

ホラー達の監視と警告と屋敷の外の大きな庭につまみだす役割を担っていた。

それで一応安全ではある。しかしある問題が浮上していた。

それは急にジョンは何者かの気配を感じていた。

しかも魔獣ホラー特有の邪気や気配を全く感じなかった。

おかしい!だが人間じゃない者の気配を感じる。どこだ??

やがて彼はある一人の日本人の青年とすれ違って行った。

「女は急速に子を産み。周囲の時間と適合して人と同じ時間になろう。」

日本人の青年は静かにつぶやいた。しかもフッ!と暗闇に溶け込むように消失した。

ジョンは日本人の青年を色々探ったがおかしな気配も邪気も全く感じなかった。

ジョンは「何も無い」と結論付けようとしたがどうやっても違和感が消えなかった。

彼は直ぐに部屋に戻り。マルセロ博士と倉町公平に。

「さっき廊下で見かけた日本人の青年を調べる」ように命令した。

早速マルセロ博士と倉町公平はその日本人の青年について近くにいたメイド達から色々

聞き込み調査をした。メイド達によると彼の名前は『神崎りゅうすけ』らしい。

しかし約2000人余りの話を聞いていたメイドの中に異変が生じた。

更にそれはまるで連鎖するように次々と2000人余りのメイド達に異変が始まり。

彼女達は床にお腹を両手で押さえて苦しそうに呻き声を上げて座り込んでしまった。

慌ててマルセロ博士はメイド達を診察した。するとまるで急激に時計の針が進むように

メイド達のお腹は急激に風船のように膨らんで行った。

どうやら信じられないが全員妊娠しているようだった。

これは太陽の聖環の呪力じゃない!これはマズイ!と危機感を感じたマルセロ博士は。

倉町に「直ぐに産婦人科の看護師と医者を呼べ!早く行け!!」と命令した。

「はいっ!わかりまし・・・・

わーっ!クソっ!生温かい液体がッ!なんなんだよ!!」

倉町はいきなり自分の黒いズボンに生温かい液体が掛かって

ビショビショになったのを毒づいた。

マルセロ博士は「落ち着け!破水したんだ!赤ちゃんが出て来るぞ!」

「はあ?なんですか?人間って奴はそうやって出てくるんですか?うわっ!くそっ!」

「いいから!早くしろ!!ジョンにも報告しろ!グズグズするな!!」

倉町は羊水でびちょびちょのまま慌ててどこかへと走り去っていった。

数時間後にはマルセロ博士と倉町の連絡によって産婦人科の医師や看護師や看護婦が

駆け付けて産気づいた彼女達を協力して分娩室まで運んだ。それからー。

全員無事出産して元気な赤ちゃんが次々と取り出された。母子共に全員健康だった。

そして妊娠した彼女達からマルセロ博士は数人のメイドの若い女性達に話を聞いた。

全員、神崎りゅうすけと名乗る日本人の男に誘惑されて性行為をした事を告白した。

 

生と死の三途の川では頂上決戦は続いていた。

ティーブンとピアーズは死神ホラー・タナトスの身体の一部であるハンターγ

(ガンマ)の姿形を模した生態人形たちを蹴散らしている中、

冴島大河は素早く天空に銀色に輝く魔戒剣を振り上げるとぐるっ!と円の形に振った。

同時に冴島大河の全身は黄金の光に包まれた。

やがて黄金の光が消えたと同時に彼は黄金の狼の鎧を纏った黄金騎士ガロに変身した。

さらにヒヒヒヒヒヒン!と言う馬のいな鳴きと共に真っ赤にたなびくサラサラの鬣に黄金の鎧に全身を包んだ魔戒馬・轟天が姿を現した。直ぐに大河は魔戒馬・轟天の背中に乗るとハッ!と声を上げて黄金の鎧に覆われた両足で

魔戒馬・轟天の左右の腹部を一回蹴った。
すると素早く砂浜を分厚い金色のヒズメで蹴り上げると

砂煙を上げて巨大な身体を持つ死神ホラー・タナトスに向かって駆け出した。

そして死神ホラー・タナトスの近くまで近付くとそのままドン!と砂煙を上げて

一気に助走を付けて1000mの高さまでジャンプした。

続けて大河は金色に輝く牙浪剣をしっかりと構えた。

直ぐに牙浪剣は黄金に発光し、巨大化した。

さらに途轍もなく長く巨大な牙浪斬馬剣に変形した。

「おおおおおおおおおおおおっ!!」と大きな声を大河は上げた。

続けて大河は勢いよく牙浪斬馬剣を振り下げた。

莫迦(バカ)め!」と死神ホラー・タナトスは女性らしくしなやかな右腕を振った。

続けて右腕の真っ赤に輝く翼の形をした鋭利なカッターで大河が振り下ろした

牙浪斬馬剣を受け止めた。同時にバチバチと大量の火花が周囲に散った。

続けて右腕をブン!と振った。大河は吹っ飛ばされて斜め下に高速で落下した。

ズドオン!と大量の砂の柱を上げて大河と魔戒馬・轟天は砂浜に沈んだ。

しかしすぐにバアン!と大量の砂の柱を上げて大河と魔戒馬・轟天は起き上がった。

再び大河はハッ!と声を上げて腹を蹴り、魔戒馬・轟天を走らせた。

大河は巨大な死神ホラー・タナトスを見上げ、真っ赤に輝く瞳で見た。

ぱかっ!ぱかっ!とヒズメの音を鳴らして再び死神ホラー・タナトスに接近した。

再び大河を背中に乗せた轟天は大きく飛翔した。

大河は轟天に乗ったまま身体を大きく捻った。

続けて牙浪斬馬剣を半円に大きく振った。

ガアアアン!と言う大きな激突音と共に死神ホラー・タナトスの頭上にある

真っ赤に輝く天使の輪に激突した。

しばらくバチバチと赤とオレンジ色の火花を散らして

死神ホラー・タナトスの頭上に

真っ赤に輝く天使の輪を切り裂こうと大河は力を込めた。

しかし残念ながら黄金騎士ガロの剛力をもってしても

真っ赤に輝く天使の輪を切り裂く事が出来ず、

そのまま牙浪斬馬剣の刃は一気に弾き返された。

同時に死神ホラー・タナトスの頭上の天使の輪がさらに真っ赤に発光した。

そして強烈な高熱の衝撃波を放った。放たれた強烈な高熱の衝撃波は

高速で大河と轟天にモロ直撃した。轟天と大河はバラバラに吹き飛ばされた。

大河と轟天はそれぞれまた砂柱を上げて別々の場所に落下した。

 

(第17章に続く)