(第71章)凶悪犯は救えるのか?

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第71章)凶悪犯は救えるのか?

地球防衛軍は現存する限りの台数の火龍やランブリング、
エクレールに詰め込みを終え、すでに北海道網走市内に到着していた。
分厚い雪雲の隙間から、怪獣化したサンドラとゴジラの姿が見えると
すぐに火龍の格納庫のハッチが開き、中からAサイクル光線車が出た。
サンドラに向かって、Aサイクル光線車に装着された
4連スピーカから不協和音とAサイクル光線による攻撃が始められた。
その稲妻の形のAサイクル光線が肉芽種だらけのゴツゴツ
とした背中に当たると背中の肉芽種は膨らんだり縮んだりを繰り返し、不気味に蠢いた。
 サンドラの肉芽種だらけの体に変化が起こった。
腹と背中の硬い甲羅から生えた16本の触手の先端が変化を始めた。先端
が束になって融合し、徐々にクリスタルの形に膨らみ始めた。

 長野先生の言葉を聞いたレベッカは歯をむき出し敵意を露わにしながら
「つまり!あんた達は人間に近い存在になっても自分達の血筋
を絶やさない事を最重要視している訳?
ふざけないでよ!それでいいの?」
と怒鳴り声を上げた。
長野先生は、怒鳴り反発するレベッカに向かって
「あたし達は例え宇宙人本来の能力を失って完全な人間になっても……自分達の子孫が残ればいいわ!」
と平然と言い放った。
レベッカは怒りに歪んだ顔のまま徐々に下顎が裂け始め、
「あなたは分かっていない!同族なのに!それが理解できないあなた達に未来は無い!」
今まで長野先生とレベッカの会話を黙って聞いていたジーナは
「それ以上の事はあなたを逮捕してじっくりと聞かせてもらうわ!」
レベッカはさらに全身の色が青黒く変色し始め、腹から8本の
触手が飛び出した。目が青く輝き、再び宇宙人の本来の凶暴な
姿に変身した。そして獣の唸り声を上げ、アヤノに向かって
「全員MIBの犬だったのね……」
長野先生は
「それは違うわ!MIBはガーニャさんとあたしとサミーさん
ジーナさんだけよ!」
ジーナは
「実際!地球防衛軍の特殊生物犯罪調査部の関係者のほとんど
MIBから来ているわ!宇宙人も地球人も!」
レベッカ
「つまり!あなたが殴って連れて来たガーニャと言うMIBの
男はここにあたしを誘い込む為の囮だった訳ね!」
ジーナは
「そうよ!彼は自らの危険を承知で囮になったわ!」
レベッカ
「密航したのはあたしの母親よ!」
しかしサミーは厳しい声で
「でも!人を殺した!俺達の仲間達のように!」
レベッカ
「UFOや宇宙人の目撃者や研究者達はともかく!
このあたしにウィルスに対する警告や脅迫を与えて!圧力を加えようとしても無駄よ!
あたし達は確実にサンドラが作り出したウィルス
を使って種の形態を維持するのよ!MIBやミュータント如きに邪魔されてたまるか!」
と大声を上げ洋子に襲かかった。

 暁色の空間でガーニャはようやくサンドラが閉じ込められている暁のクリスタルにたどりついた。
その後ろを蓮が追い付き、ガーニャの手を掴み
「ここは危険だ!早く現実世界に!」
しかしガーニャは
「駄目だ!彼女を放って置けない!」
と言いながら蓮の手を思わず振り払った瞬間、
ガーニャの耳にキリキリ神経に来るような不協和音が聞こえ、サンドラを閉じ
こめていた暁のクリスタルがガラスの様に反響し激しく揺れ始めた。
不協和音を聞いたガーニャは思わず耳を塞ぎ
「なんだ?この神経に来る不協和音は?」
と隣の蓮に訪ねた。

 一方サンドラの意識はなぜか真っ暗闇の中にいた。
そこに光が差し込み、彼女はまぶしくて両目を覆った。
 それから彼女の脳裏に恐ろしい映像が流れた。
(男らしき2人の人影)
(悲鳴と絶叫)
(凍死した男性)
(研究所)
(注射器の針が自分の腕に突き刺さり、何かを投与される)
(自分の全身にゴジラに似た鱗が浮かんでいた。)
再びサンドラの耳に
「起きろ!起きろ!」
とロシア語が聞こえた。
暁のクリスタルの中に閉じ込められていたサンドラはしばらく
誰なのか分からず、眼を開けるのが怖かった。
 しかしとうとう覚悟を決め、うっすらと目を開けた。
そのクリスタルの先に……金髪の少女が黒髪の少年とロシア人の男性
との間に割って入る様子を真近で見えた瞬間、思わず瞠目した。
「ガーニャ??それに例のガキの2人!!」
しかし混乱する彼女に構わず、
サンドラの声に一足早く気付いた蓮はサンドラを向こうから見返し、
冷たい声で「力に溺れたな!全然悔い改めていないじゃないか?」
それから彼女はガーニャを見た。
 彼女はかつてガーニャを慕っていた日々を思い出した。
あの頃の自分は彼を恋人として誰よりも愛していた。
 彼女は不意にガーニャを裏切ったのが自分自身であることに気付き激しい後悔に襲われ、
なぜそこまで自分を追いつめてしまったのか長い間考えた末、思わずサンドラは
「こうなったのはあたしの心が弱かったせいね……」
しかし蓮は
「ふん…もう遅い…お前が破滅するのはもう…誰も止められない…」
その時、今まで黙って蓮の言う事を聞いていた凛が口を開き
「いや!自分の破滅を止められるのは!あなた自身だけよ!」
と力強い声で言った。
蓮は猛然と
「どうして?こいつは長野先生や洋子を痛めつけて殺そうとした!!
さらに多くの男達を殺した凶悪犯だぞ!」
と反発した。
しかし凛は
「それでも!罪は償えるわ!」
それから2人は言い争いを始めた。

 コンテナの中に捕獲されたレイは
網走厚生病院の広場からジェレルと共に極秘に別の病院へ輸送されていた。
 その輸送中、医療スタッフの瑞穂がレイの様子を見ていると、
赤黒く変異していた全身は時間が経つにつれて、黒の混じった緑色に変わり、
別の病院に着く頃には再び元の青黒い色になっていた。
もう一人の医療スタッフは
「脱皮したばかりの頃は赤黒く変化していますが……時間が経つにつれて表面の皮膚が硬くなり、
黒と緑から元の色に戻るようです!ただ……個体差があるかもしれません。
さらに人間の皮膚にもなるのですから、この変異能力は大したものです!」
と指摘した。

(第72章に続く)