(第61章)踏んだり蹴ったりのギルマンさん(前編)

(第61章)踏んだり蹴ったりのギルマンさん(前編)

 

ダゴン密教団』の所有するとある研究所の地下3階。

ギルマン・マーシュと言う名前のディープワン(深き者ども)は

目の前のとある実験の為の監視モニターの画面を眺めながら

『静かなる丘・サイレントヒル』の一連の超常現象が解決した6日前の昼12時。

例の『おこさまぷれーと』の緑担当メンバーの『のぴ』が

意識不明で入院して目覚める30分前よりも更に数時間前に

聖ミカエル病院の待合室で偶然会った氷川と言う人間の男と

会話した事をぼんやりと思い出していた。

それはこんな会話である。

「『人の欲望とは灯のようなものだ。小さい内は暖かで心地よい。

だが燃え続ける火はやがて炎となる。全てを焼き付くまで止まらぬ怪物にな。』

ヒト(人間)はそんなものを愛し続けた。その安易な温もりに依存し。

全てを灰に返す破壊者の本性には目を背けて来たのだ。」

「今。正に仁藤夢乃氏やあのコラボの団体やばっぷすの団体とかの

ツィフェミやアメリカのヴィーガンや過激派ポリコレがそうだギョね。」

「その通り。彼らは愚かにもAV業界やアニメ業界のキャラクター。

ゲームのあらゆる全てを焼き尽くし。なおかつ男女平等を言い訳にした

若年被害女性の救済と補助の大金に未だに依存し続けている。

私はあの計画を諦めた訳では無い。

『ヒトは世界の為に尽くす存在であるべき』

と言う個人的な自分の考えは変わっていない。

もっとも既に3日前にガイア教団に『ミロク教典』は返したがね。だからこそ。

それがひいて唯一人の安息も約束するだろう。

そう仁藤夢乃氏もコラボもばっぷすもひびきの村も全ての

団体の人々も世間も『何を求めるべきで。何を求めてはいけないのか?

その線を超えるのは人間ではなく世界だと私は思っている。

人間(ひと)はただ世界を照らす信号であればいい。

穏やかに回り、明滅し、世界の意志の一部となる。

自分はそれこそが最善にして最高の所業であるべきだと思うのだ!!

ギルマン・マーシュ君!そうは思わないかね?世界はただ静寂であればよいと?」

氷川に質問されたギルマン・マーシュはしばらく考えていたがゆっくりを口を開いた。

「確かにそう思うギョ。自分もやっぱり騒がしいのは苦手だギョ!」

「そうか。シジマの素晴らしさが君にも分るようだな。

やはり他のクトゥルフの連中やダゴンやハイドラ。

その他の魔獣新生多神連合の有象無象とは格が違うね。

いずれは君には協力して貰いたい。いいかね?」

「分かったギョ!こんな人外でもできる事があればぜひ協力を!

正直このままクトゥルフやハイドラやダゴンの仲間入りなんかしたくないギョ。

それにルルイエからあいつら『クトゥルフ(旧支配者)』

が復活すれば余計騒がしいギョ!

星の位置が正しい位置になるまで信仰は続き。そして。

『偉大なるクトゥルフが復活すれは連中は地球を征服するギョ。

そうなれば人類は旧支配者に変身して自由で奔放で善悪を超越しただか。

規律や道徳に囚われないから誰もが絶叫して殺戮を繰り返して快楽に溺れる為の

新たな手段を授けて。あーえーと。ルルイエから解放した旧支配者がギョ。

もはや地球は恍惚と開放感に満ちた大殺戮と炎に包まれる。

つまり欲望の炎で世界はまる焦げだギョ。最悪ギョ!」

氷川は腕を組みながら深刻な表情で考えていた。

「正に混沌「カオス)の世界だな想像もしたくないな」

氷川も恐怖と言うよりかは強烈な嫌悪感を滲ませて言った。

「だからもっと静かにして欲しいんだギョ!」

ギルマンの望みに氷川はこう質問した。

「それでは?君はどのような新しい世界を創造。創世したいのかね?」

ギルマンは直ぐに答えた。

「そうギョね。やっぱり誰にも邪魔されない生の営みの静寂の世界。

つまりギョね。男女平等に言い訳して必要以上邪魔をしてくる仁藤夢乃氏や

ヴィーガンや過激派ポリコレの不必要な性の種類も存在しない。

うるさくギャーギャと騒ぐ時代遅れのおばさんやおじさんがいない世界だギョ。

勿論、クトゥルフもハイドラもダゴンも正直。ダゴン密教団も

魔獣新生多神連合もBSAAもバイオテロも存在しない。

『ヒトが世界の為に有性生殖として男女が純粋に愛し合って

子供を次の子孫をできるだけ多く残せる世界だギョ』

そして性行為で何を求めて何を求めないかは。

性別に関してもその線を定めるのは人間や仁藤夢乃氏でも

ツィフェミでも過激派ポリコレでもクトゥルフでもない。

新しく創生された世界とその世界を管理する存在だギョ。

それが世界と性別と性行為を定めるんだギョ。

つまり人間(ひと)は必要以上に金欲や禁欲や女性嫌悪や男性嫌悪や

嫉妬や浮気や不倫。愛する感情と性欲と純粋な心だけで十分だギョ。

その他の感情は必要ないギョ。つまり人間(ひと)も

我々のような人外の存在達もただ世界と性と子孫を残す為の

最低限の本能と純愛によって世界を照らす信号であればいい。

そう、穏やかに性欲を出して性行為をして子孫を子孫を残す為に

命が回り、生と死を伴って明滅する事で世界の一部となるギョ。

つまり世界はただシンプルに『生の営みの静寂の世界』が

自分にとって唯一。あるいは人間にとってまた

別の可能性から来た安息になると思うギョ。」

「成程。そんな考えもあるのか?」

氷川は再び両腕を組み、色々考えていた。

「ふーむ、私一人では決して思いつかない世界だ。興味深い。」

しかしギルマンは自信無さげに氷川にこう意見をぶつけてみた。

「でもこれだと『小さい内は暖かで心地よい』

『安易な温もりに依存し続けている』

だけかもギョね。どうしたらいいんだギョ?」

「いや。問題ないと思う。望む力が大きくなければね。

つまり必要以上の無駄さえ消し去ればいい。

金欲や禁欲や女性嫌悪や男性嫌悪や必要以上の性別の種類さえ排除できばね」

氷川はギルマンの意見に珍しく真面目にフォローした。

「必要以上女性や男性を加虐して痛めつける必要もこの世界なら永遠に必要ないギョ。

感情は純愛以外は必要無いのだからねギョ。

勿論、唯一神YHVAが与えたであろう

『出産の陣痛の苦しみ』『生涯、食べ物を得ようと苦しむ』

『汗水たらしてパンを得る』と言う苦しみからも解放されるギョね。

これで静かに純愛や妊娠や出産と性行為に余計な感情や

不必要な種類の性別にも過激派ポリコレにもツィフェミにも

金儲けににも邪魔される事無く集中出来る筈だギョ。」

「それが人間(ヒト)にとって幸せだと言うのかね?まいいだろう。」

しばらく氷川とギルマンは色々話をした。そして連絡先を交換し合った。

ギルマンは自分自身が開発したと言う極秘回線の特殊な機能で

お互い連絡し合おうと約束して接続方法を教えたのだった。

それから最後に氷川はこんな興味深い話をギルマンにした。

『アマラ宇宙』にはカグツチ的な存在を含んだボルテクス界となるらしいとか?

あとはこちら側(バイオ)の世界の『シン・サイレントヒル』も

その一つに過ぎないとかなんとか?正直良く分からんギョね。

やがて監視モニター画面を見た。監視モニター画面には少女と怪物の奇妙な。

肉体関係のとにかく不思議で美しくも悍ましく悲しみと切なさのある光景。

ギルマンはそのモニター画面に魅入られていた。

そのモニター画面には『私立ラグクラフト中学高等学校』の校内で。

校内の各地であっちこっちに仕掛けてあった時空の歪みから例の

『死神ツイスデッドリーパー』の鎧の背中部分の無数の穴から噴き出した

無数の真っ赤な触手を校内のトイレやロッカーや教室や体育館建物内部などに発生した

ノイズ状の円形の時空の歪みからスルスルと真っ白な触手を無数に伸ばしていた。

更に無数の触手はあっちこっちで女子中学生や高校生の少女を捕えて

性行為しようとしていた。複数のモニター画面にその光景が広がりつつあった。

最初の女子中学生個室のドアが開き、

トイレの個室の仲へと引きずられて性行為をしたり。

とにかく本能的な行動に従って生殖しようと活発に繰り返していた。

他にもロッカーの内側の白い壁状の肉の塊が時空の歪みから現れた。

そして白い肉の塊から1本の細長い触手を伸ばした。

続けてたまたま通りすがった女子高生の胴体に2重に巻き付き捕らえた。

続けて彼女をあっと言う間にロッカーの中に

引きずり込むとバタン!とドアが閉まった。

そして女子高生とロッカーの内部でガンガンバンバンと内部で

ロッカーの扉を叩く音が聞こえ続けた。

後にロッカーの中で交尾して気絶した直後。

衣服を着たまま今度は女子高生の全身を白い卵状の膜が覆い尽くした。

やがてキィーツ!と甲高い金属音と共にゆっくりとドアが開いた。

既にその女子高生はロッカーの中に存在していなかった。

その女子高生と『死神ツイスデッドリーパー』の交尾の様子はモニターされていた。

それからギルマンは体育館倉庫内の映像モニターに視線を移した。

しかし不意にビーツ!ビィーッ!と大きな警告音と共に部屋全体が真っ赤に輝いた。

ぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょおおっ!あああううううううっ!!

なんだぎょおおおおっ!」とギルマンは早くも泣き言を言った。

同時にギルマンは情けない事に未だに頭の上の両手を置いて蹲っていた。

すると再び脳裏にけたたましい女性の笑い声が響いた。

「キャハハハハハハハッ!やった!

やったあっ!わざわざ弱い女を探す手間が省けたわ。

この場所に保存されている大量のあの死神ツイスデッドリーパーと排出した分泌液と

その中に混じっている細胞を大量に吸収すれば実体化できるわ!

あの元々の『おこさまぷれーと』の緑担当の『のぴ』の精神世界の内なる魔界から

こちら側(バイオ)の現実(リアル)の世界を通ってきた甲斐があったわ。」

そこでプチンとギルマンの脳裏から女の声が消失した。

続けて仲間の深き者ども(ディープワン)の上司の声がアナウンスされた。

「ギルマン!直ぐに地下40階の『死神ツイスデッドリーパー』の

分泌液と細胞サンプルの水槽を確認しろ!急げ早くしろ!!」

ギルマンは震えつつも本当はもうモニター画面を見るのは心底嫌だったが。

彼はどうにか立ち上がり、スイッチを押して付けた。

モニター画面には『おこさまぷれーと』の『のぴ』そっくりの

日本人の女が大量の液体の分泌物と細胞を一か所にまとめて自ら邪悪な

彼女の肉体にどんどん吸収されて行く様子が映し出された。

「よしよし!これで実体化してまともに動けるわ!!

でも。まだ邪気と暗闇と賢者の石はまだ足りないな。

完全な神の牙(ジンガ)の妹として力を得る為にはもっともっと

悪魔の力と魔獣ホラーとマガツヒ(禍つ霊)が必要ね。」

そしてギルマンにはその真っ黒な魔戒騎士の服を着た『のぴ』と

まるで双子のようにそっくりの白銀のボブヘアーの日本人の

成人女性は真っ赤に輝く12枚の光の鳥の羽根を真上に広げて伸ばした。

やがて空になった学校のプールと同じサイズの水槽から

瞬間移動したらしく何処かへと逃亡して行った。

そして完全に空になってしまった水槽が残されていた。

天井のスピーカーから仲間の上司も

『深き者ども(ディープワン)』も信じられない様に。

「あいつはなんだ?何が目的なんだ?」と呟いていた。

その後の調査によるとあれは今日の時間軸よりも

かなり先の未来から過去の今の時間軸にワープしたのだと言う結果が出た。

つまりすでに今日の過去から未来の時間軸へ戻ったと推測された。

あいつのどうやら名前は『御影のぴ』と言うらしい。

その謎の存在の御影のぴは『死神ツイスデッドリーパー』の

遺伝子とDNAを吸収して実体化した。

今後彼女はこちら側(バイオ)世界でどのような目的で活動して。

どのような影響を残すのか未知数とのこと。

のちに『ダゴン密教団』は彼女を重要な生体サンプルとして

行動を監視する事が数時間前に上司や幹部達が集まった緊急会議で決まった。

勿論、ギルマンにとっては踏んだり蹴ったりだった。

何故なら自分がその行方を調査して監視しないといけないのだから。

「さて!ギョ!あの女を炙りだす方法を考えないとなギョ!」

それから例の騒動の後もしばらくずっとぼーっとモニター画面を見ていた。

ギルマン・マーシュは直ぐに実験体のツイスデッドリーパーの異変に気付いた。

彼は目をぱちくりしてモニター画面を見た。

モニター画面にはとんでもない怪奇現象が映り込んでいた。

突如として『死神ツイスデッドリーパー』を飼育している

広大な長四角の強化ガラスで覆われた部屋全体が一気に周囲を

まるで渦のように大量の意識存在が持つ精神エネルギーの真っ赤に輝く

オタマジャクシ状の物体マガツヒ(禍つ霊)が現れた。

それからマガツヒ(禍つ霊)の群体はまるで竜巻のように

ツイスデッドリーパーの巨体を覆い尽くして行った。

ギルマンも良く分からない状況だったが。

不意に自分は無意識の内に椅子から立ち上がっていた。

続けて右腕と左腕をゆっくりと開いた。

同時に全身が白く輝いた。

同時に広い部屋全体が一時的に暗黒の虚無の力が覆い尽くして行った。

そして生贄として捕獲されていたのか?

死神ツイスデッドリーパーが自分の知らない内に

虚無の世界に隠していたのか真相のほどは分からないが。

とにかく見知らぬ。顔も名前も知らない20代の若い女性は

どうやらここの教師らしいが。

全てを知る間も無くあっと言う間に真っ暗な闇と

青く輝く虚無の中へと飲み込まれて行った。

名前は何となく思い出した。確かジェネットだったか?

そう、ここの教師で男子生徒と何十回も性行為を繰り返して。

とうとうバレて学校側は不祥事を隠す為に色々情報統制や情報操作をして隠していた。

もしや?彼女をいなかった事にする為に校長が手を回したのだろうか?

あの校長は自己中心的で自分勝手な性格だギョ!

あり合えない話ではないギョね!いやそれよりも。

ギルマンは不安げにまたモニター画面を見た。

モニター画面では『死神ツイスデッドリーパー』本体がザワザワと蠢き続けた。

後に大きくガタガタと上下に激しく震わせた。

続けて『死神ツイスデッドリーパー』は全身から真っ赤な光を放った。

思わずギルマンは急に放たれた真っ赤な光でモニター画面全体を覆い尽くされ。

余りにも凄まじい閃光によって両手で反射的に顔を覆った。

間も無くして『死神ツイスデッドリーパー』

の真っ赤に輝く閃光はゆっくりと収まった。

続けて飼育部屋の水槽の中にいた『死神ツイスデッドリーパー』の巨体に向かって

マガツヒ(禍つ霊)がどんどん集まり、吸収されて行く光景が見えた。

 

(第62章に続く)